豊饒の海

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豊饒の海』(ほうじょうのうみ)は、三島由紀夫小説。「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の四部作からなる長編。「浜松中納言物語」に題材をとる。1965年から、雑誌「新潮」に連載。

「夢と転生」がテーマ。二十歳で死ぬ青年が、次の巻の主人公に生まれ変わっていく。 仏教唯識思想、神道一霊四魂説、の「シテ」「ワキ」、春夏秋冬、など様々な東洋の伝統を踏まえて書かれている。

第四部「天人五衰」の入稿日に、三島は陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地割腹自殺した。なお、「豊饒の海」とは、月の海の一つである「Mare Foecunditatis」の訳語。創作ノートからは、当初とは全く違った構想だったことがうかがえる。最終巻の解説には当初の予定よりも1年間早く掲載が終了としたとある。

目次

[編集] あらすじ


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[編集] 第一巻・春の雪

生まれたときから貴族であることが約束されている侯爵令息・松枝清顕。何不自由ない生活を送っていたが、流れるままの生活に何かわだかまりを抱えていた。そんな彼にとって、幼馴染の伯爵令嬢・綾倉聡子は特別な存在であった。聡子もいつからか清顕を恋い慕うようになっていた。が、ふとしたことがきっかけで清顕は突き放したような態度をとるようになる。聡子は失望して洞院宮治典王と婚約し、皮肉にもその時清顕はやっと自分の本心に気づいたのであった。そして彼は聡子と禁断のをしてしまい、聡子の妊娠によって二人の仲はついに両家に知れ渡った。聡子は大阪の松枝侯爵の知り合いの医師の元で中絶をし、そのまま奈良門跡寺院「月修寺」で出家する。一方清顕も肺炎のため二十歳の若さで死に、二人は二度と会えなかった。なお第一巻は和魂を、第二巻は荒魂、第三巻は奇魂、第四巻は幸魂をあらわすと三島は述べている。

[編集] 第二巻・奔馬

聡子と結ばれることなく清顕が死んでから十九年。彼の親友であった本多繁邦は、大阪控訴院高等裁判所に相当)判事になっていた。繁邦は、清顕と同じく三つの黒子を持つ少年、飯沼勲と出会う。繁邦は彼から、愛読していたという『神風連史話』を渡される。勲はその精神を以て有志達と「純粋な結社」を結成、決死の何事かを成し遂げようとしていた。清顕の日記に符合する出来事が起き、繁邦は彼が清顕の生まれ変わりであると確信を深めるが、勲は財政界の黒幕を殺害し二十歳で鮮烈な自決を遂げる。

[編集] 第三巻・暁の寺

繁邦は、かつて清顕と親交のあったシャム(タイ)の王子と、そのいとこの故郷である、タイのバンコクに来ていた。そこで彼は、日本人の生まれ変わりであると主張する、王女・月光姫(ジン・ジャン)と出会う。繁邦はインドにも旅行し、そこで深遠な体験をする。インドの体験と親友の生まれ変わりに触発され、仏教の輪廻転生唯識の世界にも足を踏み入れた繁邦。やがて終戦を迎え、来日した姫に繁邦は年齢不相応の恋心を抱き、翻弄される。だが、彼女も二十歳でコブラに噛まれ亡くなる。

[編集] 第四巻・天人五衰

天人伝説の伝わる三保の松原。その近く清水港の帝国信号通信所で働く聡明な16歳の少年、安永透。八十になった繁邦は、透を清顕の第三の生まれ変わりでないかと考え、養子にして英才教育を施す。やがて成長し、転生の話を知った透は、二十一歳の誕生日に毒を仰ぎ自殺を図ったが、未遂に終わったが失明してしまう。死期を悟った繁邦は、六十年ぶりに奈良「「月修寺」」に尼僧門跡となった聡子を訪ねるのであった。なお当初予定された題名は『月蝕』だった。モデルとなった寺院は奈良市にある『圓照寺』である。


以上で物語・作品・登場人物に関する核心部分の記述は終わりです。


[編集] 登場人物

松枝清顕(1巻)
第1巻の主人公。松枝侯爵家の一人息子。祖父は明治維新の功臣。幼少期には堂上貴族の綾倉家に行儀見習いとして預けられていた。そこの一人娘で幼馴染の聡子と禁断の恋に落ちるが、かなわず病死。滝の下で会うという言葉を残す。
綾倉聡子,のち月修寺門跡(1巻、4巻) 
羽林家綾倉伯爵家の一人娘。清顕より二歳年長で、かつては姉弟のように育った。
本多繁邦(全巻) 
全巻にわたって登場し、主人公の転生に居合わせる。清顕の親友。後に大阪控訴院判事となる。後に退職して弁護士になる。このシリーズ全体のキーポイントとなっている人物
松枝侯爵(1巻、2巻)
清顕の父。
みね(1巻、2巻)
松枝の女中で松枝侯爵の妾。後に飯沼茂之の妻となり、勲を産む。
飯沼茂之(1巻~3巻) 
松枝家の書生。女中であったみねと出奔。勲の父。後に右翼団体「靖献塾」塾長となる。
綾倉伊文伯爵(1巻) 
聡子の父
蓼科(1巻、3巻) 
綾倉家に仕える老女。清顕と聡子の逢引の手助けをする。
洞院宮治典王(1巻、2巻)
皇族軍人。聡子と婚約し、婚姻の勅許が下りる。
飯沼勲(2巻) 
第2巻の主人公。滝の下で会い清顕の生まれ変わりと本多に見られる。國學院大學予科学生。剣道3段。昭和の神風連たらんと行動をおこす。南国に居るという様なうめき声を遺す。
佐和(2巻)
靖献塾の年長塾員。勲の理解者だが、一筋縄ではいかない人物。
鬼頭槇子(2巻、3巻)
歌人で名高い鬼頭中将の娘で当人も歌人。鬼頭家と飯沼家は家族ぐるみの付き合いがある。実在の歌人斎藤史をモデルとする。
ジン・ジャン(3巻)
第3巻の主人公タイ王女。勲の生まれ変わりと本多に見られる。
久松慶子(3巻、4巻)
本多の友人。透に本多の秘密を教える。
安永透(4巻)
第4巻の主人公。中学卒業後、清水港で通信員をしている。後に本多がジン・ジャンの生まれ変わりだと信じて養子にする。 ポスト三島文学である、村上春樹山田詠美 の作品の登場人物の「先駆」となるような戦後的人格。ポスト団塊世代
絹江(4巻)
自分を美しいと思っている狂女。透が心を許している数少ない人物。

[編集] 影響

映画『地獄の黙示録』を監督したフランシス・フォード・コッポラは、撮影の際、しばしば『豊饒の海』を手に取り、作品の構想を膨らませたそうである。 (妻の「エレノア・コッポラ」著 『ノーツ―コッポラの黙示録』・マガジンハウス (ISBN 4838703945)、『「地獄の黙示録」撮影全記録』(文庫)・小学館 (ISBN 4094025669) )

晩年の市川雷蔵が、『春の雪』の舞台主演を強く希望していたが、病状悪化・逝去で実現しなかった。(「雷蔵、雷蔵を語る」飛鳥新社のち朝日文庫、藤井浩明によるあとがきより)なお最初の舞台化は、菊田一夫演出で市川染五郎(のち9代目松本幸四郎)と佐久間良子(最初の舞台主演)の共演で、1969年に上演された。三島も文章を寄せた。

[編集] 文献

[編集] 参考

唯識』 を 精神医学 の立場から解き明かした著。

[編集] 映像化