鈴木明

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鈴木 明(すずき あきら、1929年10月28日 - 2003年7月22日)は日本ノンフィクション作家・フリージャーナリスト東京都出身。

目次

[編集] 略歴

立教大学文学部を卒業。出版社やテレビ局勤務ののちフリーの作家となる。1973年『「南京大虐殺」のまぼろし』で第4回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

[編集] 『「南京大虐殺」のまぼろし』

この著書の中で、日本軍の暴行に関する報告や記事などをまとめた『WHAT WAR MEANS』(戦争とは何か)を編集したハロルド・J・ティンパーリ中国国民党顧問の秘密宣伝員であった事を暴露した。 「百人斬り」についても書かれており、当時の大宅壮一ノンフィクション賞の選考委員全員が「百人斬り競争」は真実でなかったことを認め、作品を絶賛した[1]

[編集] 大宅壮一ノンフィクション賞選考委員からの言葉

臼井吉見-「南京大虐殺」のまぼろしの真相を追跡した労作で、南京大虐殺はまぼろしというのではない。伝えられる「南京大虐殺のうちでも特に世界の耳目を驚かした「百人斬りゲーム」を伝える記事についての、素朴な疑問を手がかりに、その出所をさぐりあてる。特派員の署名記事で、銃後の話題を賑わそうとの特ダネゲームの与太ばなしであったことを解明していく。一紙のまやかしの「ネタ」によって、ある「事実」が、地域を越え、年月を経るに応じて、どうふくれあがり、どう変貌するかを克明に追及して、すべての読者に、驚きと恐れを通じて、ただならぬ反省を促さずにはおくまい。ここで提出された問題は決して昔ばなしではない。むしろ痛切きわまる、現代の生きた問題にほかならない。

草柳大蔵-鈴木明氏の受賞作はいまさらなにもいう必要はない。もともと、それがジャーナリズムでありノンフィクションなのである。情念にみちびかれた事実と事実の間の欠陥に筆者は挑戦する。挑戦はより多くの、かつ複雑な疑問点を算出する。そのときの疑問の出方は蟻塚を崩したときの蟻の四散状態に似ている。筆者はその疑問を執拗に追う。ついに疑問とのつきあいで悲鳴をあげそうになる。その地点から筆者は平明でバランスのとれた文体を構築し、現代史の一断面に真実の近似値を付与しているのだ。敬服すべき作品である。

扇谷正造-「南京大虐殺」は「諸君!」に連載当時からマークしていた。日中友好関係の促進ということは、一つ一つ、正確な事実の積みあげと真剣な反省の上に築かるべきものだと思うし、同時に誤報あるいは"虚報"というものはいかに当事者を傷つけるかという意味で、現代ジャーナリズムに一つの反省を促す貴重な礎石となるであろう。

開高健-「『南京大虐殺』のまぼろし」の受賞に不満があるわけではない。ジャーナリズムの幼稚と無責任、軽薄さをうまくついた作品で、何よりもその勇気を買いたい。わたしとしては、むしろもっと正面から告発してもよかったのではないかと考えた。

[編集] 他の文化人の言葉

平野謙-(1973年3月)私はその克明な追跡ぶりに感嘆し、たとえば、南京虐殺事件の責任者の一人として処刑された向井少尉の無実などについては、一読者として肯定せざるを得なかったまでである[2]。(同年7月)洞富雄の綿密な論文を読むにおよんで、事実認識というものがいかに困難なものかを改めて痛感するとともに、一方的に鈴木明の筆力に感心したのは、いささか軽率だったかな、と思いかえさぬでもなかった[3]

小田実-部分的真実を持ってきて、全体をゆがめるたぐいの本だな。本多勝一さんが書いた“南京大虐殺”についての記事には、“百人斬り”をした将校のことがでていた。しかし、その百人斬りというような事件は、真実には、それ自体はたしかになかったものにちがいない。鈴木は、それが捏造された記事だということをあかして行くのですが、そこまではいい。ただ、その本を見ていて感じるのは、部分部分のデータを集積して、全体をひとつの方向にもって行くということだな。それがもっともはっきりと出ているのは本の題名で、『「南京大虐殺」のまぼろし』-これはむちゃくちゃな題だと思う。“百人斬りの幻”ということはいってもよい。それをいつのまにかすりかえて、『「南京大虐殺」のまぼろし』としているわけ。これは非常に巧妙なやり方だという気がする。百人斬りがなかったことを、南京虐殺がなかったことにすりかえようとする。そういう意図が感じられるね[4]

[編集] 作品内容へ慎重な声

この本の幕府山捕虜虐殺は現場にいなかった将校達にインタビューした捏造記事であるという意見もあり、とくに平林は後に戦友会会長になった人であり、現場にいなかった上にその真実性まで疑われる発言が収録されているとも主張されている。また、南京大虐殺はなかった、捏造であったとする否定派の主張は、同書に論拠している人が多いともいわれている。ただし、鈴木明自身は『「南京大虐殺」まぼろし』について論じただけであり、南京大虐殺まぼろしだったと主張したことは一度もない[5]が、いわゆる「虐殺肯定派」の笠原十九司は鈴木を「否定派の中心メンバーである」とし、批判をしている[6]

雑誌の南京特集においても不明であるとの立場をとっており[5]南京大虐殺論争においては中間派に分類されていた。

[編集] 著書

  • 『「南京大虐殺」のまぼろし』 (文藝春秋、1973年) (文芸春秋、1983年11月)ISBN 4167197022 (文藝春秋1983年刊の新版、WAC、2006年6月)ISBN 4898315461
  • 『証言中国・台湾・沖縄-政治とマスコミの空白を追って』 (光風社書店、1974年)
  • 『誰も書かなかった台湾』 (サンケイ新聞社出版局, 1974年)
  • リリー・マルレーンを聴いたことがありますか』 (文藝春秋、1975年) (文藝春秋、1978年4月) (文藝春秋、1988年2月)ISBN 4163420908
  • 『そしてわが歌 もう一つの《リリ-・マルレ-ン》をたずねて』 (TBSブリタニカ、1976年)
  • 『秘録・謀略宣伝ビラ - 太平洋戦争の“紙の爆弾"』 (鈴木明、山本明編著、講談社、1977年12月)
  • 高砂族に捧げる』 (中央公論社、1976年 中央公論社、1980年8月)
  • 『続・誰も書かなかった台湾 天皇が見た“旧帝国”はいま』 (サンケイ出版、1977年3月)
  • 『誰も書かなかった毛沢東 “赤い巨星”の謎の部分』 (サンケイ出版、1977年12月)
  • 『昭和20年11月23日のプレイボ-ル』 (綜合社、1978年) (光人社、2001年12月)ISBN 476981030X
  • 『日本プロ野球復活の日-昭和20年11月23日のプレイボール』 (『昭和20年11月23日のプレイボール』(1978年刊)の改題増補、集英社、1987年4月)ISBN 4087492117
  • 『その声は戦場に消えた』 (文藝春秋、1978年8月)
  • アウシュヴィツからの旅 こんなふうに世界を歩いてみた』 (講談社、1979年6月)
  • ジャイアンツは死なず』 (読売新聞社、1979年12月)
  • コリンヌはなぜ死んだか』 (文藝春秋、1980年4月)
  • 『わがマレーネ・ディートリヒ伝』 (潮出版社、1980年10月) (潮出版1980年刊の増訂、小学館、1991年8月)ISBN 4094600078
  • 『今、プロ野球を斬る対論』 (作品社、1981年3月) 池井優との対談
  • 歌謡曲ベスト1000の研究』 (TBSブリタニカ、1981年9月)
  • 『愛国』 (文藝春秋、1982年8月)
  • 『ある日本男児とアメリカ 東善作,明治二十六年生まれの挑戦』 (中央公論社、1982年11月)
  • 『プロ野球を変えた男たち』 (新潮社、1983年8月)ISBN 4103474017
  • 『セ・パ分裂プロ野球を変えた男たち』 (『プロ野球を変えた男たち』(1983年刊)の改題、新潮社、1987年10月)ISBN 4101048118
  • ジャン・ギャバンと呼ばれた男』 (大和書房、1983年11月)ISBN 4479760032 (小学館、1991年10月)ISBN 4094600094
  • 『追跡 一枚の幕末写真 長編ノンフィクション』 (集英社、1984年7月)ISBN 4087724921 (集英社、1988年9月)ISBN 4087493857
  • 『戦場の神の子たち』 (中央公論社、1985年4月)ISBN 4120013898
  • 『響け!アジアの鼓動 台湾・香港・韓国 国境を越えた「魂の歌」』 (PHP研究所、1985年7月)ISBN 4569215726
  • 『ああ台湾 郭泰源たちのふるさと』 (講談社、1985年9月)ISBN 4062023431
  • 『維新前夜―スフィンクスと34人のサムライ』 (小学館、1988年6月)ISBN 4093870233 (1988年刊の増訂、小学館、1992年2月)ISBN 4094600183
  • 『中国にも革命が起きる』 (文藝春秋、1990年3月)ISBN 4163441409
  • 『台湾に革命が起きる日』 (リクルート出版、1990年10月)ISBN 4889912037
  • 『ジャーナリズムの原点はゴシップである』 (マゼラン出版、1992年9月)ISBN 4905582024
  • イヴ・モンタン―20世紀の華麗な幻影』 (毎日新聞社、1993年6月)ISBN 4620309419
  • 『明治維新畸人伝―かつて、愛すべき「変な日本人」がいた』 (勁文社、1993年10月)ISBN 4766918738
  • 『1936年ベルリン至急電―「東京、遂に勝てり!」』 (小学館、1994年10月)ISBN 4093871124 (小学館、1997年6月)ISBN 4094601007
  • 『波 1980-1999』 (三才ブックス、1999年6月)ISBN 4915540502
  • 『新「南京大虐殺」のまぼろし』 (飛鳥新社、1999年6月)ISBN 4870313685
  • 『日本畸人伝-明治・七人の侍』 (光人社、2000年10月)ISBN 4769809778

[編集] 脚注

  1. ^ 「百人斬り訴訟」裁判記録集 ISBN 978-4-88656-309-5
  2. ^ 『毎日新聞』1973年3月23日夕刊所載「昭和文学論」
  3. ^ 『毎日新聞』1973年7月23日夕刊所載「昭和文学論」
  4. ^ 『群像』1973年8月号
  5. ^ a b諸君!2001年2月号
  6. ^ 笠原十九司『南京事件と日本人』P163

[編集] 関連項目