限りなく透明に近いブルー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

限りなく透明に近いブルー』(かぎりなくとうめいにちかいブルー)は、村上龍によって書かれた小説。村上龍のデビュー作であり、代表作である。1976年、群像新人文学賞を受賞後にその年の芥川龍之介賞を受賞した。装丁を著者自身が手がけている。

2005年現在の発行部数は単行本131万部、単行本・文庫本の合計で350万部以上を越えている。

概要[編集]

詩的な表現や過去に前例の無い文章表現などを多用し、当時の文芸界に衝撃を与えた作品である。荒廃していく若い男女を描いたために、よく石原慎太郎の『太陽の季節』と対比される。ストーリーは村上龍が20代の頃過ごした福生市での体験を基にしている。当初の題名は「クリトリスにバターを」であったが、露骨な性表現のため改題した。

作品評価
本作の優れている点は、なによりも「僕」が物事を常に客観視する中で、感情移入を排したフラットな表現でセックスや暴力を描ききった部分であると多くの作家・評論家が本作の解説で評価することが多い。衝撃的な内容を題材として捉えていながら、その文章自体は異常なまでに平易であり「清潔」である。たとえば登場人物について、本作では様々な人物が現れるが、その人物が一体いつどのように現れたのかは明示されず、そしていつの間にか消えてしまっている。通常の小説ならば不審に思われる点を自然に忘れさせてくれるのが、この「存在感の無い」と言われながら同時に衝撃的な文章そのものであり、その点が大いに評価された。
受賞
第19回群像新人文学賞、第75回芥川賞受賞作。芥川賞選考会では賛否が別れ、2時間にわたる論戦が起こった。丹羽文雄井上靖吉行淳之介中村光夫が支持、対して永井龍男瀧井孝作が猛反発した。安岡章太郎は半票を投じ 4.5対2 で過半数を獲得した村上が受賞した。なお、井上靖は当初反対票を入れようと考えていたが、息子に提言され支持することになったらしい。もし井上靖が反対であれば、過半数を獲得できなかった村上の受賞はなくなっていた。
その他
中国語版の出版に際し、序文の中で村上は作品のテーマを、近代化の達成という大目標を成し遂げた後に残る「喪失感」であると述べている。また同文中にて、この作品がその後の作品のモチーフを全て含んでいる、ということが述べられている。

ストーリー[編集]

舞台は東京、基地の町、福生。ここにあるアパートの一室、通称ハウスで主人公リュウや複数の男女はクスリ、LSD、セックス、暴力、兵士との交流などに明け暮れ生活している。明日、何か変わったことがおこるわけでも、何かを探していたり、期待しているわけでもない。リュウは仲間達の行為を客観的に見続け、彼らはハウスを中心にただただ荒廃していく。そしていつの間にかハウスからは仲間達は去っていき、リュウの目にはいつか見た幻覚が鳥として見えた。

ハウス[編集]

「ハウス」とは、福生市にある米空軍横田基地周辺にあった(元)米軍住宅である。JR八高線と平行する国道16号に約2000戸あったとされる。朝鮮戦争やベトナム戦争の時に住宅不足のために建てられた。米軍住宅の場合は一種の治外法権地帯であり、ドラッグ・パーティー乱交パーティーが開かれていたと言われる。戦争後「ハウス」は安く借りられる広々とした一軒家として、芸術思考の若者を引きつけた。乱交パーティーの文化はそのまま残ったと言われる。

映画[編集]

限りなく透明に近いブルー
監督 村上龍
脚本 村上龍
製作 多賀英典
伊地智啓
出演者 三田村邦彦
中山麻理
平田満
中村晃子
ピーター
音楽 星勝
撮影 赤川修也
編集 山地早智子
配給 東宝
公開 日本の旗 1979年3月3日
上映時間 103分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
テンプレートを表示

1979年には村上自身が監督を務め、劇場映画が公開されたが、興行としては惨敗に終わった。

その他[編集]

外部リンク[編集]