国際宇宙ステーション
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国際宇宙ステーション(こくさいうちゅうステーション、International Space Station、略称ISS)は、2010年の完成を目指して、アメリカ、ロシア、日本、カナダ、欧州宇宙機関(ESA)加盟11カ国が協力して建設を進めている宇宙ステーションである。
地上から約400キロメートル離れた地球周回軌道(地球低軌道)上に浮かび、地球や宇宙を観測し、また、宇宙環境を利用したさまざまな研究や実験を行うための巨大な有人施設である。約90分で地球の周りを一周する。
軌道上での組立は1999年に開始された。2010年4月に完成し、2016年までの運用が予定されている。運用完了までに要する費用は1540億USドルと見積もられており、ISS計画はこれまでの人類史上で最も高価なプロジェクトである。
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[編集] 参加国・関係国
1988年9月に締結された日米欧の政府間協定により国際宇宙ステーションの開発が着手され、1998年にはロシア、スウェーデン、スイスを加えた国際宇宙ステーション協定[1]が署名され、ISS計画の参加国は、アメリカ、ロシア、カナダ、日本、ESA加盟の各国(ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス)の15カ国となっている[2] 。これとは別に、ブラジル宇宙機関がアメリカと二国間協定を結んで参加している。また、イタリア宇宙機関はESAを通じてだけでなく、NASAとの直接契約で多目的補給モジュールを開発している。
中国はISSの参加を打診[3]したことがあると発言しているが、2008年6月現在は実現していない。インドもISSへの参加を希望しているが、他の参加国の反対に遭い、ロシアに協力を求めている[4]。
[編集] 計画推移
「フリーダム宇宙ステーション」も参照
国際宇宙ステーション計画が最初に持ち上がったのは、1980年代初期のレーガン米大統領による冷戦西側各国の宇宙ステーション「フリーダム計画」で、西側の結束力をアピールしてソビエト連邦に対抗する政治的な意図が非常に強いものであった。搭乗人数は出資比率によって定められたが、米国、欧州、カナダ、日本の飛行士がそれぞれ、必ず年間を通して滞在できることになっていた。しかし、米国や欧州の財政難、スペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故、続く冷戦終結による政治的アピールの必要性低下によって計画は遅々として進まなかった。計画は「アルファ」に変更、ステーションの規模も大幅に縮小され、米国を含めて搭乗人数を削減し、各国の滞在期間も短縮した。
一方、ソ連は「サリュート」に続く宇宙ステーション「ミール」による宇宙滞在を実現していたが、1991年末のソ連崩壊による混乱と財政難で、ミールは宇宙空間で劣化した。米国はロシアを取り込む目的もあって、アルファとミールを統合する計画を持ちかけたが、ロシアは新しいモジュール「ザーリャ」(ミール2)他を打ち上げる意欲を示した為、完全な新型宇宙ステーションとしてISS計画が開始した。しかし、ISS計画ではロシアの発言力が非常に大きくなり、常時ロシア人飛行士が滞在することとなった為、日欧加飛行士の滞在期間や搭乗人数は増加しなかった。
1998年にロシアのモジュールが打ち上げられてISSの建設が開始されたが、2003年にスペースシャトル「コロンビア」の空中分解によって建設は実質中断し、その後の調整で建設規模が大幅に縮小し、米露はともかく、日欧加の飛行士がどれだけ滞在できるかは未知数となった。
[編集] 宇宙飛行士の滞在
詳細は「国際宇宙ステーション長期滞在一覧」を参照
ISSに滞在する正式クルーは政府間協定締結国に限られている(滞在権について各国・機関毎に枠がある)が、参加国・機関が別途民間人と商業契約を結び、自国枠を提供しISSに滞在させる宇宙飛行関係者という区分があり、これまでロシアのみが商業契約を結び、民間人を滞在させている。これまでに商業契約を結んでISSに滞在した者は、自費で費用を支弁したデニス・チトー、マーク・シャトルワース、グレッグ・オルセン、アニューシャ・アンサリ、チャールズ・シモニー、リチャード・ギャリオットの6人と、ロシアとの国家間協定に基づき宇宙に行ったマレーシアのシェイク・ムザファ・シュコア、国家が商用旅行の権利を購入したことにより宇宙へ行った韓国のイ・ソヨンの2人、計8名である。
[編集] ISSの建設
ISSの建設は50以上の組立部品及び作業のための打ち上げが要求される。それらの打ち上げの39回はスペースシャトルによる打ち上げである。組立部品及び作業のための打ち上げに加え、おおよそ30回のプログレス補給船による打ち上げが補給のために必要とされる。組立が完了した時点のISS は、体積1,200立方メートル、重量419トン、最大発生電力110キロワット、トラス(横方向)の長さ108.4メートル、進行方向の長さ74メートル、最大滞在人数6名となる予定である。
ステーションはいくつかのモジュール及び要素で構成される。
「国際宇宙ステーション組立順序」も参照
- すでに打ち上げられたもの
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- 「ザーリャ」 (FGB) 基本機能モジュール 米 (製造は露) 1998年11月20日
- 「ユニティ」 (Node 1) 結合モジュール1 米 1998年12月4日
- 「ズヴェズダ」 居住モジュール 露 2000年7月12日
- 「デスティニー」 米国実験棟 米 2001年2月
- 「クエスト」 エアロック 米 2001年7月
- 「ピアース」 ロシアのドッキング室・エアロック 2001年9月
- 「カナダアーム2」 (SSRMS) カナダ 2001年4月
- Z1トラス 米 2000年10月
- P6トラス 米 2000年12月
- S0トラス 米 2002年7月
- S1トラス 米 2002年10月
- P1トラス 米 2002年11月
- P3/P4トラス 米 2006年9月
- P5トラス 米 2006年12月
- S3/S4トラス 米 2007年6月
- S5トラス 米 2007年8月
- S6トラス 米 2009年3月
- 「ハーモニー」 (Node 2) 結合モジュール2 米 (製造は欧) 2007年11月
- 「コロンバス」 欧州実験棟 欧 2008年2月
- 「きぼう」 日本実験棟の船内保管室 日 2008年3月
- 「きぼう」 日本実験棟の船内実験室とロボットアーム 日 2008年5月
- 定期的な補給ミッションで使用
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- 多目的補給モジュール (MPLM) 米 (製造は欧)
- 「レオナルド」、「ラファエロ」、「ドナテロ」の3基がある
- シャトルによって打ち上げを予定
- プロトンロケットによる打ち上げを予定
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- ユニバーサルドッキングモジュール(UDM)(英語) - 露、MLM(FGB2)に転用利用)
- 多目的実験モジュール(MLM)(英語) 露、UDMを利用 (2011年)
- 欧州ロボットアーム(英語) (ERA) 、欧 (2011年)
- キャンセルされたモジュールや構成要素
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- ロシア研究モジュール(RM)(英語) 1基に削減
- ドッキング保管モジュール(DSM×2)(英語) -露、キャンセル
- 科学電力プラットフォーム(SPP)(英語) - 露、キャンセル
- 暫定制御モジュール (ICM)(英語) - 米、キャンセル
- ズヴェズダの打ち上げ成功により不要となった
- 米国推進モジュール(英語) - 米、キャンセル
- 米国居住モジュール(英語) - 米、キャンセル
- セントリフュージ環境モジュール(CAM) - 米、キャンセル
- X-38乗員帰還機 (CRV) - 米、キャンセル
- 現在はソユーズ宇宙船で代替 将来はオリオンに交代する方針
- 他の主要なシステム
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- アメリカ 太陽電池パドル - S4, S6, P4, P6トラスに設置
- カナダ モービルベースシステム (カナダアーム2のベース部)
- ロシア ソユーズ宇宙船 - 乗員交代及び緊急避難用、6か月ごとに交換
- ロシア プログレス補給船 - 無人補給船
- ヨーロッパ (ESA) 欧州補給機 (ATV) - 無人補給船
- 日本 (JAXA) 宇宙ステーション補給機 (H-II Transfer Vehicle:HTV) - 無人補給船
ISSの主要な部品の組立順序については「国際宇宙ステーション組立順序」を参照
[編集] 基本構造
ISSは大きく3つの部分から構成されている。まず、全体を与圧モジュールとトラスに、与圧モジュールはアメリカ側とロシア側に区分することができる。
ISSの中央部には、進行方向に与圧モジュールが直列に連結しており、さらに枝状にもモジュールが取り付けられている。これと直交して、左右方向にトラス構造物が取り付けられている。与圧モジュールとトラスの交点は、それぞれデスティニーとS0トラスで、両者は金具で強固に結合されており、ここ以外に与圧モジュールとトラスの結合部はない。
[編集] 与圧モジュール
滞在する宇宙飛行士の居住と作業の空間で、内部は地球上と同じ1気圧の空気で満たされている。温度、湿度、成分が調節され、乗員は地上と変わらない軽装で活動することができる。生活に必要な生命維持システムや居住のための装置、ISSの目的である様々な実験装置のほか、ISSの運用に必要なシステム機器なども設置されており、多くの機器はモジュール内でメンテナンスや交換が可能である。
基本的な機能を有するモジュールは、列車のように1列に連結されている。先頭からハーモニー、デスティニー、ユニティ、ザーリャ、ズヴェズダの順である。これらのモジュールのうち、ズヴェズダ以外はアメリカの資金で製造され、アメリカが所有権を有しているが、ザーリャはロシアに開発、製造、運用を委託している。ズヴェズダはロシアのモジュールである。一般に、ユニティより前側を「アメリカ側」、後側を「ロシア側」と呼ぶ。
アメリカ側モジュールとロシア側モジュールは、設計が全く異なっている。ユニティとザーリャは直接結合することができないため、与圧結合アダプタ(PMA)を介して接続されている。電力や通信も、PMAを通じて接続されている。
[編集] アメリカ側モジュール
ユニティより前方のモジュールは、フリーダム計画から流用されたもので、NASAの標準設計や安全基準を適用しているため、一般に「アメリカ側」と呼ばれる。日欧の実験モジュールも、アメリカ側に含まれる。これらのモジュールはいずれも直径4.4メートルの円筒形だが、これはスペースシャトルのペイロードベイの寸法に合わせたためである。内部は、国際標準実験ラック(ISPR)を4面に取り付ける設計で標準化されており、日米欧のモジュール間でラックを移設できる互換性を備えている。
モジュール同士の結合には共通結合機構(CBM)を用いているため、本来とは異なる場所にモジュールを仮設したり、移設することもできる。また、HTVやドラゴン宇宙船もCBMを使用してドッキングする。CBMは大型で高機能のドッキング装置だが、自動ドッキングには対応しておらず、ロボットアームを使用して丁寧に接触させたあと、電動の結合装置でしっかりと結合する構造である。
なお、アメリカ側でもスペースシャトルのドッキングだけは、ロシア側と同じアンドロジナスを使用しているため、ユニティとハーモニーにスペースシャトル用のPMAが設置されており、通常はハーモニーのPMAを使用する。このPMAにはISSからスペースシャトルに電力を供給する配線が施されており、スペースシャトルの電源を節約することができる。[5]
アメリカ側モジュールは、個々の機能を備えたユニットとして設計されており、単体では機能しない。スペースシャトルで輸送されてISSのシステムに組み入れられて初めて、稼働することができる。
[編集] ロシア側モジュール
ザーリャより後方のモジュールは、ミール2計画から流用されたもので、ロシアの標準設計や安全基準を適用しているため、一般に「ロシア側」と呼ばれる。アメリカが所有するザーリャやズヴェズダのほか、ロシアが独自資金で設置するモジュールも、当然ロシア側である。一部のESAのシステムも、ロシア側に設置される。日本はロシア側モジュールも実験に利用しているが、基本的にはアメリカ側に含まれるきぼうを使用する。
ロシア側の特徴は、主要なモジュールが単独で宇宙船としての機能を備えていることである。それぞれのモジュールにエンジンや自動操縦装置、通信システム、太陽電池パネルを備えており、単独で飛行して、自力でドッキングすることができる。これは、ロシアの宇宙ステーションの伝統的な手法である。このため、相当の規模まで組み立てなければ「自立」できないアメリカ側に先立って、まずロシア側を打ち上げて単独の宇宙ステーション(事実上はミール2そのもの)を稼働させ、そこにアメリカ側を増設する手法をとることで、ISS初期の費用削減に貢献した。
ザーリャとズヴェズダは段階的にアメリカ側モジュールのものに機能を譲り、荷物置き場になりつつある。しかし、ISSの軌道高度や姿勢を維持する役割は、現在もズヴェズダが担っている。
ロシア側モジュールのドッキングには、アンドロジナスと呼ばれる共通のドッキング装置を使用する。アンドロジナスはCBMより小型だが、鉄道車両のように「衝突」させるだけでドッキング可能であり、自動ドッキングするロシア側モジュールには欠かせない装置である。また、緊急時の退避に使用されるソユーズ宇宙船や、ロシアのプログレス補給船、ESAのATVも、アンドロジナスを使用してロシア側にドッキングする。
ロシア側にも、単独の太陽電池パネル(科学電力プラットフォーム)を増設する計画があったが、費用削減のため中止になった。不足する電力は、アメリカ側の太陽電池から供給される予定である。
[編集] トラス
詳細は「トラス (ISS)」を参照
フリーダム計画では船外作業の基盤として大規模なものが計画されていたが、縮小を重ねた結果、ISSのインフラ機能を担う船外機器の設置場所として使用されている。主要な機能は、太陽電池パドルをはじめとする電源機器、ラジエーターなど廃熱システム、姿勢制御のためのコントロールモーメントジャイロ、アンテナなどの通信機器である。フリーダム計画では軌道維持のためのエンジンも設置する予定だったが、この機能はロシア側に移されたため、エンジンを備える予定だったトラスは欠番(S2、P2)になった。
トラスはISSのなかでも大きな寸法を占めるため、初期には折り畳んだ状態で打ち上げて、軌道上で展開することが検討されていた。しかし、展開したトラスに各種機器を取り付ける手間を考えれば、地上で機器や配管、配線を完成させた状態のトラスを打ち上げた方が効率がよいことがわかり、そのような設計に落ち着いた。
なお、長大なトラス上で作業をする際、宇宙飛行士やカナダアーム2が移動する拠点として、トラス上にはモバイルベースシステム(MBS)と呼ばれる車両とそのレールが設置されている。これは、人類史上最初の「宇宙鉄道」である。
トラス上には、船外機器の予備品や、故障して取り外された機器の設置スペースもあり、これを船外実験に利用することもできる。しかし、電力や熱などを供給することはできないため、材料の劣化テストなど、簡素な実験にしか使われない。本格的な船外実験装置や宇宙観測装置を設置できるのは、日本のきぼう船外実験部だけである。また、ヨーロッパのコロンバスにも、小型の実験装置を設置する機能が追加されたが、きぼうよりは簡易である。
[編集] 主要なシステム
[編集] 電力供給
ISSの電力源は、太陽光を電気に変換する太陽電池である。組立フライト4A(2000年11月30日のSTS-97)以前は、ザーリャとズヴェズダに装備されたロシアの太陽電池が唯一の電源だった。ISSのロシアの部分は、28ボルトの直流電力を使用する(シャトルと同じ)。ISSの他の部分には、トラスに設置された太陽電池から、130~180ボルトの直流電力が供給される。電力は直流160ボルトに安定化されて分配され、さらにユーザーが必要とする124ボルトの直流に変換される。電力はコンバータによってISSの2つのセグメントに分配される。ロシアの科学電力プラットフォームがキャンセルされ、ロシア区画もアメリカが設置した太陽電池の電力供給に依存することになったため、この電力分配機構は重要である。
ISSのアメリカ区画では、高圧(130~160ボルト)配電線を使うことで、電線をより小さくし、軽量化することができた。
太陽電池パドルは、太陽エネルギーを最大にするために、常に太陽を追尾する。パドルは、面積375平方メートル、長さ58メートル。完全に完成した構成では、太陽電池パドルはアルファジンバルを回転させることによって、各々の軌道で太陽を追跡する。ベータジンバルは軌道面と太陽の角度に合わせて調整される。
しかし、主要なトラス構造が打ち上げられるまで、パドルは最終的な設置場所とは垂直な位置に仮設置された。この構成では、右の写真で示すように、太陽追尾には主としてベータジンバルが使われた。「夜のグライダー」モードと呼ばれる別のわずかに異なる追跡方法では、わずかに太陽電池パドルを進行方向に向けて調整することで、空気抵抗を減らすことができる。
[編集] 生命維持
ISSの環境制御・生命維持システム(ECLSS)は、気圧、酸素濃度、水、火災消火、その他の要素を提供もしくは制御する。エレクトロンシステムは、酸素を発生してISSに供給する。最も優先される生命維持システムはISSの空気制御だが、さらに乗員が発生したり使用したりした排水や水分の収集、処理、保存もする。たとえば、システムはシンク、シャワー、尿や結露から水をリサイクルする。人体が出す副産物を空気中から除去するには、主に活性炭フィルタを用いる。
[編集] 姿勢制御
ISSの姿勢(方向)は、2つのメカニズムで維持される。通常、システムはコントロール・モーメント・ジャイロ(CMG)を使ってISSを正しい方向、すなわちデスティニーをユニティの前方に、Pトラスを左舷側に、ピアースを地球側(底側)に向ける。CMGシステムが飽和すると、ISSの姿勢をコントロールすることができなくなってしまう。この場合、ロシアの姿勢制御システムが自動的に引き継ぐように設計されている。ロシアのシステムはロケットエンジンを使って、ISSの姿勢を維持しつつCMGシステムが不飽和化できるようにする。これは、第10次長期滞在の間に実際に起こった。 スペースシャトルオービタがISSにドッキングしている時は、オービタを姿勢制御に用いることもできる。 STS-117ではS3/S4トラスが設置されていたので、この手順が使われた。
[編集] 高度制御
ISSは最低高度278 km、最高高度460 kmの範囲の軌道に維持される。通常の最大の制限は、ソユーズ宇宙船のランデブーが可能な425 kmである。ISSの高度は大気の抵抗と重力傾斜効果によって絶えず低下しているので、毎年数回、より高い高度にブーストする必要がある。高度のグラフは、毎月約2.5 kmずつ徐々に低下することを示している。ブーストはズヴェズダの2基のブースター、ドッキング中のスペースシャトル、プログレス補給船、あるいはESAのATVで実行することができる。およそ2周回(3時間)に渡ってエンジンを作動させ、数km高い高度に押し上げる。スペースシャトルが大きなペイロードを楽にISSへ運べるように、高度は比較的低く抑えられている。
[編集] 輸送機
[編集] 概要
ISSの組み立てにはスペースシャトルが大きな役割を担っていたが、2003年2月1日、別ミッションで飛行中のスペースシャトル「コロンビア」が大気圏再突入後に空中分解で失われる事故が発生した。スペースシャトルの打ち上げはその後、運行の安全が確認されるまで無期限に停止されたため、ISSの組み立て作業は、2002年11月に行われた「STS-113/国際宇宙ステーション(ISS)組立ミッション11A」を最後に、2005年7月まで停止していた。また、事故前は宇宙飛行士が常時3人まで常駐する体制になっていたが、事故後は2人に減らされている。現在、スペースシャトルのほかにも宇宙飛行士の交代には、ロシアのソユーズ宇宙船が、荷物の輸送は無人のプログレス補給船が使用されている。
2005年7月26日午後11時39分(日本時間)に、事故後初となるディスカバリー(STS-114)の打ち上げが行われ、ISS組立再開ミッション/LF-1が行われた。このミッションには、日本から野口聡一飛行士が参加した。
[編集] 2010年まで
NASAの宇宙ステーション建設構想は、当初から全面的にスペースシャトルの利用を想定していた。このため、モジュールや機材の多くは、スペースシャトルでの輸送を前提として設計されている。しかし予算上の理由からロシアが参加することになり、とくに人員輸送は緊急脱出用を兼ねてソユーズ宇宙船を利用することになった。また日欧が独自の輸送手段を開発し、さらにコロンビア号事故以後はスペースシャトルの輸送力が低下したこともあって、スペースシャトル以外にも様々な輸送機が使われるようになった。2008年現在、貨物輸送用にはロシアのプログレス補給船、ESAのATVが使用されており、2009年にはJAXAのHTVが加わる予定である。
しかし、ロシア以外の建設資材は、大半がスペースシャトルでの打ち上げを前提に設計されており、他の手段での代替は困難である。NASAは2010年一杯でスペースシャトルを退役させることを決定しているため、スペースシャトルの運航が遅れれば全ての資材を打ち上げることなく建設を打ち切る可能性もあると懸念されている。2011年以後は施設や人員を後継のアレスIやオリオン宇宙船に振り向けることが決まっているため、スペースシャトルの運航を延長することも困難である。
ロシアの建設資材は、大半がロシア独自で打ち上げられる。ロシアは与圧モジュールを独立の宇宙船として設計しており、プロトンロケットで打ち上げられるとモジュール自体の機能でISSに自動ドッキングする。一部の小型モジュール(ピアースなど)は、プログレス補給船のペイロードとして輸送される。
[編集] 2011年以降
2010年にスペースシャトルが退役した後は、現在使用中の輸送機に加え、開発中のいくつかの輸送機が使用される。
スペースシャトル退役後に最も不足するのは、機材を地球へ持ち帰る能力である。現状ではスペースシャトル以外で唯一の手段であるソユーズは、わずか60kgの手荷物しか搭載できない。ESAやJAXAは、物資回収用カプセルの開発を検討している。
スペースシャトルの後継宇宙船であるオリオンは2014年に実用化の予定であり、アメリカにとっては有人宇宙船の4年という空白期間を生じることになる。これを埋めるためにCOTS(民間開発の宇宙船)を募集し資金を提供したが、実用化時期は不透明で、スペースシャトル退役までに就役する可能性は低い。またロシア、ESA、JAXAも新型有人宇宙船の開発を検討しているが、開発中のオリオンより早く完成するとは考えにくい。この結果、ISSの乗員交替や緊急脱出に用いる宇宙船は、一時的にソユーズのみに頼る公算が大きい。
貨物輸送も、一時的にNASA独自の輸送手段は中断するため、日欧露の輸送機を購入することが検討されている。なかでも国際標準実験ラック(ISPR)や、バッテリーなどの軌道上交換ユニット(ORU)を輸送できる唯一の輸送機であるHTVが有望視されているとの報道があった。NASAがHTVを購入することについてはNASA、JAXAとも否定しているが、上記物資をNASAが輸送しようとする場合は何らかの形でHTVを利用する以外に選択肢がないことも事実である。
[編集] 運用中
[編集] スペースシャトル
詳細は「スペースシャトル」を参照
NASAが運用中。ISS建設資材の大半を輸送するほか、7名の人員とロボットアームを搭載でき、特に建設初期段階では作業基地の役割も果たした。2010年に予定されている運行終了まで、建設資材と補給物資の輸送に使用される。人員交代にも使われるが、ソユーズ宇宙船を6箇月ごとに交換する際に人員交代も行えるため、補助的な役割にとどまっている。
日米欧の実験モジュールなど、ロシア以外の与圧モジュールはスペースシャトルで輸送される。このため、これらのモジュールは全てスペースシャトルのペイロードベイに合わせた寸法、形状、重量になっている。ただし、スペースシャトルの度重なる改良(主に安全性向上)により搭載可能な重量は計画当初より減少しているため、一部の大型モジュール(デスティニー、きぼう船内実験室)は船内機器の一部を別便で輸送せざるを得なくなった。
補給には、大きく分けて4つの方法を用いる。ひとつは、スペースシャトルの船内に補給品を搭載し、ドッキング装置を通して運搬する方法である。ドッキング装置の通路は直径60センチメートル程度と狭く、船内スペースを使用するため輸送力は小さいが、補助的に毎回使われている方法である。
2つめは、ペイロードベイにスペースハブ輸送モジュールを搭載する方法である。船内より多くの補給品を搭載できるが、やはり大きな物資は輸送できない。次のMLPMが導入されると使われなくなった。
3つめは、ペイロードベイに多目的補給モジュール(MLPM)を搭載する方法である。MLPMはペイロードベイから取り出され、ユニティまたはハーモニーに直接結合される。サイズが大きい共通結合機構(CBM)を使うため、ISPRなど大型の機材を輸送できるほか、小型物資も広い通路を利用して効率よく搬入できる。作業終了後のMLPMはペイロードベイに戻されて持ち帰られる。(詳しくはMLPMを参照)
4つめは、ペイロードベイ内に露出した形で輸送する方法である。ISSの外部に設置するバッテリーやタンクなどの部品を交換する際には、アダプターを使用して搭載する。
[編集] ソユーズ宇宙船
詳細は「ソユーズ」を参照
ロシアが運用中の3人乗り有人宇宙船である。ISSに非常事態が起きた際の脱出用救命ボートの役割を果たしている。この用途に対しては、アメリカが乗員帰還機(X-38 CRV)を開発して置き換える計画だったが、こちらは中止された。2008年現在、ISS長期滞在は3名なので、ソユーズが常時1機備え付けられているが、将来6名に拡張されるとソユーズも2機常備されることになる。緊急時に利用しやすいよう、ISSの中央に近いザーリャ前方の地球側にドッキングするが、2機に増えた場合はさらにズヴェズダ前方も利用する。ズヴェズダの後方はISSの末端にあたるので、通常は利用しない。
ソユーズの軌道上での寿命は6ヵ月なので、6ヵ月ごとに新しいソユーズを打ち上げて交換する。この際、滞在3名中2名がソユーズとともに交代するが、ソユーズは3人乗りなので、1人分の空席はISSへの短期訪問(新しいソユーズでISSへ向かい、古いソユーズで帰還する)に利用される。このような便乗者をタクシークルーと呼び、ロシアが利用権を販売している。私的宇宙旅行でのISS訪問や、マレーシアや韓国によるISS訪問はこの枠を利用したものである。ただし、滞在人数が6名に増加すると交代者も増加するため、タクシークルーの搭乗機会がなくなる可能性もある。
[編集] プログレス補給船
ロシアが運用中の無人貨物船。与圧貨物として食料、衣類、実験機材、補修用部品などを輸送するほか、高圧酸素や水、液体推進剤をISSに補給するタンクとパイプも装備している。通常、プログレスはズヴェズダの後方にドッキングする。ここはISSの後方端にあたるので、プログレスは自身のエンジンを使用してISSを推進(リブースト)し、高度を上げることができる。スペースシャトルが事故の影響で運用不能に陥っていた際には、強力なピンチヒッター役を務め、ISSを維持した。スペースシャトル復帰後も物資輸送に活躍しているが、今後は後述のATVと役割を分担することになる。
[編集] 欧州補給機 (ATV)
詳細は「欧州補給機」を参照
ESAが2008年に運用を開始した、最新の無人貨物船。機能や利用方法はプログレスとほぼ同じで、ロシア側のドッキング装置を使用し、補給用のタンクやパイプも装備している。大型のアリアンVロケットで打ち上げられるためプログレスよりもかなり大型で、リブースト用推進剤を含む輸送力はプログレスの約3倍である。ただし、ドッキング装置もプログレスと同じなので大型物資の輸送はできない。
[編集] 開発中
[編集] 宇宙ステーション補給機 (HTV)
詳細は「宇宙ステーション補給機」を参照
JAXAが2009年の運用開始に向けて開発中の無人貨物船。プログレスやATVと異なり、ISSの先頭にあたるハーモニーにドッキングするため、リブーストに用いることはできない。しかし、MLPMと同様にCBMでドッキングするため、ISPRを丸ごと搭載するなど、大型の貨物を輸送することができる。またISSの船外に装着されるバッテリーなども輸送することができる。スペースシャトル退役後、これらの物資を輸送可能な輸送機はHTVのみとなる。
[編集] オリオン宇宙船
詳細は「オリオン (宇宙船)」を参照
NASAが2014年運用開始を目標に開発中の有人宇宙船。6名が搭乗可能で、ソユーズを置き換えて緊急帰還船としても使われる模様である。また、詳細は発表されていないが無人貨物船型の開発も予定されており、有人型と同様の回収カプセルを備えた型と、HTVのような非回収カプセルを備えた型のイラストが公表されている。まずISSに対応した型(ブロック1)が開発され、続いて月飛行に使用可能なブロック2、火星や小惑星への飛行に使用可能なブロック3を開発する予定である。
[編集] PPTS
ロシアが2018年の有人飛行を目標に開発中のソユーズ代替有人宇宙船。ISSへ6人輸送することが可能である他、無人輸送機としての運用も考慮されており、2tの貨物をISSへ輸送し500kgの貨物を地上に持ち帰ることが可能となる予定である。RKKエネルギアが開発を担当する。
[編集] 検討中
[編集] ATV発展型
詳細は「欧州補給機#提案された有人型」を参照
ESAが開発を検討中の宇宙船で、まず貨物回収カプセルを搭載した無人型を、続いて有人カプセルと脱出装置を備えた有人型を開発する。打ち上げにはアリアン5を用いる。ACTS/PPTSとは異なりヨーロッパ独自の計画だが、ESAはACTS/PPTSと比較検討している。
[編集] HTV発展型
詳細は「宇宙ステーション補給機#発展型の展望」を参照
JAXAが開発を検討中の宇宙船で、当面は貨物回収カプセルを搭載した無人回収機の開発を見込んでいる。打ち上げにはH-IIBを用いる。有人型についても検討は開始しているが、開発可否の判断は2015年頃に行うとされている。
[編集] アレスV
詳細は「アレスV」を参照
月往復用の大型貨物ロケットであるアレスVを、ISSに利用する案もある。アレスVは地球低軌道に130tもの貨物を輸送可能であり、アルタイル着陸船を改造した軌道変更ユニットを取り付けることで大型のモジュールをISSに届けることが可能になる。しかし、NASAは軸足をISSから月面開発に移しつつあり、この案が活用される機会が到来するかは不明である。
[編集] 計画中止
[編集] X-38 CRV
詳細は「X-38 (航空機)」を参照
乗員帰還機(CRV)としてNASAが開発を進めていた宇宙船である。X-24実験機に似たリフティングボディ形状の機体であり、6名が搭乗することができる予定だった。大気圏内での滑空実験などが行われたが、コロンビア号事故後の計画見直しで2002年に開発がキャンセルされた。
[編集] クリーペル
詳細は「クリーペル」を参照
ロシアが開発を検討中の有人宇宙船で、ソユーズを代替する。釣り鐘型のカプセルだが、小さな翼を取り付けた案もある。エンジン部分は宇宙にとどまって繰り返し使われる。打ち上げにはソユーズ3ロケットを使用する。ESAやJAXAに共同開発を打診したが、2007年末にESAとの間でCSTS計画を立ち上げており、これに伴い計画は中止された。
[編集] ACTS/CSTS
ESAとロシアが開発を検討していた有人宇宙船で、ソユーズを代替する予定であった。有人カプセルと脱出装置、打ち上げロケットはロシアが、推進部はESAが開発し、2014年実用化を目標としていた。ESAでは、次のATV発展型とどちらが採用されるかは最終決定されず、JAXAにも共同開発を打診したが、共同開発には至らなかった。この計画は中止され、2009年初めにロシアは独自の有人宇宙船PPTSを開発することを決定した。
[編集] COTS
詳細は「商業軌道輸送サービス」を参照
NASAは2010年のスペースシャトル退役後、後継のオリオン宇宙船が就役するまでの間に人員や貨物を輸送できる輸送機を民間に求め、補助金を用意した。その結果、スペースX社のドラゴン宇宙船と、ロケットプレーン・キスラー社のK-1宇宙船が採用され、2009年の就役を目指して開発が開始された。しかし、K-1は完成の目処が立たず契約をキャンセルされたため、残る補助金はオービタルサイエンシズ社のシグナス宇宙船に与えられることになった。
2009年5月現在、ドラゴンは2009年中、シグナスは2010年末の初飛行を目指して開発が進められている。
[編集] 備考
- 2007年1月に中国は、老朽化した人工衛星を衛星攻撃兵器で破壊する実験を行い、その結果追跡可能なものだけでも900個以上のスペースデブリが発生した。このデブリは国際宇宙ステーションに衝突する可能性もある。
- トラスの名称「S1」のSや「P1」のPは、それぞれ船の「右舷」(Starboard Side)、「左舷」(Port Side)からきている。また、「Z1トラス」のZは「天頂」(Zenith)からきている。
[編集] 関連項目
[編集] 注釈
- ^ 民生用国際宇宙基地のための協力に関するカナダ政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府、ロシア連邦政府及びアメリカ合衆国政府の間の協定
- ^ 宇宙ステーションQ&A Q01 「ISS計画は何カ国が参加しているのですか」 (JAXA)
- ^ 中国、国際宇宙ステーションへの参加を公式に打診 (テクノバーン 2007年10月17日)
- ^ India seeking Russian help to join ISS project (英文、The Hindu News Update Service, September 21, 2007)
- ^ スペースシャトルの電源には燃料電池を使用しているため、ISSから電力供給を受ければ燃料を節約できる。これにより係留期間を延長して、シャトル搭乗員による作業を増やすことができるようになった。
[編集] 外部リンク
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
- 国際宇宙ステーションと日本の実験モジュール 開発計画の経緯、進行状況など各種の情報が提供されている。
- 国際宇宙ステーション計画に関する宇宙機関長会議の結果について(平成18年3月8日) 計画見直しについてPDFで紹介。
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