診断群分類包括評価
診断群分類包括評価(しんだんぐんぶんるいほうかつひょうか)は、医療費の定額支払い制度に使われる評価方法。DPC(Diagnosis Procedure Combination;診断群分類)に基づいて評価される。
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[編集] 導入状況
診断群分類包括評価を用いた入院医療費の定額支払い制度は2003年4月より全国82の特定機能病院等において開始された。2004年に62施設、2006年には216施設が導入し、その数は360施設(約18万床)となった。また、2006年からDPCに基づき定額支払い制度を導入している病院の名称がDPC試行的適用病院から「DPC対象病院」、DPCの定額支払いに関するデータを提供する病院の名称はDPC調査協力病院から「DPC準備病院」へと変更となり、DPC包括評価の本格的到来が示唆された。
2008年度は358施設(約11万床)が導入となり、DPC対象病院は合計718病院、一般病床(約91万床)に占めるDPC対象病床(約29万床)の割合は3割強に達した。
2009年度は567施設が導入し、DPC対象病院は1,283病院、一般病床(約91万床)のおよそ半分(約43.4万床)がDPC対象病床となった(2006年と2008年のDPC対象病院で各1施設退出している模様)。2010年4月には53施設が導入し、DPC対象病院は合計1334施設となる見込み(新たに2施設が退出している模様)。
[編集] DPC対象病院の要件(2010年度)
診断群分類包括評価を用いた入院医療費の定額支払い制度を導入するには次の5つの要件を満たす必要がある。
- 一般病棟基本料等の7対1又は10対1入院基本料に係る届出
- 診療録管理体制加算に係る届出
- 標準レセプト電算処理マスターに対応したデータの提出を含め厚生労働省が毎年実施する「DPC導入の影響評価に係る調査(特別調査を含む。)」に適切に参加
- 上記 3. の調査において、適切なデータを提出し、かつ2年間(10ヶ月)の調査期間の(データ/病床)比が8.75以上
- 適切なコーディングに関する委員会の設置(最低年2回以上実施)
DPC対象病院となった後に要件を満たさなくなった場合
上記 1.〜3. の要件を満たせなくなった場合は3ヶ月間の猶予期間を設け、3ヶ月を超えてもなお基準を満たせない場合には、DPC対象病院から退出する。4. の要件については、次の診療報酬改定の際に再度計算し、満たしていなかった場合は、診療報酬改定の時期に合わせて退出する。
※退出した場合でも「DPC導入の影響評価に係る調査(特別調査を含む。)」に2回(2年)適切に参加しなければならない。
[編集] 医療費の定額支払い制度
医療費の定額支払い制度は、患者が何の病気であったか(診断群分類)によって診療報酬が決まる制度である。これまでの出来高払い制度が、治療にどれだけの費用が掛かったかで報酬が決まっていたのと対照的な制度であり、様々な利益が期待されている。
第一に患者への利益として、無駄な医療の削減が期待されている。これまでの出来高払いでは行った医療行為が多ければ多いほど医療報酬が増えるため、回復への最短治療を行った医療者へは支払いが減り、回復を長引かせた医療者への支払いが増えると言う矛盾があった。この制度では患者と医療者の利害が一致しておらず、利害の溝を埋める事は医療者の人格と能力に全て任せられていた。一方 医療費の定額支払い制度では、まず最初から診断結果に対する診療報酬が決められていて、実際に掛かった医療費は後から経費として差し引かれる。そのため、回復への最短治療を行った医療者においては、診療報酬から治療に掛かった費用を差し引いた額だけ利益が発生する。逆に回復を長引かせた医療者においては、治療に掛かった費用が診療報酬の上限額を超えてしまい、その額だけ損失が発生する。このような形で患者と医療者の利害が一致し、無駄な医療が行われなくなると同時に、最適な医療を行う能力が医療者に求められる仕組みとなる事が期待されている。
第二に医療者への利益として、従来の診療では採算割れの傾向が強かった急性期病院は経営的安定が確保できるほか、患者の属性・病態や診療行為ごとの医療費情報が標準化されるため、経営的・技術的側面から医療の質を評価・比較可能であると注目されている。
第三に行政への利益として、医療サービスが標準化する結果、医療費抑制が実現されることも期待されている。
考えられる問題点は、行う医療行為が少なければ少ないほど利益になるので、最小限の医療が治療計画の余裕を損なう可能性がある。医療者の裁量に自由が無くなることは、治療成果や生存率の低下につながりかねない。また、医療訴訟が増加するなどして結果として、行政、医療者、患者たる国民の三者とも不利益を被る恐れがある。
[編集] 診断群分類
診断群分類は、1986年の米国エール大学における、一般産業でいうQC活動を医療に応用するための研究に端を発している。その後、各国でさまざまな形で応用され、米国で開発された診断群分類は、DRG(Diagnosis Related Group)と呼ばれている。DRGには資源消費の均質性という特徴があり、1983年、米国において、メディケアの入院医療費の支払方法として診断群分類ごとの包括支払い方式が採用された。これをDRG/PPSという。
1996年、日本でも診断群分類をベースとした定額制の方向が示され、1998年に急性期入院医療費の定額支払い方式の試行事業(日本版DRG/PPS)が開始された。その後2003年にこの診断群の考え方を踏襲して誕生したのがDPC包括支払いである。 DPC(診断群分類)とは、患者ごとに傷病名や年齢、意識障害レベル(JCS)、手術、処置の有無などの治療行為を組み合わせたものである。DPC対象病院が増えてきたこともあり「DPC=包括支払い」と認識されがちであるが、DPCはあくまで診断群分類を意味しており、包括支払い制度を意味するものではない。
2010年4月改定におけるDPCの分類項目は2,658分類であるが、包括評価対象となる診断群分類は1,881分類であり、これに該当しない患者は従来どおりの出来高払いとなる。包括評価の範囲は、主にホスピタルフィー的要素(入院基本料・検査・画像診断・投薬・注射・1,000点未満の処置などの施設報酬)であり、ドクターフィー的要素(手術料・麻酔料・1,000点以上の処置などの医療技術料)は対象外となる。従来の点数にあてはめてみると、DPCの対象となる入院患者に算定できる診療報酬の約7割が包括範囲に含まれている。(あくまでも全体の平均であり、手術等の無い入院の場合には包括部分が9割を超す場合や、短期の手術目的での入院では包括部分が1割未満の場合がある)
[編集] DPCコード
DPCでは、約2660ある全ての診断群分類に対して14桁で構成される「診断群分類番号」つまりDPCコードが割り振られている。このうち1,881のDPCにはそれぞれ入院期間に応じた包括点数が設定されており、2010年3月19日付の官報で告示されている。コードには下記のような意味がある。数字の代わりに「x」とある場合は「該当なし」を意味する。
例)040080xx99x00x
左から順に各桁ごとに決められた定義により表現される。
- 1~2桁目 (1)主要診断群/MDC2桁コード
- 3~6桁目 (2)最も医療資源を投入した傷病名の4桁分類コード
- 7桁目 (3)入院目的(2006年4月改定より未使用:x該当なし)
- 8桁目 (4)特定の条件:年齢条件、出生体重条件、JCS条件(意識障害レベルの指標)、Burn index条件(熱傷の重傷度を判断する指標)
- 9~10桁目 (5)手術情報
- 11桁目 (6)手術・処置等1の有無
- 12桁目 (7)手術・処置等2の有無
- 13桁目 (8)副傷病の有無
- 14桁目 (9)重症度等の有無
この例(040080xx99x00x)を端的に表現すれば「肺炎等で入院し、特に処置・手術・副傷病等が無かった」こととなる。具体的な意味としては次のようになる。
- 04:呼吸器の疾患(1~2桁目)
- 0080:肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎(3~6桁目:実際には1桁目~6桁目が揃わなければ傷病名に該当しない)
- x:該当なし(7桁目)
- x:該当なし(8桁目)
- 99:手術なし(9~10桁目)
- x:該当なし(11桁目)
- 0:手術・処置等2なし(12桁目)
- 0:副傷病なし(13桁目)
- x:該当なし(14桁目)
[編集] DPCにおける総報酬額
DPCにおける総報酬額=診断群分類による包括評価+出来高評価+入院時食事療養費
診断群分類による包括評価は、「診断群分類点数表」と呼ばれる包括範囲点数表をもとに下記の式で算定し、出来高部分については従来からの医科診療報酬点数表をもとに算定する。
診断群分類による包括評価=診断群分類ごとの1日当たり点数×医療機関別係数×入院日数×10円
なお、前出の診断群分類番号(040080xx99x00x)は以下のような包括範囲点数となっている。
- 入院1日目~5日目:2,652点/日
- 入院6日目~9日目:1,873点/日
- 入院10日目~20日目:1,592点/日
(※21日目以降は入院期間III(2SD)超えとなり、従来通りの出来高の計算方式で算定)
[編集] 参考文献
- 医学通信社編 『DPC点数早見表 診断群分類樹形図と包括点数・対象疾患一覧』 医学通信社、2009年 ISBN 9784870584044