荒涼館

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荒涼館』(こうりょうかん、Bleak House)は、チャールズ・ディケンズの長編小説1852年3月から1853年9月にかけて、月々20回に分けて分冊のかたちで刊行されたものである。物語の大筋は、ヴィクトリア朝の腐敗した訴訟制度や倒錯した慈善事業、ひいては社会全体を批判的に描いたものである。探偵小説の一面もある。

概要[編集]

紛糾した所有地争い「ジャーンディス対ジャーンディス訴訟」による心労が原因でトム・ジャーンディスが自殺。荒涼館の新しい持ち主ジョン・ジャーンディスと被後見人リチャード、そしてエイダとその世話係エスターがそこに住み始める。リチャードは医者や弁護士を志すが、どれもうまくいかず、陸軍に入る。リチャードとエイダは密かに結婚するが、エスターが准男爵レスタ・デッドロック卿の夫人ホノリアの私生児であることが弁護士タルキングホーンに知られて脅迫される。その後タルキングホーンが殺害され、バケット刑事によってホノリアの侍女で犯人のオルタンスは逮捕される。「ジャーンディス対ジャーンディス訴訟」が結審し、リチャードは勝訴するが裁判費用のため全財産を失い、その後に病死。ジョン・ジャーンディスはエスターに求婚するがエスターは若い男と結婚、ジョンはエイダの世話に余生を送る。

登場人物[編集]

  • エスター・サマソン(Esther Summerson)
主人公。一部の章では語り手をつとめる。誰からも親しまれる善良で賢明な少女。エイダの世話係として荒涼館に迎えられ、家政を委ねられるようになる。病気で容貌が一変した後で求婚者が離れていく描写があることから、それなりに美人であると思われる。
  • ジョン・ジャーンディス(John Jarndyce)
荒涼館の主人。「ジャーンディス対ジャーンディス訴訟」の当事者で、リチャードとエイダの後見人。
  • エイダ・クレア(Ada Clare)
ジョン・ジャーンディスの被後見人。いとこのリチャードと愛し合うが移り気なリチャードにエスターともども心を痛める。
  • リチャード・カーストン(Richard Carstone)
ジョン・ジャーンディスの被後見人。基本的に善人だが何をやっても長続きせず周囲を心配させ、「ジャーンディス対ジャーンディス訴訟」をめぐってジョン・ジャーンディスとも対立するに至る。
  • ハロルド・スキムポール(Harold Skimpole)
芸術の才があり医師の資格も持っているが、「世事には子供同然の人間」「金や時間の観念はまったくない」と自称して友人のジョン・ジャーンディスやリチャードなどに寄生して生活している人物。文人リー・ハント(Leigh Hunt)がモデルだといわれている。
  • ジェリビー夫人(Jellyby)
ジェリビー家の主婦だが、アフリカニジェール川地方に関する慈善事業に全ての関心が向いており、家のことは完全に放置状態で荒れ放題である(作者によって「望遠鏡的博愛(telescopic philanthropy)」と揶揄されている)。
  • キャディ・ジェリビー(Caddy Jellyby)
ジェリビー夫人の娘だが、母親は娘の教育にほとんど無関心で慈善事業の手紙を筆記させる書記ばかりやらせている。エスターと意気投合し、ダンス教師プリンス・ターヴィドロップと結婚するに当たっては(ジェリビー夫人が全く関心を示さなかったせいもあり)エスターに大いに助けを借りた。
  • タルキングホーン(Tulkinghorn)
デッドロック准男爵家の顧問弁護士で、冷徹・冷酷な老人。デッドロック准男爵夫人の秘密を探るべく暗躍する。
  • クルック(Krook)
よろず古物屋を営む酒飲みの人物。デッドロック准男爵夫人の秘密にかかわる書類を人に渡す約束の夜に、人体自然発火で死亡。

翻訳[編集]

日本語訳はちくま文庫から全4巻で出ている(青木雄造小池滋訳)。