藤田スケール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内, 検索

藤田スケール(ふじたスケール、: Fujita scale)は、竜巻強度別に分類する等級である。人工建造物草木等の被害に基づいて算出される。藤田スケールの公式な階級区分は、写真映像を用いた検証のほか、状況に応じて、竜巻襲来後に形成される円形の渦巻き模様のパターンや、レーダー追跡、目撃者の証言、報道映像などをもとに決定される。通称でFスケール(F-Scale)。

目次

[編集] 背景

1971年シカゴ大学名誉教授藤田哲也が、アメリカの暴風雨予測センター (Storm Prediction Center; SPC) の前身である国立暴風雨予報センター (National Severe Storms Forecast Center; NSSFC) の局長だったアレン・ピアソンと共に提唱した[1]。藤田とピアソンは、アメリカ海洋大気庁 (NOAA) の国立トルネード・データベースに蓄積されたトルネード関連の報告書を1950年分まで遡って調査し、さらに歴史上有名な初期のトルネードについても研究の対象に入れて、藤田スケールへと応用させていった。また同じ頃、トマス・グラザリスによるトルネード・データベース化計画でも1880年以降に米国で発生した重大なトルネード (F2~F5相当もしくは多数の死者が出た事例) の分類がなされた。

だが、藤田スケールはあくまで竜巻による被害の大きさを示したものであり、竜巻の厳密な風速を求める設計にはなっていなかったため、スケールでは階級ごとに風速が定義されているものの、実際の被害の程度と推定される風速が一致しないことも少なからずあった。藤田スケールでは、比較的強いトルネード(特にF3~F5)に対する風速の推定値が実際の風速より極端に高く評価されてしまう、という欠点があった。これに関して、NOAAは「実際のところ、通常正確な風速とされる風速もやはり推定の風速であり、それが科学的に立証されることもない。推定風速と実際の風速が異なるということは、場所や建物によって被害に差が出るようなものである。仮に、藤田らによる竜巻の被害に関する一連の技術的な分析が行われていなかったとしたら、それこそ実際の風速は前例のない被害をもたらしていたかもしれない。」[2]と言及した。その後、改良藤田スケール (Enhanced Fujita Scale; EF-Scale) が考案され、より正確な風速の推定が行われるようになった。

[編集] スケールの由来と発展

藤田が提唱したスケールの原型はF0からF12までの13階級であった。これはビューフォート風力階級マッハ数との互換性を確保するための措置であった。F1の風速の幅は小型のハリケーンの風速(シンプソン・スケールでカテゴリ1-2)と同等であり、藤田スケールの最高階級であるF12の風速はマッハ1に相当する。藤田スケールの各階級の被害状況の記述は、これらの風力階級をもとにしており、かつてはトルネードの分類にもよく使用されていた[3]

藤田がトルネードのスケールを着想した当時、風によってもたらされる損害に関する情報はわずかであった。そのため、藤田のスケールが試みた具体的な被害状況の記述は経験的な推測による内容にすぎなかった。藤田は、現実に地球上で発生し得る竜巻の分類には、F0からF5までが実用的だろうと考えた。しかしながら藤田は、将来的に藤田スケールが竜巻の被害分析で使用されたり、F5をも上回る規模の竜巻が発生したりする可能性があることを考慮して、分類上「想像もつかないほどの竜巻 (Inconceivable tornado) 」としながらもF6の定義を付け加えた[2]

[編集] 藤田スケール階級表

7つの階級が、強度の弱い方から強い方へと並んでいる。

階級 推定風速 相対度数 想定される被害
mph km/h m/s
F0 73未満 117未満 32未満 38.9% 被害は比較的軽微。煙突の損傷、木の枝が折れる、根の浅い木が傾く、道路標識等の損傷など。
F0の被害例
F1 73–112 117–180 33–49 35.6% 中程度の被害。屋根がはがされたり、自動車で引く移動住宅などは壊れたりひっくり返ったりする。移動中の自動車は道から押し出される。壁続きのガレージは破壊される。
F1の被害例
F2 113–157 181–253 50–69 19.4% 大きな被害。家の壁ごと屋根が飛んだり、移動住宅などは破壊、貨車は脱線したりひっくり返ったりし、大木でも折れたり根から倒れたりする。軽いものはミサイルのように飛び、車がごろごろ転がる。
F2の被害例
F3 158–206 254–332 70–92 4.9% 重大な被害。建て付けの良い家でも屋根と壁が吹き飛ぶ。列車は脱線転覆、森の大半の木は引っこ抜かれ、重い車でも地面から浮いて飛んだりする。日本国内では、1990年12月11日に千葉県茂原市、1999年9月24日に愛知県豊橋市、2006年11月7日に北海道佐呂間町の3件が発生している。
F3の被害例
F4 207–260 333–418 93–116 1.1% 深刻な大被害。建て付けの良い家でも基礎が弱いものはちょっとした距離を飛んでいき、車は大きなミサイルのように飛んでいく。アメリカでは、2003年6月24日サウスダコタ州マンチェスターを通過したF4規模の850ヘクトパスカルの観測報告がある。日本国内ではこのクラス以上の竜巻は観測されておらず、将来的に発生する可能性もほとんどないとされている。
F4の被害例
F5 261–318 419–512 117–141 0.1%未満 ありえないほどの莫大な壊滅的被害。強固な建造物も吹き飛んでいってしまい、自動車大の物がミサイルとなって100メートルを超過して空を飛び交い、どこからとも無く大型トラックが降ることもあるという。樹木も根こそぎ宙を舞い、とにかく信じられないような大惨事になる。経路上にあったものはことごとく破壊され、瓦礫(がれき)の他に残るものは皆無と言っても過言ではない、とも言われる。竜巻を描いた映画『ツイスター』ではこのF5級の竜巻を「神の指」と称し、神が地球をその指でひっかきまわす、というイメージがなされたと言う。
F5の被害例
F6 319–379 513–610 142–169 ほぼ皆無 もし発生するようなことがあるならば、未曾有(みぞう)の超壊滅的な被害が予想される。F6階級の竜巻は現実に実証されていないが、しかしながらいくつか非公式の発生報告があり、最近のものでは1999年5月3日オクラホマ州ブリッジクリーク付近で発生した最大瞬間風速142m/sのものが挙げられる。また、F4以上の階級の竜巻においては、そのごく狭い中心域がF6になる可能性がある。しかし、その被害は周辺のF4およびF5階級の風による被害と区別できないので事実上、規模を評価できないと考えられる。また、この竜巻は異常気象を描いた映画『デイ・アフター・トゥモロー』でも大量に発生していた。この階級以上の竜巻の発生率は全体から見てもごくごくまれな割合である。

[編集] 改良藤田スケール (EFスケール)

1971年に導入され、数々のトルネードを分類してきた藤田スケールは経験的推測に頼る部分が大きかった。藤田とその研究仲間たちは、導入後すぐにその不備を認めて徹底的な技術的分析に乗り出した。この研究によって、藤田スケールで定義された各階級の損害に相当する風速は、実際には藤田スケールで示したものより低いことが判明した。また、藤田スケールにおける風速による竜巻の被害想定は一般的家屋を想定していたが、低い風速でも建築物に大きな損害を与えることが考えられ、建築物の強度などの要因に対する考察は不完全なままであった。この問題に対処すべく、藤田は1992年に修正藤田スケール (Modified Fujita Scale) を発表した。しかしながら、同年藤田はシカゴ大学の教授職を退いており、また米国気象局 (NWS) も藤田の修正したこの新しいスケールへの移行を引き受けるような立場にはなかったため、修正藤田スケールが世に広まることはついになかった。

アメリカ合衆国では、より正確な改良藤田スケール (EFスケール) を支持する考えを示す科学者が増えてきたこともあって、2007年2月1日にFスケールはその役目を終えることとなった。EFスケールは多くの点でFスケールを改良したものだとされており、特に建造物の種類によって異なる被害の程度などが明確に示されるようになったことが改善点の一つに挙げられる。Fスケールでは多少曖昧だった損害の程度の規格化によって、かなり確実な竜巻の推定風速を求めることが可能になると期待されている。ちなみに、EFスケールの最高階級であるEF5では風速の上限が設定されていない。

従来の藤田スケールは、TORROスケールが用いられている一部の地域を除いては、2008年現在も竜巻の規模を示す指標として国際的に広く用いられている。

日本では気象庁が2007年4月1日から「藤田スケール」を予報用語に追加した[4]

[編集] 脚注

[ヘルプ]
  1. ^ 原著論文は藤田(1971年)を参照。
  2. ^ a b Tornado FAQ (英語) Storm Prediction Center (英語)
  3. ^ Storm Prediction Center Enhanced Fujita Scale (EF Scale) (英語)
  4. ^ http://www.jma.go.jp/jma/press/0703/29b/yougo_kaisei.html 気象庁 | 平成19年報道発表資料 予報用語の改正について

[編集] 参考文献

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

個人用ツール
名前空間
変種
操作
案内
ヘルプ
ツールボックス
他の言語