警策

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
警策

警策は、警覚策励(けいかくさくれい)の略。坐禅のとき、修行者の肩ないし背中を打つための棒を指す。曹洞宗では「きょうさく」、臨済宗では「けいさく」と読む。長さは宗派によって異なるが、一般的に持ち手は円柱状で、先端に行くにしたがって扁平状となる。材質は多くが樫や栗。打つ側は「警策を与える」、打たれる側は「警策をいただく」という言い方をする。

警策を与える者を直日(じきじつ)または直堂(じきどう)と言う。直日・直堂は坐禅中の禅堂内を巡回し、修行者の坐禅を点検する。このとき、曹洞宗では警策を体の中央に立てて、臨済宗では右肩に担いで巡回する。曹洞宗においては坐禅の姿勢が前かがみになっていないか、臨済宗においては法界定印の親指同士が離れていないかが、警策を与える1つの基準となっている。姿勢が前かがみになったり、法界定印の親指同士が離れたりするのは、坐禅に集中できていない証拠だからである。

警策の意味[編集]

禅堂内で警策は文殊菩薩の手の代わりであると考えられている。つまり警策で打つという行為は、坐禅修行が円滑に進むようにという「文殊菩薩による励まし」という意味を持つ。それゆえに直日・直堂も、修行者も、両者ともが警策を「与える」・「いただく」前後に合掌低頭し、お互いに感謝の意を表す。

曹洞宗における警策[編集]

曹洞宗では禅堂の壁に向かって坐禅を組む。直日・直堂は警策で背後より1回につき右肩を1打する。左肩には袈裟が掛かっているので打たない。

臨済宗における警策[編集]

臨済宗では禅堂の壁を背にして坐禅を組む。直日・直堂は警策で正面から左右の背中をそれぞれ、1回につき夏季は2打、冬期は4打する。季節によって打数が異なるのは、服装の違いによる。ただし、季節を問わずに3打ないし4打する禅堂もある。

子ども坐禅会における警策[編集]

毎年夏休みなど長期休暇中に子どもたちを対象とした「子ども坐禅会」が各地で開催されるが、その際に用いられる警策は、普段修行者に用いられるものより軽い材質でできている。そのため打ったときには大きな音が出るが、痛さはあまりない。

また、「子ども坐禅会」は、あくまでも坐禅「体験」であるので、いわゆる「希望策」というシステムを取ることが多い。これは、あらかじめ子どもたちに「坐禅中、心が落ち着かなくなったり、眠くなったりしたら手を合わせなさい」などと指導しておき、合掌した子どもにだけ警策を与えるというものである。ただ、参加者が中学生・高校生中心の場合は、一般修行者の坐禅の場合と同じように、希望策ではなく、直日・直堂の判断に基づく警策を与えることもある。

警策の歴史[編集]

今でこそ坐禅につきものとされている警策であるが、その歴史は浅く、江戸時代になってから登場したと言われている。少なくとも曹洞宗の開祖である道元、臨済宗の開祖である栄西の時代には用いられていなかった。

罰策・罰警[編集]

通常警策は禅堂内で使用されるものだが、時として禅堂から離れたところで用いられることがある。それが「罰策」(ばっさく)・「罰警」(ばっけい)である。雲水が、その修行中に規矩(雲水が守るべき規則)を破ってしまった際、文字通り「罰」として警策で打たれることを指す。違反の程度にもよるが、連続して数十発打たれることもある。もちろんこのような「罰」を受けた後は、肩・背中が腫れ上がり、ミミズ腫れの痛みで数日間は背中を下にして眠れないという。

関連項目[編集]