項 (言語学)

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(こう、argument)は、言語学における統語論の用語。語彙範疇名詞形容詞動詞など、単なる文法機能以外に独自の意味をもつまたはそれと同等の機能)によって選択されている要素。論理学における同名の用語に由来する。論理学で「述語」が一定個数の「項」を要求するように、個々の語彙範疇によって異なる数の項が要求され、必要な数の、それぞれ適切な特徴を備えた項があって語彙範疇は充足される。

動詞に関しては、主語目的語補語などと呼ばれるもの(明示されるとは限らず、動詞の変化や文脈で表されることもある)に相当する。

項に対して、語彙範疇によって選択されていない要素で文に生起している要素を付加詞(adjunct)という。これは伝統的に修飾語と呼ばれているものにほぼ相当する。

また、文の階層構造の中で「潜在的に項が生起する位置である」という位置を項位置(または、A位置)といい、項ではないがさまざま特徴を項と共有し、述部との一致を引き起こす虚辞が現れる場合がある。

項の特徴[編集]

  1. 選択された項がないと不適格となる。
    「会う」という動詞は二つの項を選択する。適切な二つの項を持った「H教授がK研究員に会った」または「H教授がK研究員と会った」はよいが、「K研究員に会った」または「K研究員と会った」は主語空代名詞としてのみ解釈可能で、しばしば「誰が?」という反問誘発を起こす。
  2. wh移動(英語などで疑問詞が文頭に出る現象)において、島(従属節など)から摘出しても付加詞ほどの逸脱性を示さない。
  3. 主辞内在関係節は項位置にのみ生起可能である。

内項と外項[編集]

項は、統語的に語彙範疇により近い位置に生起する内項(意味上の目的語)と、より遠い位置に生起する外項(意味上の主語)とに分類されることがある。これらは、文の表面的な主語目的語と項の意味役割がしばしば一致しない場合などに有効な概念である。

たとえば、主格・対格言語の一般的な他動詞においては主語が外項、目的語が内項となるが、自動詞の場合は同じ主語でも非能格自動詞(意志的な動作を表す)の場合は外項が主語となり、非対格自動詞(意志的でない状態や現象を表す)の場合は内項が主語となる[要出典]

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太郎が[外項] 時計を[内項] 壊した。
太郎が[外項] 走った。
時計が[内項] 壊れた。

関連項目[編集]