英国放送協会のラジオ放送

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英国放送協会 > 英国放送協会のラジオ放送

この項では、英国放送協会(以下BBC)のラジオ放送について解説する。

BBCのラジオ放送の歴史[編集]

開局 - 第二次世界大戦[編集]

  • 1922年
    • 2月 - グリエルモ・マルコーニが設立した無線機メーカー、マルコーニ社のスタジオより、英国で最初のラジオ定期放送が開始される。週に1度、30分間の放送であった。ステーション名は「2LO」。
    • 10月 - マルコーニ社をはじめとした英国の無線機メーカー6社が中心となり、英国放送会社(British Broadcasting Company)設立。
    • 11月14日 - 毎日の定期放送がロンドンで開始。翌日にはバーミンガムマンチェスターでも放送開始。
  • 1926年5月 - ゼネストが発生し、新聞の発行も止まる中、BBCは放送を継続し、双方の模様を伝える形でストを報道(通信社からのニュース配信も止まったため、ここでBBCは初めて自前の記者を雇ってニュースを収集する)。正確な情報を伝えたことで、ニュースメディアとしてのラジオの信頼性が大きく高まった[1]
  • 1927年1月 - 英国放送会社が、国王の特許状に存立の根拠を置く英国放送協会(British Broadcasting Corporation)に改組。
  • 1930年 - ラジオステーション名を「2LO」から「BBCナショナル・プログラム(National Programme・全国放送)」に改称。各都市の放送は「BBCリージョナル・プログラム(Regional Programme)」に。
  • 1932年
    • 12月 - 海外向け放送「エンパイア・サーヴィス(Empire Service)」開始。同月、ジョージ5世のクリスマス・メッセージを全国放送。これ以後、王室行事などの中継が本格化する。
  • 1938年
    • 1月 - エンパイア・サーヴィスで初の外国語放送(アラビア語)開始。順次ヨーロッパ大陸の言語でも放送開始。
  • 1939年
    • 9月 - 対独宣戦布告放送。戦時下体制として、ナショナル・プログラムとリージョナル・プログラムを停止し、「BBCホーム・サーヴィス(Home Service)」に一本化。エンパイア・サーヴィスも「エクスターナル・サーヴィス(External Service)」に改称。
  • 1940年
    • 1月 - フランスに駐留するイギリス軍に向けた放送として、「BBCフォース・プログラム(Forces Programme)」開始。教養番組中心のホーム・サーヴィスと違い、軽音楽やバラエティー・ショー中心の番組編成が一般の英国民にも広く受け入れられ、フォース・プログラムの聴取者数が、たちまちホーム・サーヴィスのそれを抜き去る[2]。イギリス軍は同年6月にドイツ軍に敗れ本国に撤退するが、フォース・プログラムは継続される。
  • 1941年 - 現在も放送されている『Desert Island Discs』放送開始。
  • 1943年7月 - エクスターナル・サーヴィス下で日本語放送開始。
  • 1944年 - フォース・プログラムが「ジェネラル・フォース・プログラム(General Forces Programme)」に改称(1946年まで存続)。
  • 1945年 - 第二次世界大戦終結。ホーム・サーヴィス下で地域放送が再開。フォース・プログラムの内容を受け継ぐ形で「BBCライト・プログラム(Light Programme)」が開局。

第二次世界大戦後 - 1980年代[編集]

  • 1946年
    • 9月 - クラシック音楽などのハイカルチャーを扱う「BBCサード・プログラム(Third Programme)」開局。夕方6時から6時間の放送。
  • 1955年 - FM放送開始。
  • 1957年 - サード・プログラムが放送されていない日中の時間帯に、教育番組を扱う「ネットワーク3(Network 3)」放送開始。
  • 1965年 - エクスターナル・サーヴィスの通称がBBCワールド・サーヴィスになる。
  • 1967年 - BBCラジオ1(Radio 1)放送開始(中波のみ)。ライト・プログラムはラジオ2(Radio 2)[3]、サード・プログラムはラジオ3(Radio 3)、ホーム・サーヴィスはラジオ4(Radio 4)に改称。ネットワーク3の内容はラジオ3・ラジオ4に引き継がれる。地方ラジオ局の設置も始まる。
  • 1975年 - BBCラジオ・アルスター(Radio Ulster・北アイルランド放送局・ベルファスト本拠)、BBCラジオ・フォイル (Radio Foyle・北アイルランド放送局・デリー本拠)開局。
  • 1977年 - BBC Radio Cymruウェールズ地域語放送局)開局。
  • 1978年 - 議会のラジオ中継開始。BBCラジオ・ウェールズ(Radio Wales・ウェールズ英語放送局)、BBCラジオ・スコットランド(Radio Scotland・スコットランド英語放送局)開局。
  • 1985年 - BBC Radio nan Gàidheal(スコットランド地域語放送局)開局。
  • 1988年 - ワールドサーヴィスが正式名称になる。ラジオ1のFM放送開始[4]

1990年代 - 現在[編集]

  • 1990年 - ラジオ2がFM放送に完全移行。空いたAMの周波数を使い、「ラジオ5(Radio 5)」放送開始。
  • 1991年 - 湾岸戦争勃発。ラジオ4はFM放送を湾岸戦争報道中心の内容に変更。ワールドサーヴィス日本語放送終了。
  • 1994年 - ラジオ5がBBCラジオ5・ライヴ(Radio 5 Live)に名称変更。ラジオ1がFM放送に完全移行。
  • 1995年 - デジタルラジオ放送(DAB)開始。
  • 2002年 - ラジオ5ライヴ・スポーツエクストラ(Radio 5 Live Sports Extra)、「BBC6ミュージック」(BBC 6 Music)、ラジオ1エクストラ(Radio 1 Xtra)、アジアンネットワーク(Asian Network)、「BBC7」がデジタル放送開始。
  • 2007年 - BBC iPlayerがサーヴィス開始。
  • 2010年 - BBCの組織再編策として、ラジオ6とアジアン・ネットワーク閉鎖の計画が持ち上がっていることが報道される。リスナーから反対運動が起こったこともあり、今のところ計画は凍結されている。
  • 2011年 - BBC6ミュージックがBBCラジオ6ミュージックに、BBC7がラジオ4エクストラ(Radio 4 Extra)に改称。

現在のラジオ放送の形態[編集]

ラジオ1[編集]

FM・デジタルで放送。2012年の調査では英国内の聴取者数は1119万8000人[5]。15歳から29歳までの年齢層を対象とし、最新ヒット曲やロック、ダンス・ミュージック、ヒップホップブラック・ミュージックを中心にオンエアしている。

最新のヒット曲を多くオンエアしたり[6]、アメリカ式の番組進行を行ったことで1960年代に人気を博した、海賊ラジオ局の人材をリクルートする形で設立された。その一人であったジョン・ピール(John Peel)は、2004年に急逝するまで、その音楽の表現形式にとらわれず当時最新の音楽を積極的にオンエアし、人気を博した。

火曜深夜のジャイルス・ピーターソンのプログラムは日本のJ-WAVEでも放送されていたが、2012年春でプログラム自体が終了。

ラジオ2[編集]

FM・デジタルで放送。聴取者数は1390万3000人で、英国内で最も聴かれている放送局である。

ラジオ1より上の年齢層を対象にしており、ラジオ1で人気を博したプレゼンターが、リスナーの年齢層移動に合わせてラジオ2に移籍することが多い。オールディーズや軽音楽、60年代以降のロック・ポップスを中心にオンエアしているが、年齢層に合うものであれば最新のヒット曲も流される。

ジェイミー・カラムが同局でプレゼンターを務める番組が、2014年4月よりInterFMでも『Jamie Cullum's Jazz Riot』のタイトルで放送されている[7]

ラジオ3[編集]

FM・デジタルで放送。聴取者数は215万人。クラシック音楽を中心に、オペラ現代音楽ジャズワールドミュージックなどを扱う音楽番組のほか、ネットワーク3の流れを汲み、文学や絵画などの芸術を扱う番組、科学や歴史を扱う教育番組も放送される。

BBCプロムス開催時は、毎日生中継・録音放送を行う。『Choral Evensong(聖歌隊の夕べ)』は1926年、『Composer of the week(今週の作曲家)』は1946年から放送されている長寿番組である。

BBC交響楽団などのBBC内音楽グループによるコンサートの中継や、スタジオ演奏中継のプログラムが多く組まれており、同局で放送される音楽の55パーセントはオリジナル演奏である[8]

ラジオ4[編集]

長波・中波・FM・デジタルで放送。聴取者数は1084万5000人。ニュース・ドラマ・ドキュメンタリー・ガーデニングなど総合的な編成が組まれている[9]

長波では他のチャンネルと別内容になる場合がある(船舶向けの海洋気象通報を独自に編成したり、クリケットの長時間中継を組む)。

時事番組『ザ・ワールド・アット・ワン(The World at One)』、各界の著名人を招いて、「無人島に流れ着いたときに聴きたいレコード」について話を聞く『デザート・アイランド・ディスクス(Desert Island Discs・無人島レコード)』、平日朝のニュースワイド番組『トゥデイ(Today)』などの人気番組を擁する。

24時間放送ではあるが、深夜1時から5時20分まではワールドサーヴィスの番組をオンエアしている。

ラジオ5・ライヴ[編集]

中波・デジタルで放送。聴取者数は632万4000人(後述する「スポーツエクストラ」を含めた人数)。ニュース番組や聴取者参加型番組、スポーツ中継を放送している。スポーツ中継は、サッカーラグビーゴルフ競馬フォーミュラ1(決勝)が中心。FIFAワールドカップオリンピックも放送する。

BBCの各イングランド内地方局は、深夜帯に独自編成を組まず、ラジオ5・ライヴのサイマル放送を行っていることが多い。

ラジオ1・エクストラ[編集]

デジタル専門局。聴取者数は111万4000人。ブラック・ミュージックを中心に、ヒップホップ、リズム・アンド・ブルース2ステップダンスホールレゲエドラムンベースなどにオンエアする曲を特化している。

日曜深夜~木曜深夜の2時から4時、土曜日の19時から翌朝7時までは、ラジオ1とのサイマル放送になる。また日曜深夜~木曜深夜の4時から6時、金曜深夜の2時~7時は、ラジオ1と1エクストラで放送された番組の再放送枠(番組名は『1Xtra's Rewind』)となっている。

ラジオ4・エクストラ[編集]

デジタル専門局。旧BBC7。聴取者数は169万4000人。ラジオドラマ・教養・子供向け番組を中心に放送。

ラジオ5ライヴ・スポーツエクストラ[編集]

デジタル専門局。ラジオ5・ライヴのスポーツ中継を補完している。ラジオ5・ライヴで扱う競技の他にも、フォーミュラ1(予選)、クリケット(まれにラジオ4の長波でも中継されるほか、ラジオ5ライヴ本体でも特番を編成する)、フィールドホッケーアイスホッケーもまれに中継する)、ボート競技水球テニスボクシングといった英国伝統のものを中心として、野球メジャーリーグ)やアメリカンフットボールNFL)といったアメリカンスポーツも扱う。ロードレースも中継される。いつも放送されているわけではなく、必要があるときのみ放送を行う。

ラジオ6ミュージック[編集]

デジタル専門局。聴取者数は162万人。幅広いジャンルを扱う音楽番組の専門局。実質的にはラジオ2の兄弟局である(総責任者は同一人物)。

BBCに残されているさまざまなミュージシャンのオリジナル演奏(BBCセッションズ)を積極的にオンエアしている。

ジャイルス・ピーターソンがラジオ1退任後に同局で開始した番組を抜粋し、一部独自内容を加えた『The Worldwide 60 with Gilles Peterson』が、2014年4月よりInterFMで放送されている。

アジアン・ネットワーク[編集]

中波(ただし可聴範囲は各都市レベルにとどまる)・デジタルで放送。聴取者数は58万4000人。英国内のアジア人(主にインドパキスタン系)を対象にした局。

プログラム自体の起源は、1976年にBBCラジオ・レスター局のプログラムの一部として始められた時にあるが、デジタル対応により完全オリジナルの編成になった2002年が、局としての出発の日になっている。

英語放送を中心に、ヒンディー語ウルドゥ語パンジャーブ語ベンガル語の番組もある。音楽・トーク番組のほか、ドキュメンタリー番組なども編成されている。

ワールド・サーヴィス[編集]

ラジオ・スコットランド/ラジオ・ウェールズ[編集]

それぞれスコットランド・ウェールズの英語放送局。スコットランドには傘下にシェトランド諸島向けの局BBCラジオ・シェトランド(BBC Radio Shetland)と、オークニー諸島向けの局BBCラジオ・オークニー(BBC Radio Orkney)があり、一部の時間でスコットランド本局とは別の独自内容の番組を放送している。

Radio nan Gàidheal/Radio Cymru[編集]

それぞれスコットランド(スコットランド・ゲール語)・ウェールズ(ウェールズ語)の地域語放送局。ラジオ5・ライヴや英語放送のサイマル放送時を除き、すべて固有の言語で放送する(スポーツ中継も)。

ラジオ・アルスター/ラジオ・フォイル[編集]

双方とも北アイルランドの英語放送局だが、前者はベルファスト、後者はデリーに本拠を置く。フォイルは一部のみ独自編成で、それ以外はアルスターとのサイマル放送。

各ローカル放送[編集]

イングランドの各都市・地方に設立されたBBCの地方局は、ロンドンからの全国放送とは別の周波数で、独自編成を組んで放送を行っている。2013年1月より、平日夜に全ローカル局がネットするワイド枠が新設された(リーズ局が制作)。

その他[編集]

  • 上記のほぼすべての局の番組は、各局のホームページからBBC iPlayerを通じてリアルタイム配信されており、放送を終えた番組も期間限定で後追い聴取・再聴取が可能である。ただし、一部のスポーツ中継はデジタル配信されない場合がある。

参考文献[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 蓑葉 2003 18ページ。
  2. ^ 蓑葉 2003 51ページ。
  3. ^ ラジオ1はライト・プログラムの中波の周波数を受け継ぎ、ラジオ2は長波・FMの周波数を受け継いだ。
  4. ^ ラジオ1は音楽を中心とする局でありながら、周波数の空きがなかったために完全なFM放送に移行できない状態が長く続いていた。それまではラジオ1のいくつかの番組をラジオ2でも放送することでFMに番組を乗せていた。
  5. ^ RAJAR Q3: BBC digital networks continue to thrive - Radio 4 Extra, 6 Music and Asian Network all post record figures(BBC Media Centre)2012年11月19日閲覧。以下の項の聴取者数も同様。
  6. ^ 当時のライト・プログラムはポピュラー音楽(当時で言えばビートルズなど)の番組が非常に少なく、またレコードをオンエアすることに関しても大きな制限があった。
  7. ^ InterFMにおける放送はラジオ2より2週遅れ。なお『Jazz Riot』の番組名はInterFM独自のものであり、ラジオ2に於いては番組名はなく単に『Jamie Cullum』となっている。
  8. ^ 原・柴山 2011 145ページ。
  9. ^ 日本のNHKラジオ第一放送に近いが、ラジオ4では『Today』を除けば、NHK第一で多く組まれているようなワイド番組は少なく、15分~1時間の番組が多く編成されている。

外部リンク[編集]