青木ヶ原

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
青木ヶ原の原生林。昼間でも奥に入ると薄暗い。

青木ヶ原(あおきがはら)は、山梨県富士河口湖町鳴沢村にまたがって広がる原野で、富士山の北西に位置する。

青木ヶ原樹海(あおきがはらじゅかい)・富士の樹海とも呼ばれ、山頂から眺めると木々が風になびく様子が海原でうねる波のように見えることから「樹海」と名付けられたという説もある。樹海の歴史は約1200年とまだ浅く、若い森である。

富士箱根伊豆国立公園に属し、富士山原始林及び青木ヶ原樹海という名称で、国の天然記念物に指定[1]されている。このほか国立公園の特別保護地域および特別地区に指定されている。そのため、林道から外れての入林は自然公園法・文化財保護法違反となり禁止されている。

地理[編集]

西湖の西側が青木ヶ原樹海
精進湖の南東側が青木ヶ原樹海
本栖湖の北東側が青木ヶ原樹海

標高は920m-1300m付近。面積はおよそ30平方キロメートルで、これは山手線に囲まれた面積に匹敵する。実際よりも広大なイメージを抱いて「富士の裾野」と表現する人もいるが、裾野全体に広がっているわけではないので、これは誤りともいえる。

貞観6年(864年)に、富士山の北西山麓で大規模な噴火活動(貞観大噴火)が発生した。流れ出た膨大な量の溶岩は森林地帯を焼き払った末に、北麓にあった広大な湖・剗の海に達し、大半を埋没させた。やがて溶岩地帯には、1200年の時を経てツガヒノキを中心にハリモミヒメコマツアカマツなどの針葉樹ミズナラなどの広葉樹混合林である原始林が形成された。植物の垂直分布では落葉広葉樹が発達する山地帯にあたるが、水分や養分の少ない溶岩質の土壌であることから針葉樹が発達している。人為的攪乱の加わっていない原生林であると考えられているが、伐採が行われていた可能性が指摘され、石塁も発見されている。周辺には風穴と呼ばれる洞穴を始め、溶岩洞などが数多くある。

溶岩流の端には西湖精進湖本栖湖がある。864年の噴火以前には現在の青木ヶ原の地に剗の海(せのうみ)という大きながあったが、溶岩流でその大部分が埋め立てられた末に西湖と精進湖とが残った。このいきさつは日本三代実録に記されている(→剗の海および富士山の噴火史#略年表を参照)。また紀元前4,000年紀に起きた噴火以前には、剗の海と本栖湖とを隔てる溶岩塊も存在せず、両者はひとつの大きな湖であったとされる。

樹海の中には国道139号などが通っている。樹海そばにある三湖台を登ると、頂上からは樹海が見渡せる。

観光地としての青木ヶ原[編集]

近くにキャンプ場や公園があり、青木ヶ原を通り抜けられる遊歩道も整備されており、森林浴には最適なところである。青木ヶ原と湖と富士山からなる景観も美しい。東京圏から容易に行けることもあり、人気の高い観光地である。

反面、樹木が多く深い森であるため、少し道を外れると元の場所に戻ることが難しい。道を外れた場所の地面はむき出しの溶岩で出来ているために、大小さまざまの凹凸があるので、足をとられるなどして怪我をする可能性がある。俗説にあるような「一度入ったら出られない」ような恐ろしい場所ではないのだが、これらの危険を防ぐためには、何よりも遊歩道からそれないように心がけるなど、他の山々の森を訪れる時と同様に、ある程度は心得て行くことが必要とされる場所である。

近年は、観光者によるゴミのポイ捨てに加え、外部から持ち込まれた粗大ゴミや産業廃棄物不法投棄も多く、問題となっている。また、樹海の中でのキャンプの残骸など、冷やかしで訪れる人々によるゴミが増えている。これらのゴミは地元住民が定期的に始末しているとはいえ、他の観光地同様に、観光客のマナーが問われる問題である。さらに、溶岩を持ち帰りオークションなどへ転売する行為も行われており、溶岩を盗んだとして森林法違反などで逮捕者も出ている[2]。なお、全国の有志による清掃活動や不審者に対する見回りなどのボランティア活動も強化されている。

青木ヶ原にまつわる俗説[編集]

Aokigahara forest 03.jpg
青木ヶ原を横断する国道139号

樹海からは抜け出せない[編集]

「青木ヶ原樹海は一歩入ると出られない」という俗説があるが、先にも述べているように遊歩道もあり、案内看板も多く、近くにはキャンプ場や公園などがある観光地であり、遊歩道によりピクニックなどを楽しめる場所である。

問題なのは遊歩道を外れて森に入った場合で、遊歩道より200 - 300m以上離れた地点で遊歩道や案内看板が見えない場合は、360度どこを見ても木しかなく、特徴のない似たような風景が続いており、また足場が悪くまっすぐ進めないためなかなか元に戻れなくなる。もっとも、これは青木ヶ原樹海に限ったことではなく、深い森ならどこでも同じである。

方位磁針が使えない、電子機器が狂う[編集]

方位磁針が使えないというのは俗説である。溶岩の上にできたので地中に磁鉄鉱を多く含み、方位磁針に1・2度程度の若干の狂いは生じるが、俗に言われているように「方位が分からなくなる」ほど大きく狂うものではない(方位磁針は、人が立った状態で正しく胸の位置に持っていき使用すること)。 実際に陸上自衛隊地図とコンパスで樹海を踏破する訓練を行っている。

また、派生形として「樹海の中ではデジタル時計の表示が狂う」「車の計器や放送機器に異常が発生する」等とも言われているが、科学的根拠のないデマである。同様に「GPSも使えない」という俗説もあるが、これは比較的低性能のGPS機器を使用した際に、密生した樹木に電波が遮られるためであり、高性能の機器は正しく機能するし、また磁鉄鉱とは無関係である。携帯電話がつながらないというのも樹木で電波が遮られるためであり、近年はアンテナが設置されてつながりやすくなっている。

「航空機が上空を通過すると計器が乱れるため、飛行禁止とされている」という俗説もあるが、民間機の飛行が制限されるのは、自衛隊在日米軍の基地が近く、横田ラプコンのエリアとして指定されているという軍事上の理由と山岳波という特殊な乱気流からである(この類でとくに有名なのは飛行制限の原因の1つとなった英国海外航空機空中分解事故)。

自殺の名所である[編集]

「青木ヶ原樹海は自殺の名所」という噂により、他の深い森より自殺者が多く、その遺体が遊歩道からそう遠くない所で見つかることも少なくない。ちなみに、「青木ヶ原樹海は自殺の名所」というのは、テレビドラマ化もされた松本清張の『波の塔』などで取り上げたために有名になったという説がある。しかし、近隣自治体などの対策により、近年自殺者数は大きく減少している。

脚注[編集]

  1. ^ 平成22年(2010年)3月8日文部科学省告示第41号による地域の追加指定及び名称変更。変更前は「富士山原始林」。
  2. ^ “溶岩の持ち帰り「犯罪です」富士山ろく”. 山梨日日新聞社. (2009年7月16日). http://www.sannichi.co.jp/local/news/2009/07/16/2.html 

参考文献[編集]

  • 中込司郎「青木が原樹海は原生林か?」『甲斐路97』(2000年、山梨郷土研究会)
  • 栗原亨『樹海の歩き方』(イーストプレス、2005) ISBN 4872574370
  • 栗原亨「ウソかマコトか!?恐怖の樹海都市伝説」(秋田書店、2008)

関連項目[編集]

座標: 北緯35度28分12秒 東経138度37分11秒 / 北緯35.47000度 東経138.61972度 / 35.47000; 138.61972