まちづくり鶴岡

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株式会社 まちづくり鶴岡
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 日本の旗 日本
997-0035
山形県鶴岡市山王町13-36
鶴岡まちなかキネマ内
設立 2007年7月10日
業種 サービス業
法人番号 1390001008309 ウィキデータを編集
事業内容 業務委託、不動産賃貸など
代表者 代表取締役社長 木戸祐[1]
資本金 2000万円
従業員数 12人(2020年5月現在)[2]
主要株主 荘内銀行鶴岡信用金庫など
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株式会社まちづくり鶴岡(まちづくりつるおか)は、山形県鶴岡市に本社を置いた映画館運営などを手掛けていた企業。運営していた「鶴岡まちなかキネマ」は、来館者の低迷やコロナ禍もあって、2020年(令和2年)5月22日を以って閉館したが、鶴岡市社会福祉協議会が旧まちキネの建物と駐車場を取得し、2023年(令和5年)3月25日から、旧まちキネの一部の上映機能を生かした交流スペースを「新まちキネ」として活用することになった山王まちづくりが、ミニシアターとして運営を再開する。

概要[編集]

全国的な例に漏れず中心市街地が疲弊し、活性化を図ることが喫緊の課題である鶴岡市において、地元金融機関である荘内銀行の主導と鶴岡信用金庫の協力の他、鶴岡商工会議所加盟企業32社の出資を得て[3]2007年(平成19年)7月、賑わいのある住みよい中心市街地づくりを目的に設立された[4]

事業の第一弾として、2008年(平成20年)4月には銀座商店街の一角に、市内企業の共同参画方式で託児施設「つぼみ保育園」を開園[5]。さらに2010年(平成22年)5月には、山王町に映画館の「鶴岡まちなかキネマ」を開館した[6]。しかし、鶴岡まちなかキネマは来館者の低迷や設備更新が迫る中、コロナ禍による休業要請も重なり、2020年(令和2年)5月22日を以って閉館した(下記参照)。閉館後もまちづくり鶴岡は、鶴岡まちなかキネマ敷地内の他の建物を活用した賃貸業、ウェブ作成事業を当面継続するとした[2]

2021年(令和3年)8月24日、山形地裁鶴岡支部より同社を清算株式会社として特別清算手続きの開始を命じられた。(2001年9月6日発行 官報 本紙 第569号 24頁 2段落目 掲載 事件番号:令和3年(ヒ)第1001号)

鶴岡市社協が建物と駐車場を取得 事務所移転へ[編集]

閉館を受け、建物と上映機材を残してもらおうと市民有志が「まちキネの存続と再生を願う会」を結成し、2020年6月22日から署名活動を行い、8月5日に確定するまでに1万619人分の署名を集め、運営会社のまちづくり鶴岡などに市民の声として伝えた[7]。その後、鶴岡市社会福祉協議会がまちキネの建物と駐車場を取得し、事務所を移転する意向を固めたことが明らかとなった[8]。これは市が11月17日に開いた市議会に対する主要事項説明会で明らかにしたもので、現在、市総合保健福祉センター2階に事務所を置くものの手狭となり、新たな事務所用地を探していた市社協が、債権団代表の荘銀と交渉を行いそれがまとまり、来年度事業として理事会で承認されたもの[9]。市社協は市民らの声を踏まえ、映画上映機能の一部を地域社会貢献の一環で残し、建物の改装を行い事務所を移転。移転後には一部施設を映画機能付き交流スペースとして貸し出す方針で、近くの山王商店街などでつくる山王まちづくりが同スペースの運営管理に当たるとしている[8]。移転は2022年度を予定し、市は改修経費2500万円程度を補助する方針[9]

2022年(令和4年)10月14日、一部の上映機能を生かした交流スペースを「新まちキネ」として活用することになった山王まちづくりは、再オープン日を来年3月25日に決定したと発表した[10]。当初は今年12月の開館を予定していたが、資材不足などで改修工事が遅れていた為、来年2月末の完了見込みとなったという。交流スペースは、旧まちキネにあった4つのスクリーンのうち、客席が78と40の2つのスクリーンを活用するミニシアターとして運営する[10]。また再オープンを前に老朽化したデジタル映写機の更新に活用するため、旧まちキネ時代から交流があった俳優・井浦新も協力してクラウドファンディング(CF)も開始した[11]。CFは来年1月23日まで[11]

鶴岡まちなかキネマ[編集]

鶴岡まちなかキネマ
Tsuruoka Machinaka Kinema
情報
旧名称 松文産業鶴岡工場
用途 映画館
旧用途 絹織物工場
設計者 高谷時彦事務所
施工 佐藤工務 鶴岡建設 マルゴ
特定建設工事共同企業体
建築主 まちづくり鶴岡
敷地面積 10,411 m²
建築面積 1,585 m²
延床面積 1,558 m²
階数 地上1階
着工 2009年(平成21年)12月
竣工 2010年(平成22年)4月
開館開所 2010年(平成22年)5月22日
所在地 997-0028
山形県鶴岡市山王町13-36
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同市山王町で操業していた絹織物工場跡地を東北公益文科大学大学院教授を務める高谷時彦の設計をもとに[12]経済産業省の戦略的中心市街地商業等活性化支援事業による補助金を受け[13]、総事業費10億円が投じ、リノベーションを行い映画館を整備した。4つのスクリーン・総座席数437席を有し映画上映のほか、イベントなども開催していた。

しかし、来館者数が13万人の来場目標に対し、実績は8万人弱にとどまるなど低迷し[14]、施設の修繕や設備更新の再投資が必要となる中、新型コロナウイルスに伴う休業要請など厳しい状況が重なり、同業他社への売却交渉も不調と終わったため、開業10周年となる2020年5月22日に閉館した[2][15]

その後、先述の署名活動などを経て[15]2023年3月25日に座席数を縮小したミニシアターとして再オープンした。

なお、鶴岡市内には1975年昭和50年)時点で5つの映画館が存在していたが[16]、最後まで残った鶴岡シネマ旭(1974年〈昭和49年〉開業、3スクリーン)が2002年(平成14年)4月14日に閉館[17]して以降、まちキネがオープンするまでの8年間は市内に映画館が一つもなかった[15]

座席数[編集]

スクリーン 2010年 - 2020年 2023年 - 現在
1 165 -
2 152 -
3 80 80
4 40 40

脚注[編集]

  1. ^ “まちづくり鶴岡、木戸氏が新社長に就任”. 山形新聞. (2014年8月28日). オリジナルの2014年9月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140919041535/http://yamagata-np.jp/news/201408/28/kj_2014082800573.php 2014年8月28日閲覧。 
  2. ^ a b c “「「鶴岡まちキネ」22日で閉館 来館伸びず、コロナ影響も”. 山形新聞. (2020年5月20日). https://www.yamagata-np.jp/news/202005/20/kj_2020052000457.php 2020年5月21日閲覧。 
  3. ^ 「元気な街 の仕掛け人 木造映画館を回遊の核に 斜陽の商店街を刺激する 鶴岡まちなかキネマ」 『日経アーキテクチュア』 2010年9月13日号
  4. ^ “中心市街地へにぎわい「株式会社まちづくり鶴岡」創立 活性化の取り組み開始”. 荘内日報. (2007年6月28日). http://www.shonai-nippo.co.jp/cgi/ad/day.cgi?p=2007:6:28 2013年12月14日閲覧。 
  5. ^ “今月のひと 企業共同託児施設「つぼみ保育園」運営 株式会社「まちづくり鶴岡」保科正彦社長”. WEB労働やまがた. 山形県商工労働観光部雇用労政課. (2008年9月). オリジナルの2013年9月20日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130920133452/http://archive.labor-yamagata.jp/back/200809/kongetu.html 2013年12月14日閲覧。 
  6. ^ 「8年ぶりに銀幕復活「まちなかキネマ」がオープン 鶴岡」『河北新報』 2010年5月24日
  7. ^ “5月に閉館の鶴岡「まちキネ」機材残して 署名1万619筆集まる”. 河北新報. (2020年8月7日). https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202008/20200807_55016.html 2020年11月26日閲覧。 
  8. ^ a b “「鶴岡市社協が旧まちキネ活用 事務所移転、一部映画機能付きスペースに”. 荘内日報. (2020年11月18日). http://www.shonai-nippo.co.jp/cgi/ad/day.cgi?p=2020:11:18:10105 2020年11月26日閲覧。 
  9. ^ a b “鶴岡まちキネ、建物存続へ 市社協が取得方針、上映機能を維持”. 山形新聞. (2020年11月18日). https://www.yamagata-np.jp/news/202011/18/kj_2020111800352.php 2020年11月26日閲覧。 
  10. ^ a b “鶴岡まちキネ再オープンへ 映画上映機能付き交流スペース 2スクリーン活用 来年3月25日に”. 荘内日報. (2022年10月16日). https://www.shonai-nippo.co.jp/cgi/ad/day.cgi?p=2022:10:16:11365 2022年10月22日閲覧。 
  11. ^ a b “新まちキネ、3月開業へ 鶴岡・CF開始、井浦さんも協力”. 山形新聞. (2022年10月15日). https://www.yamagata-np.jp/news/202210/15/kj_2022101500360.php 2022年10月22日閲覧。 
  12. ^ 「鶴岡まちなかキネマ」『新建築』 2010年6月号
  13. ^ 平成21年度戦略的中心市街地商業等活性化支援事業の採択について - 経済産業省東北経済産業局 2009年11月13日(2011年5月6日時点のアーカイブ
  14. ^ “「まちづくり鶴岡」が映画館閉館 私的整理へ コロナ追い打ち”. 日本経済新聞. (2020年5月19日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59297060Z10C20A5L01000/ 2020年5月21日閲覧。 
  15. ^ a b c 柏崎幸三 (2022年8月11日). “「まちに映画館は必要だ」商店街と市民の力でミニシアター復活へ 山形・鶴岡”. 産経新聞 (産経デジタル). https://www.sankei.com/article/20220811-VI2QG7ZOZBJKBLJNYKTP3ZPX2A/ 2024年3月15日閲覧。 
  16. ^ 日本映画製作者連盟配給部会『映画年鑑 1975年版別冊 映画館名簿』時事映画通信社、1974年。
  17. ^ 鶴岡と酒田の『シネマ旭』、14日で閉館へ 庄内の娯楽担った映画館が消滅『毎日新聞』2004年4月14日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]