覆面作家

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覆面作家(ふくめんさっか)とは素性やプロフィールをほとんど明らかにしない作家のこと。

概要[編集]

プロフィールにおいて本名ではなくペンネーム(変名)を使用している。プロフィールには謎の部分が多く、本名や顔写真は公開されない。

また、ペンネームによる名義では文学賞の授賞式などの公の場には登場せず、コメントを出す程度に留まり、詳細なプロフィールを公表しなければならなかったり授賞式に出席しなければならないならば主要文学賞でも受賞を辞退することもある。

プロフィールを明らかにする場合は公表されるプロフィールは真実である場合もあれば、真偽が入り混じったもの、あるいは性別などまで含めて全く架空のプロフィールと人格を設定し、作家側は事実上ゴーストライターと同様の形で振る舞う場合もある。プロフィールが真実の場合、生年又は誕生日、出身地、あとはあっても学歴程度に留まり、人物像を掴みにくいように出版社側でも配慮がされている。

それ以外の覆面作家の定義はやや曖昧で、作家にもよるが覆面作家を自称する場合も自称しない場合もある。

すでに商業ベースで活動をし著名になっている人物が他の名義で覆面作家になる場合もあれば、商業活動を開始した当初から素性などを全く明らかにしない覆面作家も存在する。

理由[編集]

作家が素性を隠し覆面作家として活動する理由としては、以下のようなケースが挙げられる。

  • 著名人・既存の作家と明らかにしないことによって作品に先入観を持たれないようにする。
  • 正反対の分野の作品を別名義で上梓し、後で同一人物であることを発表して、社会にインパクトを与える。
  • 契約面の都合などから、本来のプロフィールが出せないため。
  • 副業作家が本業として勤務している会社・機関からの圧力や、同僚のやっかみなどを避けるため。または勤務先が就業規則副業禁止を定めており、作家活動が知られると解雇されるため。
  • 素性を明らかにして自らのプライバシー名誉を荒らされたくない。
  • 自らの作品に対する内容的(場合によりその他諸々な)責任を回避、もしくは放棄しやすくする。
  • 反体制側の人間であり、政府から迫害される恐れがある。
  • 出版社の社員が自社雑誌に小説を掲載しても、会社の規定により社員の名義では原稿料が支払われないことから、 原稿料を貰うためにペンネームを使ったため、正体が明かせない。
  • メインの仕事がいわゆるゴーストライターであるため、素性を広く知られると出版業界内での活動にも支障を来たす。
  • 性別・国籍・民族などの出自・身元を装い執筆する。
  • 描いている作品の内容のため、自分の家族や知人にも正体を知られたくない(特に性描写を含む成人向けの場合)。
  • 両親など家族との不和がある、あるいは家族の性格や経済面に問題がある(例えば異常な浪費癖)などの理由から、自身が作家活動をしている事や作家としての収入があることを近親者にも知られたくない。

また、作家自身に当初はそのつもりはなかったものの、以下の様な都合から、結果として事実上の覆面作家になってしまったなどというケースもある。

  • デビュー当初はプロフィールを伏せていて、結果的に公表するタイミングを逸してしまった。
  • デビュー当初からプロフィールを隠すつもりはなかったが、その後も公表する機会が得られなかった。
  • デビュー当初は出版社の意向でプロフィールを伏せたが、そのまま覆面作家として人気が沸騰してしまい、話題性などの商業的事情からプロフィールの公開が難しくなってしまった。
  • デビュー当初は成人向けの専門であったなどの事情から、一般向け(少年誌、青年誌など)に転じて以降も出版社側からの配慮や要請がありプロフィールの公開ができない、あるいは公開させてもらえない。

また、複数の作家が共有筆名で一人の覆面作家になることもある。

個人情報[編集]

先に述べた通り、覆面作家は基本的に本名を伏せペンネームを使用しており、その顔・素性・経歴なども明らかにしておらず、世間から見たその人物像は謎に包まれている。

そのため、覆面作家の作品がベストセラーになったり主要な文学賞を受賞したり、映像化などの話題性の高い商業展開があると、時にその正体不明の人物像はファンのみならず一般大衆の興味を惹きつけ、一時的な社会的関心事となることもある。そこを狙い、キー局全国誌を主としたマスコミによる報道が、「公人みなし公人)のプライバシーは制限される」「報道表現の自由(大衆の知る権利)」を大義名分として、視聴率や発行部数の向上を目当てに、興味本位にその覆面作家の顔や人物像、個人情報などの秘密を世間に曝露させようと強引な取材を行うことがある。

同様に、このような不法者らにスクープを売り込むことで一稼ぎを企むトップ屋や、私立探偵が覆面作家の素性を探ろうとすることもある。この場合、出版社・出版業界にとっては当該の作家のプライバシーの保護が、その後の執筆活動の可否なども絡んで緊急の問題になることがある。

なお、覆面作家の正体や個人情報については、覆面作家も確定申告納税を行う都合、出版業界以外でも公認会計士税理士や、自治体国税関係の税務担当職員らに本名や住所を開示する必要があるため、同時に職員がそれらの個人情報を把握することになる。ただし、それらの情報は極めて重要な個人情報として、職員に厳しい守秘義務が課せられており、諸規則の手前からは2005年まで存在した高額納税者公示制度を除けば、脱税などの捜査刑事告発で個人情報の開示を命じる場合、または情報漏洩でもない限りこちらから素性が明らかにされることは有り得ない。

覆面作家の例(元覆面作家を含む)[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 森下小太郎「『家畜人ヤプー』の覆面作家は東京高裁倉田卓次判事」(『諸君!1982年11月号)