電磁テンソル

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電磁気学
VFPt Solenoid correct2.svg


電気 · 磁性

電磁テンソルとは、電磁場相対性理論にもとづいた形式で記述したものである。以後、相対論と言えば、特に断りがなければ特殊相対性理論を指す。

定義[編集]

電磁場の強度(field strength) F は二階のテンソル

F_{\mu\nu} = \partial_\mu A_\nu -\partial_\nu A_\mu

と定義される[1]。 A は相対論的な4元ベクトル電磁ポテンシャル

A^\mu = \left(
 \frac{\phi}{c}, \boldsymbol{A} \right),~
A_\mu =\eta_{\mu\nu} A^\nu = \left(
 \frac{\phi}{c}, -\boldsymbol{A} \right)

である[註 1]。 微分も相対論的な4元ベクトル

\partial_\mu =\frac{\partial}{\partial x^\mu} = \left(
 \frac{1}{c}\frac{\partial}{\partial t}, \nabla \right)

である。

定義から電磁場テンソルは明らかに反対称テンソルである。従って独立成分は6つある。 これは3次元空間のベクトル場である電場の強度 E磁束密度 B の各成分に対応する。 電場の強度と磁束密度は3次元空間の電磁ポテンシャルによって

\boldsymbol{E} = -\nabla\phi -\frac{\partial\boldsymbol{A}}{\partial t}

\boldsymbol{B} = \nabla\times\boldsymbol{A}

と表される。 あるいは各成分毎に

E_j/c = -\partial_j A_0 +\partial_0 A_j = F_{0j}

B_i \epsilon_{ijk} = -\partial_j A_k +\partial_k A_j = -F_{jk}

と書くことが出来る。 具体的には

(F_{01},F_{02},F_{03}) =(E_1/c,E_2/c,E_3/c)

(F_{23},F_{31},F_{12}) =(-B_1,-B_2,-B_3)

である。上付きの F^{\mu\nu} =\eta^{\mu\rho}\eta^{\nu\sigma}F_{\rho\sigma}

(F^{01},F^{02},F^{03}) =(-E_1/c,-E_2/c,-E_3/c)

(F^{23},F^{31},F^{12}) =(-B_1,-B_2,-B_3)

となり[註 1]、行列の形で表せば

(F^{\mu\nu}) =
\begin{bmatrix}
 0 & -E_1/c & -E_2/c & -E_3/c \\
 E_1/c & 0 & -B_3 & B_2 \\
 E_2/c & B_3 & 0 & -B_1 \\
 E_3/c & -B_2 & B_1 & 0 \\
\end{bmatrix}

となる。

媒質中の電磁場[編集]

媒質中での電磁場を表す電束密度 D磁場の強度 H は二階のテンソル Gμν によって相対論的な形式で記述される。 それぞれの成分は具体的には

(G^{01},G^{02},G^{03})=(-cD_1,-cD_2,-cD_3)

(G^{23},G^{31},G^{12})=(-H_1,-H_2,-H_3)

である[2]。Gμν はサブ電磁テンソルとも呼ばれる。 サブ電磁テンソル G と電磁場の強度 F は

G^{\mu\nu} = \frac{1}{\mu_0} F^{\mu\nu} - M^{\mu\nu}

と関係付けられる。ここで Mμν は磁化テンソルである。 その成分は誘電分極 P磁化 M である。

(M^{01},M^{02},M^{03}) =(cP_1,cP_2,cP_3)

(M^{23},M^{31},M^{12}) =(-M_1,-M_2,-M_3)

行列の形で表せば

(G^{\mu\nu}) =
\begin{bmatrix}
 0 & -cD_1 & -cD_2 & -cD_3 \\
 cD_1 & 0 & -H_3 & H_2 \\
 cD_2 & H_3 & 0 & -H_1 \\
 cD_3 & -H_2 & H_1 & 0 \\
\end{bmatrix}

(M^{\mu\nu}) =
\begin{bmatrix}
 0 & cP_1 & cP_2 & cP_3 \\
 -cP_1 & 0 & -M_3 & M_2 \\
 -cP_2 & M_3 & 0 & -M_1 \\
 -cP_3 & -M_2 & M_1 & 0 \\
\end{bmatrix}

である。

双対テンソル[編集]

完全反対称テンソル ε を用いれば、電磁場の強度 F に双対なテンソル

\tilde{F}^{\mu\nu} =\frac{1}{2}
 \epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}F_{\rho\sigma}

が定義される。 具体的には

(\tilde{F}^{01},\tilde{F}^{02},\tilde{F}^{03})
 =(F_{23},F_{31},F_{12})
 =(-B_1,-B_2,-B_3)

(\tilde{F}^{23},\tilde{F}^{31},\tilde{F}^{12})
 =(F_{01},F_{02},F_{03}) =(E_1/c,E_2/c,E_3/c)

であり、行列の形で表せば

(\tilde{F}^{\mu\nu}) =
\begin{bmatrix}
 0 & -B_1 & -B_2 & -B_3 \\
 B_1 & 0 & E_3/c & -E_2/c \\
 B_2 & -E_3/c & 0 & E_1/c \\
 B_3 & E_2/c & -E_1/c & 0 \\
\end{bmatrix}

となる。

マクスウェルの方程式[編集]

電磁場テンソルによって、相対論的な形でマクスウェルの方程式を記述することができる。 定義から恒等式

\partial_\rho F_{\mu\nu} +\partial_\mu F_{\nu\rho} +\partial_\nu F_{\rho\mu} =0

が成り立つ。 完全反対称テンソルを用いれば

\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}\partial_\rho F_{\mu\nu} =0

と表すことも出来る。 この式は添え字 σ=0,1,2,3 についての4つの方程式であり、それぞれ

\nabla\cdot \boldsymbol{B} =0

\nabla\times \boldsymbol{E}
 +\frac{\partial\boldsymbol{B}}{\partial t} =\mathbf{0}

である。

真空中の電磁場の運動方程式は

\partial_\mu F^{\mu\nu} =\mu_0 j^\nu

と表される。 ここで j は4元電流密度である。 この式は添え字 ν=0,1,2,3 についての4つの方程式であり、それぞれ

\nabla\cdot \boldsymbol{E} =\frac{\rho}{\epsilon_0}

\nabla\times \boldsymbol{B}
 -\frac{1}{c^2} \frac{\partial\boldsymbol{E}}{\partial t}
 =\mu_0 \boldsymbol{j}

である。

媒質中の運動方程式[編集]

媒質中の運動方程式は

\partial_\mu G^{\mu\nu} =j^\nu

と表される。 成分ごとにそれぞれ

\nabla\cdot \boldsymbol{D} =\rho

\nabla\times \boldsymbol{H}
 -\frac{\partial\boldsymbol{D}}{\partial t}
 =\boldsymbol{j}

である。

ローレンツ力[編集]

電磁テンソルは、荷電粒子に作用するローレンツ力を相対論的に記述した式の中に現れる。 電荷 q を持ち、相対論的な位置 z=(ct,r) を運動する荷電粒子に作用する相対論的なローレンツ力は以下のようになる。

\dot{p}_\mu =q\dot{z}^\nu F_{\nu\mu}(z)

p は相対論的な運動量である。ドットは運動のパラメータによる微分である。

脚注[編集]

  1. ^ a b ここではミンコフスキー計量の符号を η=diag(+1,-1,-1,-1) に選んでいる。
  1. ^ ランダウ, リフシッツ 68頁
  2. ^ ジャクソン 820頁

参考文献[編集]

関連項目[編集]