貴種流離譚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

文学
File:Lit.jpg
ポータル
各国の文学
記事総覧
出版社文芸雑誌
文学賞
作家
詩人小説家
その他作家
お知らせ
このテンプレート解説ページができました。使用されるべき記事が決まりましたので一度ご確認ください。

貴種流離譚(きしゅ-りゅうり-たん)は折口学の用語の一。貴種漂流譚(きしゅ-ひょうりゅう-たん)とも。

折口信夫が一連の「日本文学の発生」をめぐる論考のなかで、日本における物語文学小説)の原型として論じた概念で、その説くところは時期によって細部が異なるが、基本的には「幼神の流浪」をその中核に据える。文学は古代社会における信仰のうちから生じたとする折口は、日本における信仰形態のひとつとして、無力な幼い神を神人が斎きながら諸国を放浪するかたちの宗教集団の存在を指摘し(この点に関しては折口自身が述べるように柳田国男の影響が大きい)、これらの神人集団が幼神の縁起由来を語る芸能から「物語」が発達したとする。それゆえ日本における散文文学・物語類には、祖形として「高貴な生まれの、弱く、力ない人間が、遠い地をさすらう苦悩を経験する。(それを護持する有力な随伴者を設定する場合もある)」という説話型が組みこまれているとするのが、貴種流離譚にほかならない。付言すれば、流浪する幼神のイメージは折口学におけるもうひとつの鍵概念まれびとと重なるものであること、いうまでもない。

なお後期の論考において、折口は日本人原罪意識に着目する。この際、「貴種流離譚」なる用語はすでに用いられなくなったが、各種の論文のなかでスサノオヤマトタケル説話が例として引用されていることからもわかるように、晩年の折口にあっては「貴種流離譚」「まれびと」「(日本人の)原罪意識」の三つが融合されるかたちでの思想が醸成されていたと思しい。細部については今もって不明とするほかはないが、おそらくは幼神が流離しなければならない理由を、故郷において彼が犯した(原罪)をあがなうためのとして理解するものであったと考えられ、折口の文学・歴史宗教を横断する柔軟な発想が特徴的にあらわれるものといえよう。

その一方で、広義の定義として、『高貴の血脈に生まれ、本来ならば王子や王弟などの高い身分にあるべき者が、「忌子として捨てられた双子の弟」「王位継承を望まれない(あるいはできない)王子」などといった不幸の境遇に置かれ、しかし、その恵まれない境遇の中で旅や冒険をしたり巷間で正義を発揮する』という話型を持つ文芸作品についてもこの概念に含めるという考え方も存在するなど、決して狭小な範囲に限定された概念ではない。

しかし、「生まれの良い人間が結局すぐれている。」といった価値観が根底にあるのは否定できず、子供の教育上、問題視される場合もある。

[編集]

本項では分類を行う都合上、「罪をあがなうタイプ」を贖罪型、「不幸の境遇におかれても正義を発揮するタイプ」を不遇闊達型と称す。

[編集] 贖罪型

日本神話

日本古典

  • 源氏物語 - 須磨の帖では光源氏が都から遠ざけられ須磨に配流となる
  • 伊勢物語 - 東下りの段では昔男(業平)が都を去り東国に下る
  • 浄瑠璃十二段草子 - 奥州下りの途上、義経が美しい姫と出会い恋に落ちる。「浄瑠璃姫物語」「浄瑠璃御前物語」とも言われる。
  • 山椒太夫 - 森鴎外の「山椒太夫」が有名だが、元は室町時代の説経節「山椒太夫」である。
  • 竹取物語
  • 一休咄 - 一休宗純は後小松天皇の落胤であるとの風説があった。
  • 水戸黄門 - 隠居後の物語であることに注意(徳川光圀にも家督相続問題で贖罪の動機があった)。

中国古典

  • 西遊記 - 一行の全員が仏教的な因縁を負っており、そこから解脱する修行として難事に遭わされる。

古代ギリシアの叙事詩

古代メソポタミアの叙事詩

ギリシア神話

  • ヘラクレス - ヘラがヘラクレスに狂気を吹き込み、ヘラクレスは我が子を炎に投げ込んで殺してしまい、これを悲しんだ妻メガラも自殺した。正気に戻ったヘラクレスは、罪を償うためにデルポイに赴き、アポロンの神託を伺った。

映画

[編集] 不遇闊達型

古典

児童文学

漫画

  • 金色のガッシュ!!
  • 美味しんぼ - 雁屋哲作。主人公山岡は食と造形の天才芸術家海原雄山の息子だが、対立して家を出、新聞記者をしながら食の才能を発揮して毎回問題を解決する。
  • どろろ - 手塚治虫作。武士である父が天下人になる野望の為に、母の胎内にいた主人公の体の部位を妖魔の生贄とし、結果あらゆる体の部位を欠損して生まれた主人公を川に流して捨ててしまう。

時代小説

映画