遅刻

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遅刻(ちこく、英語:tardiness)とは、事前に定められた日時に遅れること。


概説[編集]

遅刻とは、事前に開始時刻や日程等が決められている行為(特に複数人で行う団体行事や行動計画など)への参加に遅れることをいう。授業試験仕事面接、あるいは知人・友人・家族・恋人などとの「待ち合わせ」などに遅れることなどを指して使われている。

各国での遅刻の捉え方の違い[編集]

国や文化圏ごとに遅刻に対する考えかたは大きく異なる。

南アメリカ(例えばブラジルペルーなど)では、待ち合わせに10 - 20分程度遅れてくることはごく一般的で、(たまたま、何かの偶然で)ほぼ時刻通りに着く人もごく一部いるが、そうした人は、自分以外の人は遅れてくること、遅れてくる人の数のほうが多いことを「当たり前」と思っており、遅れてくる人を責めたりしない。たまたま他の人より早くついた人は、のんびりと友人・知人を待ちながら、その数十分間、早く着いた者同士で、楽しくお喋りを楽しむ文化(その分、長いあいだお喋りができた、と満足し、時間のズレであまり他者を責めない文化)がある。

参考までに鉄道の運行を例にとると、イタリアでは列車が「定時に遅れる」というのは、15分以上遅れることを指しているのであって、5 - 10分程度のズレならば、遅れたとは見なされないのである[1]フランスTGV(フランス版新幹線)も15分以上ズレなければ遅れとは見なされない[1]イギリスでは10分以内であれば遅れとは見なされず、ドイツでは5分以内は遅れとは見なされない[1]。さらに言うならば、世界的に見ると、ここに挙げた国はかなり時間に厳密なほうなのであり、先進国以外の諸国では列車が30分や数時間以上遅れたりすることは全然珍しくなく、さらに日付が変わってしまうこともある[1]。なおヨーロッパの鉄道の例についても、何を遅れと見なすか、に関する線引きの話であって、運行がそのラインを超えないように守られている、という話ではない。ヨーロッパでの実際の運行状態について言えば、「列車がまるで奇跡のように定刻に発車したので驚き、駅員に一体何が起きたのか?と尋ねてみたら、前日に発車しなければならない列車が1日遅れで発車して、偶然に時刻が一致した、との答えが返ってきた」などといった内容のジョークも、ヨーロッパ鉄道事情を説明するために昔からしばしば語られている。

アメリカ[編集]

アメリカ合衆国でインターネット求人サイトを運営するキャリアビルダー社が、2011年に全米7000人の従業員と3000人の雇用者を対象にアンケート調査を行い統計をとった結果では、アメリカ人の16%は週に1度以上遅刻し、また27%は月に1度以上遅刻をしている、ということが明らかになった[2]。遅刻をした米国人が述べた理由を上位から挙げると次のようになる[2]

  • 道路がひどく混んでいたため(交通渋滞)(31%)
  • 寝不足によって(睡眠不足)(18%)
  • 悪天候により(11%)
  • 子供を学校に連れて行ったため。子供の面倒を見るため。(8%)

ただし、同社が雇用者(つまり会社側)に対して行った調査では、34%ほどの雇用者が、遅刻を理由として従業員を解雇したことがある、と回答しており[2]、必ずしも雇用者側が従業員の遅刻におおらかなわけではない。

日本[編集]

日本人の遅刻に対する考え方は、時代とともに変化してきている。

ほんの80年ほど前までは、日本でも遅刻することは一般的で、人々は時間におおらかであった[3]。例えば明治初期に工業技術を伝えに来日したオランダ人技術者たちは、日本人がまったく時間を守らないことに呆れ、困り果てたという[3]。それくらい日本人は時間におおらかで、遅刻にもおおらかであったのである。その後、日本で時計が普及し、定時法などの西洋の時間のシステムが導入されても、人々はあいかわらず時間にはおおらかで、工場では遅刻が一般的で、鉄道などでも30分ほどの遅刻は当たり前であった[3]

そこで、産業競争力を高めよう、効率を上げようとした大正期の日本政府は、対策を打ち出し、「時の記念日」を制定するなどして、国ぐるみで時間規律の浸透に力を入れた[3]。その結果として、日本では(実は ほんの80年ほど前のことなのだが)昭和初期に、時間を厳格に守る習慣ができた[3]

ただし、日本でも沖縄については、本土と異なった独特の時間感覚がある(ウチナータイム)。

近年の日本[編集]

近年[いつ?]の日本では、集合時刻や開始時刻に関して言えば厳格に守る傾向がある。日本で遅刻することは、企業の社員など一般社会に属している場合、自らの評価を非常に大きく下げることになる、極めて重大なミスの一つと見なされる傾向がある。

学生である間は、(学業というのは多くが、基本的には自分だけにしか影響しない世界なので)遅刻を理由として重大な処罰を受けることは比較的少ない。

だが、日本の仕事の世界(いわゆる「社会人」の世界、つまり他の従業員との共同・連携が不可欠で、自分の行為が顧客に重大な影響を及ぼす世界)では、遅刻は許されない行為と見なされており、たとえ数分の遅刻であって、たとえそれ自体が周囲に及ぼす悪影響が少ないとしても、「遅刻した」ことによって、「社会人としての自覚が欠如している」あるいは「他者に対する配慮が欠けている」「規律を守れないだらしない人間である」などと見なされてしまうことが多い。遅刻を事前に連絡せず、無断でしてしまうような場合など(寝坊によって始業時間を過ぎてから起床した場合等)に至っては、会社によっては、法的な妥当性は別としてではあるが解雇の理由とされてしまうこともある。

将来を決定する試験当日などで交通機関の遅延による遅刻が生じた場合、各事業者の発行する遅延証明書が有効になる場合が多い。ただしこれらは遅延そのものを証明するのが目的であり、それによる各交通機関の責任や、遅延証明書の提示により各々の責任の免除を保障する性質のものではない。

遅刻の主な原因としては次のようなものがある。

日本史における有名な遅刻[編集]

スポーツ・テーブルゲーム等における遅刻[編集]

スポーツの試合や対局を行うテーブルゲームなど相手がいて初めて成立する競技においても遅刻をしないことは大原則であり、一定時間の遅刻をすると、放棄試合や失格等の措置が取られ不戦敗となり、ペナルティーが課せられる事が多い。

  • 公認野球規則の規定では、球審が試合開始時刻にプレイを宣告してから、一方のチームが5分を経過してもなお競技場に出ない場合には没収試合となる。
  • 日本棋院の規定では、囲碁棋士が対局に遅刻した場合は遅刻時間の3倍の時間を持ち時間から引かれる。また原則として1時間の遅刻で不戦敗となる。
  • 日本将棋連盟の規定では、将棋棋士が対局に遅刻した場合は遅刻時間の3倍の時間を持ち時間から引かれ、それにより持ち時間が無くなった場合は不戦敗となる。また、2013年に規定が改正され、たとえ持ち時間が3時間以上の棋戦であっても、1時間の遅刻で不戦敗とされるようになった[4]

時差やサマータイムによる遅刻[編集]

海外への出張旅行などの場合、時差を考慮に入れることを失念すると遅刻を引き起こすことがある。アメリカなどではによって数時間の誤差が生じる(アメリカ国内では最大4時間、ロシアでは最大10時間。ただし同様に広大な領土を持つ中国は時差を設定していない)ために、時計を修正することが必要である。また、渡航地域によっては夏時間による時間のずれも考慮する必要がある。

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d 『定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか』
  2. ^ a b c http://www.careerbuilder.com/share/aboutus/pressreleasesdetail.aspx?id=pr676&sd=1%2F12%2F2012&ed=12%2F31%2F2012
  3. ^ a b c d e 『遅刻の誕生』
  4. ^ 田丸の勝率、里見香奈女流四冠へのコメントと遅刻の罰則規定について - 田丸昇、2013年9月2日(2013年12月5日閲覧)。

参考文献[編集]

  • 橋本毅彦・栗山茂久編『遅刻の誕生』(2001年8月、三元社)ISBN 9784883030835
  • 三戸祐子『定刻発車 日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか』(新潮文庫。2005年4月24日、新潮社ISBN 9784101183411

関連項目[編集]