自分の声ソフトウェアPOLLUXSTAR

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
自分の声ソフトウェアPOLLUXSTAR
開発元 株式会社ヒューマンテクノシステム
最新版
最新評価版
3.2.0.1.β / 2016年12月22日
対応OS Microsoft Windows 7 Windows 8 Windows 10
プラットフォーム 32/64bit, Microsoft .NET Framework 3.5 以降
対応言語 日本語
種別 音声合成
公式サイト 株式会社ヒューマンテクノシステム東京
テンプレートを表示

自分の声ソフトウェアPOLLUXSTAR (ポルックスター) は、株式会社ヒューマンテクノシステム が製造・販売する音声合成ソフトウェア系列商品(自分の声ソフトウェア ボイスターシリーズ)の旗艦製品であり、音声収録・データベース構築・ソフトウェア構築からなるパッケージ製品の名称である。特定個人の声質と話し方を再現する特徴をもち、日本国内向けに販売している。ソフトウェアを作るには失声・発話障害進行前に一定量の録音が必要である。キャッチフレーズは「あの声でなければならない、そんな思いに応えます」。

概要[編集]

  • 録音した文やフレーズの声を再現するにとどまらず、録音していない文についても、その人の音色・話し方を再現できる[1]
  • 一定量の録音原稿(日本語)を読める方であれば、誰の声でも作ることができる。
  • 個々人の存在感・アイデンティティを残せるソフトという側面を持つ[2] [3] [4]
  • Windows 上で動作する、ソフトウェアである。
  • 2007年3月に、沖電気工業 (OKI) の研究開発部門からパイロット販売を開始。
  • 2008年7月に、OKI から、自分の声ソフトウェア POLLUXSTAR として正式に製品販売を開始[5][6]
  • 2009年からは、株式会社ウォンツが製造・販売をおこなう。
  • 2015年からは、株式会社ヒューマンテクノシステムが製造・販売をおこなう。

特徴[編集]

  • システム構築にあたって、元となる一定量以上の録音音声が必要である。
  • 一部、録音状態のよいビデオ映像等からのシステム構築実績もある。
  • いったんシステムを構築すると、あらゆる入力文字列に対して、録音音声の声質・口調を再現した音声波形を作ることができる。
  • キーボードなどからの文字列を入力とし、音声ファイル保存・あるいはスピーカーからの声出力を出力とする。
  • 自宅や病院等で専門機器での技術者による出張録音をおこない、パソコンソフト(音声合成ソフト)として納品する。
  • 録音音声を音素単位で再利用可能な形にデータベース化するため、非常に高コストな音声合成ソフトである。
  • 発話健常者のみならず、放射線治療中の喉頭まわりの癌患者や、運動ニューロン疾患等による軽~中度の発話障害者などを含む数十名に対して「自身の声」を届けた実績をもつ。その他の症例では、舌がん、パーキンソン病など。
  • なお、企業・団体向けも個別に契約・販売している。

名称の由来[編集]

  • 2007年以前より、沖電気工業 研究者の本技術の初期開発コードネームは Pinpon(ピンポン)であった。
  • 2007年、パイロット製品リリースにむけて、名称策定会議が当時の推進者である 電子出版社eブックランド・アクエリアス有限会社・および沖電気工業 研究開発部門の3者で、繰りひろげられた。
  • 果たして本ソフトの名称である Polluxstar(ポルックスター)は、ふたご座 の2つの星のうちの、弟の星(β星) Pollux(ポルックス)にちなんで名づけられた。
  • あなたの声を大切にしたい、そして仲のよい双子のようにあなたの代わりに話しかけてくれる、そんなソフトを作りたい、という思いが込められている[7]

仕様[編集]

  • ソフトは、Windows 専用アプリケーションである。[8]
  • 入力は、専用アプリであるチャットベースのソフト(EasyText)、あるいはクリップボードを介した文字入力、または、Microsoft SAPI 5.3 である。
  • 出力ファイルフォーマットは、16kHz, 16ビット, モノラルの audio/wav である。

利用者・利用形態[編集]

  • 購入者は、喉頭まわりの癌や進行性難病の患者などが多い。
  • 購入タイミングは、喉頭摘出や気管切開の術直前、進行性難病の発話障害初期段階が多い。
  • ファーストユーザーは大阪芸術大学の牧泉教授。病気による喉頭摘出後もPOLLUXSTARを用いて毎週2回・各90分の講義を年間を通して実施した。[9]
  • 篠沢秀夫 学習院大学名誉教授の声の再生で利用されている。あらかじめ準備した講演原稿を準備することで、1時間以上の講演実績が多数ある[10] [11]

自立支援[編集]

  • 2010年(平成22年)度から 厚生労働省障害者自立支援機器等開発促進事業の対象製品として、障害者自立の観点での自分の声を利用した代用音声の普及・利活用の取り組みが進められている[12]
  • 特にALSに代表される運動ニューロン疾患(MND)のトータル療養生活の中で、自身の声を保存・利用することを通じた自立支援・職業維持などの先進的な取り組みが広がりつつある。
  • 2013年 12月に発刊され、初版(2002年版)以来 11年ぶりに改訂された「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン2013[13]」の中で、リハビリテーションにおけるコミュニケーション維持促進の取り組みとして、医師から患者への周知項目に挙げられている。[14]

外部リンク[編集]

参考文献[編集]

  • コーパスベース音声合成とその応用
  • HIS2007 2535 『カスタム音声合成技術を用いた「自分の声」ソフトウェアの開発』
  • 第20回日本喉頭科学会学術講演会 『声喪失者に対するカスタム音声合成システム“自分の声ソフトウェア”の有用性について』
  • CSUN2008 AAC-1035 『Activities of "POLLUXSTAR" Software to Reproduce in Ones Real Voice Using TTS』
  • HIS2008 1334 『喉摘した大学教授による合成音声を使った講義の報告と考察』
  • 第33回日本頭頸部癌学会 『喉頭摘出後の音声コミュニケーション手段としてのカスタム音声合成システム“自分の声ソフトウェア”』
  • 第33回日本頭頸部癌学会 『カスタム音声合成システム“自分の声ソフトウェア”の実用例とその一考察』
  • HIS2009 3244 『パソコン代用発声を用いた対話成立のための「協働モデル」の検討報告』
  • HIS2011 2125S 『口語保存音声を用いた声の利用検討報告』
  • HIS2012 1536D 『ALS 失声者の音声講演のためのインタフェース検討報告』
  • HIS2013 1501D 『リアルタイム操作性を重視した自分の声 VoCA におけるユーザビリティ検討報告』
  • 第13回日本言語聴覚学会 『自分自身の声による音声喪失後の音声補償』
  • 第29回リハ工学カンファレンス 261CA2 『音声喪失者に対する喪失前の自身の声による音声補償とフィッティング及びその課題』

出典[編集]

  1. ^ ヒューマンインタフェースシンポジウム2007 2535 『カスタム音声合成技術を用いた「自分の声」ソフトウェアの開発』
  2. ^ ヒューマンインタフェースシンポジウム2008 1334 『喉摘した大学教授による合成音声を使った講義の報告と考察』
  3. ^ 滋賀県身体障害者福祉協会 障害者社会参加推進フォーラム2009 -フォーラム報告の項を参照
  4. ^ Eテレ ハートネットTV - リハビリ・介護を生きる (2)失った声を再現する
  5. ^ OKIプレスリリース - 自分の声を再現する音声合成ソフトウェア「Polluxstar®」の提供を開始
  6. ^ OKI Press Release - OKI Offers Polluxstar®, a Text-to-speech Software that Reproduces One's Real Voice
  7. ^ 自分の声ソフトウェアPolluxstar 製品パンフレット
  8. ^ Polluxstar 製品Webサイト 製品説明 - 動作環境の項を参照。
  9. ^ 自分の声ソフト(Polluxstar)について - 概要、実績と予定の項を参照
  10. ^ 日本ALS協会 愛知県支部 2012年度総会
  11. ^ ヒューマンインタフェースシンポジウム2012 1536D 『ALS 失声者の音声講演のためのインタフェース検討報告』
  12. ^ 厚生労働省障害者自立支援機器等開発促進事業 平成22年度成果報告書
  13. ^ ISBN 978-4-524-26646-3
  14. ^ ヒューマンインタフェースシンポジウム2010 1514 『神経変性疾患者への、自分の声ソフトウェア Polluxstar 適用事例』- 「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン2013」における自分の声ソフト関連(ポルックスターおよびマイボイス)のエビデンス文献