ニホンヒキガエル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
から転送)
移動: 案内検索
ニホンヒキガエル
アズマヒキガエル
アズマヒキガエル
Bufo japonicus formosus
保全状況評価[a 1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 両生綱 Amphibia
: 無尾目 Anura
亜目 : ナミガエル亜目 Neobatrachia
: ヒキガエル科 Bufonidae
: ヒキガエル属 Bufo
: ニホンヒキガエル B. japonicus
学名
Bufo japonicus
Temminck & Schlegel, 1838
和名
ニホンヒキガエル
ヒキガエル
英名
Japanese toad

ニホンヒキガエルBufo japonicus)は、両生綱無尾目ヒキガエル科ヒキガエル属に分類されるカエル。

分布[編集]

B. j. japonicus ニホンヒキガエル
日本鈴鹿山脈以西の近畿地方南部から山陽地方四国九州屋久島に自然分布)固有亜種[1][2][3][4][5]
東京、仙台市などに移入[4][5]
B. j. formosus アズマヒキガエル
日本(東北地方から近畿地方、島根県東部までの山陰地方北部に自然分布)固有亜種[1][2][3]
伊豆大島佐渡島北海道函館市など)などに移入[2][4][5]

形態[編集]

体色は褐色、黄褐色、赤褐色などで、白や黒、褐色の帯模様が入る個体もいる[5]。体側面に赤い斑点が入る個体が多く、背にも斑点が入る個体もいる[5]

B. j. japonicus ニホンヒキガエル
体長7-17.6センチメートル[2][3]。鼓膜は小型で、眼と鼓膜間の距離は鼓膜の直径とほぼ同じ[1][2][3]
B. j. formosus アズマヒキガエル
体長6-18センチメートル[3]。鼓膜は大型で[3]、眼と鼓膜間の距離よりも鼓膜の直径の方が大きい[1]

亜種アズマヒキガエルの幼生は全長3センチメートルで、体色は黒色や濃褐色[5]

四六のガマと呼ばれるが、前肢の指は4本、後肢の指は5本。繁殖期のオスにはメスを包摂する際に滑り止めとして後肢にコブ(婚姻瘤)ができるためそれを6本目の指と勘違いしたと思われる[要出典]

分類[編集]

以前はヨーロッパヒキガエルの亜種とされていたが、分割され独立種となった[2]ヘモグロビン電気泳動法による解析では、両亜種の解析結果がナガレヒキガエルとは類似するもののヨーロッパヒキガエルとは系統が異なる(近縁ではない)と推定されている[6]

北海道(移入)や東北地方の山岳部個体群は体長6-9センチメートルと小型で鼓膜が大型なことからエゾヒキガエルや亜種ヤマヒキガエルB. j. montanusとして分割する説もあったが[1][2][3]、体長以外に差異がないことから亜種アズマヒキガエルのシノニムとされる[5]

  • Bufo japonicus japonicus Temminck & Schlegel, 1838 ニホンヒキガエル、サツマヒキガエル
  • Bufo japonicus formosus Boulenger, 1883 アズマヒキガエル


北海道では1912年7月2日に函館高校女学校(今の函館西高等学校)で初めて発見された[7]。その後旭川市室蘭市でも繁殖が確認され、道内各地(札幌市石狩市江別市深川市等)で次々と捕獲例がある[8]。上記のとおり当初は北海道固有亜種と考えられたが、関東の個体群と同じであるという遺伝子解析結果から国内外来種であることが明らかとなっている[9]。函館市では現在もなお「希少なエゾヒキガエル」として扱っており、外来種としての認識は低い[7]。道内では本種の天敵となるヤマカガシが生息しておらず、本種の定着拡大や捕食による昆虫への悪影響が懸念される[9]

生態[編集]

低地から山地にある森林やその周辺の草原などに生息し、農耕地、公園、民家の庭などにも広く生息する[2][3]夜行性[5]、昼間は石や倒木の下などで休む[2]ヤマカガシは本種の毒に耐性があるようで好んで捕食する[3]。ヤマカガシの頚部から分泌される毒は、本種の毒を貯蓄して利用していることが判明している[10]

食性は動物食で、昆虫ミミズなどを食べる[2][3]

繁殖形態は卵生。繁殖期は地域変異が大きく南部および低地に分布する個体群は早く(屋久島では9月)、北部および高地に分布する個体群は遅くなる傾向があり(立山鳥海山では7月)[4]。池沼、水たまり、水田などに長い紐状の卵塊に包まれた1,500-14,000個(基亜種6,000-14,000個、亜種アズマヒキガエル1,500-8,000個)の卵を産む[5]。多数個体が一定の水場に数日から1週間の極めて短期間に集まり繁殖する(ガマ合戦、蛙合戦)[4][5]。南部個体群は繁殖期が長期化する傾向があり、例として分布の南限である屋久島では日本で最も早い9月の産卵例、11月の幼生の発見例(10月に産卵したと推定されている)、1-3月の繁殖例、3-4月の産卵例がある[4]。繁殖期のオスは動く物に対して抱接しようとし、抱接の際にオスがメスを絞め殺してしまうこともある[5]。幼生は1-3か月で変態する[5]


先着のオスが発する、またはオスがメスと思って上に乗っかると「グーグー(おれはオスだ。さっさと降りろ!)」のリリース・コールという特別な鳴き声によって弱いオスは離れ、ふつうは1対1のペアで産卵が行われる[要出典]背中のオスの抱きつく力が刺激になって産卵を誘発するといわれ、紐状の卵塊を長時間にわたって産み出すために、産卵後のメスは体力を使い果たして、産み落とした卵の側で休む事が多い[要出典]

人間との関係[編集]

形態や有毒種であることからか忌み嫌われることもある。しかし民家の庭等に住みつくこともよくあり、人間の身近で生活する動物とも言える。一番身近な生物の一つ。

本種の皮膚から分泌される油汗をガマの油と称して薬用にしたとされる。しかし実際に外傷に対し薬として用いられたのは馬油や植物のガマの方である。薬用とされたのは耳下腺分泌物を小麦粉で練ったもので蟾酥といい、強心や抗炎症などに用いた。

文学・民俗の中のヒキガエルについてはヒキガエルの文化を参照のこと。

画像[編集]

参考文献[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b c d e 海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド カエル1 ユーラシア大陸、アフリカ大陸とマダガスカル、オーストラリアと周辺の島々のカエル』、誠文堂新光社2006年、23頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j 千石正一監修 長坂拓也編 『爬虫類・両生類800図鑑』、ピーシーズ、2002年、297頁。
  3. ^ a b c d e f g h i j 深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編 『動物大百科12 両生・爬虫類』、平凡社1986年、69頁。
  4. ^ a b c d e f 松井正文 「カエル類の繁殖 -日本産普通種を見直す-」『ハ・ペト・ロジー』Vol.3、誠文堂新光社2005年、66-67頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 松橋利光、奥山風太郎 『山溪ハンディ図鑑9 日本のカエル+サンショウウオ類』、山と溪谷社、2002年、26-39、108頁。
  6. ^ 松井正文、佐藤隆 「電気泳動法による日本産ヒキガエルのヘモグロビン分析」『爬虫両棲類学雑誌』Vol.7 No.1、日本爬虫両棲類学会1977年、15-19頁。
  7. ^ a b 村上興正・鷲谷いづみ(監修) 日本生態学会(編著) 『外来種ハンドブック』 地人書館、2002年9月30日ISBN 4-8052-0706-X
  8. ^ 北海道 ブルーリスト ニホンヒキガエル
  9. ^ a b 徳田龍弘 『北海道爬虫類・両生類ハンディ図鑑』 北海道新聞社、2011年3月31日ISBN 978-4-89453-592-3
  10. ^ Deborah A. Hutchinson et al.,"Dietary sequestration of defensive steroids in nuchal glands of the Asian snake Rhabdophis tigrinus",PNAS,Vol. 104, 2007,pp. 2265-2270

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. ^ The IUCN Red List of Threatened Species
    • Yoshio Kaneko, Masafumi Matsui 2004. Bufo japonicus. In: IUCN 2011. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.2.