コレステロール

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コレステロール
構造式
IUPAC名 コレスタ-5-エン-3β-オール(慣用名)
10,13-ジメチル-17-(6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロヘプタ[a]フェナントレン-3-オール(系統名)
別名 (3β)-コレスタ-5-エン-3-オール(CAS名)
分子式 C27H46O
分子量 386.65 g/mol
CAS登録番号 [57-88-5]
形状 白色または微黄色固体
融点 147 °C
沸点 360 °C
比旋光度 [α]D −31.5(c = 2、エーテル、20 ℃)[1]
SMILES C[C@H]3C4[C@](CC[C@@H] 4[C@H](C)CCCC(C)C)([H]) [C@]2([H])CC=C1C[C@@H] (O)CC[C@]1(C)[C@@]2([H]) C3
出典 NIST
コレステロールの分子模型

コレステロール (cholesterol) またはコレステリン (cholesterin) はステロイドに分類され、その中でもステロールとよばれるサブグループに属する有機化合物の一種である。

目次

[編集] 概要

分子式は C27H46O と表される。室温で単離された場合は白色ないしは微黄色の固体である。生体内ではスクアレンからラノステロールを経て生合成される。

名称は1784年に研究者が胆石からコレステロールの固体を初めて同定した際、ギリシア語chole- (胆汁)と stereos (固体)から名付けられた。加えて化学構造がアルコール体であるため、化学命名接尾辞 "-ol" が付けられる。

いわゆる「善玉/悪玉コレステロール」と呼ばれる物は、コレステロールが血管中を輸送される際のコレステロールとリポ蛋白がつくる複合体を示し、コレステロール分子自体をさすものではない。善玉と悪玉の違いは複合体をつくるリポ蛋白の違いであり、これにより血管内での振る舞いが変わることに由来する。これらのコレステロールを原料とする複合体分子が血液の状態を計る血液検査の指標となっている。

コレステロール分子自体は、動物細胞にとっては生体膜の構成物質であったり、さまざまな生命現象に関わる重要な化合物である。よって生体において、広く分布しており、主要な生体分子といえる。

また、液晶の原材料など工業原料としても利用される。

[編集] 動植物への分布

ヒトのあらゆる組織細胞膜に見出される脂質である。ヒトを始めとした哺乳類においては、コレステロールの大部分は食事に由来するのではなく、体内で合成され、血漿に含まれるリポ蛋白と呼ばれる粒子を媒体として輸送される。コレステロールはそれを生産する臓器や細胞膜や小胞体のような膜組織が密集している細胞で構成される臓器、たとえば肝臓脊髄に高濃度に分布し、動脈硬化叢に形成されるアテローム(血管の内側に詰まるカスのようなもの)にも高濃度で存在する。また、コレステロールが胆汁中で結晶化すると胆石の原因となる。植物の細胞膜においてはわずかな量のコレステロールが認められるに過ぎず、他の種類のステロイドフィトステロールもしくは植物ステロールと呼ばれる)が同様の役目を担う。

ヒト組織 コレステロールの重量比[2] 胆石(コレステロール結石)
胆石(コレステロール結石)
胆石(コレステロール結石) 98%–99%
上皮脂肪 13%–24%
毛髪 1%–5%
2.7%
神経 1.5%
血液 0.015%–0.025%

[編集] 資源

コレステロールは工業製品原料として化粧品医薬品液晶などに利用される。これらは全て天然物から精製し原料に供される。コレステロールを多く含む高等動物の組織、あるいはイカ内臓からも抽出され、工業原料として利用される。

[編集] 精製

コレステロールを多く含む天然物から抽出すると、ヒドロキシ基(OH基)の部分に脂肪酸が結合したエステル体であるアシルコレステロール、さらに他のステロイド(コレスタノール7-デヒドロコレステロール)のアシル体などが含まれる粗精製物が得られる。この混合物から純粋なコレステロールを取り出すには、脂肪酸を鹸化して取り除いたあと、鹸化されない分画を抽出し、アセトンあるいはアルコールを用いて再結晶する。二重結合を持たないコレスタノールや7-デヒドロコレステロールなどを取り除くために、臭素付加してコレステロールの二臭素体とすることがある。二臭素体は難溶性を示すので再結晶などで容易に精製することが可能であり、そのあと二臭化物を脱臭素化してコレステロールに戻すことにより、純粋なコレステロールを得る[3]

[編集] 食物由来コレステロール

卵黄には多量のコレステロールが含まれる

食物由来コレステロールのほとんどは動物性食品に由来する。たとえば、卵黄(約1400 mg/100g)、するめ(乾物; 約980 mg/100g)、エビ類(約 170mg/100g)[4]植物性食品(亜麻仁種子やピーナッツ)では、コレステロール類似化合物のフィトステロールが含まれ、血漿中のコレステロール量を下げるとされている[5]

食品中に含まれるコレステロールおよび各種脂肪酸の量
(食品 100 g あたり)[4]
食品名 エネルギー
(kcal)
コレステロール
(mg)
飽和
脂肪酸 (g)
一価
不飽和
脂肪酸 (g)
多価
不飽和
脂肪酸 (g)
卵黄 387 1400 9.22 11.99 5.39
するめ(乾物) 334 980 0.6 0.12 0.89
たたみいわし 372 710 1.53 1.41 1.35
ピータン 214 680 3.06 8.19 1.64
あんこうきも 445 560 8.3 18.44 8.38
すじこ 282 510 2.7 4.02 6.18
うずら卵 182 490 4.24 5.36 1.79
鶏全卵 151 420 2.64 3.72 1.44
豚レバー 128 250 0.78 0.24 0.75
バター 745 210 51.44 20.9 2.43
えび 83 170 0.06 0.04 0.08
マヨネーズ 卵黄型 670 150 6.85 36.5 22.99
鶏肉(皮を含む) 200 98 3.9 5.83 1.97
豚肉 225 71 5.06 6.42 1.41
牛肉 182 67 3.34 3.87 0.41

[編集] 化学

[編集] 物性

単離された純粋なコレステロールは白色ないしは微黄色の固体で味は無い。クロロホルムジエチルエーテルに溶けやすく、1,4-ジオキサンにやや溶けやすく、エタノール (99.5%)、石油エーテル、冷アセトンにやや溶けにくく、水にほとんど溶けない。含水エタノールからは一水和物が板状晶として析出する。比旋光度\left[\alpha\right]^{20}_{D} = −31.5 °(c = 2、エーテル、20 ℃)[1]。遮光された気密容器中に保存する[6][3]

[編集] 定性試験

分析化学において、コレステロールを同定する定性反応が幾つか知られている。これらのうち幾つかはコレステロールと同じ部分構造のステロイドに対しても反応する。日本薬局方ではサルコフスキー反応とリーバーマン‐ブルヒアルト反応とでコレステロールを同定するよう指示している。

サルコフスキー反応 (Salkowski reaction)
クロロホルム溶液 (0.01g/1mL) に濃硫酸 (1mL) を加えて室温で振り混ぜると、クロロホルム層は赤色を呈し、硫酸層は緑色の蛍光を発する[6][7]
リーバーマン・ブルヒアルト反応 (Liebermann-Burchard reaction)
クロロホルム溶液 (5mg/2mL) に無水酢酸 (1mL)、硫酸1滴を室温で振り混ぜると、クロロホルム層は赤色を呈し、黄色を経て緑色に変わる[6][8]
チュガーエフ反応 (Chugaev reaction)
氷酢酸溶液に塩化亜鉛塩化アセチルを加えて煮沸する。液は紅色を呈し紫色に変じる[8]
トーテリィ・ヤッヘ反応 (Tortelli-Jaffe reaction)
酢酸溶液に臭素のクロロホルム溶液を重層すると8位に二重結合を持つステロールは境界面に緑色のリングを形成する[2]
ジギトニン沈殿反応
ジギトニン (Digitonin) のアルコール溶液を加えると、3-β-ヒドロキシステロールは沈殿を生じる[2]

[編集] コレステリック液晶

コレステロール脂質を含むいくつかのコレステロール誘導体はある種の液晶として知られており、 この分子はコレステリック液晶と呼ばれる配向状態をとる。 コレステリック液晶はネマティック液晶の一種であり、ネマティック液晶のダイレクタ(分子集合体の向き)が空間的に歳差運動のようにねじれながら回転していき、らせん状に配向する性質を持つ。これはコレステリック液晶分子がキラリティを有することに起因している(下図参照)。コレステリック液晶はキラルネマティック相とも呼ばれる。 コレステリック相のらせんピッチは可視光線の波長と同程度であることが多く、このとき選択反射という現象が観察されて色が見える。刺身から緑色の反射光が見えることがあるのはこのためである。 らせんピッチは微小な温度変化に応答するため、温度によって色彩が変化する。それ故、コレステロール誘導体は液晶温度計や温度応答性インキとして利用される。 カナブン玉虫のようなメタリックな色彩を示す甲虫の一部の構造色はこれによると考えられている。

コレステリック液晶は表示の書き換え時にのみ電圧印加が必要となるだけで、透過状態でも反射状態でも電気を消費しない。低い電圧で横向きらせん姿勢をとるため透過状態となり、通常は背面の黒を表示する。より高い電圧を加えれば縦向きらせん姿勢をとるため反射状態となる。

コレステリック液晶は色彩を反射するのでバックライトは必要とされないが、単色では1層の表示構造で済むが、擬似フルカラーでは少なくともRGBのような3層分を積層する必要があり、透過時の光損失によって表示が暗くなるという短所がある。2005年には日本の家電メーカーがコレステリック液晶の試作品を製作した[9]

[編集] 生化学

コレステロールは生体内の代謝過程において主要な役割を果たしている。まず多くの動物でステロイド合成の出発物質となっている。また動物細胞においては、脂質二重層構造を持つ生体膜細胞膜)の重要な構成物質である。人間では肝臓および皮膚で生合成される。肝臓で合成されたコレステロールは脂肪酸エステル体に変換され血液中のリポ蛋白により全身に輸送される。

しかしコレステロールが生命維持に必須な役割を果たす物質であるという事実は科学者以外にはあまり知られておらず、むしろ一般社会には健康を蝕む物質として認知されていることが多い。即ち色々なリポ蛋白コレステロール複合体の血液中でのあり方が、高コレステロール血症など循環器疾患の一因になるとの認識が強い。たとえば医者が患者に対してコレステロールの健康上の懸念がある場合には悪玉コレステロール(LDLコレステロール:low density lipoprotein cholesterolいわゆるbad cholesterol)の危険性を訴える。一方悪玉コレステロールの対極には善玉コレステロール (HDLコレステロール:high density lipoprotein cholesterolいわゆるgood cholesterol)が存在する。この両者の違いはコレステロールを体内輸送する際にコレステロールと複合体を作るリポ蛋白の種類によるものであり、コレステロール分子自体の違いではない。詳細は体内輸送の項を参照のこと。

[編集] 構造と生合成

HMG-CoAリダクターゼ経路(メバロン酸経路)。画像クリックで拡大と解説
ステロイド骨格形成反応。画像クリックで拡大と解説

コレステロールの存在自体は18世紀後半には知られていたが、20世紀に入るまでその構造は長い間不明であった(詳細は年表を参照)。1927年にコレステロールのステロイド骨格が4つの環構造6, 6, 6, 5員環がつながっているものであると決定したのはオットー・ディールスである。彼はセレンを使った脱水素反応を利用した炭化水素の構造に関する系統的な研究を行っている。すなわち構造が未知の炭化水素を脱水素して二重結合を生成したり骨格を切断したりして既知の炭化水素に導き、元の炭化水素の構造を推定して行くのである。ステロイド骨格もその一環でディールスの炭化水素と呼ばれる化学式C16H18の炭化水素から現在の立体配置を除くステロイド骨格の構造を決定した。この方法では構造変換の過程で立体構造に関する手がかりが失われるため、コレステロールの立体構造は解明されないままであった。

1930年代はステロイドホルモンの単離と構造決定が相次いで研究された。この段階ではディールスの研究では立体構造が不明なため、これらのステロイドホルモンの構造はコレステロールを化学的に構造変換してステロイドホルモンへ変換しそれによって立体構造を決定している。

立体構造を最終的に決定したのはE・J・コーリーである。彼の天然物合成の研究方法に基づき、ほとんど立体構造がわからない状態から天然物の生成経路ならびに中間体立体配座反応機構からステロイド骨格の生成反応が立体特異的に進行することを見出した[10][11][12]

コーリーの見つけ出したステロイド骨格(ラノステロール)の構築反応は、生体内で生じる生化学反応のなかでも非常にエレガントなもののひとつである。メバロン酸経路やゲラニルリン酸経路を経て生合成されるスクアレンの2,3-位が酵素的にエポキシ化されると、逐次閉環反応が進行するのではなく、一気にラノステロールが生成する。酵素によりエポキシ酸素がプロトネーションされるのをきっかけに、4つの二重結合のπ電子ドミノ倒しのように倒れこんでσ結合となりステロイドのA, B, C, D環が一度に形成される。それだけでなく、ステロイドの20位炭素上に発生したカルボカチオンを埋めるように、2つの水素(ヒドリド)とメチル基がそれぞれステロイド環平面を横切ることなく1つずつ隣りの炭素に転位することで、熱力学的安定配座となりラノステロールが生成する。

他の生物種では同じスクアレンエポキシダーゼによりスクアレン 2,3-エポキシドからテルペノイドであるβ-アミリンを生成する生合成経路も知られているので、このステロイド構築反応はスクアレンエポキシダーゼ固有の反応というわけではない。

ラノステロールから更に先はリダクターゼとP450酵素によるメチル基の酸化が繰り返されて適用される。その結果、3つのメチル基が二酸化炭素として切断される酸化的脱メチル化によって(ラノステロールから17段階で)コレステロールが生成する[3][13]

[編集] 生体膜とコレステロール

生体膜模式図
リン脂質の二重膜構造(橙のリン酸部分+水色の脂肪鎖)にタンパク質(緑褐色 (4))やコレステロール(黄色 (7))が埋め込まれている
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リン脂質から人工的に製造した脂質2分子膜電気容量屈折率との界面張力が実際の生体膜とよく類似するが、生体膜と異なり相転移温度 Tc を持つ。すなわち Tc 以上では流動性を示すが、Tc 以下では硬くなり流動性を失う。

これに30–50mol%のコレステロールを加えると流動性はさらに増し、しかも Tcが消滅することが知られている。脂質2分子膜上では次のように埋め込まれる。すなわち、親水性を示すコレステロールのヒドロキシ基は外向きに配置されリン脂質の燐酸基部分と水素結合する。そして嵩高いステロイド骨格と炭化水素側鎖は内側のリン脂質の脂肪酸鎖の間に埋め込まれる。

ステロール類の構造式

コレステロールは高等動物細胞膜の必須成分であるが、植物細胞の細胞膜には別のステロールであるフィトステロール類(シトステロールスチグマステロールフコステロールスピナステロールブラシカステロールなど)も含まれ、真菌では別のステロールであるエルゴステロールも含まれる。一方細菌の細胞膜にはコレステロールは含まれない[14]

[編集] 生理学

コレステロールは生体の細胞膜必須成分であり、また動脈硬化症の危険因子として、ヒトにおけるコレステロールの生理学は注目を集めている。

まず、コレステロールが含有することでリン脂質より構成される脂質二重膜は、生体膜特有のしなやかさを発現する。そして、コレステロールから代謝産生されるステロイドホルモン類は、細胞核内の受容体タンパク質と結合して転写因子となり遺伝子の発現を制御する。

複雑な体制を持つ多細胞動物の体内では、コレステロールは胆汁酸リポ蛋白など輸送分子と共に複合体を形成して移送される。そして、どの輸送分子と組み合わされているかによって、どの組織からどの組織へ移送されるのかが制御されている。

コレステロールに関する研究ではコンラート・ブロッホフェオドル・リュネンがコレステロールと脂肪酸代謝の調節機序を解明した功績で1964年ノーベル生理学・医学賞を受賞している。

[編集] 機能

コレステロールは細胞膜の構築や維持に必要で、広範囲の温度帯で膜の流動性(粘性度)を安定にする働きがある。いくつかの研究によるとコレステロールは抗酸化剤としての作用を持っている[15]

ビタミンD3の構造式。コレステロールの脱水素化と紫外線による開環により生成する

コレステロールは(脂肪消化を助ける)胆汁の産生も助けている。そして、ビタミンADEおよびKなど脂溶性ビタミンの代謝にも重要な役割を果たしている。

そしてコレステロールはビタミン以外にも色々なステロイドホルモンコルチゾールアルドステロンなど副腎皮質ホルモンプロゲステロンエストロゲンテストステロンや誘導体など性ホルモン)の合成の主要な前駆体である。

最近、コレステロールが細胞シグナル伝達に関与していることが発見された。それによると、原形質膜で脂質輸送の役割を果たし、原形質膜の水素イオンやナトリウムイオンの透過性を下げる働きがあることが示唆されている[16]

カベオラ依存エンドサイトーシスクラスリン依存エンドサイトーシスにおいて、カベオラやクラスリン被覆ピットを構成したり陥入する作用にコレステロールは必須である。これらのエンドサイトーシスにおけるコレステロールの役割は、コレステロール欠損原形質膜とメチルベータシクロデキストリン (MβCD) とを使って研究されている。

[編集] 生合成と吸収

コレステロールは哺乳類細胞膜において正常な細胞機能を発現する為に必要であり、コレステロールはいくつかの細胞や組織でアセチルCoAを出発原料として細胞内の小胞体で合成されるか、食事から取り込まれ、コレステロールのアシルエステルはLDLにより血流を介して輸送される。そして、受容体関与エンドサイトーシスによりクラスリン被覆ピットから細胞内に取り込まれ、リソゾーム加水分解される。

まず、コレステロールの供給については胆汁酸と複合体を形成して腸管より吸収される外因性コレステロールと、主に肝臓において、アセチルCoAからメバロン酸スクアレンを経由して生合成される内因性コレステロールとに大別される。その生合成量は外因性コレステロール量の変動を吸収するように調節されている。

体重68kg(150lb)のヒトで体内の全コレステロール量はおよそ35gほどである。殆どが細胞膜に取り込まれたものであるが一部が代謝循環している。すなわち内因性コレステロールの生産量は低コレステロール食摂取時にはおよそ800mg/程度[17]であることがしられており、体内を循環するコレステロールのおよそ20%–25%が肝臓で合成される。

外因性コレステロールは1,200–1,300mgが吸収されるが、食事由来のものは200–300mgほどであり、他は肝臓から胆汁に分泌されたものの再吸収である。したがって、体内で循環しているコレステロールの50%ほどが血流中に存在していることになる。皮膚においても肝臓に次ぐ量のコレステロールが産生されているが、他の組織に輸送されているかどうかはよく分かっていない。

ヒトを含む哺乳類においては、皮膚以外の組織で必要とされるコレステロールあるいはステロイドホルモンなどコレステロール誘導体は生合成されるのではなく、肝臓から血漿中を輸送されるコレステロールエステルを含むリン脂質複合体を利用するデノボ合成により産生される。

また体内における貯蔵について述べると、コレステロールを貯蔵するための特別な形態は存在しない。例えばブドウ糖グリコーゲンへ、アセチルCoAトリグリセリドへと転換されることで蓄積される。しかし、コレステロールはそうではない。このため輸送途中のリポ蛋白(LDLコレステロール)などは体内におけるコレステロールのリザーバーとしての役割もある。末梢組織にリン脂質とともに運ばれたコレステロールエステルはリソゾームで加水分解を受けてコレステロールに戻り、更に利用される。

このような動態を持つためコレステロールの食事からの吸収や肝臓での生合成は必須である一方、コレステロールの過剰による高コレステロール血症も問題となる場合も多い。

高コレステロール血症は、食事による外因性コレステロールの増大だけでなく、末梢組織でのLDLコレステロール受容体機能の抑制も大きな因子である。家族性高コレステロール血症では遺伝的に末梢組織のLDL受容体が変成することで、結果として末梢でのコレステロール取り込みが減り、高コレステロール血症が発生する。また、先天的要因だけでなく後天的に脂質代謝異常も発現していると考えられ、そういった糖・脂質の複合的な代謝異常という意味でメタボリックシンドロームが注目を集めている。

[編集] 体内輸送

食事のうちトリグリセリド中性脂肪の一種)の摂取量は50–125g/日[18]であるのに対して、コレステロールは200–300mg/日程度である。

高等動物種の場合、コレステロール単独で輸送されることは無く、脂質の成分比率は様々であるがトリグリセライドなど他の脂質と共にリン脂質のミセルを形成し輸送される。脂質を輸送するリン脂質にはアポタンパク質が含まれ、リン脂質とアポタンパク質を総称してリポ蛋白と呼ばれる。リポ蛋白には幾つかの種類が存在し、比重、ミセルの大きさやアポタンパク質の種類で分類される。(詳しくは記事 リポ蛋白を参照のこと)

リポ蛋白の種類と含まれる成分[19][20][21]
リポ蛋白 比重 粒子径 アポ蛋白 中性脂肪重量比 コレステロール重量比
(エステル体重量比)
補足
キロミクロン <0.96 80-1,000nm ApoB48 85% 7% (5%) トリグリセリドの輸送体。リポ蛋白の大部分を占める。
VLDL 0.96-1.006 30-75nm プレβ 55% 19% (12%) VLDLは肝臓で分泌され、末梢において酵素リポ蛋白リパーゼの作用でトリグリセリドを失って、IDLを経由しLDLへと変化する。
IDL 1.006-1.019 22-30nm プレβ
およびβ
24% 46% (33%) 比重の小さいLDLで、体内挙動はLDLと同じ。速やかにLDLに変化するので、健常人の場合の存在量は僅か。
LDL 1.019-1.063 19-22nm β 10% 45% (37%)
HDL 1.063-1.21 7-10nm α 5% 24% (18%) およそ70%がリン脂質とタンパク質。おもに末梢組織で分泌される。

つまり、にわずかしかに溶解しないコレステロールを水を主成分とする血流に乗せるために、リポ蛋白がミセルを形成し、スーツケースのようにコレステロール(エステル体)や中性脂肪を格納することで血流を介して輸送するのである。

リポ蛋白の表面のアポ蛋白が細胞のコレステロールを運び去るのか、受け取るのかを決定する。すなわちヒトにおけるコレステロールの輸送はそれぞれの場面において固有の役割を担うリポ蛋白などキャリヤーの存在が重要である。

コレステロールの輸送は肝臓を中心として胆汁酸とリポ蛋白より形成されるキロミクロンとにより輸送される、

肝臓胆汁小腸→肝臓を経る胆肝循環

と、LDLリポ蛋白やHDLリポ蛋白が介する

肝臓→血漿末梢→血漿→肝臓の血漿循環

とに大別される。言い換えると、肝臓から末梢へのコレステロール輸送はLDLリポ蛋白が担当し、組織(おもに遅筋)から肝臓への輸送はHDLリポ蛋白が担当する。その役割の違いからLDLリポ蛋白コレステロール複合体(LDLコレステロール)は「悪玉コレステロール」、HDLリポ蛋白コレステロール複合体(HDLコレステロール)は「善玉コレステロール」と呼ばれることがある。

キロミクロン (chylomicron) と呼ばれるリポ蛋白脂質複合体はリポ蛋白の総量の大部分を占め、主に小腸粘膜と肝臓の間で脂肪を輸送する。キロミクロンは主に中性脂肪とコレステロールを肝臓に輸送し、肝臓で中性脂肪と一部のコレステロールを放出する。そしてキロミクロン粒子はLDL粒子へと変換されて肝臓から他の組織へと中性脂肪とコレステロールを輸送する。

セルビア語の説明:
LDL reseptor - LDL受容体
LDL patikula - LDL粒子
klatrin - クラスリン
lizozom - リソゾーム

もうひとつのリポ蛋白脂質複合体であるHDL粒子はコレステロールを肝臓に逆輸送し、肝臓から分泌させる。この作用は大変興味深い作用で、巨大HDL粒子の数が多いほど健康に寄与するところが大きい。一方巨大HDL粒子の数が少ないことは動脈のアテローマ動脈硬化の進行と関係が薄いことが知られている。

このようにリポ蛋白の種類により役割が分化する理由は、細胞への取り込みがリポ蛋白の種類を細胞膜表面にあるリポ蛋白受容体が識別してエンドサイトーシスが生じて取り込が起こる為である。取り込まれた小胞はリソゾーム代謝を受け、細胞に利用される。

肝臓から分泌された胆汁は一時的に胆嚢で濃縮される。食事によりCCKホルモン等が放出されると総胆管を通じて胆汁は十二指腸中に分泌される。

[編集] 分泌

ヒトにおけるコレステロールの排泄は肝臓から胆汁として分泌されるが、その際にコレステロールの一部から肝臓生合成される胆汁酸と複合体を形成して排泄される。

胆汁の中のコレステロールは胆汁酸により分散安定化されているが、胆嚢で胆汁が濃縮される際に何らかの原因で遊離しコレステロールの結晶が成長すると、胆嚢あるいは胆管においてコレステロール胆石症の原因となる場合もある。胆石の他の原因であるレシチンビリルビンによる結石は稀である。

胆汁は胆管を経由して、十二指腸で腸管内に分泌排泄される。しかし大部分は小腸において再吸収されることになる。食物繊維を多く含む食事は食物繊維が胆汁酸を吸着するのでコレステロールや他の脂質も巻き込んで排泄される。それ故、脂質吸収を抑制するのに役立つと考えられている。

また、皮膚あるいは髪の毛など上皮細胞が脱落するとその細胞膜のコレステロールも失われることになる。

[編集] 調節

コレステロールの生合成量は体内コレステロールレベルが直接が調節している。しかしコレステロール恒常性について判明していることはごく一部である。まず食事から吸収する量が増大すると生合成は抑制され、吸収量が減ると反対に作用する。主要な調節機構は次の通りである。

  1. 細胞内のコレステロール量は小胞体上のSREBPタンパク質 (sterol regulatory element binding protein 1 and 2) により検出される。コレステロールが存在するとSREBPは他の2つのタンパク質、SCAP (SREBP-cleavage activating protein) とInsig1とが結合する。
  2. コレステロールレベルが減少すると、Insig-1が遊離することでSREBP-SCAP複合体はゴルジ体へと移動する。
  3. SREBPはS1P (site 1 protease) とS2P (site 2 protease) とに分割され、コレステロールレベルが低い状態で2つの酵素はSCAPにより活性化する。
  4. 分割されたSREBPは核へ移動しSRE (sterol regulatory element) と結合して転写因子として作用し、幾つかの遺伝子発現させる。これらの遺伝子の中にLDL受容体HMG-CoAレダクターゼが含まれる。
  5. そして血流中を循環するLDLを取り込むように働くと共にHMG-CoAレダクターゼはコレステロールの生合成を増大させる[22]

この機構のほとんどは1970年代にマイケル・ブラウンジョーゼフ・ゴールドスタインによって解明され、彼らは1985年ノーベル生理学・医学賞を受賞している[22]

[編集] 昆虫におけるコレステロール代謝

昆虫では体内で必要とするコレステロール合成ができないため、肉食性の昆虫では食物からすべてのコレステロールを得ている。草食性の昆虫では食物となる植物細胞の構成要素となるステロールの主体がシトステロールなどであり、コレステロールの量がわずかであるため必要量を満たせない。そのためシトステロールを体内でコレステロールに変換していることが知られている。

[編集] 植物におけるコレステロール

(教科書を含む)多くの書籍では植物にはコレステロールが含まれないという誤った記述が見られる。この誤解の多くは、米国の食品医薬品局が食品中のコレステロール含有量が一回の食事当り2mg以下の場合にラベル表示をしなくても良いとしていることに起因する。植物性食品にも多少のコレステロールは含まれる(ベールマン (Behrman) とゴパラン (Gopalan) によると動物性食品では5g/kgなのに対し、植物性食品では総脂質のうち50mg/kgがコレステロールであると指摘している)[23]

[編集] 健康とコレステロール

コレステロールは動物の生理過程において不可欠の物質であるが、血液中をリポ蛋白によって循環する量が過剰となることで高脂血症を引き起こし、血管障害を中心とする生活習慣病の因子となることが知られてきた。

よく血液検査でコレステロールが調べられるが、TCまたはT-CHOの略号で血液中の総コレステロール、LDLCまたはLDL-Cでの略号でいわゆる「悪玉コレステロール」、HDLCまたはHDL-Cの略号でいわゆる「善玉コレステロール」をあらわすことが多い。

[編集] コレステロール値の増減に関わる因子

人間の体内にあるコレステロールのうち、およそ3割前後は肝臓で合成されている。コレステロールを多く含む食事の摂取が増えても、生体には恒常性を保つ調節機構があり、健康な人間であれば体内におけるコレステロール量は一定に保たれている。しかし、生合成の出発点となるスクアレンアセチルCoAから合成されるため、食事からコレステロールを取らなかったとしても脂肪炭水化物を摂取すれば体内でコレステロールに転換されることになる。

従来はリノール酸はコレステロールを下げる働きがあるとされていたが、長期的には TC(総コレステロール)値に変化がないとの結果が出ている[24]

患者の多くは、LDLの粒子サイズを測定するような、直接LDLを測定する方法が利用されないかもしれないことに気づくべきである。コスト上の問題で、血中LDL値はフリードワルドの公式で算出することがある。その式は

LDL値 = 総コレステロール値 − 総HDL値 − 中性脂肪値 の20%

である。この計算式の基となる理論は総コレステロール値が HDL, LDLおよびVLDLの合計で定義されることを利用する。この 理論に基づき、実際に測定する総コレステロールから測定するHDL値と中性脂肪値から導き出されるVLDL値を差し引くのである 。そしてVLDL値はおよそ中性脂肪値の五分の一であることが経験的に知られている。

このような背景から特に次の点に留意すべきである。コレステロール値とことなり中性脂肪値は直近の食物の摂取や内容により大きく変動する。その為、血液検査前は最低8–12時間、完全に影響を排除するには12–16時間の絶食が必要である。

臨床事例増加によりわかったことは、直接LDLとHDLの濃度とサイズとを測定する方法に比べて、総コレステロールとHDLコレステロールとを測定し式より導かれる値でLDLの決定する方法は実際に直接LDLを測定する方法に比べLDL値が大きな値を推定することが示されている[21]

[編集] 高コレステロール血症

米国において、コレステロール教育プログラム (National Cholesterol Education Program, NCEP) の1987年報告書で成人治療部会では血中総コレステロールレベルで<200 mg/dL(<2mg/ml)を正常値とし、200–239 mg/dL を境界域、>240 mg/dL を高コレステロール血症と位置づけている。

とくに問題になるのは酸化されたLDL濃度が上昇することである。リポ蛋白粒子の粒子形が小さいと、HDLであれLDLであれ、大きなものより酸化されやすいことが研究により判明している。

特に小粒子LDLは酸化型が多い上に末梢で取り込まれるため、動脈壁においてアテロームの形成の原因となる炎症反応を引き起す。あるいは、血管内皮組織でマクロファージが酸化型LDLを異物と認識して貪食することにより、マクロファージの泡沫化を促進すると考えられている。

このような病変はアテローム性動脈硬化症として知られている症状につながる。アテローム性動脈硬化症は冠動脈疾患循環器疾患の主要な原因である。

それとは別に、HDL(特にLarge HDL)はアテロームからコレステロールを除去する唯一の因子であることが知られている。HDL濃度の増大は、アテローム形成の促進を低下させ、アテロームからの回復をももたらすと期待されているが実際のところ良くわかっていない。

LDL, IDL あるいはVLDLといったリポ蛋白粒子の種類もアテローム生成に関与していると考えられる。総コレステロール量が高いということよりも、LDLやHDLなど、どのリポ蛋白の濃度レベルが高いかがアテローム性動脈硬化症の拡張や重症化に関係している。

逆に総コレステロール量が正常値以内であっても、小粒子LDLや小粒子HDLが大半を占めているとアテロームの成長する速度は早いままであると考えられる。しかしLDLの量(特に大粒子LDLの量)が少なかったり、HDLの占める比率が大きいと、総コレステロール濃度がどのようであれ、アテローム生成の速度は通常は低下ないしは縮退することが期待されている[21]

[編集] 動脈硬化症とコレステロール

アテローム動脈硬化
動脈を切り開いたところ。内面一面は黄色のアテロームに覆われ正常な内膜(通常は無色)は見られない
動脈構造の模式図
内側から動脈基底膜(basement membrane;黄緑)
動脈内膜(Tunica intima;緑)
動脈中膜(Tunica media;黄橙)
動脈外膜(Tunuca extema;褐色)
アテローマは内膜中で増大する
冠動脈疾患
閉塞 (1) した先の心筋 (2) が障害される

血液中のコレステロール値 (TC) は動脈硬化症と単純に結びつけて語られることが多かったが、現在はTC値が高いことは動脈硬化の危険因子(リスクファクター)の1つということになってきている。

日本動脈硬化学会が2002年に更新したガイドラインでは、いくつかの危険因子が重なったマルチプルリスクファクター症候群の重要性を強調している。米国心臓・肺・血液研究所 (National Heart, Lung, and Blood Institute, NHLBI) は、

を危険因子として挙げている[25]

[編集] 冠動脈疾患 (CHD) とコレステロール

コレステロールは、冠動脈疾患狭心症心筋梗塞等)の危険因子である。アメリカ心臓学会では心疾患リスクと血中総コレステロール値に関するガイドラインを提唱している[26]

Level (mg/dL) Level (mmol/L) 解説
<200 <5.2 心疾患リスクを低減させるのに望ましいレベル
200-239 5.2-6.2 境界領域
>240 >6.2 高リスク

しかし、今日での臨床検査ではLDL(悪玉)とHDL(善玉)のコレステロール値を分けて測定する方法が通常であり、アメリカ心臓学会が提唱するような総コレステロール値だけを見る単純化された方法は幾分時代遅れである。後述のHPS試験計画などによれば、リポ蛋白を区別して測定し、望ましくはLDLレベルを100 mg/dL (2.6 mmol/L) 以下にすべきであり、高リスク患者では更に厳しく<70 mg/dLにすべきであるとされている。

そして総コレステロールにおけるHDL量は他のコレステロール量と比べて5対1以下にすることで健康を維持するのに適当な値である。特に子供は成人とはHDLレベルが異なることに注意すべきであり、子供の平均的なHDLレベルは35 mg/dLである。

米国で最近行われたヒトでの冠動脈疾患とそのリスク評価に関する、良く計画された無作為抽出評価であるHeart Protection Study(HPS)試験計画やPROVE-IT試験計画、及びTNT試験計画により研究されてきた。

これらの試験計画はLDL低減によるHDL向上の効果や、LDL低減療法が血管内超音波カテーテルによるアテローム治療と同等以上かどうかを調査するものである。この試験結果では少数の症例でLDL低減したことが冠動脈疾患の進行を抑止したということが確認された。しかしリポ蛋白の構成比の異常が治療により成功しても、アテローム動脈硬化の治療の必要性が無くなった症例はごくわずかであった。

また高コレステロール血症治療薬のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤(スタチン)の複数の臨床試験結果からも動脈硬化に対するリポ蛋白の影響が明らかになっている。まず、スタチンを投与するとリポ蛋白の分布を不健康型から循環器疾患の発生が低下するようなより健康な型へと変化させる。そして健常人であってもHDLを増やすように作用する。

しかし心疾患が無かったり、心臓発作病歴の無いなどの無症状患者において、スタチンを投与してコレステロール値を低下させても、その後の経過において心疾患による死亡率を低減させる作用があるかどうかについて調査すると、その結果はスタチン治療しない場合と統計上の有意さは無いことがわかっている。

したがって現状の知見においては、動脈硬化を発症している患者については高コレステロール血症はあきらかに症状を悪化させる因子である[27]。しかし、低いコレステロールが冠動脈疾患や動脈硬化を改善するかどうかは明確になっていない。

それとは別に糖尿病を罹患している患者は、糖尿病による高血糖は血管内皮細胞を障害するし、耐糖能異常があると血糖が低くても高インシュリン血症を引き起こすので血管内皮細胞に悪影響を及ぼす。したがって耐糖能異常があるとすでに動脈硬化や冠動脈疾患のリスクを抱えていることになる。それ故、そのような患者や患者予備軍は高コレステロール血症や低HDL血症については注意を払う必要がある。このように理由により、糖代謝と脂質代謝が同時平行的に複合的に異常を起こすメタボリックシンドロームが注目されている。

[編集] 低コレステロール血症

血中での正常値を下回るコレステロール値を示す症状を低コレステロール血症と呼ぶ。この病態の研究は比較的限られた物であり、幾つかの研究によりうつ病がん神経ホルモンと関連が示唆されている。低いコレステロールレベルが体調やどのような病状と関係しているかは不明である[28]

[編集] 寿命とコレステロール

一般に血中コレステロール量は加齢により変動し、通常は60歳代まで徐々に増大する。またヒトにおいてはコレステロールレベルの季節変動が認められ、冬季には平均よりも高くなる[29]

また、高コレステロール血症循環器疾患を引き起こす危険因子であるので、血中コレステロール値の大小で寿命が影響を受けると考えられてきた。それ故、寿命とコレステロールの関係については注目されてきており、すでに米国で大規模な疫学調査MRFIT (multi risk factor intervention) が実施されている。

その結果は予想に反して、コレステロール値は高すぎても、低すぎても寿命を短縮するというものである。MRFITの解析結果によると、血中総コレステロールが200mg/dL以上では冠動脈疾患による死亡率が急速に増大し、180mg/dL以下では冠動脈疾患による死亡率は低減せずほぼ一定になることが判明している。一方、血中総コレステロールが180mg/dL以下では冠動脈疾患以外による死亡率が増えるため、結果として血中総コレステロールが180–200mg/dLが最も死亡率が低下することが判明した。

米国でのMRFIT以外にもヨーロッパや他の地域でも同様な疫学調査がなされており、同様な結果が得られている[30]

この結果や前述の説明のように血中コレステロールの総量よりはその種類(LDLコレステロールとHDLコレステロールあるいは酸化リポ蛋白の存在)などコレステロールの質が寿命と深く関わっていると考えられている。

[編集] コレステロール低下で死亡率が上昇

日本での疫学調査としては、1986年度から1989年度までの福井市で行なわれた調査がある。26,000人を対象に住民検診の結果を福井保健所長であった白崎昭一郎医師がまとめた結果、男性ではコレステロール値が低い人ほどガンなどで死亡した人が多く、女性でもコレステロール値が低い群が死亡率が高かった[31]

[編集] 日本でのコレステロール値の決定プロセス

日本では一般にコレステロール値が高いと言うのは総コレステロール値が220以上の場合を指す。これは日本動脈硬化学会が作成した「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が大きく影響している。これは動脈硬化性疾患をスクリーニングための診断基準としている。ガン検診でガンの疑いがあるとされても、いきなりガン治療をはじめる訳ではないのと同様に、スクリーニングでは220以上でも多くの患者が特に治療を必要とはしないケースがあるとされている。

一般にスクリーニングは、精密検査を必要とする患者予備軍を簡単な検査によって精密検査前に絞り込むことが求められる。しかし、総コレステロール値が220以上をすべて患者予備軍としてしまうために、男性では26%、女性では33%が要精密検査と判定されている。動脈硬化による主な病状は心筋梗塞があるが、コレステロール値を検査することで動脈硬化と心筋梗塞へ至る症状の予防が求められるのに、現状では心筋梗塞が男性に比べて1/2から1/3の女性の方が多くの割合で要精密検査となってしまう。

1980年代まではこの基準が250から240になっていたが、これは95%の人がこの基準値以下で健康であったためである。1987年に日本動脈硬化学会が「コンセンサス・カンファレンス」で基準値を220としたためこれ以降は220が使われている。220が科学的な妥当性を欠いているという意見は決定以降も多数あり、6年間・5万人を対象に行なわれた「日本脂質介入試験」の結果も240を境に有意に心臓の冠動脈疾患のリスク上昇を示していたが、結果として2007年現在も220が基準とされている。一度は1999年に240への改定の直前まで行ったが、日本動脈硬化学会内の改定反対派の主張する「220がすでに定着しており、変更すれば医療現場に混乱が起きる」という意見が通り見送られた。240を採用すると患者数が半減するため、病院経営の危機を招くとしての判断が働いたのではないかとする見方がある。

また、220の基準でスクリーニングに掛かって診察を受け、動脈硬化疾患などの病気と診断された後は治療目標値がなぜか240といきなり緩和される逆転現象がおきてしまうという、不合理な状況にある[31]

[編集] 年表

ディールスの炭化水素

[編集] 出典

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[編集] 関連項目

  • コレステロールから生体内で誘導される化合物

[編集] 外部リンク

ウィキメディア・コモンズ