韓医学

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韓医学(かんいがく)とは、伝統中国医学の系譜で、朝鮮半島で使用された医術・薬学を便宜上(後述)呼ぶ、いわゆる呼び名である。。韓医方(かんいほう)ともいう。


名称[編集]

以前は漢医学(かんいがく)・漢方医学(かんぽういがく)とも呼ばれていたが、大韓民国(韓国)では1986年、民族的なアイデンティティの高まりを受け、漢字表記を「韓医学」と新規に名乗るブームが起き、以降そう呼ばれるようになった[1]だけであり、伝統的な名称ではない。また古くは半島諸国において東医学(とういがく)・東方医学(とうほういがく)と呼ばれた医学系統があり、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)では長らくこの呼称を用いていたが、韓国と同様な理由により1993年に「高麗医学」に変更した。広義の韓医学は、古代以来中国より導入され用いられていた漢方医学も含めた、朝鮮半島で行われた医学全体を指す場合もある。(ただし、民俗医療はこれに含まない。)


韓方とは”韓国伝統の医学”を意味しない。最近、諸所においてこれらを混同するように書かれることがあるが、韓方とは”韓国方式で作る”という意味でしかなく、故に韓方という単語は”韓国の伝統医学”を意味していない。

韓方とはせいぜい漢方の材料、人参、ヨモギ、薬草など黄土などを韓国の方式に則って作った、という意味でしかなく、韓方が韓国の医学を意味する言葉としては韓国国内ですら使用していない現状に注意したい。つまり、韓方と韓医学とは同じ意味ではなく、病院は韓医院、医者は韓医者という事であり、韓方とは韓国医学を指す言葉ではなく”韓国の”程度の意味でしかない。たとえば韓方料理という場合、韓国医学とは全く関係がない。健康食とされる韓方参鶏湯とはつまり、漢方材料を韓国式(ないしは韓国で・韓国人が・韓国の食材で、程度の意味で)で調理する、というだけである。韓方食品とはつまり”韓国の方法で調理した”の意味であり医学とは関係がない。


歴史[編集]

韓医学は、中国からの影響を受け、朝鮮半島独自の疾病・薬物などを取り入れ発展した、現代の大韓民国は主張するが、三国時代、統一新羅時代、朝鮮半島諸国において実存する書籍は皆無である。唯一、朝鮮半島の医方を伝えているといわれる書に、日本の円融天皇時の永観2年(984年)に丹波康頼の著作『医心方』があるのみである。医心方は、平安時代に当時の中国医学の知恵を中国由来の文献から集大成し、天皇に献上された日本最古の医学書であるが、朝鮮半島の文献を引用したのではないかと思われる箇所が稀少例[2]見られる。

高麗時代には、特に庶民救済のため、済危宝(ko:제위보)・東西大悲院(ko:대비원)・恵民局(ko:혜민국)が置かれ、現存する朝鮮最古の医学書『郷薬救急方』(ko:향약구급방)(高宗時代 13世紀後半)[3]が編まれた。

李氏朝鮮時代において一般的に韓医学の恩恵に浴する事ができたのは王族・両班と中人階級だけであり[要出典]、一般庶民はもちろん一部の両班(王族も含む)の間でも鬼神信仰にもとづく朝鮮独自の民俗医療が行われていた。李氏朝鮮時代では、太宗の時に医女制度が創始され、世宗の時には『郷薬集成方』と『医方類聚』が編集されたが、燕山君時代に入ると衰退し、中宗時代に入ると医学そのものに取って代わられ韓医学は完全に廃れてしまう。女真族の侵入や日本との軋轢などにより、明薬の輸入が不安定な時代が続くと明医学の持続が困難になり、韓医学が再び復活するが明医学の強い影響を受けている。宣祖の時代になると、許浚によって評価の高い『東医宝鑑』が編纂され、許任の鍼灸法や舎巖道人の新しい鍼灸補瀉法が創始された。19世紀になると、より実証的で科学的な医学が生まれ、李済馬ko:이제마)の『東医寿世保元』(ko:동의수세보원)(1894年)からは、人間の体質を太陽人、太陰人、少陽人、少陰人に分ける四象医学ko:사상의학)が創始された。朝鮮では、許浚・舎巖道人・李済馬が朝鮮時代の三大医学者とされている。

李氏朝鮮後期から末期に入ると韓医学は衰退の一途をたどり、開国後は西洋医学の流入により完全に衰滅し、朝鮮半島において韓医学(特に李氏朝鮮前期)の多くの古医書が逸失している。しかしながら、大韓民国の時代に至り、再び脚光を浴び、多くの韓方医院などが作られ復権している反面、その多くは中医学と区別することが難しいのが実情である。

2008年6月18日、大韓韓方医協会は「WHOの“鍼灸経穴部位の国際標準”に韓国の鍼術方法が採択された」と発表した[4]。この発表は国際問題化し、WHOと中国が反発、WHOが韓国にかわりに中国に謝罪した[5]


脚注[編集]

  1. ^ “정체성 찾자” 자부심 커진 한국인의 이름 바꾸기 확산(「正体性捜そう」自負心大きくなった韓国人の名前変え拡散)주간조선(週刊朝鮮) 2008.01.21
  2. ^ http://www.hum.ibaraki.ac.jp/mayanagi/paper01/ishinhoBencao.htm
  3. ^ 初刊本は現存せず、現存するのは日本の宮内庁が所蔵する1417年の再刊本のみ
  4. ^ WHO、韓国の鍼術を国際標準に 中央日報日本語版 2008年6月19日
  5. ^ 「韓国鍼灸が国際基準」発言にWHOが不快感、韓国側に抗議!?―中国メディアレコードチャイナ 2008年7月4日