編集委員

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編集委員(へんしゅういいん、英称:senior staff writer)とは新聞社通信社における専門記者の役職。部長や局長などの管理職になれなくても、ライター技能で同等の処遇を受けられるように設けられた役職[1]

論説委員とは異なり、個人の責任で原稿を書けることで記事への署名することが許されている[1]

編集局に属し[2][1]、一応トップは編集局長である[1]。ただし、編集主幹(executive editor)という地位がある上に場合は、編集局長はその下のナンバー2の地位である[3]

概要[編集]

メディア、とりわけ新聞社、通信社において一定のキャリアを積んだ者の中から、専門分野記事を執筆出来る見込みのある記者から任命される。新聞記者は入社後に、一定の期間が過ぎると管理職コースか、ライターコースを歩むの分岐点を迎えるが、編集委員はライターコースである。1976年12月6日に社会部から編集委員へと任命された元朝日新聞の岩垂弘によると、身分的に編集局長直属となったが、日常業務では任命以前に所属していた部の部長の区処を受けるとされていた。そのため、編集委員となった後は経費請求は編集局長へ、原稿は社会部へ提出していた[1]

日本においては、朝日新聞社が最初に「編集委員」というポストを創設した[1]。発端は1959年3月に朝日新聞社が整理部の機構改革のために誕生させたポストである。特に整理部の編集デスクに対して使用していたが、1966年11月1日付に機構改革を行い、4本社に肩書を『編集委員』とする専門記者制度を発足させた[1]
編集委員は分野に特化した優れた専門のライターを育成し、部長や局長等の管理職にならなくてもライターコースの者が記事の執筆能力で管理職と同等の待遇を受ける事が出来るようにするためのポストである[4][1]。記事についても通常の報道ではなく、コラムなど分析を含んだものを書くことが多い。特定部署とは別に「編集委員室」と言う部署が存在している新聞社もある[5]毎日新聞社は、2004年4月付の人事にて特別編集委員制度を新設し「特別編集委員」と言う新しい肩書が誕生した[6][7]。後追いで、共同通信社は2004年9月1日付[8]で、読売新聞社は2006年12月に、朝日新聞社は2013年4月から同制度を開始させてた[9]

また、産経新聞社の場合、1994年に駐在記者に限り同制度を導入している。また、似た肩書で「特別記者」[10]が2005年から存在している。

なお、キャリアとしては編集委員を務めた後、編集部門や経営などの重職を務めることもあるが、重職を務めた後に就任することもある。また、社説を担当する論説委員とは区別される。 新聞社においての役職のプライオリティとしては、論説委員が格上にカテゴライズされている[11]。また、論説室での論説懇談会にてボツになった内容を、編集委員が後追いで取材するケースも存在する[11]

上記の論説委員も同様であるが、組織階層と委員は別である社がほとんどであり、組織階層において下位である編集委員もいれば、会社の役員である編集委員もいる。

新聞社及び通信社の文化事業で教育部門が講演会講師派遣サービスを展開しており、編集委員をあっ旋するサービスを実施している[12][13][14]。また、読者サービスの一環として会員制の懇話会を設け、友の会[15]や販売店の団体を経由して講演会を実施する[16]パターンがある。 他にも、所属会社以外の講演会仲介業者に登録され、様々な主催団体の講演会に招待され講演する編集委員も存在する。

また、新聞社が出資するメディアグループ放送局報道番組ワイドショー・情報番組コメンテーターとして出演し意見を述べたり、司会として番組を仕切る場合がある。

著名な編集委員[編集]

読売新聞[編集]

現職[編集]

  • 橋本五郎(特別編集委員)
  • 布施裕之
  • 伊熊幹雄
  • 青山彰久
  • 渡辺嘉久
  • 玉井忠幸(編集局次長兼務)
  • 河野博子
  • 近藤和行

朝日新聞[編集]

現職[編集]

元職[編集]

毎日新聞[編集]

現職[編集]

元職[編集]

産経新聞[編集]

現職[編集]

元職[編集]

日本経済新聞[編集]

現職[編集]

元職[編集]

  • 田勢康弘(現:政治ジャーナリスト、客員コラムニスト、元:政治部次長兼務)
  • 鈴置高史(現:ジャーナリスト、元ソウル香港特派員、経済解説部長)
  • 足立則夫(現:フリージャーナリスト、川村学園女子大学 非常勤講師)
  • 田村秀男(現:産経新聞社 編集委員、論説委員兼務)
  • 森一夫(特別編集委員、論説委員兼務)

共同通信[編集]

現職[編集]

  • 会田弘継(特別編集委員)
  • 磐村和哉※元平壌支局長
  • 龍野建一
  • 立花珠樹
  • 小山鉄郎(論説委員兼務)
  • 渡部道雄(論説委員兼務)
  • 西川孝純(特別編集委員)

元職[編集]

東京・中日新聞[編集]

現職[編集]

  • 五味洋治(東京本社 編集委員兼論説委員)
  • 小島一彦(本社 編集委員)
  • 白井康彦(本社生活部 編集委員)
  • 城内康伸(東京本社 外報部編集委員)
  • 常盤伸(東京本社 編集委員)

北海道新聞[編集]

現職[編集]

中国新聞[編集]

現職[編集]

  • 田城明(客員特別編集委員)

新潟日報[編集]

現職[編集]

  • 森沢真理
  • 津田大介(特別編集委員)
  • 一戸信哉(ソーシャル編集委員、敬和学園大学人文学部国際文化学科 准教授)

元職[編集]

沖縄タイムス[編集]

現職[編集]

元職[編集]

日刊工業新聞[編集]

現職[編集]

  • 山本佳世子

元職[編集]

  • 天野伸一

フジテレビ[編集]

現職[編集]

  • 岡野俊輔(政治部)
  • 橋本寿史(社会部)※皇室担当
  • 風間晋解説委員兼務、外信部、元外務官僚
  • 青木良樹(FNN推進部)

元職[編集]

夕刊フジ[編集]

現職[編集]

週刊金曜日[編集]

現職[編集]

元職[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h もの書きを目指す人びとへ、 岩垂弘”. E'con FutureNetworks. 2023年1月19日閲覧。
  2. ^ 世界大百科事典内言及. “編集委員(へんしゅういいん)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年1月19日閲覧。
  3. ^ ニューヨーク・タイムズ編集主幹にジョセフ・カーン氏、8年ぶり交代:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2022年4月20日). 2023年1月19日閲覧。
  4. ^ 『朝日新聞社史 昭和戦後編』 ISBN 9784022730268
  5. ^ 通信社の編集委員の仕事とは(経済広報 2013年11月号)
  6. ^ 第3回 東住協セミナーのおしらせ
  7. ^ 産経MSN【人事】毎日新聞社 2013年2月28日 7:30
  8. ^ 共同通信に特別編集委員が誕生
  9. ^ 朝日新聞 会社案内・CSR報告 ジャーナリズム
  10. ^ 産経MSN 【土・日曜日に書く】特別記者・千野境子 ランブイエの精神を思う 2008.7.5 03:47
  11. ^ a b 日経工業新聞 山本佳世子 産学連携取材日記 論説委員の兼務になります!! 2011年3月31日
  12. ^ 日経ビジネススクール 講師派遣紹介
  13. ^ リクルートマネジメントソリューションズ インタビュー:「組織の中でのイノベーション創出」研究 第3回 日本経済新聞社 人材・教育事業 上杉栄美氏
  14. ^ 朝日新聞 ブランド推進本部 CSR推進部 講演センター 朝日新聞社の講師派遣
  15. ^ 産経新聞社 正論「懇話会」概要
  16. ^ 清水会長再任を承認 毎日新聞 2015年10月20日付
  17. ^ 2013年3月末迄は主筆

関連項目[編集]