首都圏大規模停電
首都圏大規模停電(しゅとけんだいきぼていでん)は、2006年8月14日、日本の東京都23区東部とその周辺139万世帯の住宅や鉄道などに電力が供給されなくなった出来事である。三国屋建設所有のクレーン船のアームが架線に触れ切断した事故による[1][2][3]。
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[編集] 概要
2006年8月14日の日本標準時午前7時38分頃に、旧江戸川を航行中のクレーン船がアームを江東線78、79号鉄塔間の送電架空線に接触させ、これを切断[1]。これにより東京都心部で97.4万軒、神奈川県横浜市北部・川崎市西部で22万軒、千葉県浦安市、市川市の一部で19.7万軒、合計約139.1万軒で停電が発生した[1]。件数としては1987年7月に発生した停電の際の280万件に次ぎ、史上2番目に多く、電力量では過去4番目となったが、大手会社の多くがお盆休みとなっている時期のため、電力需要が通常より低下していたこともあり、およそ1時間17分後の9時55分に高圧受電2軒を除いた全てが復旧、残る2軒も3時間6分後の午前10時44分に全面復旧した[1][3][4]。
停電による信号機の停止を始め、鉄道に影響が出たほか、ビルのエレベーターに人が閉じ込められる事故が相次いだ[5]。電力の暫定復旧後も電力供給が十分でなかったことから、交通機関では冷房の出力を弱めて運行が行われた。
携帯電話が繋がり難くなり、ひかり電話が一時不通になった。日本政府は、危機管理センターに情報連絡室を設置した。
千葉県警は器物損壊罪や電気事業法違反容疑を視野に入れて捜査を行ったが、故意犯ではない事故として同年9月に立件を見送っている。同年9月22日、横浜地方海難審判理事所は、横浜地方海難審判庁に海難審判開始を申し立て、2007年3月1日、作業責任者のクレーン船の船長に2ヶ月の業務停止命令、クレーン船を牽引していた船長には1ヶ月半の業務停止命令、クレーン運転士には勧告、三国屋建設には指導是正の勧告が下った。
[編集] 原因
停電の理由は、三国屋建設が所有するクレーン船が、アームを上げたまま河川を航行し、旧江戸川上の基幹的な送電線を切断したこと[1][6][3]。現場の位置は、東京ディズニーリゾートのそばである(外部リンクに地図がある)。本来、曳航中のアーム展開は禁止されている。
千葉県警察|千葉県警浦安署などの調べによると、三国屋建設が所有する、アーム長33mのクレーン船(法令上は移動式クレーン)のアームを、浚渫現場に到着後すぐに作業にかかれるよう、曳航中に動かした(上げた)ため、旧江戸川上の高さ16mの位置にある27万5000ボルト(275kV)の高圧線に接触・破損した、とされる[3]。
破損した高圧線は、千葉県船橋市にある「新京葉変電所」と東京都江東区の「江東変電所」、さらに横浜市青葉区の「荏田変電所」を結ぶ、「江東線」と呼ばれる27万5000ボルトの特別高圧送電線で[3]、接触により本線とバックアップ用の2系統がともに遮断されてしまったため[7]、午前7時38分から、東京都心部14区1市の約97万4000世帯、神奈川県横浜市、川崎市の約22万世帯、千葉県浦安市、市川市の約19万7000世帯、計約139万世帯が停電した[1]。
[編集] 影響
[編集] 政府機関
午前8時30分、日本政府は、首相官邸内の危機管理センターに情報連絡室を設置した。安倍晋三官房長官(当時)が関係省庁に原因究明を指示、経済産業省原子力安全・保安院が電気事業法に基づき、東京電力に発生原因および影響範囲を調査報告するよう指示した[8]。
[編集] 鉄道
- 鉄道路線が停電した地域全般でしばらく列車運行が停止され、約34万5,000人の足に影響が出た[5]。
- JR東日本 - 京葉線で約20分間の運行停止、上下線10本運休、20本に最大42分の遅れ、約1万9,000人に影響[5]。同社では使用電力の多くを自社所有の発電所から給電しているため、影響は軽微であった。
- 東京地下鉄(東京メトロ) - 銀座線、日比谷線、東西線、半蔵門線の各線が最大1時間10分列車運転見合わせ、約10万3,000人に影響[5]。当時副都心線は未開業。
- 都営地下鉄 - 新宿線、浅草線、三田線で列車運行が一時停止[5]。
- 横浜市営地下鉄 - 現在で言うブルーラインで午前7時40分から約10分間列車運転見合わせ。なお、グリーンラインは当時未開業。
- ゆりかもめ - 東京臨海新交通臨海線は停電開始から午前10時30分まで列車運行停止[5]。レインボーブリッジ上で停止した列車では乗客が降車し、徒歩で渡橋。
[編集] 道路
東京都23区で440箇所、千葉県で118箇所の信号が停止。警視庁、千葉県警察の警官が交差点で交通整理に当たった。
[編集] 企業
交通機関停止の影響で、職場に遅刻する従業員が多く発生した上、多くの駅、オフィスビルも停電し、業務不能となる企業、事務所が多数発生した。ただし、この日はいわゆる「お盆休み」に入っている事業所も多かったため、通常の平日に停電が発生した場合に比べれば少ない被害であった。
[編集] 通信
携帯電話各社が設置した屋内基地局約300箇所が不通となり、しばらくの間携帯電話が通じにくくなった。
[編集] 流通
セブン-イレブン約200店舗、ローソン約30店舗に影響。西友三軒茶屋店で約1時間営業休止。
[編集] 製造業
東京都江戸川区の王子製紙江戸川工場は、機械の停止により復旧に約10時間を要した。千葉県市川市の日新製鋼市川製造所もしばらく停止した。
[編集] 金融機関
東京証券取引所は通常通りの取引を行ったが、日経平均株価の計算ができなくなった。1都2県のATM約1000台が一時停止、特にコンビニエンスストアに端末のあるセブン銀行では復旧に2時間半を要した。
[編集] その他
停電によりエレベーターが停止、人が内部に閉じ込められるケースが70件以上発生した。東京ディズニーリゾートでは開園を約50分遅らせ、アトラクションを一時中止した。千葉県内で一時断水したほか、東京都内では一部水道水が濁る事態も発生した。大停電を引き起こした三国屋建設株式会社は孫請であり、元請の大林組は、2日後に予定されていた習志野市から発注を受けていた他の工事について辞退した。
[編集] 脚注
- ^ a b c d e f “クレーン船の接触に伴う当社特別高圧送電線損傷による停電事故について”. 東京電力 (2006年8月14日). 2012年1月16日閲覧。
- ^ “今回の接触事故による弊社の賠償責任について”. 三国屋建設 (2006年8月16日). 2012年1月16日閲覧。
- ^ a b c d e “「クレーン船接触に伴う,275kV江東線1,2号の設備損傷ならびに江東変電所ほか供給支障事故報告書」ならびに「電気関係事故報告」の提出について”. 東京電力 (2006年8月24日). 2012年1月16日閲覧。
- ^ “江東線損傷による停電事故の復旧経過”. 東京電力 (2006年8月24日). 2012年1月16日閲覧。 (PDF)
- ^ a b c d e f “全面復旧 東京・神奈川・千葉の140万戸が停電…クレーン船の接触が原因”. 読売新聞社. (2006年8月14日)
- ^ “たった1か所の送電線で 真夏の大停電、猛暑の首都混乱”. 読売新聞社. (2006年8月14日 13時52分)
- ^ “8月14日に損傷された当社特別高圧送電線「江東線」の復旧について”. 東京電力 (2006年8月17日). 2012年1月16日閲覧。
- ^ “大規模停電対策に関する関係省庁連絡会議”. 内閣官房 (2009年4月24日). 2012年1月16日閲覧。 (PDF)
[編集] 参考文献
- “大規模停電対策に関する関係省庁連絡会議”. 内閣官房 (2009年4月24日). 2012年1月16日閲覧。 (PDF)