電解水

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電解水(でんかいすい、Electrolyzed water)とは、食塩などの電解質を添加し電気分解することで得られた物質を混合した水である。陰極側からはアルカリ性を示すアルカリイオン水が作られる。電極陽極側からは塩素を含んだ酸性を示す酸性電解水が作られ、特徴によりさまざまな種類がある。殺菌効果の高いオゾンを含むオゾン水を水道水から作る技術もある[1]

概要[編集]

強酸性水は、その強い殺菌作用から手や内視鏡の洗浄、安全性から食品添加物としての用途が認可されている[2]。強アルカリイオン水は、希薄された苛性ソーダと同様に油脂タンパク質などの有機物に対する洗浄能力がある[2]。また、酸性電解水も油分の除去効果が強いことが報告されている[3]。手荒れがしにくい、環境負荷が低い、塩と水で生成できるのでランニングコストが安い、蛇口をひねるだけで利用でき希釈の手間がない、洗剤を使用しないなどのメリットが提唱されている。強酸性水は有効塩素濃度の減少が著しく速いが、微酸性電解水の場合は室温でも有効塩素濃度の減少が緩く半年以上も活性が持続するという特性がある[4]

東京医科歯科大学は、次亜塩素酸炭酸水素ナトリウムが含まれた電解水による10秒間のうがいによってう蝕歯周病の原因である虫歯菌や歯周病菌をほぼ100%殺菌できることを確認し、これは従来の洗口剤より殺菌効果が高く、また従来のものが酸性なため歯を溶かすという副作用があったがこの電解水はアルカリ性のため歯を溶かす心配もないとしている[5]

また、電解水で汚れを落とし除菌を行う洗濯機や洗浄機器、除菌を行う加湿器などが製品化されている。電解水技術を使った空気清浄機が新型インフルエンザウイルスと同型のウイルスを99%殺菌するなどの効果も報告されている[6]

電解水の洗浄効果を利用した洗浄時の環境負荷低減[7]、産業分野でも電解水の利用への置き換えによってコストや界面活性剤の使用量や廃棄処理の削減が行われている例がある[3]。電解水は、安全性が高いと評価され化粧品の乳化剤などとして界面活性剤の代替利用も模索されている[8]

手洗いによる有機物除去と殺菌[編集]

手洗い方法による菌数およびATPの変化(被験者15人)[9]
方法 一般生菌 ATP(RLU)
24時間後 48時間後
コントロール 314 483 6406
手指消毒剤 168(46) 128(73) 5373(16)
ハンドソープ 205(35) 219(55) 557(91)
酸性電解水 54(83) 88(82) 950(85)
アルカリ性電解水 134(57) 133(72) 1175(82)
アルカリ性電解水&酸性電解水 92(71) 98(80) 482(92)
( )は減少率 単位%

強アルカリ性電解水と強酸性水を組み合わせた洗浄消毒が提唱されている。手洗い方法を比較検討するため、ハンドソープ、エタノールと塩化ベンザルコニウムを含む手指消毒剤、強酸性電解水、強アルカリ性電解水、強アルカリ性電解水次いで強酸性電解水の5種類で検討した[9]。その結果、ハンドソープでは汚れ除去作用は強いが殺菌力が一番弱く、強アルカリ性電解水次いで強酸性電解水が総合的にもっとも強い洗浄効果があり、強酸性電解水と強アルカリ性電解水でも手指消毒剤と同等以上の効果がみられた[9]。また電解水では手が荒れないという意見が得られた[9]。ATP法は食品工場の衛生管理に用いる手指の微生物と有機物による汚れの指標であり、1500RLU 以下を綺麗であると判定する[9]。強アルカリイオン水と強酸性水で手洗いする方法を3施設で行った結果、いずれの施設でも一般細菌およびATPの顕著な減少がみられ手あれも少なく、比較対象の手指消毒剤(ウェルパス)では一般細菌の顕著な減少、非抗菌石鹸ではATPの顕著な減少がみられた[10]

手術前の手洗いとしてアルカリイオン水と強酸性水は、無添加石鹸と4%クロールヘキシジンで有機物除去と消毒をした場合と比較して、スワブ法の定量培養、ATP法による有機物汚染度、パームスタンプ法による一般細菌コロニー数を測定したところ細菌学的に十分な殺菌効果があるため手術前の手洗いとしてまったく問題なく、手荒れがない、コストが安い、環境負荷が低いなどのメリットもあると報告されている[11]

生成装置の種類[編集]

電解水は電解水生成装置から生成され、浄水器に電解機能のついた製品も存在する。電解水の生成機には連続式とバッチ型がある。

連続式
蛇口をひねり水が出るのと同時に電解水が生成される。
バッチ型
一定量の水をタンク槽にため、電極によって電気分解してから利用する方式。陰極と陽極が仕切られたものが二室型である。この仕切りを隔膜と呼ぶ。

電解水の種類と詳細[編集]

電解水のいろいろ[2]
電解水 電解槽/生成極 被電解液 pH 有効塩素 認可状況
強酸性電解水 二室型 / 陽極 食塩水(<0.2%) 2.2~2.7 20~60 ppm 殺菌料(手洗・内視鏡消毒、食品添加物)
弱アルカリ性電解水 〃 / 陽極 11~11.5 -
弱酸性電解水 二室型 食塩水(<0.1%) 2.7~5 10~60 ppm 殺菌料(食品添加物: 審議通過)
微酸性電解水 一室型 希塩酸(2~6%) 5~6.5 10~30 ppm 殺菌料(食品添加物)
塩酸/食塩水 50~80 ppm 殺菌料(食品添加物: 審議通過)
電解次亜水 一室型 食塩水(<0.1%) >7.5 50~200 ppm 殺菌料(食品添加物)
アルカリイオン水 二室型/陰極 水道水 8~10 - 家庭用医療用飲用水(胃腸症状改善)
厚生労働省が定める酸性度による分類
  • 強酸性 pH3以下
  • 弱酸性 pH3~5
  • 微酸性 pH5~6.5

強酸性電解水[編集]

強酸性電解水は略されて強酸水や強酸化水とも呼ばれる。1987年に強酸化水オキシライザーが誕生し[12]、開発された水である[13]。強い殺菌力を持つことが特徴である。強酸性電解水は厚生労働省によって、生成装置とのセットで1996年に洗浄消毒、1997年に内視鏡洗浄消毒、2002年に次亜塩素酸水として食品添加物に認可された。日本で食品に使用する場合は、最終食品の完成前に除去することと厚生省告示により定められている[14]

概要[編集]

強酸性電解水の抗微生物効果[15]
(殺菌またはは失活するまでの時間)
微生物 強酸性電解水 0.1% NaCIO
Staphylococcus aureus
(黄色ブドウ球菌)
<5秒 <5秒
S. epidermidis <5秒 <5秒
Pseudomonas aeruginosa
(緑膿菌)
<5秒 <5秒
Escherichia coli
(大腸菌)
<5秒 <5秒
Salmonella sp.
(サルモネラ菌)
<5秒 <5秒
その他の栄養型細菌 <5秒 <5秒
Bacillus cereus
(セレウス菌)
<5分 <5分
Mycobacterium tuberculosis
(結核菌)
<2.5分 <5分
他の抗酸菌 <1~2.5分 <2.5~30分
Candida albicans
(カンジダ菌)
<15秒 <15秒
Trichophyton rubrum
(トリコフィトン)
<1分 <5分
他の真菌 <5~60秒 <5秒~5分
エンテロウイルス <5秒 <5秒
ヘルペスウイルス <5秒 <5秒
インフルエンザウイルス <5秒 <5秒
0.1% NaCIOは、次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン©)を使用

通常の消毒液で用いる次亜塩素酸ナトリウム溶液はアルカリ性の為、ClO-が主成分であるのに対して、中程度の酸性である強酸性水ではHClOが主成分であり[16]。、10から20分の1の濃度で十分な殺菌力がある[17]。食品・医療・農業といった産業分野での採用がすすんでいる[18]

アルカリ性電解水[編集]

自然状態でアルカリ性を示す水や、電解整水器で生成された水でアルカリ性を示す。

脂汚れはアルカリ性にするとその一部が加水分解され脂肪酸アルカリ金属塩となり界面活性剤としての役割を発現する。有史以前から木灰(炭酸カリウム)などのアルカリ性物質が洗剤として利用されてきた。

掃除用として市販されているアルカリ電解水は、食塩水の電気分解で生成された水酸化ナトリウムの約0.2%水溶液である。濃度5%を超えると劇物扱いであり一般向けには販売できない。インターネット上では成分や濃度を記載していない事が多いため注意が必要である。市販品は「水でできている」と安全性や環境保全性をアピールする物が多いが、石鹸や重曹より強いアルカリ性のため、脂質やタンパク質を溶解させて手荒れなどの原因となる。

市販の整水器は水酸化カルシウムの水溶液である。パナソニックは「還元水素水」と呼称している。胃腸症状に改善があると謳っているが、胃酸過多に限定された対症療法であり、根治とはならない。制酸系の胃薬から制酸機能だけを取り出したような代物である。

料理では、(重曹のように)抽出成分を多く引き出す用途で用いられている。歯科医療での使用が模索されている。

アルカリ性電解水で米を生育し収量や品質を改善させる研究も行われている[19][20]

脚注[編集]

  1. ^ 新規触媒材料による低消費電力の「電解式オゾン生成電極」を開発 水道水から高い酸化力を持つ“オゾン電解水”を生成三洋電機
  2. ^ a b c 堀田国元「科学的・技術的および社会的側面からみた電解機能水の信頼性と将来展望」『医工学治療』20(1)、2008年、12-18p
  3. ^ a b 「水の活性化と機能水」『錬金の世界』2008年5月、52-55頁。
  4. ^ 堀田国元「次亜塩素酸水(酸性電解水)をめぐる最近の動向」『ジャパンフードサイエンス』2008年6月、62-66頁。
  5. ^ 野口歯科医学研が開発、口腔機能水 うがい10秒、ほぼ完全殺菌 (富士産経ビジネス、2009年7月13日)
  6. ^ 三洋電機、「ウイルスウォッシャー」が新型インフルエンザと同型の「H1N1」型に有効(2009年7月22日、家電Watch)
  7. ^ 大浦律子、熊田亜矢子「電解水を利用した洗浄の洗浄排水の負荷低減効果」『大阪人間科学大学紀要』2008年3月、105-110頁。
  8. ^ 北村敏彦、小池真理子ほか「電解水を用いた界面活性剤フリーエマルジョンの作成とその皮膚透過制御効果」『日本化粧品学会誌』32(1)、2008年、1-9頁。
  9. ^ a b c d e 左官愛野、西島基弘「電解水の手洗い効果」『医工学治療』20(1)、2008年、24-29p
  10. ^ 広中伸治 中藤誉子ほか「電解水による衛生学的手指洗浄効果」『日本環境感染学会誌』24巻suppl、2009年1月、P349
  11. ^ 鶴知光、竹内孝仁ほか「強酸性電解水を使用した手術時手洗いに関する消毒効果の検討―従来のスクラブ法及び新しいラビング法との比較試験」『日本環境感染学会誌』24巻suppl、2009年1月、P537
  12. ^ ウォーター研究会 『わかりやすい強酸性電解水の基礎知識』オーム社、1997年11月。5頁。ISBN 978-4274023637
  13. ^ 土屋桂、堀田国元「酸性電解水の化学」『拓殖大学理工学研究報告』9(2)、2004年10月、21-30頁
  14. ^ 厚生省告示第370号「食品、添加物等の規格基準」
  15. ^ 岩沢篤郎「医療における電解水の利用と応用」『機能水医療研究』1(1)、1999年、1-8p
  16. ^ 「添加物評価書 次亜塩素酸水」, 2007年1月, 食品安全委員会 (PDF)
  17. ^ 藤田紘一郎 『水の健康学』 新潮社《新潮選書》2004年7月。ISBN 978-4106035395。112頁。
  18. ^ アルカリイオン整水器再ブームで、500億円市場に (nikkei BPnet、2004年2月23日)
  19. ^ 上田知弘、佐能正剛、深井正清ほか「各水稲品種に対する電解水散布による生育促進と収量増加に関する研究」『農業および園芸』83(7) 、2008年7月、785-789頁。
  20. ^ 阿部一博、上田知弘、佐能正剛ほか「強アルカリ性電解水散布による稲作の収量と米の品質に及ぼす影響」『ベジタリアン・リサーチ』8(1・2)、2007年、7-10頁。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 堀田国元「科学的・技術的および社会的側面からみた電解機能水の信頼性と将来展望」『医工学治療』20(1)、2008年、12-18p

外部リンク[編集]