西武40000系電車

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西武40000系電車
西武40000系電車(0番台)
(2021年10月 小手指駅 - 西所沢駅間)
基本情報
運用者 西武鉄道
製造所 川崎重工業川崎車両
製造年 2016年 -
製造数 0番台:6編成60両
50番台:14編成140両
〈2024年1月1日時点〉
運用開始 2017年3月25日
主要諸元
編成 10両編成
軌間 1,067 mm(狭軌
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 105 km/h(西武線内)
80 km/h(地下鉄線内)
110 km/h(東横線内)
設計最高速度 120 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.55 km/h/s
編成定員 0番台
ロングシート時:1,299人
クロスシート時:1,250人
50番台:1,439人
自重 0番台:26.7 - 36.9 t
50番台:24.8 - 35.9 t
編成重量 0番台:318.5 t
50番台:303.4 t
全長 先頭車:20,270 mm
中間車:20,000 mm
車体長 先頭車:19,935 mm
中間車:19,500 mm
全幅 2,848 mm
車体幅 2,800 mm
全高 屋根:3,610 mm
空調:4,050 mm
パンタ折畳み:4,115 mm
床面高さ 1,135 mm
車体 アルミニウム合金 (efACE)
台車 モノリンク式ボルスタレス台車
SS185M・SS185T
台車中心間距離 13,800 mm
主電動機 永久磁石同期電動機
主電動機出力 190 kW
駆動方式 WN駆動方式
歯車比 6.21 (87:14)
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置 東芝
SVF102-H0 (M1、M5)
SVF098-E0 (M3)
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
全電気ブレーキ対応
保安装置 西武形ATS
東京地下鉄新CS-ATCATO
東急・横浜高速ATC-P
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西武40000系電車(せいぶ40000けいでんしゃ)は、2017年に営業運転を開始した西武鉄道通勤形電車

概要

西武池袋線系統(池袋線・西武有楽町線西武秩父線)と東京メトロ有楽町線副都心線東急東横線横浜高速鉄道みなとみらい線を直通する有料座席指定列車「S-TRAIN」用として導入[1]、2017年3月25日から運用を開始[2]2018年からは新宿線拝島線系統の「拝島ライナー」での運行も開始。0番台はクロスシートとロングシートに転換可能なデュアルシートを備えている。

製造は川崎重工業(現:川崎車両)が担当[3]。西武鉄道ではモハ550形以来約90年ぶり。本形式の導入に伴い9000系2000系の置き換えが行われている。

初代「スマイルトレイン」(30000系)の後継として、「人にやさしい、みんなと共に進む電車」をコンセプトに今後のスタンダードの車両となるように開発された[4]。車両の設計においては、担当部署の鉄道本部車両部のほかに、2014年2月に社内から、20歳代を中心とする若手男女社員6名によるプロジェクトチームが選抜され、外観や車内設備にメンバーの意見を多く採り入れている。

2017年にグッドデザイン賞を受賞[5]

また、日本の鉄道事業者において電車の形式名に「40000系(40000形)」を採用した例は本形式が初。

50番台

2019年度にロングシート固定の車両(50番台)が登場し、以後の増備車は全て50番台となっている。車内設備・運用等が大きく異なる箇所があり、本項ではそれらの相違点について、各節ごとに0番台・50番台とを分けて解説を行う。

構造

車体

車体側面のデザイン(0番台)

共通項

車体はアルミニウム合金製のダブルスキン構体とした[6]リサイクル性を考慮し、同一の合金を使用する「モノアロイ化」を推進しており、先頭部構体も同じくアルミ合金としている[6]。工作にあたっては、FSW(摩擦攪拌接合)工法を用いて品質と精度の向上が図られている[6]。設計においては、有限要素法解析を行い、振動や衝突に耐えられる構造としている[6]。さらに、中間車の妻面構体部は、オフセット衝突に備え、妻柱部の強化、また端部をカット(Cカット)した形状としている[6]。また、正面衝突時の対策として、先頭部構体の強化や、コンピュータによるシミュレーションを実施し、想定外の事故においても生存空間を確保できるようにした[6]

先頭形状は、30000系よりもさらに丸みを強調した球面状とし[7]、柔らかいイメージの先進的なデザインとした[6]。他社への直通運転に対応できるよう、車両幅2,800mmとし、側構体をストレート構造としている[6]。床面高さは、30000系同様に1,135mmとし、ホームとの段差を極力なくしている[6]

カラーリングは30000系と同じくアルミ合金の無塗装車体に、西武グループのコーポレートカラーであるブルーとグリーンをグラデーションで配したものとしているが[7]、アレンジの仕方は30000系と大きく異なり、側扉の周囲をブルーで囲み、ドアをグラデーションで装うデザインとなっている[7]。前面窓下も、側扉と同じグラデーションが配され[7]、窓回りから屋根にかけて黒で締められている。後述するパートナーゾーンの大窓については、窓周囲がオレンジで囲まれている[7]

車椅子などのピクトグラムは、扉の外周につけられた吹き出しの中に入れている[7]。号車番号は独立した丸の中に入れられた[7]

前面と側面に設置された種別・行先表示器は、フルカラーLEDによるものを採用し、行先などを表示する標準文字色を明るい白色とすることで視認性向上を図っている[8]。前照灯はコイト電工製の白色LEDとした[注 1][7]

番台間の差異

座席の種類を示す表示が前面貫通扉窓上部と側面表示器横に掲出されており、0番台では水色地白文字で「LONG/CROSS」、50番台では黄色地白文字で「LONG」となる。

また、後述の車内設備の関係で、側窓やピクトグラムの配置に変更が生じている。

車内設備

共通項

客室内の配色は白を基調とし[6]、車内の空間をより広く見せる工夫として、ガラスを多用し開放感を持たせている[6]

側面の化粧板は側扉も含め高級感のある艶消し、妻面は木目調としている。天井部は曲線を生かした開放感のあるデザインとし、高反射の天井材を使用して車内全体を明るくした[6]。床敷物はゴム系とした。いずれも火災対策に配慮している[6]。天井中央部長手方向にはラインデリア、室内灯を集約配置した[6]

荷棚は、採光確保や荷物への傷付け防止を考慮し、ガラス式としている[6]

つり革は、30000系で開発した卵をモチーフにした形状を踏襲しており[6]、カラーは通常部では薄い青、優先席部ではオレンジ、パートナーゾーンでは白とした。高さは、クロスシートでの頭上空間を考慮して[6]高めの1,660mm[6]を基本に、ドア付近や車椅子スペースなどではさらに高い1,810mm[6]、逆に優先席部は低めにとられている。

室内灯は調光・調色機能を持ち、用途に合わせて調整できるものとした[6]。室内灯色は昼白色・電球色・昼白色半減・電球色半減の4パターンが用意されている。

車椅子・ベビーカースペースは窓を固定式とする他、手摺、非常通報装置、車椅子固定ロープを設置することで、より安全性に配慮した[6]

弱冷房車は6000系などと同じく9号車で、座席指定列車として運行する際は設定を解除[9]している。

10号車の客室先頭部には「パートナーゾーン」を設けている[6]。これは、ベビーカーで乗車する際に不便さを子育て中のチームメンバーが語ったことから発案されたもので[10]車椅子・ベビーカー利用者のほか、大きな荷物を持つ方への配慮としている[6]。中央部に”中腰いす”と呼ばれる、軽く腰掛けるための設備があり、その周辺は余裕をもって車椅子や乳母車を置くことができる[7]。戸袋部にもさらに簡易的な腰掛が設けられた。通常の車椅子スペースと同様に、非常通報装置や車椅子固定ロープも設けられている。隣接する側窓は1840mm×1243mm[注 2]の特大固定窓となり、濃い着色ガラスとした[7]。隅丸方形の手摺を設けており、カーテンはない[7]。側面の化粧板は中央部が木目調となり、床敷物は黄緑色とされた。つり革は白色で、高い位置に設けられている。側扉脇の握り棒については通常部と同一[注 3]となる。

側扉は、駅での長時間停車時において冷暖房効果を高めるため、半自動機能を備えており、室内外に半自動スイッチを装備している。戸閉装置は、ダイレクトドライブモーター方式による電気式ドアエンジンとしており[6]、戸挟み防止機能を備えている[6]

妻面貫通扉については30000系同様に900mm幅のガラス製で、さらに左右200mmのガラス部を設けている[7]。衝突防止模様は桜が使用され、さらに上部に鳥が描かれている。

サービス設備として、乗客が無料で使用できるWi-Fiアクセスポイント(SEIBU FREE Wi-Fi)が設置されている[6]。また空気浄化装置(プラズマクラスター)も備えられており、各妻面上部の左右に設置している。1両あたりの数としては先頭車で2台、中間車(トイレ無し車)は4台、中間車(トイレ有り車)は3台となる。

車内案内表示装置として、側扉の上部に2in1タイプ17インチワイドLCD表示器(西武スマイルビジョン)を設置し、高画質映像を表示している[6]。向かって右側の画面には行き先や停車駅・運行情報などを表示し、FOMA回線を使用しタイムリーな情報を提供する[6]。左側の画面には広告動画やニュース・天気予報などの情報を表示する[6]。通信にはWiMAXを使用しており[6]、Tc2の屋根上にアンテナが2本設けられている。

0番台

西武初のロング・クロス転換シート(デュアルシート)を搭載している[6]。これは座席をクロスシートロングシートの両方に切り換えられるもので、天龍工業製の2人掛けシートが採用された。扉間に2人掛けデュアルシート3基(1両あたり18基)、車端部に3人掛けの固定ロングシート1つとなる。車端部のロングシートについても、座席そのものはデュアルシートと概ね同一の仕様である。

モケットは青系で、窓底辺より下は桜模様の入った薄い青、窓底辺より上は横方向に線状の模様が入った濃い青としている。頭部には枕カバーが設けられる[6]。優先席部も他の車端部と同一の青系とされている。座面高さは438mm、着席幅は460mmを確保している[6]。設備としては肘掛けのほか、背面に収納式のドリンクホルダとフックを設置した[6]。また3座席に2つの割合で100Vのコンセントも設けられており、扉間では壁面に、車端部では肘掛けの下に配されている[7]。このコンセントは一般列車運用時のロングシート状態であっても全ての差し込み口が使用可能である。

座席の状態・向きはS-TIM画面より操作し全号車一括での設定ができるほか、S-TIM画面にて「転換許可」キーを操作した場合、各妻面(先頭部は運転台背面)にある「座席転換スイッチ[注 4]」を操作することで各車両ごとの設定が可能である。さらにグループでの使用を考慮し、クロスシート時には乗客による個別の任意回転が可能な構造とした[6]。腰掛下のペダルを踏むことで回転ができるが、ロングシートへの転換はできない。

袖仕切りはガラス製で桜の模様が入り、金属無地の縁取りが付く。スタンションポールの類は設置されていない。

荷棚は前述の通りガラス製で、扉間では高さが1,750mmと若干高めにとられている他、下部に樹脂カバー[注 5]が取り付けられている。車端部では高さ1,720mmとなっている[6]

床敷物はベージュ系のカラーとし、扉付近には警戒色の黄色を入れている。

側扉は、有料座席指定列車運用時に備え、限定開扉機能を設けている[11]。また側扉両脇の握り棒には木材を使用し、落ち着いた空間を演出している[6]

「S-TRAIN」運用時の開扉状態。各車両、一箇所のみ開閉する。(元町・中華街駅、2017年3月26日)

車椅子・ベビーカースペースは1・2・4・9号車に配置している[6]。このうち2・9号車は妻部に非常用車椅子が収納されており、側窓がない[7]

優先席は各車2ヶ所(6席)づつ設けられ、奇数号車は池袋寄りの車端部、偶数号車は飯能寄りの車端部となる[注 6]。前述の通り、座席はその他の車端部と同一のものが使用されている。

2016年度製の2編成では、中吊り広告をなくして広告用デジタルサイネージ(スマイルビジョン)を天井部に設けている[6]。ロング・クロス転換などによる利用環境の変化に対応するためで[6]、ドア上と同じく17インチディスプレイを2枚横に並べ、1両あたり12 - 16画面(1編成あたり合計156画面)が設置されている[6]

トイレは4号車に設置されている[6]。清水空圧式の洋式便器(暖房便座付き)で、車椅子にも対応する構造とした[6]。また室内にベビーシートを設置している[6]。扉は円弧式の自動ドア[6]となる。

50番台

座席は固定式のロングシートが配されている[12]。通常通りドア間は7人掛け、車端は3人掛けとなる。

バケットシートで、背ずりは中央部が上方向へ伸びており波型を描く。モケットは、通常部は青色系、優先席部はオレンジ系で、共に桜をモチーフにした模様が入れられている。座席間のスタンションポールについては7人掛け座席では2本、3人掛け座席では1本設置され、優先席部はオレンジ色着色品となっている[12]

袖仕切りは白を基調とし、中央部には桜模様のついたガラスが入る。荷棚部までポールが伸びている。

荷棚の高さは扉間、車端部とも同一とされ、0番台の車端部よりも若干低い。

車椅子・ベビーカースペースは全車両車端部に1ヶ所ずつ設置[12]、全て側窓がある。優先席は全ての車端部座席に設けられた。

客室通常部の床敷物は30000系などに近い配色とした。なおそれら他形式と比較し、色調がオレンジがかっている、ドア下の黄色部分が細め[注 7]などの違いがある。

乗務員室

運転室は全室構造とし、緊急時の避難経路確保のため、前面に非常扉を設けている。前面窓には主ワイパー[注 8]のほか予備の手動ワイパーを設け冗長性を確保した他、視認性向上のため非常扉にも電動ワイパーを設けている[6]。デフロスタは表示器部含め全ての前面窓に装備される。

運転台はグラスコックピット構成とされ、3枚のタッチパネル式液晶画面が並ぶ。速度計や表示灯のほか、車両の機器の状態の表示・サービス機器の操作が可能。またバックアップ機能を設けている[6]主幹制御器はT型ワンハンドルマスコンを採用した[7]

客室との仕切り窓は床からの高さを30000系よりもさらに低い965mmとすることで、子供にも前面展望を楽しむことができるよう配慮されている。

機器類

主回路機器は東芝製で、PMSM(永久磁石同期電動機)の採用を念頭に置いた設計となっている。6000系の6157Fで試用しているものをベースに開発された[13]

制御方式はIGBT素子を用いた2レベルVVVFインバータ制御で[7]、1つのインバータ回路で1台の電動機を制御する1C1M方式[6]とし、そのインバータ回路4つを1台の冷却器にまとめた4in1インバータユニットとして[6]小型化した。上記の4in1インバータユニットを2群備えた装置(SVF102-H0[6])をM1,M5に、1群の装置(SVF098-E0[6])をM3に各1台、編成で計3台搭載する。なお1C1M方式となるのはPMSMをはじめとする同期電動機では回転数に同期した制御が必要となるためである[14]。主電動機は全閉形永久磁石同期電動機(SEA-547A)が使用されている。

全電気ブレーキと定速運転の機能を有している[6]

補助電源装置は260kVA出力の静止形インバータ (SIV) を採用[6]。素子にハイブリッドSiCを使用し、3レベルインバータ方式とすることで、スイッチング損失を低減している[6]。また、編成内2台で並列同期運転を行うことで、1台が故障しても給電を停止することなく継続できる構成とされた[6]。さらに、S-TIMのネットワークを利用し、軽負荷時に一部を休止させる軽負荷休止運転制御を行うことで、車両全体での電力変換効率向上を図った[6]。形式はNC-GAT260A[6]で、M2,M6に各1台、編成で計2台搭載する。

空気圧縮機は三菱電機製のスクロール式コンプレッサを採用[6]。三相誘導電動機直結とされている。1台のコンプレッサは3ユニット構成となっており、1ユニットが故障しても他のユニットで運転を継続できる[6]。アフタークーラ、除湿装置、起動回路を装置内に収めている[6]。形式はMBU1600Y-3B[6]。M2,M6に各1台、編成で計2台搭載する。

集電装置はシングルアーム式のPT7116-Dを採用[6]。剛体架線対応のほか、電磁かぎ外し装置と降下検知装置を備える[6]。M1,M3,M5の飯能方に各1基、編成で計3基搭載する。

ブレーキは回生ブレーキ併用電気指令式電磁直通ブレーキ方式(HRDA-1)[7]で、空気ブレーキはON/OFF制御弁による各軸制御が可能[6]である。30000系のシステムを踏襲している[6]。遅れ込め、保安・圧着ブレーキ、滑走検知装置を装備する。ブレーキ受量器が台車単位でブレーキ力を演算しており、荷重の偏りや回生失効が発生した場合もS-TIMにより編成全体のブレーキ力管理が行われ、他の車両に分配するシステムとなっている[6]。また、台車ごとにブレーキ制御装置を装備することにより、空気配管が短縮され応答時間が約半分となり、ブレーキ時の空走時間短縮に繋がる[6]

台車は軸重調整機構付きのモノリンク式ボルスタレス方式[6]採用。牽引装置はZリンク式[6]となる。駆動装置歯車の歯面形状適正化により低騒音化を実現したほか[6]、応加重差圧弁を採用し走行安定性も向上している。基礎ブレーキは動台車、付随台車ともにユニット式の踏面片押しブレーキ[6]とした。駆動方式はWN継手式の中実軸平行カルダン駆動方式を採用している。形式は動台車がSS185M、付随台車がSS185T[15]

列車情報制御システムは30000系に次いでS-TIMを搭載した。力行とブレーキトルクを編成で一括管理制御する列車統合制御を行い、消費電力削減、乗り心地向上を図っている[6]。車両の主要機器との伝送経路を2重化して、機器間伝送の信頼性を向上させたほか[6]、床下機器をS-TIM箱[注 9]に集約させることで車体配線の削減を図っている[6]。また、直通先でのATO/TASC運転対応のため、ATO制御部を統合した[6]。その他、各機器の試験を自動化し、運転台の画面から操作可能としたことで、検修業務の効率化を図っている[6]

空調装置は集中式で、外気取入れ機能つき[6]、容量58.14 kW (50,000kcal/h) のCU723A[7]を各車両の屋根上中央部に1台搭載している。装置の冷媒はR407Cを使用している。全自動空調運転を念頭に設計[6]されており、全自動モードにおいては各車の温湿度、乗車率およびS-TIMがもつカレンダ情報に基づき、最適な空調モード[注 10]を選択し、暖房・冷房・除湿・送風をそれぞれ自動で行う。

ラインデリア(軸流ファン)はレール方向に取付けて風量バランスの改善を図った[6]。運転モードは強・弱・微の3速制御[6]とし、空調制御器の指令により最適な運転を自動で行う[6]。また乗務員の判断による強制運転も可能である[6]。暖房装置は座席下部や車椅子スペースにシーズワイヤヒータを取付けており、寒冷期でも十分な能力としている[16]

導入後の変遷

2020年1月から、先頭部の室外解錠ハンドル(ドアコック)蓋が容易に開かないよう、四辺に銀色のテープを貼り付けて簡易封鎖されている。

2020年8月から10月にかけて、車内に抗ウイルス・抗菌加工を実施した[注 11][17]

製造時期による差異

2016年度製造分(40101・40102編成)

  • このグループのみ、天井部のデジタルサイネージを搭載。

2017年度製造分(40103 - 40106編成)

  • 先頭部の室外解錠ハンドル(ドアコック)蓋を改良
  • 非常用車椅子格納箱の小型化
  • 妻面ステップ配置の変更
  • 9 - 10号車間の転落防止幌台座の適正化

2019年度製造分(40151・40152編成)

  • コイト製LED前照灯を2灯式から多灯式(10灯丸形)へ変更
  • 列車無線アンテナの形状を変更
  • デジタル無線対応化・誘導無線廃止
    • 先頭車屋根上の2本目の列車無線アンテナを本設置[注 12]
    • 誘導無線関連機器(側面、床下のアンテナ・床下の送受信機箱等)の省略
      • これにより4 - 5号車間の妻面ステップ配置が変更された。
    • 運転台へ列車無線表示器を設置[注 13]

2020年度製造分(40153・40154編成)

  • 室内の鴨居部へ防犯カメラを設置(千鳥配置)

2021年度製造分以降(40155編成以降)

  • 先頭部の室外解錠ハンドル(ドアコック)蓋を改良
  • 40156編成から、抗菌・抗ウイルス仕様の座席シートを採用[18]

運用

2024年2月1日現在、デュアルシート車の0番台が6編成、ロングシート車の50番台が14編成運用されている。

0番台

池袋線系統では2017年3月25日[2]から2編成が営業運転を開始し、現在では4編成が使用されている。新宿線系統では2018年3月10日から2編成が営業運転を開始した。

有料座席指定制列車(池袋線系統のS-TRAIN新宿線系統の拝島ライナー)の全列車のほか、一般列車にも充当される。なお一般列車としては、通常は副都心線系の直通列車には使用されない。

有料座席指定列車として運転する場合は座席をクロスシートに設定するほか室内灯を電球色とし、また弱冷房車設定を解除[9]している。

40101 - 40104編成の4本は小手指車両基地、40105・40106編成の2本は玉川上水車両基地に新製配置され、突発的な貸出を除き、それぞれ池袋線系統・新宿線系統で運用されていた。

その後、2020年4月1日付で40105・40106編成が転属したことで全編成が小手指車両基地の所属となり[19]、以降は2編成が常に新宿線系統へ貸し出されている。

50番台

2019年12月26日から1編成が池袋線系統で営業運転を開始、2020年7月31日から東京メトロ有楽町線・副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線への直通運転を開始した。なお、2023年3月16日から開始された相鉄線への直通列車には充当されないが、試運転では東急新横浜線新横浜駅まで入線実績がある。

40151 - 40154編成の新製配置は小手指車両基地[19][20]であったが、2021年4月1日付で武蔵丘車両基地へ転属している[20]

新宿線系統への貸出も稀に行われており、当時「カナヘイの小動物」ラッピングを施していた40152編成が2020年に新宿線系統で運行していた[21][22]ほか、一般車の貸出も行われている。

2024年2月5日より同年4月下旬ごろまで、池袋線、狭山線、西武有楽町線、東京メトロ有楽町線、副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線などで、「映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)」デザインのラッピング電車を運転。当系40153編成が対象[23][24][25]

特別な運用

WORKING TRAINの車内(2021年10月7日)

編成表

2024年1月1日時点

0番台[33]

 


号車 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
形式  
クハ40100
(Tc1)
<  
モハ40200
(M1)
 
モハ40300
(M2)
 
サハ40400
(T1)
<  
モハ40500
(M3)
 
サハ40600
(T2)
 
サハ40700
(T3)
<  
モハ40800
(M5)
 
モハ40900
(M6)
 
クハ40000
(Tc2)
機器配置 BT VVVF2 SIV,CP   VVVF1   BT VVVF2 SIV,CP  
車内設備 ♿︎,女性専用車 ♿︎α   トイレ,♿︎         ♿︎α,弱冷房車 PZ
自重 29.5t 36.9t 35.0t 28.2t 34.6t 26.7t 27.2t 37.0t 34.8t 28.6t
定員 ロング時 124 132 132 126 132 132 132 132 132 125
クロス時 119 127 127 121 127 127 127 127 127 121
座席 38 45 48 42 48 48 48 48 45 30
車両番号 40101

40106
40201

40206
40301

40306
40401

40406
40501

40506
40601

40606
40701

40706
40801

40806
40901

40906
40001

40006
  • 車内設備配置(0番台)
1号車 2号車 3号車 4号車 5・7号車 6・8号車 9号車 10号車
運転台             ♿︎ α               🆏                 ♿︎ α           PZ 運転台
女性専用車 弱冷房車
♿︎ ♿︎

50番台[34]

 


号車 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
形式  
クハ40100
(Tc1)
<  
モハ40200
(M1)
 
モハ40300
(M2)
 
サハ40400
(T1)
<  
モハ40500
(M3)
 
サハ40600
(T2)
 
サハ40700
(T3)
<  
モハ40800
(M5)
 
モハ40900
(M6)
 
クハ40000
(Tc2)
機器配置 BT VVVF2 SIV,CP   VVVF1   BT VVVF2 SIV,CP  
車内設備 ♿︎,女性専用車 ♿︎ ♿︎ ♿︎ ♿︎ ♿︎ ♿︎ ♿︎ ♿︎,弱冷房車 ♿︎,PZ
自重 28.2t 35.9t 33.5t 24.8t 33.0t 25.4t 25.5t 35.8t 33.4t 27.9t
定員 135 146 146 146 146 146 146 146 146 136
座席定員 45 51 51 51 51 51 51 51 51 31
車両番号 40151

40164
40251

40264
40351

40364
40451

40464
40551

40564
40651

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  • 車内設備配置(50番台)
1号車 2号車 3 - 8号車 9号車 10号車
運転台             ♿︎ ♿︎       ♿︎       ♿︎     PZ 運転台
女性専用車 弱冷房車
♿︎

凡例

脚注

注釈

  1. ^ 0番台では、30000系にて試験的に使われていた小型のライトを横に2つ並べたものが採用されたが、50番台では他系列でも広く用いられている花形の多灯式ライトが採用されている。
  2. ^ 通常の扉間と比較し、下方向にのみ234mm大きい
  3. ^ 0番台は中央部に木材を使用、50番台は全て金属無地。
  4. ^ 1号車向き・10号車向き・ロングの3つのボタンが設けられている。
  5. ^ つり革と同じ薄い青色
  6. ^ 車いすスペースやトイレとは重ならない配置となっている。
  7. ^ 本系列の0番台と同じ幅
  8. ^ 主ワイパーのみダブルアーム
  9. ^ 全車両に搭載。先頭車のみNo.1・No.2の2台が搭載され、後者は主に保安装置などが収容される。
  10. ^ 年間全自動制御、端境期の除湿・弱暖房送風運転など
  11. ^ 他系列でも実施
  12. ^ それまでの車両では台座のみ設置されていた
  13. ^ 2017年度製造分まではS-TIM画面内に配置されていた列車情報設定器としての機能も兼ねる。

出典

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参考文献

  • 新船紀弘(西武鉄道株式会社 鉄道本部 車両部 車両課主任) 平成29年3月25日ダイヤ改正でデビュー!西武鉄道40000系『鉄道ファン』67巻6号(通巻676号・2017年8月号)(交友社)pp. 56-64
  • 交友社『鉄道ファン』2020年5月号CAR INFO「西武鉄道40000系増備車」pp.52 - 53。

外部リンク