貴種流離譚

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貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)は折口学の用語の一つ。貴種漂流譚(きしゅひょうりゅうたん)とも。

目次

[編集] 概要

貴種流離譚とは、折口信夫が一連の「日本文学の発生」をめぐる論考のなかで、日本における物語文学小説)の原型として論じた概念である。その説くところは時期によって細部が異なるが、基本的には「幼神の流浪」をその中核に据える。

文学は古代社会における信仰のうちから生じたとする折口は、日本における信仰形態のひとつとして、無力な幼い神を神人が斎きながら諸国を放浪するかたちの宗教集団の存在を指摘し(この点に関しては折口自身が述べるように柳田国男の影響が大きい)、これらの神人集団が幼神の縁起由来を語る芸能から「物語」が発達したとする[要出典]

それゆえ日本における散文文学・物語類には、祖形として「高貴な生まれの、弱く、力ない人間が、遠い地をさすらう苦悩を経験する」(それを護持する有力な随伴者を設定する場合もある)という説話型が組みこまれているとするのが、貴種流離譚である。流浪する幼神のイメージは折口学におけるもうひとつの鍵概念まれびとと重なるものである[要出典]

なお、後期の論考において、折口は日本人原罪意識に着目する。この際、「貴種流離譚」なる用語はすでに用いられなくなったが、各種の論文のなかでスサノオヤマトタケル説話が例として引用されていることからもわかるように、晩年の折口にあっては「貴種流離譚」「まれびと」「(日本人の)原罪意識」の三つが融合されるかたちでの思想が醸成されていた。細部については今もって不明とするほかはないが、おそらくは幼神が流離しなければならない理由を、故郷において彼が犯した(原罪)をあがなうためのとして理解するものであり、折口の文学・歴史宗教を横断する柔軟な発想が特徴的にあらわれるものである[要出典]

[編集] 神話学と貴種流離譚

神話学の一つの視点としてモノミスMonomyth(en)の理論がある。これは、すべての文明に見られる神話にはある種の基底構造があるとする仮説であり、ジョーゼフ・キャンベル(en)は『千の顔を持つ英雄』(en)モデルを提示している。この中でジョーゼフは、全ての神話上の英雄には基本的に同じパターン(ヒーローズ・ジャーニー)が見られるとする。もっともこのモノミス(en)理論は神話研究の主流派には認められているものではない[1]

神話的英雄の苦難の冒険の物語については、ギリシア神話や日本の神話にも例が見られ、『高貴の血脈に生まれ、本来ならば王子や王弟などの高い身分にあるべき者が、「忌子として捨てられた双子の弟」「王位継承を望まれない(あるいはできない)王子」などといった不幸の境遇に置かれ、しかし、その恵まれない境遇の中で旅や冒険をしたり巷間で正義を発揮する』という話型を持つものがある。

これら神話をモチーフにしたさまざまな派生・創作作品についても貴種流離譚と表現することがある。

大塚英志の著書『物語の体操』では、以下のように定義される。

  1.  英雄は、高位の両親、一般には王の血筋に連なる息子である。
  2.  彼の誕生には困難が伴う。
  3.  予言によって、父親が子供の誕生を恐れる。
  4.  子供は、箱、かごなどに入れられて川に捨てられる。
  5.  子供は、動物とか身分のいやしい人々に救われる。彼は、牝の動物かいやしい女によって養われる。
  6.  大人になって、子供は貴い血筋の両親を見出す。この再会の方法は、物語によってかなり異なる。
  7.  子供は、生みの父親に復讐する。
  8.  子供は認知され、最高の栄誉を受ける。

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本項では分類を行う都合上、「罪をあがなうタイプ」を贖罪型、「不幸の境遇におかれても正義を発揮するタイプ」を不遇闊達型と称す。

[編集] 贖罪型

日本神話

日本古典

  • 源氏物語 - 須磨の帖では光源氏が都から遠ざけられ須磨に配流となる
  • 伊勢物語 - 東下りの段では昔男(業平)が都を去り東国に下る
  • 浄瑠璃十二段草子 - 奥州下りの途上、義経が美しい姫と出会い恋に落ちる。「浄瑠璃姫物語」「浄瑠璃御前物語」とも言われる。
  • 山椒太夫 - 森鴎外の「山椒太夫」が有名だが、元は室町時代の説経節「山椒太夫」である。
  • 竹取物語
  • 源平盛衰記
  • 一休咄 - 一休宗純は後小松天皇の落胤であるとの風説があった。
  • 水戸黄門 - 隠居後の物語であることに注意(徳川光圀にも家督相続問題で贖罪の動機があった)。

中国古典

  • 西遊記 - 一行の全員が仏教的な因縁を負っており、そこから解脱する修行として難事に遭わされる。

古代ギリシアの叙事詩

古代メソポタミアの叙事詩

ギリシア神話

  • ヘラクレス - ヘーラーがヘラクレスに狂気を吹き込み、ヘラクレスは我が子を炎に投げ込んで殺してしまい、これを悲しんだ妻メガラも自殺した。正気に戻ったヘラクレスは、罪を償うためにデルポイに赴き、アポロンの神託を伺った。

[編集] 不遇闊達型

古典

児童文学

アニメーション

SF・ヒロイック・ファンタジー小説


時代小説

[編集] 脚注

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  1. ^ (2006年) Myth-Placed Priorities: Religion and the Study of Myth、Religious Studies Review. Northup, Lesley, 5-10.

[編集] 関連項目

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