韓洪九

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韓洪九(ハン・ホング、한홍구、Han Hong-goo、1959年7月16日 - )は、大韓民国聖公会大学校教養学部教授、歴史家でありリベラル派知識人の一人。自身のハンギョレ新聞連載コラムを書籍化した『韓洪九の韓国現代史』などの著作がある。

政治的スタンス[編集]

韓洪九は典型的な韓国リベラル派の論客とされる。近現代の日本の韓国植民地支配とそれに伴う慰安婦強制連行皇民化政策などの政策には否定的であり、徹底した補償と謝罪を求めている。これだけならば殆どの韓国の知識人に共通であるが、韓はリベラル派として過去の軍事独裁政権に対しても非常に厳しい批判を加えている。

ベトナム戦争派兵問題[編集]

韓は朴大統領のベトナム戦争派兵問題に対しては特に手厳しい。彼は自著『韓洪九の韓国現代史』でベトナム戦争に対し冷戦下の代理戦争としての側面よりもアメリカの植民地解放運動抑圧としての面を重視し、日本による侵略と植民地支配に苦しんだ韓国の近代史と重ね合わせながら、朴大統領を批判している。ベトナム戦争における韓国軍の虐殺、婦女レイプ問題の謝罪と補償を求める運動の指導者でもあり、2001年には金大中大統領(当時)のベトナム大統領への謝罪と補償を引き出すなど一定程度の成果を挙げた。[1]しかし韓自身はこの結果を不充分とし、韓国民全てがベトナム人に対して犯した罪悪を自覚するまでこの問題は終わらないと述べている。また『韓洪九の韓国現代史』日本語版序文では、自身がこの問題に関わることを通じて、日本による韓国植民地支配とそこで起こった悲劇、韓国軍事独裁政権の圧政とベトナム人虐殺などといった罪悪は偏狭な民族主義(反日/嫌韓)によってではなく、人類共通の民主主義の基準に依り裁かれるべきだと悟ったと記し、偏狭な反日意識を脱そうとする切っ掛けとなったことを述べている。

韓国軍問題[編集]

韓は韓国軍が行った民主化運動弾圧事件、朝鮮戦争中の民間人虐殺などに対しても厳しい批判を行っている。近年に至るまで反共の空気の中で軍批判はタブー視されており、朝鮮戦争は北朝鮮のみが一方的に悪いものとされていた。韓は朝鮮戦争中の韓国軍の民間人虐殺やそれ以前の済州島四・三事件などを取り上げ、韓国軍の非人道的性格を批判した。また兵役制度に対しても、良心的兵役拒否を認めるべきだとしている。

親日派問題[編集]

韓はまた親日派に関しても厳しい批判を行っている。直接には彼等が日本の韓国植民地統治に協力し、慰安婦や労働者の強制連行、皇民化政策推進などに関与したためであるが、それだけでなく解放後親日派とその流れを汲む人々が韓国軍事独裁政権のエリートとして君臨し、かつての植民地支配体制なども参考にしつつ韓国民への抑圧的支配を行ったためでもある。

太陽政策問題[編集]

韓は太陽政策擁護派である。北朝鮮の抑圧的政治体制は批判しつつも、彼はそれが生じた歴史的背景を重視し、安易な強硬策は問題解決には繋がらないと主張している。

批判[編集]

韓は主に軍事独裁政権の流れを汲む韓国右派から厳しく批判されている。一部には彼を『左翼』『アカ』呼ばわりする声もあるが、左派からも韓への批判は少なくない。ここでは右派非右派、国内国外問わず彼に対する主な批判を記述する。

ベトナム戦争派兵問題[編集]

これに関してはベトナム戦争を『共産主義反動勢力に対する十字軍』(韓国戦争記念館にはこのような記述が実際にある。)とする韓国右派から凄まじい非難を浴びている。実際韓も関与したベトナム戦争における韓国軍の蛮行特集[2]を掲載したハンギョレ新聞には退役軍人2000人余りが押しかけ、新聞社の機材を破壊するなどの行動を行った。続く公開討論会ではベトナム参戦兵達から『アカ』『ベトコンと同じ。』『戦場だったら撃ち殺す。』等の過激な非難も浴びることになった。現在でも韓国は国家保安法の規定に依り社会主義、共産主義思想はタブーとされており、共産主義と結合したホー・チ・ミン等のベトナムの独立運動勢力に対しては肯定的評価を与えづらい空気が根強く存在している。

親日派問題[編集]

親日派問題に関しては、そもそも彼等が対日協力に走らざるを得なかったのは大日本帝國の植民地統治による圧力が根本的原因であり、韓の様な人物はそれを無視して過剰に親日派を攻撃しているとの批判が存在している。[3]日本の戦争責任の問題でも同様の問題が存在しており、原因となった指導者の責任を重視するのか全ての関係者の責任を追及すべきかの点でリベラル派の間でも対立が見られる。軍事独裁との関連から言えば、結果的に親日派が軍事独裁政権に深く関わっていたにせよ両者は別個の問題であり、過度な一体視は不適切であるとの意見もある。

対北朝鮮問題[編集]

韓は北朝鮮に対し比較的『甘い』とされているが、このことから北朝鮮の圧政を厳しく非難する日本国内のリベラル派からは『民族主義反動』ではないかという強い批判もある。大日本帝国の植民地支配であれ金王朝の支配であれ、抑圧的政治には反対すべきとするリベラル派の理念からすればある程度筋の通った反論といえる。

参照[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]