ハイギョ

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?肺魚亜綱 Dipnoi

ネオケラトドゥス・フォルステリ
(オーストラリアハイギョ)
Neoceratodus forsteri
分類
 : 動物界 Animalia
 : 脊索動物門 Vertebrata
亜門 : 脊椎動物亜門 Chordata
 : 肉鰭綱 Sarcopterygii
亜綱 : 肺魚亜綱 Dipnoi
英名
Lungfish

ハイギョ(肺魚)は、肉鰭綱肺魚亜綱(Dipnoi)に属する硬骨魚類の総称。肉鰭歯板内鼻孔などを持つ分類群で、いわゆる「生きている化石」と呼ばれる生物の一つである。

約4億年前のデボン紀に出現し、化石では淡水産・産を合わせて100種以上が知られる。しかし数度の大量絶滅を経て生き残った現生種は全て淡水産で、オーストラリアにネオケラトドゥス属1種、南アメリカにレピドシレン属1種、アフリカにプロトプテルス属4種の計3属6種だけが知られる。

目次

[編集] 器官

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ハイギョの成魚はだけでなく、大部分の四肢動物と同様に2室の肺を持つ。現生種では南米産レピドシレンとアフリカ産プロトプテルスの肺が発達している。たまに水面に口を出して息継ぎを行い、水面に出られないようにして空気呼吸を阻害すると溺死することがある。ただし酸素の多くは肺を用いて空気中から吸収し、二酸化炭素の多くはを用いて水中に排出する傾向がある(を参照)。

レピドシレンとプロトプテルスは、乾期に生息地の水が干上がっても、地中で肺呼吸をしながら次の雨期まで夏眠することができる。そのため雨期にのみ水没する氾濫平原(南米の場合には河川流域に発達する水没林・バルゼア)にも生息する。特にアフリカ産プロトプテルスの一部は皮膚からの分泌物で体の周囲の砂泥を固め、のような構造物を作って乾燥を防ぐ能力がある。「泥壁のを作ったら、が降ってハイギョが壁から出てきた」というのもこの能力に因んだ逸話としてよく知られる。西アフリカにおいて、夏眠ハイギョは生きている間その肉は腐敗しないことから、長旅の携帯用食糧として利用されていたという。

これらの肺は現生の硬骨魚類が持っているような(うきぶくろ)から進化したという学説がかつては一般的だったが、原始的な硬骨魚類が既に空気呼吸器官としてを獲得しており、逆に「鰾は肺から進化した」とする説が有力である。なおハイギョの他にも、ガーアミアポリプテルスピラルクーなどが肺を持ち空気呼吸を行う魚として知られる。

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陸上脊椎動物と同様、外鼻孔内鼻孔をそれぞれ1対備える。正面からは吻端に開口している外鼻孔が2つ観察できるが、内鼻孔は口腔内の歯板の外側に開口するため外からは見えない。肺魚類と陸上脊椎動物は、この内鼻孔を有するという共通点により併せて内鼻孔類と呼ばれる。

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突起を持った状のである「歯板」を使用することが強力な咀嚼能力を生む。現生種は基本的に動物質の餌を中心に植物質の餌も摂食する雑食性だが、淡水性の貝類を好んで殻ごと噛み砕いて摂食するものが多く知られている。砕いた獲物は咀嚼を繰り返しながら口から吐き出し、再び吸い込んでから飲み込む。頑丈な歯板は骨化の程度の低いハイギョの骨格の中でも最も化石として残る部分であり、歯板のみ知られ記載されている種も複数存在する。噛み砕く力はかなり強力で、飼育のさいには噛まれないようにしたい。

[編集] 消化管

多少の膨大部はあるが、発達したは持たない。ハイギョと同様に原始的な硬骨魚類であるポリプテルス類、チョウザメ類、軟骨魚類サメエイと同様、腸管内面には螺旋状の螺旋弁を持ち、これで栄養素吸収する面積を拡大している。総排出腔は正中に開口せず、必ず左右のどちらか一方に開口している。小分けに排出せず、螺旋をひとかたまりにした葉巻のようなをする。

[編集] 細胞・組織

[編集] 細胞核

肺魚は巨大な細胞核を持ち、動物の中では最大である。両生類も同様に巨大な核をもつことで知られている。ゲノムサイズは動物界で最大である。

[編集] 再生

切断されたは再生でき、若い個体ほど再生する能力が高い。ブロトプテルスは細長い胸鰭を供えており、その胸鰭の中ほどが他の個体に齧られるなどして一部失われた場合、そこから別の1本の鰭が再生し、計2本の鰭に再生する場合がある。切り口の形により、再生する鰭の方向と形状が変わる。

[編集] 成長

オーストラリアのネオケラトドゥス属のハイギョが水草にばらばらに卵を産み付けるのに対し、アフリカのプロトプテルス属と南米のレピドシレン属のハイギョはともに雄が穴を掘り、その中で卵を孵化するまで保護することが知られている。レピドシレンの雄の場合、陸上脊椎動物の後脚に相当する腹鰭に、繁殖期の間だけ毛細血管の発達した鰓状の細かい突起が密生し、肺から吸収した酸素をここから放出してに供給することが知られている。

孵化したばかりの幼生(稚魚)はイモリサンショウウオポリプテルスの幼生(稚魚)と同様に、鰓蓋内部の内の他に外鰓(外部に突出している鰓)を持ち、両生類の幼生に似る(ネオケラトドゥスを除く)。成長に伴い、特に肺による空気呼吸を開始すると外鰓は縮小し最終的には消失するが、一部のプロトプテルス属の種では、成体になっても縮小した外鰓が消失せずに維持される。レピドシレンの場合、肺呼吸の開始と外鰓の退縮とが始まるのは孵化後7週間程度と言われている。

[編集] 系統・進化

硬骨魚類肉鰭類条鰭類の系統に分かれた。陸上脊椎動物は肉鰭類から進化したと考えられている。肉鰭類の魚類は現在シーラカンスとハイギョのみであり、このどちらが陸上脊椎動物に近縁なのかという論争が続いている。現在ではハイギョが近縁とする考えが有力となっているが決着はついていない。

  • 条鰭類の系統で初期に分かれたのはポリプテルス類とされる。ポリプテルスは、鰓呼吸に加えて肺呼吸をする点、肉質部の発達した付属肢を持つ点などが肺魚と共通している。
┏━━━━━━━━━━サメ・エイ           ・軟骨魚類
┫  ┏━━━━━━━その他大半の硬骨魚       ↑     ↑条鰭類
┗━┳┻━━━━━━━ポリプテルス          |硬骨魚類 ↓
  ┗┳━━━━━━━ラティメリア(シーラカンス)  |     ↑肉鰭類
   ┗┳━━━━━━プロトプテルス(肺魚)     ↓     ↓    ↑内鼻孔類
    ┗━━━━━━イモリ・カエル                    ↓

[編集] 現生種

ネオケラトドゥス・フォルステリ Neoceratodus forsteri (Krefft, 1870)
オーストラリア北東部に分布し、オーストラリア唯一のハイギョである。「ネオセラトダス」などと表記することもある。全長2mに達する。対鰭状で、発達した肉質部を持つ。幼魚の体色は黒色だが、成長と共に褐色へ変化する。
1869年、オーストラリアのクイーンズランド州に入植していたフォースターが、「バーネット鮭」と呼ばれる大魚を博物館員クレフトに紹介。標本はケラトドゥス・フォルステリ (Ceratodus forsteri ) としてロンドンの大英博物館の魚類学者アルベルト・ギュンターの元に送られ、絶滅したと思われていたケラトドゥスの仲間であることが確認され、後に背鰭の違いなどからケラトドゥスと分けてネオケラトドゥス属に分類された。ワシントン条約で保護されている。縄張りを持たず、他のハイギョ類に比べて性質は穏やかである。
レピドシレン・パラドクサ Lepidosiren paradoxa Fitzinger, 1837
南アメリカ熱帯亜熱帯域に分布する。全長は60cm~90cm前後に達し、胴が長く、ひも状の対鰭を持つ。幼体は黒地に黄色の水玉模様をしているが、成長につれ薄くなり、成体では灰色単色となる。
オーストリアの博物学者ナテラーがアマゾン川調査の際に採集。「のあるサイレン」(両生類の一種)という意味で"Lepidosiren"、鱗を持ち肺も持つため「逆説的」という意味で"paradoxa"と命名された。
プロトプテルス・アネクテンス Protopterus annectens
プロトプテルス・アネクテンス Protopterus annectens
プロトプテルス・アネクテンス Protopterus annectens (Owen, 1839)
アフリカ熱帯亜熱帯域に分布し、西部と南東部でそれぞれ亜種に分けられる。全長80cmほどで、ひも状の対鰭を持つ。ガンビア産の個体がロンドンに送られ、比較解剖学者リチャード・オーウェンが記載した。
プロトプテルス・エチオピクス P. aethiopicus Heckel, 1851
アフリカ熱帯亜熱帯域に分布し、ナイル川水系に1亜種、コンゴ川水系に2亜種が知られる。全長2mに達し、ひも状の対鰭を持つ。
パピルスなどの植物が生い茂る湿地にを作る。ヴィクトリア湖のエチオピクスは食用に水揚げされていたが、ナイルパーチの移殖により他の固有種と共に減少した。ナイルパーチは主要な漁業資源としての地位を固めており、過去の生態系復元は望まれていない。
プロトプテルス・アンフィビウス P. amphibius (Peters, 1844)
ソマリアからモザンビークにかけての東アフリカに分布する。全長60cmほどで、最も胴が短い。ひも状の対鰭を持つ。胸鰭の尾側は鰭条が発達している。
最小の肺魚。プロトプテルスの中では最もよく泳ぐ。外鰓は成体でも痕跡として残る。
プロトプテルス・ドロイ P. dolloi Boulenger, 1900
アフリカ中部のコンゴ川流域に分布する。全長は1m以上で、プロトプテルスでは最も胴が長い。ひも状の対鰭を持つ。
ブーランジェがベルギー領コンゴ(当時)の魚類調査で採集された標本を記載した。脊椎骨が多い点が、ルイ・ドローイグアノドンの二足歩行型復元をした人物)の主張する肺魚の系統に見出せる脊椎骨増加の'傾向'という考えに一致したため彼の名を付けた。

[編集] 現生種分類

  • ケラトドゥス目 Ceratodontiformes
    • ケラトドゥス科 Ceratodontidae
      • ネオケラトドゥス属 Neoceratodus - "オーストラリアハイギョ"
        • ネオケラトドゥス・フォルステリ N. forsteri (Krefft, 1870)
  • レピドシレン目 Lepidosireniformes
    • レピドシレン科 Lepidosirenidae
      • レピドシレン属 Lepidosiren - "ミナミアメリカハイギョ"
        • レピドシレン・パラドクサ L. paradoxa Fitzinger, 1837
    • プロトプテルス科 Protopteridae
      • プロトプテルス属 Protopterus - "アフリカハイギョ"
        • プロトプテルス・エチオピクス P. aethiopicus - 3亜種
          • プロトプテルス・エチオピクス・エチオピクス P. a. aethiopicus Heckel, 1851
          • プロトプテルス・エチオピクス・コンギクス P. a. congicus Poll, 1961
          • プロトプテルス・エチオピクス・メスメケルシー P. a. mesmaekersi Poll, 1961
        • プロトプテルス・アンフィビウス P. amphibius (Peters, 1844)
        • プロトプテルス・アネクテンス P. annectens - 2亜種
          • プロトプテルス・アネクテンス・アネクテンス P. a. annectens (Owen, 1839)
          • プロトプテルス・アネクテンス・ブリエニー P a. brieni Poll, 1961
        • プロトプテルス・ドロイ P. dolloi Boulenger, 1900

[編集] 研究史年表

  • 1828年 - セジウィックとマーチソンが化石魚ディプテルスを記載
  • 1833年 - ナテラーがアマゾン川でレピドシレンを採集
  • 1837年 - オーウェンにアネクテンスが送られる
  • 1869年 - 豪州入植者フォースター、博物館員クレフトにネオケラトドゥスを紹介
  • 1900年 - ブーランジェがドロイを記載
  • 1961年 - ポールがコンギクス、メスメケルシー、ブリエニーを記載

[編集] 飼育

  • 入手法(2006年現在)
    • プロトプテルス : 国内の熱帯魚市場に広く流通している。全国の熱帯魚店で数千円-数万円で購入できる。
    • レピドシレン : プロトプテルスほど広く流通していないが購入可能。
    • ネオケラトドゥス : 絶滅危惧種のため、野生個体はワシントン条約により商取引が禁止されている。2002年から養殖個体が輸入されており、数十万円で取引されている。
  • 管理
    • ヒーター : 冬季はヒーターで25-30℃程度を維持する必要がある。
    • 水槽 : 泳ぎ以外(歩行・捕食・呼吸など)の観察であれば体長の1.5倍程度で足りる。頭を水上に持ち上げることができないため、体が浸るだけの浅い水槽では溺死する。また、水面が障害物で覆われている場合も溺死する。穴を掘る習性があるため、水草は流木や石などに固定するか、のないものにする。縄張りを持つため小さな水槽で2匹以上飼うことはできない。
    • 餌 : 本来は貝類が主だが、小魚、水草など様々なものを食べる。市販の肉食魚用の飼料を中心に、時々別の飼料を試してみるのもよい。
    • 繁殖 : 海外では研究目的、商業目的で増殖が行なわれているが、国内では行なわれていない。完全に輸入に頼っているのが現状である。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ