黄色い救急車

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黄色い救急車(きいろいきゅうきゅうしゃ)とは、日本で知られている都市伝説の一つ。

内容[編集]

話の内容は「(怪我や、身体的な病気では白い救急車が来るところだが、)頭のおかしい人の所には黄色救急車が来て、病院に連れて行かれる」というものである[1]。地方によっては、救急車の色は緑であったり、青であったり、紫であったりする。精神科閉鎖病棟を“鉄格子付きの病院”と表現することもある。

また、「(黄色い救急車を呼ぶため関係機関に)通報した者は(口止め料として)お金がもらえる」という話もある。金額は3,000円から5,000円程度とされる。

由来[編集]

そもそも救急車の色は法令(道路運送車両の保安基準)でと規定されており[2]、個人サイトで「黄色い救急車」に関する調査を行なった風野春樹(東京武蔵野病院)をはじめ、多くの精神科医が、黄色の救急車で患者が搬送されたところを見たことがないと証言している。民間の患者搬送サービス車で緊急走行は出来ないので、仮に搬送車の塗色を黄色とする業者があったとしても「救急車」という点に矛盾が生じる。ちなみに、緑(国防色)の救急車は陸上海上自衛隊に、青(紺)の救急車は航空自衛隊に存在する。

現実には精神科救急で対応することとなる。相談窓口として、精神科救急情報センターが設置されている。精神科救急情報センターが診察が必要と判定した場合は、センターが指定する病院へ患者を搬送する。搬送手段として、自家用車やタクシーが使用できない場合は、再度消防署へ連絡し救急車を要請するが、もちろんこれは通常の救急車である。暴力行為がある場合は警察へ連絡するが、この時はパトカーで搬送となる。

つまるところ、他の多くの都市伝説と同様、この噂が生まれた経緯や由来は明らかになっておらず、諸説がある。

  • ドクターイエローと呼ばれる線路の点検などを行う黄色い新幹線がある(しかし、ドクターイエローが使われ始めたのは1964年であり、黄色い救急車の噂が流れ始めた時期よりも少し後である)。
  • カギの救急車という鍵屋が黄色い軽トラックで全国的に営業しているが、無論医療とは何の関わりもない。
  • 高速道路や一般道の巡回に使われている道路パトロールカー(黄色に白帯という塗装で、黄色または赤色の回転灯が取り付けてある)や、一部の電力会社ガス会社の緊急車両に黄色の塗色でパトランプを備えているものがあるため、これらを目にした子供たちが誤解して「噂は本当」と信じ込んだことも考えられる。緊急自動車には定められたもの以外にもさまざまな塗色が存在するため、地方によって伝説で語られる色の差異がここから生じたということも考えられる。
  • 映画『危いことなら銭になる』(1962年)の中で、主人公(演:宍戸錠)が、黄色い車を宣伝カーにし東京精神病院を名乗って患者が逃走したとの虚偽の広報をする場面があり、この映画上映以降に伝説が広がったとする意見がある。ただし前述の風野がこの映画を観た限りでは、場面の重要性が低くこの映画が噂の元とは考えにくいとしている。
  • アメリカの映画『カッコーの巣の上で』(1976年)で登場する精神閉鎖病棟の患者搬送車の車の色は黄色である。
  • 奈良騒音傷害事件では、被告人に判決が下った後、被告人がこの黄色い救急車に簀巻きにされたたま乗せられ、どこかに連れて行かれるのが複数の人物により目撃されているという。
  • 精神病患者を罵倒して「きちがい」と表現することがあり、その隠語として「キ印」と呼ぶことから「キ」と「黄」によりこの伝説が生まれたと考えられる。

日本国外での事例[編集]

スウェーデンの黄色い救急車

救急車の色は国によってさまざまで、オーストリアスウェーデンのように救急車が黄色い国もあるが、この都市伝説と無関係である。 イギリスでは月狂条例という法律を根拠として精神異常者を強制的に連行して入院させる制度があるが、この時に連行して行くのは警察であり救急車に乗せるわけではない。

脚注[編集]

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  1. ^ 宇佐和通 『続 あなたの隣の「怖い噂」―都市伝説は進化する』 学習研究社、2004年、94-95、98頁。
  2. ^ ニライ消防本部「救急Q&A」

参考文献[編集]

  • 風野春樹「精神病院と都市伝説 黄色い救急車をめぐって」『こころの科学』日本評論社、2000年9月・通号第93号。

外部リンク[編集]