風車 (将棋)

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風車(かざぐるま、風車戦法)は、将棋戦法の一つ。将棋棋士伊藤果居飛車穴熊への対策として考案し[1]、多用したことで知られるが、他の棋士はあまり指さない。飛車を下段に引き、状況に応じて左右にクルクルと転回することから名づけられた。

概要[編集]

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ツノ銀中飛車から基本形1ないし2の形へと移行することや右玉の形から移行することになることが多い。飛車は図の基本形では5筋に配置されているが、特に中飛車と言ったくくりではなく、8筋でも2筋でも自由自在に転回し[2]、玉も▲5八~▲4九~▲3八を行ったり来たりし、それに応じて右金も▲4八~▲3八を行ったり来たりする。角も▲5七~▲6八を行ったり来たりすることが多い。香車は8段目に上がることもある。

持久戦志向であり、相手からの攻めに対して柔軟に対応可能なことを特長とする。相手の無理攻めをとがめて反撃をもくろむ。一方、自分から攻めることが難しい。伊藤果によると「戦わない! 攻めない! 千日手だっていい!」という精神とされている。

創成期頃の1983年のレポートでは、この戦法を非常に忍耐力が要求される伊藤ならではの戦法と言え、この戦法で勝ちまくってる頃に自ら動こうとしないまったく消極的な指し方だなどと批判の声があったとされるが、勝負の世界は勝てば官軍で、それよりもプロ感覚では考えられない指方を案出しひとつの立派な戦法に仕上げた意義をたたえるのが本筋としている [3]

プロ棋士である森内俊之の証言によれば、この戦法は伊藤以外が指しこなすことは難しく、公式戦ではほとんど見られない。また伊藤は、この戦法を指すために将棋を指している、と語っているとしている。堅くはないが隙がなく攻めにくい形で、少しずつポイントを上げていく将棋になるようだ[4]

その後、若干攻めを取り入れた新風車も提唱されている。

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駒落ち将棋における風車[編集]

伊藤は自著で[5]戦法開発のきっかけとなったのは二枚落ちの下手が上手をてこずらせていた類似の構えからとしている。そのため、下手側が相手の攻めを待つまでひたすら受けに回った場合、二歩などの反則を犯すか、あるいは千日手になるか、下手側が致命的なミスをしない限り、いつまでも終わらない状況になり、本来ならば二枚落ちよりもさらに大きなハンデが必要なほどに棋力差が開いていた場合でも上手側の勝利が非常に難しくなる[5]

脚注[編集]

  1. ^ 将棋世界」(日本将棋連盟)2000年1月号付録
  2. ^ 『日本将棋用語事典』
  3. ^ 高橋道雄「緊急レポート居飛車vs振飛車プロ間における最近の序盤傾向の研究」第2回 三間飛車中飛車編(『将棋世界』1983年2月号所収)
  4. ^ 『日本将棋用語事典』p.42- 「名棋士の談話室 森内俊之」
  5. ^ a b 伊藤 (1994)

参考文献[編集]

  • 伊藤果著、週刊将棋編『伊藤果直伝! 風車の美学』毎日コミュニケーションズ、1994年、ISBN 4-89563-601-1
  • 原田泰夫 (監修)、荒木一郎 (プロデュース) 著、森内俊之ら 編『日本将棋用語事典』東京堂出版、2004年。ISBN 4-490-10660-2 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]