黒川博行

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黒川 博行
(くろかわ ひろゆき)
誕生 1949年3月4日(65歳)
日本の旗 日本愛媛県
職業 小説家推理作家
最終学歴 京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業
活動期間 1984年 -
ジャンル ミステリ警察小説ノワール[1]
主な受賞歴 サントリーミステリー大賞1986年
日本推理作家協会賞1996年
直木三十五賞2014年
処女作 『二度のお別れ』(1984年
配偶者 黒川雅子
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黒川 博行(くろかわ ひろゆき、1949年3月4日 - )は、日本小説家推理作家愛媛県今治市生まれ[2]大阪府羽曳野市在住(2014年現在)[2][3]京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業。妻は日本画家黒川雅子

来歴[編集]

1949年、愛媛県今治市に生まれる。6歳の頃[4]に大阪に移り住んだため、「大阪人」を自認している[5]。中学校の後輩には柴崎友香がおり[4]、後にそれぞれ直木賞芥川賞を同日に受賞することとなる。京都市立芸術大学美術学部彫刻科に学び、同学部の日本画科に通っていた妻・雅子と23歳で学生結婚する[6]

大学卒業後、スーパーの社員になるが[7]会社勤めは性に合わず、妻が中学教師になっていたこともあり教員免許を取得、大阪府立高校の美術教師となる[6]

暇つぶしのつもりで小説に手を染め、1983年、『二度のお別れ』が第1回サントリーミステリー大賞佳作に選ばれ、翌年同作で小説家デビュー。佳作の次は大賞が獲りたいとより熱心に小説に打ち込むようになり[6]1986年に『キャッツアイころがった』で第4回サントリーミステリー大賞受賞。この時選考委員を務めていた田辺聖子について「恩人である」と述べている[8]。ほどなくして二足のわらじ生活が辛くなり、教師の職を辞して作家専業となる[6]

その後は軽妙な大阪弁が特徴の警察小説やハードボイルド小説で好評を博し、1996年に「カウント・プラン」で第49回日本推理作家協会賞を受賞するなど作家としての地位を固める。一方で、吉川英治文学新人賞や直木賞の候補に再三挙げられるも落選が続く。特に2001年の第126回直木賞では、北朝鮮を舞台とする異色の力作『国境』が多くの選考委員の支持を集めるも「残念、あと一息」[9]で受賞を逃し、半月の間仕事が手につかなくなるほどのショックを受ける[4]

2004年、大阪府警シリーズを原作とし、舞台を神奈川県に移した2時間ドラマ刑事吉永誠一 涙の事件簿」シリーズが、船越英一郎主演によりテレビ東京系『水曜ミステリー9』でスタート。水曜ミステリー9史上最高の視聴率を記録する人気作となり、後に連続ドラマ化されている。2011年には『週刊現代』の記事に名誉を傷つけられたとして訴訟を起こし、勝訴している(後述)。

2014年、『破門』で7年ぶりに候補になった第151回直木賞を受賞。選考委員の伊集院静は「圧倒的な支持だった。忍耐力と小説家の魂を作品以外のところで評価した選者がいた」と述べた[10]。候補になること6回目、初めて候補になってから実に18年を経ての栄冠であった。自身落選の経験が多いことから、受賞会見の場では他の候補者を気遣うような発言もあった[4]。「もう候補にならないのが一番ありがたい」とも述べている[11]

人物[編集]

  • 「他に楽しみがない」[5]と語るほどのギャンブル好きであり、妻との馴れ初めも「行きつけの雀荘で出会って意気投合した」というものである[6]。若い頃には阿佐田哲也に何かと世話を焼いてもらったという[5]。直木賞受賞の報も雀荘で受け、受賞会見で賞金の使い途を尋ねられると「マカオに行こうと思ってます」と発言し、会場を沸かせた[5]
  • 同じ大阪出身の推理作家で、デビューした時期も近い東野圭吾とは親交が深く、直木賞受賞の際は選考委員を務めていた東野との「受賞記念対談」が『オール讀物』に掲載された。藤原伊織の存命中は彼も交えて酒を飲むことも多かったという[12]。東野は自作解説で自らを「良い教師に恵まれず、教師嫌いである」とした後、「親しくしていただいている作家の黒川博行さんは、かつて高校の美術の先生だった。なるほどこういう人が担任だったりしたら、大人不信になることもないのかなと思う」と黒川の人柄に触れている[13]
  • 「エンターテイメントだからこそリアリティが必要」という考えから、時間をかけて入念な取材を行う[11]。「1時間に原稿用紙1枚しか書けない」[5]と自認する遅筆もあって、作品の刊行ペースはあまり速くない。一方で取材そのものは好きではなく、作品で大阪弁を多用するのも「これしか書けないから」としている[11]
  • 映画鑑賞が趣味で、年間150本ほど観るという。疫病神シリーズの主人公コンビは任侠映画「悪名」がモチーフとなっている[11]

文学賞受賞・候補歴[編集]

太字が受賞したもの

ミステリ・ランキング[編集]

週刊文春ミステリーベスト10[編集]

  • 1986年 - 『キャッツアイころがった』3位
  • 1999年 - 『文福茶釜』27位
  • 2001年 - 『国境』12位

このミステリーがすごい![編集]

週刊現代による名誉毀損[編集]

2011年11月10日、20回にわたる週刊現代の連載記事でグリコ・森永事件の真犯人として扱われたとして、名誉毀損とプライバシー侵害を理由に、出版元の講談社と週刊現代編集長、および筆者のジャーナリスト岩瀬達哉に損害賠償などを求め、東京地裁に提訴した[14]

2011年12月、愛知県警捜査員らの住民票戸籍謄本が、東京都内の司法書士らのグループによって不正取得される事件があったが、その中に黒川の住民票も含まれていた。黒川は前述の週刊現代の記事の中で居住地などを詳細に記載されていたことから不審に感じたという[15]

2013年8月30日、東京地裁は講談社と当時の編集長、および執筆者の岩瀬達哉に、計583万円の支払いを命じた[16]

作品リスト[編集]

小説[編集]

大阪府警シリーズ[編集]

  • 二度のお別れ(1984年9月 文藝春秋 / 1987年6月 文春文庫 / 2003年9月 創元推理文庫
  • 雨に殺せば(1985年6月 文藝春秋 / 1988年5月 文春文庫 / 2003年11月 創元推理文庫)
  • 海の稜線(1987年4月 講談社 / 1990年7月 講談社文庫 / 2004年3月 創元推理文庫)
  • 八号古墳に消えて(1988年9月 文藝春秋 / 2004年1月 創元推理文庫)
  • 切断(1989年2月 新潮社 / 1994年7月 新潮文庫 / 2004年11月 創元推理文庫)
  • ドアの向こうに(1989年5月 講談社 / 1993年1月 講談社文庫 / 2004年7月 創元推理文庫)
  • 絵が殺した(1990年6月 徳間書店 / 1994年3月 徳間文庫 / 2004年9月 創元推理文庫)
  • アニーの冷たい朝(1990年11月 講談社 / 1993年10月 講談社文庫 / 2005年1月 創元推理文庫)
  • てとろどときしん 大阪府警・捜査一課事件報告書(1991年10月 講談社 / 2003年6月 講談社文庫 / 2014年9月 角川文庫

疫病神シリーズ[編集]

  • 疫病神(1997年3月 新潮社 / 2000年1月 新潮文庫)
  • 国境(2001年11月 講談社 / 2003年10月 講談社文庫)
  • 暗礁(2005年10月 幻冬舎 / 2007年10月 幻冬舎文庫【上・下】)
  • 螻蛄(2009年7月 新潮社 / 2012年1月 新潮文庫)
  • 破門(2014年2月 角川書店

堀内・伊達シリーズ[編集]

  • 悪果(2007年9月 角川書店 / 2010年9月 角川文庫)
  • 繚乱(2012年11月 毎日新聞社

その他[編集]

  • 暗闇のセレナーデ(1985年8月 徳間書店 / 1988年11月 徳間文庫 / 2006年3月 創元推理文庫)
  • キャッツアイころがった(1986年8月 文藝春秋 / 1989年9月 文春文庫 / 2005年6月 創元推理文庫)
  • 大博打(1991年12月 日本経済新聞社 / 1998年3月 新潮文庫)
  • 封印(1992年12月 文藝春秋 / 1996年8月 文春文庫)
  • 迅雷(1995年5月 双葉社 / 1998年5月 双葉文庫 / 2005年5月 文春文庫)
  • カウント・プラン(1996年11月 文藝春秋 / 2000年4月 文春文庫 / 2013年6月 埼玉福祉会【上・下】)
  • 麻雀放蕩記(1997年6月 双葉社 / 2000年6月 双葉文庫)
  • 燻り(1998年9月 講談社 / 2002年4月 講談社文庫)
  • 文福茶釜(1999年5月 / 2002年5月 文春文庫)
  • 左手首(2002年3月 新潮社 / 2005年1月 新潮文庫)
  • 蒼煌(2004年11月 文藝春秋 / 2007年11月 文春文庫)
  • 蜘蛛の糸(2008年6月 光文社 / 2011年2月 光文社文庫
  • 煙霞(2009年1月 文藝春秋 / 2011年7月 文春文庫)
  • 落英(2012年3月 幻冬舎)
  • 離れ折紙(2013年8月 文藝春秋)
  • 後妻業(2014年8月 文藝春秋)

アンソロジー[編集]

「」内が黒川博行の作品

  • 孤愁(1994年12月 角川書店)「黒い白髪」
  • 現場不在証明(アリバイ) (1995年8月 角川文庫)「飛び降りた男」
  • 賭博師たち(1995年7月 角川書店 / 1997年11月 角川文庫)「いたまえあなごすし」
  • 輝きの一瞬(1999年1月 講談社文庫)「燻り」
  • マイ・ベスト・ミステリー2(2007年8月 文春文庫)「カウント・プラン」

エッセイ[編集]

  • よめはんの人類学(1998年7月 ブレーンセンター)
  • ぎゃんぶる考現学 麻雀放蕩記(2003年10月 徳間書店)
  • 大阪ばかぼんど ハードボイルド作家のぐうたら日記(2008年3月 幻冬舎 / 2011年4月 幻冬舎文庫)
  • 大阪ばかぼんど 夫婦萬歳(2008年10月 幻冬舎文庫)

共著[編集]

漫画原作[編集]

  • 疫病神(2009年9月 芳文社コミックス、作画:伊織鷹治

映像化作品[編集]

テレビドラマ[編集]

NHK
ABCテレビ
  • サントリーミステリースペシャル
    • 猫目石ころがった(1986年11月28日、主演::古谷一行、原作:キャッツアイころがった)
テレビ朝日
  • 土曜ワイド劇場
    • 幻の船連続殺人(1988年3月19日、主演:三浦友和、原作:海の稜線)
    • 古代舞の女(1988年6月18日、主演:古谷一行、原作:八号古墳に消えて)
    • 京おとこ京おんな連続怪死事件(1991年4月20日、主演:坂口良子、原作:ドアの向こうに)
テレビ東京
  • 水曜ミステリー9
    • 警視庁黒豆コンビ(主演:大地康雄
      • 二度のお別れ〜夫の命は一億円(2005年7月10日、原作:二度のお別れ)
      • 蒼い霧(2006年1月29日、原作:八号古墳に消えて)
      • 海に消えた欲望(2007年2月4日、原作:海の稜線)
      • 虚飾の塔・覗かれたセレブ妻の秘密(2007年10月7日、原作:帰り道は遠かった)
    • 刑事吉永誠一 涙の事件簿(主演:船越英一郎
      • 絵が殺した女(2004年5月26日、原作:絵が殺した)
      • 帰れない遺骨(2004年12月15日、原作:ドアの向こうに)
      • 一億円の幸せ(2005年11月16日、原作:雨に殺せば)
      • いちばん大切な死体(2006年8月9日、原作:暗闇のセレナーデ)
      • 約束の指切り(2007年1月24日、原作:切断)
      • 黒い白髪(2007年8月22日、原作:黒い白髪)
      • 不幸を呼ぶ宝石(2008年10月1日、原作:キャッツアイころがった)
      • 虹が消えた交差点(2011年10月12日、原作:アニーの冷たい朝)
      • 迷い骨(2012年6月20日、原作:迷い骨)
      • 沈黙の宴(2012年10月17日、原作:てとろどときしん)
      • 赤い遺産(2013年4月3日、原作:爪の垢、赤い)
      • 親しい敵(2013年10月2日、原作:うろこ落し)
  • 金曜8時のドラマ
    • 刑事吉永誠一 涙の事件簿(2013年10月11日 - 12月13日、全9話、主演:船越英一郎)

映画[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 東京創元社|黒川博行警察小説コレクション
  2. ^ a b 直木賞に今治出身・黒川氏 愛媛県人2人目 愛媛新聞 2014年7月17日
  3. ^ 芥川賞 柴崎 友香さん 「春の庭」 直木賞 黒川 博行さん 「破門」 東京新聞 2014年7月18日
  4. ^ a b c d 【BOOK】黒川博行さん“6度目の正直”で直木賞受賞 自身もトラウマ夕刊フジ、2014年8月16日)
  5. ^ a b c d e 黒川博行さん 直木賞受賞会見全文文藝春秋ウェブサイト)
  6. ^ a b c d e いささか私的すぎる取材後記|第32回 雀荘の2人みんなのミシママガジン
  7. ^ (ひと)黒川博行さん 「破門」で直木賞に決まった 朝日新聞 2014年7月18日
  8. ^ 田辺聖子『姥勝手』(新潮文庫)解説より。
  9. ^ 阿刀田高の選評による。
  10. ^ 文学賞:芥川賞に柴崎友香さん 直木賞は黒川博行さん 毎日新聞 2014年07月17日
  11. ^ a b c d 楽天ブックス・著者インタビュー 黒川博行さん「破門」楽天ウェブサイト)
  12. ^ 今月の編集長インタビュー角川文庫公式ウェブサイトより)
  13. ^ 東野圭吾『怪笑小説』(集英社文庫)あとがきより。
  14. ^ グリコ事件で犯人視と提訴 週刊現代記事で作家黒川氏 共同通信 2011年11月10日
  15. ^ 黒川博行さんの住民票、不正取得か…司法書士ら 読売新聞 2011年12月24日
  16. ^ 名誉毀損:作家の黒川さん勝訴 講談社側に賠償命令 毎日新聞 2013年08月30日