麻耶雄嵩

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麻耶 雄嵩
(まや ゆたか)
誕生 1969年5月29日(44歳)
三重県上野市
職業 推理作家
国籍 日本の旗 日本
活動期間 1991年 -
ジャンル ミステリー
代表作 『隻眼の少女』
主な受賞歴 日本推理作家協会賞(2011年)
本格ミステリ大賞(2011年)
処女作 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件
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麻耶 雄嵩(まや ゆたか、1969年5月29日 - )は、日本小説家推理作家。本名、堀井良彦三重県上野市(現・伊賀市)出身。「摩耶雄嵩」「麻耶雄高」などは誤り。

三重県立上野高等学校京都大学工学部卒業。在学中は推理小説研究会に所属、この時に短篇の執筆を始める。そこで知り合った綾辻行人法月綸太郎島田荘司の推薦をうけ、1991年翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビュー。

いわゆる「問題作」を一貫して書き続けており、研究会OBの大勢と同じく長編・短篇を問わず寡作ではあるが、独特の世界観と手法的アプローチに強いこだわりを持った癖のある作風で、マニアックかつカルト的な支持を得ている。同業者やミステリ界隈からの評価に関わらず長い間無冠であったが、2011年に『隻眼の少女』で第64回日本推理作家協会賞・第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞。

作風[編集]

根幹にあるのはエラリー・クイーンピーター・ディキンスンのような、ロジカルな謎解きと、事件トリックの構築性に厳格な本格ミステリである。しかし物理トリックは破天荒で、プロットには意図的な落差が存在するため、読後の印象は一般的なミステリとは異なる。

シリーズキャラクターとしてはピカレスク的側面の強い探偵・メルカトル鮎と腐れ縁の売れない推理作家・美袋三条、力量はありつつも頼りない名探偵・木更津悠也と複数の意味で優秀なワトソン役の推理作家・香月実朝、更に便宜的な意味での探偵役には深甚な心的外傷を抱える現代モラトリアム青年・如月烏有がいる。

プロットにおいては、人工的な意匠と関係性、非日常性を誇張した舞台設定、様々な意味で攪乱をもたらす伏線、読者の解釈に委ねられたラディカル不確定性、そしてほぼ例外なく訪れるカタルシスと両立しないカタストロフを大きな特徴とする。

麻耶独自の特色としては、様々な予備知識を要する独特の仕掛けが挙げられる。登場人物の人名や台詞固有名詞小道具、あるいは本筋と関与しない点景などの細部に至るまで小ネタを多用しており、作品によってはそれが展開や解決の糸口にもなりうるガジェットの役割も果たす。そのネタの範囲はクラシック(作中の言及やタイトルの引用からバルトーク・ベーラヨハン・シュトラウス2世を好むと思われる)、刑事ドラマ(『隻眼の少女』に登場する刑事4名の下の名前は『特捜最前線』のレギュラー刑事から全て引用)、アニメ(代表的なものでは『機動武闘伝Gガンダム』から東方不敗マスター・アジアの台詞を引用、『美少女戦士セーラームーン』から怪人名やキャラ名を引用など)、漫画(代表として、『きんぎょ注意報』、『こどものおもちゃ』などの少女漫画から固有名詞を引用している他、『エースをねらえ!』から登場人物の関係性を敷衍させたり、闇雲A子の名は恐らく陸奥A子からの発想である等)、特撮(『兄弟拳バイクロッサー』『仮面ライダーBLACK』『鳥人戦隊ジェットマン』からキャラ名の引用、また『美少女仮面ポワトリン』『超人機メタルダー』『ウルトラマンA』など、実は一番ネタが膨大な分野)、野球(某作において作者いわく「阪神ファンには犯人がわかる」仕掛けが用いられた)、推理小説の先行作(某作では事件の根幹に関わる重要な役割を果たした)など多岐にわたる。

また『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』では全編小栗虫太郎(ことに『黒死館殺人事件』)へのオマージュと関連した名探偵の存在・謎解きの様式への問題提起を行い、『夏と冬の奏鳴曲』では探偵役が解決を明示しないという大胆な手法で本格ミステリの枠組みそのものを問い、『メルカトルと美袋のための殺人』や『名探偵 木更津悠也』では、それぞれ名探偵と事件/名探偵と助手の関係性について顛倒を試み、『貴族探偵』ではいわゆる安楽椅子探偵へのアンチテーゼを打ち出し、『神様ゲーム』ではジュヴナイルの枠組みを借りて探偵役に本来の役目を放棄させることでその存在意義を突き詰め、『隻眼の少女』では探偵の存在とロジックの関係をミステリの定石に則って懐疑的に描き、『メルカトルかく語りき』においては自身の作風を否定しかねないほどに過剰に論理性を突き詰めるなど、ミステリ小説の構造自体に対する独特の問題意識が強い。

作品リスト[編集]

メルカトル鮎&木更津悠也シリーズ[編集]

メルカトル鮎シリーズ[編集]

  • 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (1993年8月、講談社ノベルス / 1998年8月、講談社文庫)
  • メルカトルと美袋のための殺人 (1997年6月、講談社ノベルス / 2000年8月、講談社文庫 / 2011年8月、集英社文庫)※短編集
    • 収録作品:「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」「化粧した男の冒険」「小人間居為不善」「水難」「ノスタルジア」「彷徨える美袋」「シベリア急行西へ」
  • (1997年9月、幻冬舎 / 1999年4月、幻冬舎ノベルス / 2000年10月、幻冬舎文庫
  • メルカトルかく語りき (2011年5月、講談社ノベルス / 2014年5月 講談社文庫)※短編集
    • 収録作品:「死人を起こす」「九州旅行」「収束」「答えのない絵本」「密室荘」

木更津悠也シリーズ[編集]

  • 木製の王子 (2000年8月、講談社ノベルス / 2003年8月、講談社文庫)
  • 名探偵 木更津悠也 (2004年5月、光文社カッパノベルス / 2007年5月、光文社文庫)※短編集
    • 収録作品:「白幽霊」「禁区」「交換殺人」「時間外返却」

貴族探偵シリーズ[編集]

  • 貴族探偵 (2010年5月、集英社 / 2013年10月 集英社文庫)※短編集
    • 収録作品:「ウィーンの森の物語」「トリッチ・トラッチ・ポルカ」「こうもり」「加速度円舞曲」「春の声」
  • 貴族探偵対女探偵 (2013年10月、集英社)※短編集
    • 収録作品:「白きを見れば」「色に出でにけり」「むべ山風を」「幣もとりあへず」「なほあまりある」

その他の作品[編集]

単著未収録[編集]

  • メルカトル鮎シリーズ
    • 名探偵の自筆調書 其の6(講談社『IN・POCKET』1997年8月号)
    • 愛護精神(講談社『メフィスト』1997年9月号)
    • 氷山の一角(角川書店『血文字パズル』2003年2月)
    • メルカトル鮎 悪人狩り 第一話 囁くもの(講談社『メフィスト 2011 Vol.3』2011年12月)
  • 木更津悠也シリーズ
    • ヘリオスの神像(東京創元社『ミステリーズ!』Vol.04~05)
    • 二つの凶器(産業経済新聞社夕刊フジ』2005年6月7日 - 7月1日)
    • おみくじと紙切れ(光文社『宝石 ザ ミステリー』2011年12月)
    • 弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人(光文社『小説宝石』2012年10月号、2013年1月号、2013年4月号、2013年9月号、2013年11月号、2014年2月号)※不定期連載中
  • 神様シリーズ
    • 少年探偵団と神様(文藝春秋『オールスイリ』2010年11月号)
    • アリバイくずし(文藝春秋『オール讀物』2011年7月号)
    • バレンタイン昔語り(文藝春秋『オールスイリ2012』2011年12月号)
    • 比土との対決(文藝春秋『オールスイリ2012』2013年1月号)
    • さよなら、神様(文藝春秋『オール讀物』2013年10月号)
  • なんでも屋の叔父さんシリーズ
    • 失くした御守(新潮社『小説新潮』2011年3月号)
    • 転校生と放火魔(新潮社『小説新潮』2012年2月号)
    • 最後の海(新潮社『小説新潮』2013年2月号)
    • 旧友(新潮社『小説新潮』2013年9月号)
    • あかずの扉(新潮社『小説新潮』2014年2月号)
  • 化石少女シリーズ
    • 古生物部、推理する(徳間書店『読楽』2012年4月号)
    • 真実の壁(徳間書店『読楽』2012年7月号)
    • 自動車墓場(徳間書店『読楽』2012年11月号)
    • 移行殺人(徳間書店『読楽』2013年3月号)
    • 幽霊クラブ(徳間書店『読楽』2013年7月号)
    • 赤と黒(徳間書店『読楽』2014年1月号)
  • 単発作品
    • ホワイト・クリスマス(祥伝社『小説NON』1998年2月号)
    • バッド・テイスト(マガジンハウス『ウフ.』75号)

アンソロジー等採録作品[編集]

ゲーム[編集]

  • TRICK×LOGIC
    • Season1・事件ファイルNo.3「雪降る女子寮にて」
    • Season2・事件ファイルNo.7「ライフリングマーダー」

日本国外での刊行[編集]

中国大陸[編集]

  • (2011年5月、新星出版社) - 鴉
  • 独眼少女 (刊行予定、吉林出版集团有限责任公司) - 隻眼の少女

台湾[編集]

関連項目[編集]