非公開会社

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非公開会社(ひこうかいかいしゃ)とは、公開会社ではない会社。閉鎖会社と呼ばれることもある。

日本の会社法では定款で全部の株式について譲渡制限が設けられている株式会社のことであり法文上は公開会社でない株式会社と表現される[1]。また、イギリスの2006年会社法では非公開株式会社のほかに非公開保証有限会社という会社の形態がある[2]。なお、アメリカでは州法に株主数等による閉鎖会社[注釈 1]の定義がある場合があるため[3]、州によっては公開会社にも閉鎖会社にも当たらない中間的な会社が多数存在する[4]

定義としては「社員の持分(株式)を取引することのできる市場が存在しない会社」であり、持分が非公開という意味である。「非公開」という用語は単にこの意味を示すに過ぎない(多くの非公開会社の存在は公にされている。)。

概説[編集]

公開会社[注釈 2]とは一般には株式を自由に譲渡でき株主が不特定多数かつ広範囲に分布する会社をいう[5]。これに対して経営支配権の奪取などのリスクを避けるため株式の公開をしていない会社が非公開会社である[6]。日常語では株式の公開と株式の上場(公開会社と上場会社)を区別せずに用いることがあるが、上場会社は株式が証券取引所に上場されているか否かによる分類であり、法令上の公開会社の定義(日本の会社法では定款にその発行する全部又は一部の株式の内容として株式譲渡制限の定めを設けていない株式会社)とは異なる[7]。小規模な株式会社などでは創業時の出資者やその関係者のみが株式を所有していて、株式の自由な譲渡ができないことが多く、このような会社は経済学などでは私的所有会社[注釈 3]と呼ぶこともある[5]

少数の株主のみで構成されるこれらの会社は閉鎖会社[注釈 1]ともいい次のような特徴がある[8]

  1. 株主が比較的少数で株式の公開取引を行う市場は存在しない[8]
  2. 会社の経営に関する決定は支配的株主(または全株主)の意向と強い関連性がある[9]
  3. 多数派株主は経営権を重視しており配当に対して興味を示すことは少ない[9]
  4. 会社の経営では形式にこだわらない業務遂行がとられる傾向がある[9]
  5. パートナーシップに似た形態であり株主は仲間となる他の株主を誰にするか発言権を持つことを欲し、株主を会社の経営陣に限定しようとする傾向がある[9]

各国の非公開会社[編集]

アメリカ[編集]

米国法では公開会社は一般的に自社の株式を異なる投資家によって広く保有されている株式会社をいい、連邦証券取引委員会等の規定により一定の開示義務が適用される会社をいう[10]

一方、閉鎖型の会社は閉鎖会社[注釈 1]あるいは閉鎖的保有会社[注釈 4]などという[8]。アメリカでは州法で株主数などにより閉鎖会社が定義されている場合があり、一部の州ではさらに株式の譲渡制限等を閉鎖会社の要件とする州もある[3]。そのため、公開会社の定義にも閉鎖会社の定義にも当てはまらない中間的な会社が多数ある[4]。いくつかの州では閉鎖会社について特別法を設けている[8]

イギリス[編集]

イギリスの2006年会社法のモデル定款には公開会社、非公開株式会社、非公開保証有限会社の3つがある[2]。原則として公開会社でない会社は非公開会社である[2]

イギリスの非公開会社では私的手段による資金調達が許されている一方、一般人に対して直接あるいは売買を通じて会社の株式を引き受けるよう勧誘することが認められていない[2]。非公開会社の取締役の最低員数も法律上は1人でよいとされている[2]

日本[編集]

日本の会社法では株式会社の一種であり公開会社でない株式会社のことをいう。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b c : close corporation
  2. ^ : publicly held corporation
  3. ^ : privately held corporation
  4. ^ : closely held corporation

出典[編集]

  1. ^ 高橋裕次郎『すぐに役立つ株式会社のための定款作成実務マニュアル』2006年、19頁
  2. ^ a b c d e 英国会社法改正”. JETROロンドンセンター. 2018年10月14日閲覧。
  3. ^ a b ロバート・W・ハミルトン『アメリカ会社法』木鐸社、1999年、259頁
  4. ^ a b ロバート・W・ハミルトン『アメリカ会社法』木鐸社、1999年、29頁
  5. ^ a b 杉江雅彦ほか『証券論25講』晃洋書房、1989年、69頁
  6. ^ 杉江雅彦ほか『証券論25講』晃洋書房、1989年、71頁
  7. ^ 神田秀樹『法律学講座双書 会社法 第18版』弘文堂、2016年、30頁
  8. ^ a b c d ロバート・W・ハミルトン『アメリカ会社法』木鐸社、1999年、242頁
  9. ^ a b c d ロバート・W・ハミルトン『アメリカ会社法』木鐸社、1999年、243頁
  10. ^ ロバート・W・ハミルトン『アメリカ会社法』木鐸社、1999年、262-263頁