視聴率主義

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視聴率主義(しちょうりつしゅぎ)とは、視聴率(業界では”数字”とも言われる)を向上させる事を優先する放送局の思想または番組制作の姿勢を指すものである。主に、視聴率を得るためだけに作られたような低俗番組を批判する論調で使われる。下記に述べる過去の「やらせ」問題や、視聴率買収事件があったにもかかわらず今もなお、テレビ局の廊下や掲示板などには「視聴率三冠王達成!」「○○(番組名)20%!」と張り紙がされていることが多く、視聴率を取ることだけが必至のようである。このような状況が起こるのは、民間放送局の場合あくまでも営利企業であり、視聴率の低迷によりスポンサーがいなくなることや、放送局自体が視聴率を番組の成績(営業成績にほぼ類似している)として捉えていることからだと言える。また、この状態は「視聴率戦争」「視聴率至上主義」「視聴率絶対主義」とも言われる。近年では民間放送局はもちろん、公共放送であるはずのNHKにおいても、視聴率至上主義が顕著である。理由は当然ながら受信料徴収の名目になると同時に局内の他部門に対する牽制になるからである。

目次

[編集] 視聴率主義にいたる背景

視聴率そのものの説明は視聴率のページに譲る。CMが挿入される形式は「タイム」と「スポット」の大きく二つに分かれる。タイムはいわゆるスポンサーCMと言われる。スポンサーCMの出稿は半年。つまり半年間は収入が確実にあるということとなり安定収入源である。ただし、視聴率が悪ければその半年後にはスポンサーがつかないことがありえる。スポンサーがつかない場合、ACジャパンのCMが流される事もある。

そしてスポットは、番組間に挿入されるCMである。最近はスポンサー番組の中にもスポットが入ったりしている(タイム枠にスポンサーがつかない場合などに収入を確保するため)。料金や出稿量などの計算の指標として広告主が使用する数値の単位はGRP(Gross Raing Point:世帯延べ視聴率)という。もう一つの基準は媒体側が提示するパーコスト(1%当たりのコスト)である。

例えば、2000GRP(延べ視聴率2000%)を達成したいと広告主が思ったとして、A局とB局にそれぞれ1000GRPずつ割り振り、それぞれの媒体局にプライムタイム(19時から23時)でのCMの出稿依頼をしたとする。プライムタイムの平均視聴率がA局が10%、B局が20%というデータが出ていると仮定する。パーコストがA局B局双方20万円とする(実際は、媒体企業の経営状況や出稿時間、出稿季節により差がある)。GRPを平均視聴率で割った数値が放映すべきCMの本数となり、GRPとパーコストの積が広告主が媒体局に支払うべき金額となる。

媒体局は1000GRP(=1000%)を達成し2億円を手にするには、A局は100本放映することが必要となり、B局は50本放映すればよいことになる。言い換えれば、100本放映が不変であればA局は2億円、B局は4億円を手にすることができる。B局はA局と比べて2倍経営効率が良い(つまり2倍儲かる)ということになるので、その分他広告主へCM放映枠を販売することができる。もちろん、この例は単純化されているので実際はもっと複雑である。

そして「週間のコマーシャルの総量は総放送時間の18%以内とする」という業界内の取り決めがある。媒体局同士が合議をしない限り18%は変えられない。つまり「媒体局が広告主から客観的に料金を徴収していくには視聴率でしか差をつけられない」ということになる。ここが視聴率主義の背景である。

視聴率がダメならCM枠も埋まらなくなる。そうなるとパーコスト、つまり単価の引き下げをしてでもCM枠を埋めるという事態になるわけで、それが一部の媒体局が陥っている現状である。当然制作費が下がることになる。そこで広告会社や親媒体局の取り分を減らせば制作費には影響しない可能性があるがそうはしない。実際の番組制作は親媒体局がするわけではなく、番組制作会社がほとんどである。製作会社にいく分が減ればスタッフのモチベーション低下、番組コンテンツへの悪しき影響は避けられなくなる。そのコンテンツ、データを見て広告主が出稿をためらう。そのネガティブスパイラルが働いている。その弊害を以下に述べる。

ー「放送業界の動向とカラクリがよくわかる本第二版(秀和システム)」「東洋経済2009年1月31日号(東洋経済新報社)」ー

[編集] 視聴率主義の弊害

テレビ業界では「創世記」から視聴率主義はもちろん存在していたが、かつての「8時だヨ!全員集合」のような絶対的な「お化け番組」の不在(但し、これには多チャンネル化が遠因になっている場合もある)と90年代の不況も重なって、現在の「視聴率主義」は、「最小の支出でいかに視聴率をとるか」という徹底したコスト主義を追求しており、テレビ局の「利益至上主義」ともいえる。

具体的には以下の事例がある。

  • 制作費を安価に抑えるため、視聴率の高かった番組の模倣(いわゆる”パクリ”)やほとんどオリジナリティのない番組の濫立(乱立)
    • いわゆる脳トレブームに乗った頭脳トレーニング番組や、「”インテリ”対”おバカ”」の対決図式の芸能人のみ出演のクイズ番組の濫立
    • 海外のニュース映像や番組を流し、出演者に観想を問うだけの番組
    • スポーツ中継に頼る
    • ニュース解説番組の増加
    • 安易なコラボレーション
  • 番組編成そのものの画一化(例えば、全国ネットの民放が同時刻にクイズ番組を放送するせいで、アニメや、ドラマや、ドキュメンタリーなどの他ジャンルの番組がその時間に全く放送されなくなってしまうケースなど)
  • 制作費を大幅に軽減するためのトーク番組の濫立
  • 期首期末に関わらず、通常番組の長時間特番化
  • 上記バラエティ番組や情報番組に出演しているタレントやキャスターもほとんど同じ顔ぶれか、ギャランティが比較的安い若手のお笑い芸人というケースが多い。
  • 期首期末のいわゆる「特番」や年末年始の「”正月番組”」であっても、通常番組の拡大版やとってつけたようなトーク番組などの濫立
  • 過剰な番組宣伝。企業宣伝(特に、外食業)を主とし、グルメばっかり取り上げる。
  • 近年、出演者による「自腹」による支払いと言う手法があるが、これを本当と考えれば制作費の支出が抑えられ、必死さも出る。一石二鳥である。

[編集] 視聴率主義に対する例外

テレビアニメ特撮等、(民放の)子供向け番組では視聴率主義に対して例外が発生する。何故なら、これらの番組のスポンサーの多くは番組関連商品の売り上げを期待して出資しているため、視聴率は商品生産量の目安に過ぎないからである。番組自体が「30分のCM」とも言われる所以でもある。

例を挙げると、

  • 鋼鉄ジーグ』:視聴率は低かったが、玩具の売り上げが良かったため、打ち切られる事はなかった。
  • 快傑ズバット』:視聴率は高かったが、玩具の売り上げが悪かったため打ち切り。ファンの多くが子供ではなく玩具を買わない世代(当時のオタクは子供向け玩具を買わなかった)だったと、後にスタッフから語られている。

2000年以降に増えた(オタク向けである)深夜アニメでは事情が変わる。製作会社自身がメインスポンサーとなって、全話収録DVDを売ることが目的になる。視聴率はDVD生産量の目安でしかない。また視聴率に関係なく、1クールで終わる物がほとんどで、その後の売り上げを見て続編を作るかを決定する。これが行き過ぎると「(DVDの売り上げを伸ばすために)結末はDVDでしか発表しない」という場合があり、視聴者から批判を受けることもある(俗に「あのね商法」とも呼ばれる)。

オタク層しか買うことの無かった全話収録DVDも、現代では一般層も買うようになり、この項目が当てはまる番組は、夕方の子供向けアニメは当然として、ドラマバラエティードキュメンタリーと増えている。さらに『仮面ライダーディケイド』が子供向け番組でありながら「結末は映画で発表」とした事に対して、視聴者からの訴えを受けた放送倫理・番組向上機構(BPO)が質問状を送り放送局が謝罪するほどの大問題となった。

[編集] 視聴率に関する事件など

  • 2005年12月31日に放送されたNHK紅白歌合戦で、「視聴率が50%いかない場合、プロデューサーである石原真が髪をそる」と宣言した。しかしながら、紅白歌合戦の視聴率は50%を切ってしまったため、プロデューサーはその後、本当に髪を剃ることになった。

他にやらせなども参照

[編集] 関連項目

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