訴状

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訴状(そじょう)は、裁判所民事訴訟を提起するに当たって原告が裁判所に提出する、訴えの内容について述べた文書をいう。

日本では、主に民事訴訟手続において、争いのある訴訟物を特定して、裁判所に判断を求めるために原告本人または訴訟代理人が作成、提出する書面のことを指す。訴えの提起は訴状を裁判所に提出してしなければならないと規定されており(民訴法133条1項)、裁判所宛の正本に加え、相手方となる被告の人数分の副本を添付する必要がある。訴状提出の際に、民事訴訟費用等に関する法律所定の手数料を収入印紙で納付し、訴訟費用の概算額の郵便切手を予納する。以下、現行の日本法上の訴状について論じる。

必要的記載事項[編集]

民訴法133条2項に規定がある。

当事者および法定代理人の表示[編集]

当事者は住所及び氏名により特定する。氏名を通称や芸名で記載してもかまわない(もちろん特定の人を指すことが確定できる場合に限られる。)。住民票や登記記録に記載された所在地以外に居住している場合は実際の場所を住所として記載する。この場合記載しないと、送達不能で送達場所の補正の指示がなされる。

請求の趣旨[編集]

裁判の結論となる主文に相当するものを請求の趣旨として記載する。

請求の原因[編集]

請求(訴訟物)を特定するのに必要な請求の原因は訴状に必ず記載しなければならない。請求の趣旨だけで請求が特定されることもあるが(例:「A県B市C区D丁目E番F号の土地(宅地、地積100平方メートル)の所有権が原告に属することを確認する。」)、請求の趣旨だけでは請求が特定できない場合(例:「被告は、原告に対して1000万円を支払え。」)には、請求を特定するのに必要な請求の原因(例:原告・被告間で平成15年3月1日に締結した金銭消費貸借契約に基づき元金1000万円の返還を求める。)を書くことが必要である。なお、簡易裁判所に対しての訴状は紛争の要点を記載するだけで足りる(民訴法272条)。

ここでいう請求の原因は、上記のとおり訴訟物特定のために必要な記載のことであり、いわゆる同一識別説に基づく処理である。訴訟物が特定できれば訴状記載の請求原因としては適法であるが、勝訴判決を得るためには、理由記載説に基づく請求原因が口頭弁論期日で陳述されていなければならない。

任意的記載事項[編集]

  • 原告又はその代理人の郵便番号及び電話番号ファクシミリの番号を含む。)を記載しなければならない(民訴規則53条4項)。原告ないし原告代理人への連絡を円滑に行うためである。
  • そのほか、請求を理由付ける事実(先の所有権確認の例であれば当該土地に関する原告の所有権取得の経緯、金銭消費貸借契約に基づく元金返還請求の例であれば、消費貸借契約契約の締結(金銭の交付と返還約束)等である。)、重要な関連事実及び証拠を記載し、かつ重要な証拠の写しを添付することが求められている(民訴規則53条、55条)。刑事訴訟における起訴状においては、裁判官の予断を与えるため証拠の添付が禁止されている(起訴状一本主義)が、民事事件では刑事事件と異なり予断排除の必要に乏しく、第1回口頭弁論期日前に裁判所及び被告が原告の主張の全体像及び重要な証拠を確実に把握し、被告が当該訴訟に対する方針を決定することが、迅速な裁判の実現に欠かせないことからこれらの事項の記載が要求されている。

その他[編集]

  • 裁判長の訴状審査権(民訴法137条)
請求が特定されていない場合または収入印紙金額の納付が不足する場合は、裁判長は補正命令を発して、訴状記載事項の補充・訂正または不足額の納付を命じる。原告が不備を補正しないときは、裁判長は訴状を却下しなければならない。訴状却下の際、原告に訴状が返還される(民訴規則57条参照)。なお,補正命令なく訴訟係属した場合であっても、主張が不明瞭である場合は当事者に釈明処分を命じることができる。
  • 訴状の送達(民訴法138条)
訴状の送達は原告によって提出された副本によって行われる(民訴規則58条1項)。
  • 書面によらない訴えの提起(民訴法271条、273条)
簡易裁判所における手続では、訴えの提起は口頭でもよいので、当事者が訴状を作成することは不要である。もっとも簡易裁判所の窓口に訴状用紙が備え付けられておるので、訴えの口頭提起は実際には稀である。
  • 当事者の確定
氏名冒用訴訟などで当事者を誰として手続の進行や判決の効力をどう考えるか問題になるが、訴状の記載を基準とすべきとする表示説の立場が通説的見解である。詳細は当事者で記述。

関連項目[編集]

控訴の提起は控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない(民訴法286条1項)。控訴状の必要的記載事項は、当事者及び法定代理人並びに第一審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨である(同条2項)。訴状に関する規定と同様の規定が控訴状についても置かれている(控訴状審査権(288条、137条)、控訴状の送達(289条)、控訴が不適法な場合の控訴の却下(287条、290条))。
上告の提起は上告状を原裁判所に提出してしなければならない(民訴法314条1項)。上告状の必要的記載事項は、当事者及び法定代理人並びに原判決の表示及びその判決に対して上告をする旨である(313条、286条2項)。訴状に関する規定と同様の規定が上告状についても置かれている(上告状審査権(313条、288条、137条)、上告状の送達(313条、289条)、上告が不適法な場合の上告の却下(316条、317条))。上告理由を記載した書面を上告提起通知書送達から50日以内に提出しない場合には控訴裁判所で却下される。

外部リンク[編集]