鬼谷子

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鬼谷子

『鬼谷子』(きこくし)は、諸子百家の一つで、中国戦国時代に鬼谷(鬼谷子)によって書かれたとされる書。遊説の方法について書かれている。

概要[編集]

鬼谷はの地)の人であるが、稷下の学士であったかどうかは不明であり、専門といえば国際外交のような謀略である。学問というよりは、術のようなものに属していた。

史記』によると、鬼谷は縦横家蘇秦張儀の師とされるが、鬼谷個人の伝はなく、その実在が疑われている。また『鬼谷子』は『隋書』「経籍志」に初めて登場し、『漢書』「芸文志」では確認出来ない為、後人の仮託とする説が有力である。一方で『漢書』「芸文志」に蘇秦の著作『蘇子』がありながら、『隋書』「経籍志」には登場しない事から、欧陽脩のように『鬼谷子』を蘇秦の作と考える者もいる。また『鬼谷子』には物語のような話が多いことから、近代の疑古派史家の中には前記のような『鬼谷子』を蘇秦の作とすることから発展し、鬼谷も蘇秦も実在しなかったという説がある。おそらく『鬼谷子』の物語のような要素は、後の時代の人が創り出したとも考えられる。

道教では鬼谷子を「古の真仙」とみなし、人間界で100歳あまり生き、その後は分からないとしている。本の『鬼谷子』は道教の経典『道蔵』に保存されている。民間の伝説では鬼谷子は占い師の開祖であり、道教では鬼谷子を玄都仙長と尊称する。『孫龐演義』という通俗小説では、孫臏龐涓の師としている。

構成[編集]

全23篇。

  1. 捭闔
  2. 反応
  3. 内揵
  4. 抵巇
  5. 飛箝
  6. 忤合
  7. 符言
  8. 転丸(失われた)
  9. 胠乱(失われた)
  10. 盛神法五龍
  11. 養志法霊亀
  12. 実意法螣蛇
  13. 分威法伏熊
  14. 散勢法鷙鳥
  15. 転圓法猛獣
  16. 損兌法霊蓍
  17. 持枢
  18. 中経

翻訳[編集]

  • Hui Wu, Guiguzi, China's First Treatise on Rhetoric: A Critical Translation and Commentary, Southern Illinois Univ Press, 2016.

参考文献[編集]

  • 大橋武夫著『鬼谷子:国際謀略の原典を読む』(徳間書店、1982年) ISBN 4192425963
  • 酒井洋著『鬼谷子の人間学:孫子が超えられなかった男:より巧みに生きる縦横学的発想のすすめ』(太陽企画出版、1993年) ISBN 488466213X
  • 佐藤仁「鬼谷子について」(『九州大学大学院人文科学研究院哲学年報』18、1955年)
  • 緒方優子「「鬼谷子」考:史書の記録と伝説」(『筑紫語文』13、2004年)
  • 陳舜臣『中国の歴史 2 大統一時代 漢王朝の光と影』平凡社、1986年4月、124頁。ISBN 978-4-582-48722-0 

関連項目[編集]