長いs

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ſ ſ ſ ſ Long s.svg

ſラテン文字アルファベット)の小文字のひとつであり、19番目の文字 s (エス) の別の形である。現在一般的な字形との区別のために長いsドイツ語: langes s英語: long s)、語中のs英語: medial s)などと呼ばれ、それに対して "s" は短いs(short s)、丸いs(round s)、語末のs(terminal s)などと呼ばれる。小文字のみが存在し、大文字は短いsと等しく "S" である。

ミルトンの『失楽園』(Paradiſe loſt = Paradise lost) 初版、1668年

字形の起源は古代ローマの筆記体英語版にある。エスの字形としてかつてはごく一般的に用いられていたものであり、語頭・語中において用いられた。語末・ アポストロフィーの前・fの前後・b, kの前においてのみ短いsを用いた。

ſinfulneſs (短いsのみで表すとsinfulness

ドイツ語では、語中であってもそれが複合語の語根の末尾である場合には語末のsを用いるなど、使い分けはさらに複雑になる。こうした語中・語末での字形の使い分けはギリシア文字のシグマに似る(語中形: σ, 語末形: ς )。

小文字のエフ "f" とよく似ており、それに加えてフラクトゥールの影響を強く残す書体では、縦線中央左側に小さな突き出しがあるため一層混同しやすい。右にまで横線が突き抜けている場合はエフ "f" であり、横線が左側のみにとどまる場合、あるいは横線が存在しない場合は長いエス "ſ" である。

ローマン体イタリック体では、18世紀後半から19世紀前半にかけて各地で徐々に使われなくなっていった。専ら短いsを用いる正書法への変遷は、スペインでは1760年から1766年頃、フランスでは1782年から1793年頃、イギリスアメリカ合衆国では1795年から1810年頃にかけて発生した。この様子は『ブリタニカ百科事典』の第5版と第6版を比較すると如実に見ることができる。下の画像で比較したページでは、文面は変わっていないが "ſ" が全て "s" に置き換えられており、この頃に短いsに全面的に移行したことをわかりやすく示している。

フラクトゥール(ドイツ文字)ではこの変遷は起きなかった。現在でもイエーガーマイスターのボトルラベルなどで日常的に目にすることができる。

派生記号 [編集]

ドイツ語で使われる合字 "ß"(エスツェット、通称鋭いs)の起源となった。

1675年、ゴットフリート・ライプニッツは、ラテン語総和を意味する ſumma の頭文字から積分記号\intを考案した[1]。記号の形状は "ſ" のイタリック体を縦に長く引き伸ばしたものである。

イギリスでは "ſ" はシリングの略として使われ、"/" と変形してシリング記号 (shilling mark) と呼ばれるようになった。シリング記号は現在ではスラッシュと同一視される[2]

符号位置 [編集]

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
ſ U+017F ſ
ſ
長いs

脚注 [編集]

  1. ^ John Stillwell (1989), Mathematics and its History, Springer, p. 110 
  2. ^ Francis George Fowler (1917), The Concise Oxford Dictionary of Current English, Clarendon Press, p. 829