陽暉楼

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陽暉楼
監督 五社英雄
脚本 高田宏治
原作 宮尾登美子
出演者 緒形拳
池上季実子
浅野温子
音楽 佐藤勝
撮影 森田富士郎
編集 市田勇
製作会社 東映
俳優座映画放送
配給 東映
公開 日本の旗 1983年9月10日
上映時間 144分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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陽暉楼』(ようきろう)は1983年9月10日に公開された日本映画。配給は東映カラーワイド。上映時間は144分。

概要[編集]

鬼龍院花子の生涯』に次ぐ五社英雄宮尾登美子コンビによる二本目で、土佐高知遊廓を舞台に侠客の世界に生きる父と遊女となった娘との愛憎を描く[1]

製作経緯[編集]

本作と『』は、宮尾の家族を描いたほぼ実話という[2]。本作の主人公・女衒の勝造と『櫂』の岩伍はどちらも宮尾の父がモデル[2]。このため同じ緒形拳が演じた[2]

本作の勝造が宮尾の父なら、娘・桃若は宮尾登美子自身ということになるが、宮尾は遊女でないため、この娘の設定は創作である[3]。というのが製作側が父親を女衒にすると必ず娘を遊女に設定するため、宮尾は人に「元赤線にいた人だった」と噂されるという。宮尾はそこから逃れたいため作家を目指した人で、父は花街で働いていたが、自身はそこを避けていて30歳になるまで花街に行ったことがなかったと話している[3]

宮尾の原作は似た芸者がたくさん出る話で、ストーリーを動かす役が足らず、脚本の高田宏治がストーリーを大きく改変した[4][5]。『鬼龍院花子の生涯』で女を書いてお客に受けて自信を付けた高田が、今度は純粋に女を書いてみたいと脚本を執筆した。浅野温子演じる珠子は原作にはなく、勝造のキャラクターも原作とはかなり違う[5]。宮尾からのクレームは当初はなかったが[6]、『櫂』のあとで爆発して新聞紙上で「五社と高田はどうしようもない」とボロクソに批判した[5]。高田は「原作者に"あいつには二度と脚本を書かせるな"と言われるぐらいのつもりでやらないといい脚本は書けない」と解説している[5]。高田が五社に映画化を勧めたという[4]。 

キャスティング[編集]

『鬼龍院花子の生涯』に続き、仲代達矢主演でオファーを出したが、佐藤正之から「仲代があんまりヤクザばっかりやるのはどうか」と断わられ、菅原文太にも断られた後、緒形になった[6]

あらすじ[編集]

浅野と池上の喧嘩シーン[編集]

浅野温子池上季実子による洗面所での水浸しになりながらの取っ組み合う、15分に及ぶ長回しの喧嘩シーンが見所の一つ[7][8]

逸話[編集]

1981年フジテレビ大改革の象徴的な位置付けとして新設されたのが、毎週二時間の新作時代劇を放送するという前代未聞のプロジェクト時代劇スペシャル」であったが[9]、『鬼龍院花子の生涯』で芸能界に復帰した五社が、10年ぶりに手掛けたテレビ時代劇『丹下左膳 剣風!百万両の壺』(1982年10月22日放送)の後は、視聴率が低下した[9]1983年、起死回生の賭けとして企画されたのが五社の代表作『三匹の侍』の13年ぶりのリメイクだった。フジのディレクター岡田太郎佐藤正之が中心となって準備し、大野靖子の脚本も完成、キャスティングも終了し、平幹二朗加藤剛長門勇丹波哲郎のオリジナルキャストの特別出演も決定し、長門はの稽古に入ってみんなノリノリだった[9]。ところが東映岡田茂社長から五社に「『陽暉楼』を撮ってくれ」との要請がきた[9]。五社は芸能界に復帰させてくれた岡田社長に強い恩義を感じており、また宮尾登美子ワールドに挑戦してみたいという欲求もあり、『三匹の侍』のリメイクは断り、岡田社長の方を取った[9]。さらに五社の盟友・佐藤正之も一緒に東映へ行った。大野靖子ら関係者は激怒し、五社は勿論、大野や岡田太郎、能村庸一プロデューサーらに侘びを入れたが、それは修羅場だったといわれる[9]。結局「時代劇スペシャル」は復活ならず3年で終了。五社のテレビ界復帰も閉ざされたが、五社はこの後、本格的に映画監督として巨匠の階段を昇っていく。五社にとっても人生を賭けたターニングポイントとなったのが本作であった[9]。五社は「これから一匹狼として映画界を生き抜いていく」と決意し本作の撮影前に全身刺青を彫った[10]

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

映像ソフト化[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『ぴあシネマクラブ 邦画編 1998-1999』 ぴあ1998年、682-683頁。ISBN 4-89215-904-2
  2. ^ a b c 宮尾登美子 『小さな花にも蝶宮尾登美子対談集中央公論社1986年、159-171頁。ISBN 4-12-001446-0
  3. ^ a b 宮尾登美子 『小さな花にも蝶宮尾登美子対談集中央公論社1986年、84-86頁。ISBN 4-12-001446-0
  4. ^ a b 春日太一[総特集] 五社英雄 極彩色のエンターテイナー河出書房新社KAWADE夢ムック 文藝別冊〉、2014年、135-140頁。ISBN 978-4309978512
  5. ^ a b c d 西谷拓哉・高田宏治 『高田宏治東映のアルチザン』 カタログハウス1997年、187-197頁。ISBN 4905943337
  6. ^ a b 春日太一 『[総特集] 五社英雄 極彩色のエンターテイナー』 河出書房新社〈KAWADE夢ムック 文藝別冊〉、2014年、121-125頁。ISBN 978-4309978512
  7. ^ 五社巴 『さよならだけが人生さ ー五社英雄という生き方講談社1995年、162頁。ISBN 4-06-20636-1。
  8. ^ 80年代黄金ヒロインたち・最終回 池上季実子 | アサ芸プラス
  9. ^ a b c d e f g 能村庸一春日太一 『時代劇の作り方 プロデューサー・能村庸一の場合辰巳出版2011年、56-73頁。ISBN 978-4-7778-0864-9
  10. ^ 春日太一 『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』 文藝春秋2013年、408-409頁。ISBN 4-1637-68-10-6

外部リンク[編集]