製図ペン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
製図ペン
製図ペンの先端

製図ペン(せいずペン、: technical pen)は図面を書くためのペンで、他の筆記具のペン先が使用者の筆圧や摩耗などで変化するのに比べて、筆圧に左右されることなく、均一な太さや幅の線を描けるように、特定の太さの中空パイプの外軸と、毛細管現象を促すための中軸で構成されたペン先をもつ筆記具。

製図用万年筆、パイプペンとも呼ばれる。元祖のメーカー名である「ロットリング」で通称されることもある[1][2][3][4]

概説[編集]

19世紀後半にアメリカのアロンゾ・タウンゼント・クロスやカナダのダンカン・マッキノンによって開発された、スタイログラフィックペンとも呼ばれる針先万年筆が前身である[5][4]。針先万年筆の製造元であったドイツのロットリング社が、1953年に製図ペンの原型である最初の『ラピッドグラフ』を開発した[6][7][4]。従来の万年筆においても、多様な線幅のペン先を用意したり、耐水性・耐光性に優れたインディアインクを使うことで、製図に用いようとするアイデアは存在したが、ラピッドグラフで線幅の正確性の高いペン先が実現され、従来の製図用具であるカラス口の代替として省力性に秀でる製図ペンが広く用いられるようになった[4]

製図ペンは多様な線幅のペン先が揃えられているのが一般的である。線幅には従来の「標準」と、国際規格ISO 128英語版に定義された製図用の線幅に準拠したものがある。1988年には製図ペンの国際規格ISO 9175ドイツ語版が定義された。

1980年代になると競合品として、水性顔料系インクの極細マーキングペンミリペン)が登場した。これは廉価であるが、摩耗などの短所があり、ISO線幅のような規格的厳密さは確立されていない。

最近では製図CADを利用する場合が多くなり、図面の出力にはプロッタと呼ばれる大型プリンタを用いることから手描きによる筆記具としての製図ペンは使われなくなりつつあるが、無機質で均一な幅の線が引けることからマンガ用の枠線を描く筆記具として、またそのまま無機質な絵を描くための筆記具としても使われている。

主なメーカー[編集]

出典[編集]

  1. ^ 竹田逸郎「特許図面の変遷 : 新しく弁理士になられた方へ」『パテント』第62巻第1号、日本弁理士会、2009年、33-36頁、NDLJP:8226093 
  2. ^ 斉藤克幸「電子書籍時代における漫画のあり方に関する一考察」『比治山大学短期大学部紀要』第49巻、比治山学園・比治山大学短期大学部、2014年、103-111頁。 
  3. ^ 古市雄二「鉛筆・定規からCADへ 製図道具と製図作業の変容」『労働の科学』第71巻第2号、大原記念労働科学研究所、2016年、24-27頁。 
  4. ^ a b c d e Linares García, F (2014). “Amigo Rotring: in memoriam (DEAR ROTRING: IN MEMORIAM)”. EGA Expresión Gráfica Arquitectónica (Universitat Politècnica de València) 19 (23): 244-253. doi:10.4995/ega.2014.2187. hdl:10251/75770. 
  5. ^ 万年筆の歴史”. 日本筆記具工業会. 2021年7月9日閲覧。
  6. ^ ロットリング・ストーリー”. ホルベイン画材. 2014年3月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月9日閲覧。
  7. ^ rOtring Heritage”. Rotring. 2024年1月2日閲覧。