航海日誌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
イギリス海軍の帆走フリゲートGrand Turk の航海日誌。

航海日誌(こうかいにっし)は、船舶の運航に関する記録を書き記した日誌。

概要[編集]

ほとんどの船舶や軍艦では、所属国の法的定めにより航行中は継続的に記載し続けることが義務づけられている。日本では、船員法第18条[1]で船内に備え置かなければならない書類のひとつとされ、船員法施行規則[2]に関連する定めが示されている。

航海日誌を意味する 英語: logbook は、もともとは測程儀 (chip log) によって読み取った船の速度の記録帳簿を意味していた。これを用いれば、一定の時間の中で船がどれ程の距離を進んだかを算出することができた。また、一定の時間にこの記録を取り続けることによって、出港地からの航行距離を知ることもできた。

今日、英語で「ship's log (船のログ)」と呼ばれている航海日誌には、この他にも様々な種類の情報が盛り込まれており、船舶潜水艦に関する運行データの記録として、天候、日常業務が行なわれたり突発的な出来事が発生した時刻、乗組員の交代や寄港場所の日時などが記される。航海日誌への書き込みは、伝統的航海術には必須であり、少なくとも毎日1回以上、記入しなければならない。

ほとんどの国において、海運当局や海軍当局は、日々の出来事を記録し、万一、無線通信レーダーGPSなどが故障しても乗組員たちが航海を続けられるように、航海日誌が書き続けられるべきことを定めている。航空事故におけるブラックボックスと同じように、航海日誌の詳細な検討は海難審判などにおいて重要な役割を果たすことになる(メアリー・セレスト号の記事を参照)。海難事故等をめぐる民事上の法的争いにおいても、航海日誌の記載内容はしばしば重大な意味を持つ。

商船でも、海軍艦艇でも、船のコース、速度、位置、その他のデータを記入した「ラフ・ログ (rough log) 」とか「スクラップ・ログ (scrap log) 」と称する最初の下書きをまず作成し、それを書き写して「スムーズ・ログ (smooth log) 」とか「オフィシャル・ログ (official log) 」と称する決定版の記録を作成する。ラフ・ログに記された内容は変更されることもあり得るが、スムーズ・ログは決定版であり、記述の消去などは許されない。公的な航海日誌の記述に変更や修正を加える場合には、権限のある記入者が、頭文字などを書き入れて誰による加筆か分かるようにした上で、加筆後も、削除、修正された記述が読めるような形で加筆を行なう。

フィクション作品の中で[編集]

  • 航海日誌やそれに類するログを読み進むという表現方法は、ストーリーを説明する手法として、サイエンス・フィクションや海洋冒険もので用いられている。
  • テレビ・ドラマ『ホーンブロワー 海の勇者』シリーズでは、筋の展開を説明し、ストーリーをリアルに見せる目的で、航海日誌が用いられている。
  • スタートレック・シリーズでは、艦長の書く「航海日誌(Captain's log)」が番組冒頭のナレーションに用いられており、船長の心境を表すと共に、視聴者への状況の説明として使われている。また、番組の終了間際に「航海日誌補足」がエピローグや後日談として語られる。シリーズによっては「航星日誌」と訳されていることもある。

航海日誌以外の logbook[編集]

もともと航海日誌を意味した 英語: logbook は、やがて他の様々な営みに関しても用いられるようになり、原子力発電所粒子加速器のような複雑な機械では、コンピュータを用いたエレクトロニック・ログブック (electronic logbook) がますます用いられるようになっている。軍事用語としてのログブックは、公的かつ法的に義務づけられた一連の記録文書である。個々の書類は、通常は日付順にまとめられ、重要な出来事や行動の時刻を記録しておくようになっている。

イギリスでは、自動車登録に必要とされる書式「V5C」を、かつて「ログブック」と称しており、現在も口語表現でそのように言及することがある。

漁業においては、法規に従って漁獲高を記録する帳簿を「ログブック」と呼ぶ。漁の後、この帳簿は、当該漁船の帰属国の当局に提出される。

無線局においては無線業務日誌のことであり、日本では電波法令により一部の無線局に無線業務日誌の備付けが義務付けられている[3]。 電波法令上の義務とは別に業務無線では、条例や社則などにより無線業務日誌を備え付ける無線局もある。 アマチュア無線では、1992年(平成4年)に備付けが省略されたがコンテストアワード取得などの活動には必須である。支援用ソフトウェアもいくつか存在する。

航空機のパイロットは、各自の飛行経験を記したログブックを記録し続けることが義務づけられている(米国では連邦航空法FAR part 61.51[4]合同航空当局 (Joint Aviation Authorities) に加わっているヨーロッパ諸国では統合航空規則JAR-OPS 1.970[5]に定められている)。パイロットは、資格や評価の基準に適合していることを示すため、また、当面の必要に応じて、飛行時間を記録することが義務づけられている。

また、我々が普段接している「ブログ」は、「web(を記録する)Logbook」を指すネットスラング普通名詞化したものである。

出典・脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 船員法第18条
  2. ^ 船員法施行規則
  3. ^ 電波法第60条および電波法施行規則第40条
  4. ^ Code of Federal Regulations - Part 61 CERTIFICATION: PILOTS, FLIGHT INSTRUCTORS, AND GROUND INSTRUCTORS”. Federal Aviation Administration. 2011年3月23日閲覧。
  5. ^ JAR-OPS 1 (PDF)”. Πολεμική Αεροπορία(ギリシア空軍). 2011年3月23日閲覧。

関連項目[編集]

  • CLIWOC (世界の海洋気象のデータベース)
  • 航海
Logbookを原義に持つ記録

外部リンク[編集]