黄金狂時代

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靴を食べる名シーン。

黄金狂時代』(おうごんきょうじだい、The Gold Rush)は、アメリカ映画史において喜劇王と呼ばれたチャールズ・チャップリンの製作によるコメディー映画。1925年に制作されたオリジナル版と、1942年にチャップリン自身がナレーションをつけて再公開したサウンド版がある。

概要[編集]

1923年に、チャップリンは友人であるダグラス・フェアバンクスメアリー・ピックフォード夫妻の家を訪れた際、アラスカ州のチルクート峠を越える探掘者の行列の写真を見て、作品のアイデアが浮かんだとされている。そのアイデアに、1846年シエラ・ネバダで発生した、入植団・ドナー隊の悲劇を取り入れた。撮影は同年冬から始まり、初めはシエラ・ネバダでロケーションが敢行されたが、チャップリンが風邪を引いたり、悪天候で撮影が思い通りに進まなかったこともあり、チャップリン・スタジオでの収録に変えた。スタジオ内に大掛かりな雪山や街のセットを作り、雪は塩と小麦粉で代用した。また、ヒロイン役のリタ・グレイが妊娠(後にチャップリンと結婚→チャールズ・ジュニア、シドニーの2児をもうけたのち離婚)したため、ジョージア・ヘイルと交代した。1925年5月に撮影が終了した。

冒頭の、チルクート峠を越える大勢の探掘者は、近くのサクラメントにいたホームレスなど600人をかき集めたものである。チャップリン映画としては異例の大規模なロケーションを敢行したり特撮を取り入れたりするなど、「チャップリン映画の中で最も力が入っている作品」とする評価もある。有名な革靴を食す場面は靴の革を海草で、釘を飴細工、靴ヒモはイカ墨スパゲッティで造ってある。チャップリン自身、この作品でのチャーリーが理想のものと考えていたようであり、晩年に至るまで「チャーリーといえば、まずこの作品のチャーリーを思い浮かべて欲しい」と繰り返し述べている。

あらすじ[編集]

山小屋でのクライマックス。

雪深い山に金鉱を捜し求めてきた一人の金鉱探し・チャーリー。猛吹雪に難渋した上、転がり込んだ小屋にはお尋ね者のブラック・ラーセンがいた。やがて、同じく猛吹雪で転がり込んできた金鉱探しのビッグ・ジム・マッケイと避難生活を送ることとなる。寒さと飢えがピークに達し、ビッグ・ジムはチャーリーがニワトリに見える始末。やがて靴を食べる生活まで始めた。
ビッグ・ジムと別れ、麓に出来た新興の街にやってきたチャーリーは酒場で出会ったジョージアに一目ぼれ。最初はチャーリーの単なる片思いであったが、ジョージアも粗暴なジャックに愛想を尽かし、チャーリーに少しずつ思いを寄せるようになる。
酒場で偶然再会したビッグ・ジムと艱難辛苦の上、ついに金鉱を探し当て百万長者になったチャーリー。帰りの船上でジョージアと再会。めでたく結ばれる。

キャスト[編集]

メインスタッフ[編集]

  • 製作・監督・脚本:チャールズ・チャップリン
  • 助監督:チャールズ・リーズナー、エディ・サザランド、アンリ・ダバディ・ダラ
  • 制作主任:アルフレッド・リーヴズ
  • 撮影:ローランド・トザロー
  • 美術:チャールズ・D・ホール
  • カメラ:ジャック・ウィルソン、マーク・マーラット
以下はサウンド版でのスタッフ他
  • ナレーター・作曲:チャールズ・チャップリン
  • 音楽監督:マックス・テール
  • 録音:ピート・デッカー、ウィリー・ダルグリッシュ
  • フィルムエディター:ハロルド・マックガン
  • サウンドシステム:RCA

オリジナル版[編集]

1925年:アメリカ
制作会社:チャップリン=ユナイテッド・アーチスツ
モノクロ
上映時間:82~96分
フィルム:10巻/9000ft超→8555ft/スタンダード/モノラル
ワールド・プレミア(9000ft超版):1925年6月26日、ローマンズ・エジプシャン劇場(ロサンゼルス
ニューヨーク・プレミア(8555ft版):1925年8月16日、ストランドシアター

後述のサウンド版公開以降は、一部を除くとほとんど公開されることはなかったが、1993年にサイレント映画研究の第一人者であるケヴィン・ブラウンロウとディヴィッド・ギルが修復している。1925年ベルリンプレミアの際には、チャーリーがロールパンのダンスを披露するシーンで、観客の喝采によってそのシーンを繰り返し上映している。

なお、オリジナル版は作品中に著作権表記があるものの公開時期が古く、リニュー(著作権更新手続き)が行われなかったことから公開当時の米国の法律(方式主義)により権利放棄とみなされ、米国に於いてはパブリックドメインとなった[1]。なお、現在[いつ?]の版権保有者であるリヒテンシュタインの法人は米国以外(監督没年を基準とする国)では著作権存続を主張している。

サウンド版[編集]

1942年:アメリカ
制作会社:チャップリン=ユナイテッド・アーティスツ
モノクロ
上映時間:73分
フィルム:7巻/8498ft/スタンダード/モノラル
リヴァイバル・プレミア:1942年4月16日
第15回アカデミー賞音響賞・劇・喜劇映画音楽賞ノミネート

1941年6月9日からローランド・トザローとともにすべてのネガを見直し、冗長と思われるカットや、字幕・シーンの差し替えなどを行った。この編集により、バーテンダー役のスタンリー・サンフォードの出演シーンが、ストーリー上カットできない部分を除いてすべてカットされた。一部シーンを別テイクに差し替えたため、同じ演技でもサイレント版とニュアンスが若干異なる部分もある。また、サイレント版でのラストはチャーリーとジョージアの熱いキスシーンで終幕となるが、サウンド版では二人が甲板に上がるだけのおとなしいものに替わっている。
冒頭に、「黄金狂時代」の初公開時にこの作品を激賞し、1942年1月23日に急逝した評論家のアレクサンダー・ウールコットへの献辞"Dedicated to ALEXANDER WOOLLCOTT In appreciation of his praise of this picture."が添えられている。

リヴァイバル・プレミア以降、現在では特に断りのない場合「黄金狂時代」といえばこのサウンド版を指す。

その他[編集]

  • 極度の飢餓感からチャーリーが鶏に見えてしまうシーンで、食人を危惧し彼が卓上から隠した筈のナイフが場面転換後再び置かれている。

脚注[編集]

発展資料[編集]

  • デイヴィッド・ロビンソン(宮本高晴・高田恵子翻訳)「チャップリン」文藝春秋、1993年
  • 大野裕之「黄金狂時代」『Love Chaplin Collector's Edition・ライナーノーツ』日本ヘラルド映画、ジェネオン・エンタテインメント、2004年
  • 大野裕之「チャップリン再入門」日本放送出版協会、2005年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]