線維筋痛症

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線維筋痛症
分類及び外部参照情報
ICD-10 M79.7
ICD-9 729.1
MedlinePlus 000427
eMedicine med/790 med/2934 ped/777 pmr/47
Patient UK 線維筋痛症
MeSH D005356
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
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線維筋痛症(せんいきんつうしょう)は、全身に激しい痛みが生じる病気である。 英語ではFibromyalgiaもしくは Fibromyalgia Syndromeと呼ばれている。略語はFMSやFMが使われることが多い。

原因は不明であり、通常の医師が行なう血液検査では異常が現れない。CTスキャン、MRIを検査しても異常を発見できない。また、この病気が診断できる特別な検査は今の所なく、治療法も確立されていない。

男性より女性が7倍と多く、中高年に発生率が高いと言われている。しばしば膠原病などの自己免疫疾患を併発する。

概要[編集]

全身の耐え難い恒常的な疼痛(慢性的、持続的に休みなく続く広範囲の激しい疼痛)を主な症状として、全身の重度の疲労や種々の症状をともなう疾患である。症状は季節的変動、日中変動があり、全身移行性である。常時全身を激痛が襲い、慢性疼痛の様を呈する。僅かな刺激(爪や髪への刺激、服のこすれ、音、光、温度・湿度の変化など)で激痛が走ることも特徴である。患者の90%以上が不眠症状をもつ。痛みと疲労感、不眠により、患者は日常生活が著しく困難になる。

症状は多岐にわたり、主なものとして関節と全身のこわばり、疲労感、全身のひどいだるさと倦怠感、四肢の脱力、不眠と睡眠障害、頻尿、下痢、月経困難、生理不順、過敏性腸症候群などの機能性胃腸障害、微熱、頤神経麻痺、痛みで体が思うように動かせないため全身の筋力と運動能力の低下、筋肉の激しい疲労、むずむず脚症候群が挙げられる。

重度では嚥下困難を起こすこともある。起き上がれず、歩けなくなる、などの身体症状の他、悪夢、焦燥感、不安感、抑うつなどの精神的症状やうつ症状、判断力、思考力の著しい低下、記憶を失うほどの痛みにより認知症のように記憶がなくなる深刻な症状も報告されている。

足の痛みで歩けないという訴えも多く、足、手の先の冷感や灼熱感、ドライアイリンパ節の腫れと痛み、四肢こわばりとだるさ、関節痛、レイノー現象光線過敏、脱毛、シェーグレン症候群、自覚的な関節の腫れなどの膠原病の症状を訴える患者もいる。 乾燥症状も有意に見られ、喉の渇き・声がれなどの症状も多い。

合併症/リウマチ/膠原病/脳脊髄液低下症/他疾患[編集]

整形外科系疾患・リウマチ・膠原病・脳脊髄液減少症などの疾患に加えて、線維筋痛症を合併して生じることもある。これらの場合は、自立して生活するには、かなり苦痛を感じていることになる。健康な時と比較すると、身の回りの世話なども痛みにより著しく制限されてしまう事が患者の苦痛として伝えられている。

日常生活を困難にするその他の慢性疼痛[編集]

首から肩にかけての痛みやしびれ、上肢の痛みやしびれ、腰背部の疼痛やこわばり感、臀部から太ももの痛みと張り感、膝から下腿の痛みやしびれ、眼の奥の痛み、口腔の痛み、頭痛などの様々な疼痛症状が起こる。これらは対称性にではなく全身に散在して出現することもある。 全身移行性である。

結節・鎖骨周辺の痛み[編集]

患者の一部に検査により核抗体反応が高い場合膠原病、リウマチが疑われる。リウマチは膠原病カテゴリに含まれる病である。

精神的及び身体的ストレス、気候、環境によって疼痛箇所が移動したり、疼痛レベルが変化することもある。痛みを訴えるが、診察しても患者に外傷がないため、正しく診断に結びつかないケースが問題になっている。検査してもレントゲンや血液検査での炎症マーカーは出ない。このため、患者は様々な症状を抱えて苦しんでいたとしても、目に見えない痛みが理解されない事になり患者を余計孤独にさせる。医療側との壁は厚く、しばしば怠け病や詐病と周囲に誤解される事も患者にとって深刻な問題である。 このため、早急に適切な病名診断を正しく受けられることが求められている。

患者の激痛・痛みによる発作[編集]

ストレスでパニック障害を起こす事もあるが線維筋痛症と理解されない間は精神疾患と誤診されることも多い。どこの医療機関でも痛みに効く薬が出ないため、患者は病院を転々とすることになることも多く、最高15回も病院を変えてきたドクターショッピングのケースも報告されていることから、いかに診断が適切にされていないかがわかる。

仮面うつ病更年期障害自律神経失調症身体表現性障害などの疾患や、単なる不定愁訴と誤診される場合も多い。患者は始終どこかの部位を襲う痛みのため、寝たきりになってしまう事もある。適切に早期発見、診断、治療されれば予後は悪くないが、治療に結びつかない場合は予後は良くない。

働けない生活に変わる患者の実態[編集]

体重の重みでも座位が苦痛、通勤では足が痛むなどの症状により、仕事を従来通り続けることが困難になるケースが多い。結果、失職を余儀なくされ、経済的に困窮しているケースが多い。保険適用外の痛み緩和のペインクリニックなどの治療に費用がかかり、これが患者と家族をさらに経済的困窮に追い込んでしまう事が深刻な問題である。QOLADLは末期がんの患者同様の病である。患者の痛みが理解されないことで家庭内不和、離婚、心中や自殺を図るケースも報告されている。

発症までの期間、なんとなく風邪、なんとなくだるい、などの不定愁訴が続き見逃され、診断までに4-7年経過することが多い。トリガー(きっかけ)となるイベント(離婚・愛する者の死・介護などのストレス・職場でのいじめなどの対人関係ストレス・手術・外傷・出産・交通事故)に適応できない時に著しく悪化して激痛へと進むケースが多い。痛みが強まってからの予後は、適切に診断され早期発見できないままでは、日常生活が送れなくなる患者も少なくない。

歴史[編集]

古くはベトナム戦争後、兵士が訴えた症状から線維筋痛症候群という疾患が医師により発見された。

以後、米国では炎症反応など検査では異常が発見されないにもかかわらず本人の症状が深刻であることから、戦争、災害、テロ、交通事故、多大なストレスなどにさらされた人に多く存在するPTSDが背景にある症候群として、日常生活が不自由な患者については障害年金受給などの可否をめぐり医療界では論争の的となった。幼少期の児童虐待経験・離婚・配偶者との死別・レイプ被害者も同様の苦痛と症状を訴えていることからPTSDとの因果関係は強まり、精神科・神経科の連携で痛み神経にアプローチする薬物療法などが研究された。現在、米国では内科医のほとんどが線維筋痛症という疾患を知っているほどありふれた病となって認知されている。

日本では有名な女性アナウンサーの自殺という衝撃的な事件があり、線維筋痛症という病が注目されたことがきっかけで、厚生労働省が研究班を立ち上げた。現在まだ研究途上という難病には違いないが米国と比較し日本では殆どの医師が線維筋痛症という疾病と診断方法などを知らないため、患者はかかりつけ医をみつけることに大変苦労する。

疫学[編集]

潜在患者数[編集]

日本線維筋痛症学会での調査では、患者数は全人口の約1.7%、約200万人以上と推定された(同学会調べ)。 しかし、現在は未だ3000~4000人ほどの患者しかいない。
ドイツの研究では、無作為抽出した被験者の中で線維筋痛症有病率は2.1%と報告された。[1]

男女比・遺伝[編集]

男女比は1:8または1:7といわれ、未だ調査人数が少ないものの、女性に多い病である。欧米諸国と比較して日本はやや男性患者が多いと近年報告された。遺伝性については有意に見られると報告されている。

小児性線維筋痛症[編集]

引きこもり不登校児童にこの疾患が多く診断されたため、今後調査を進めていくと、小児性線維筋痛症患者の実数はさらに多いことが判明するのではないかと推測されている。小児性線維筋痛症の問題点は、子供は「お腹が痛い」「学校にいきたくない」などと登校拒否をするが親はいつものこと、と軽視してしまう。実は本当に本人は症状が苦しいとしても、ただの腹痛、怠けているとしか思われず理解を得られないまま慢性化してしまい、長く続く登校拒否や体の不調に気づいた親が病院に連れていくと線維筋痛症の診断を受けたケースが報告されている。最小年齢は日本では6歳発症。なお、生後まもなくの大病で罹患したものの、長年単なる病弱で済まされたケースも存在する。

初期症状の発生、重症化から診断に至るプロセス[編集]

最初は軽度の風邪、アレルギー症状、倦怠感、肩こり、頭痛、うつ症状や腹痛などが繰り返されるため、不定愁訴として自律神経失調症などと誤診され(見逃され)る場合がある。

合併症/近似疾患[編集]

近似疾患にはCFS(慢性疲労症候群)があり、これも倦怠感、不眠、集中力の欠如、働きすぎのストレスなどによる疲労感などが続く。合併して線維筋痛症を発症しているケースもある。膠原病患者が線維筋痛症を併発するケースと、慢性疲労症候群を併発するケースは治療も要因も異なってくる。

診断方法[編集]

線維筋痛症は日本では今のところ相談窓口で紹介された医療機関で診断してもらうか、圧痛点診断(トリガーポイントが学会で示されており、およそ4キロの加圧で部位を押すと激痛が走り、18箇所中何箇所どの程度痛がるかで診断する方法)がある。

またニプロ社からペインビジョン(脳波で痛覚を検知する機器)が開発されたが、導入している医療機関は大変少ない。

線維筋痛症患者を取り巻く問題点[編集]

潜在患者が存在するにもかかわらず、診断できる医療機関が少ないことから、患者が何軒も病院を変え、ドクターショッピングで医療費が高くなったり、医療不信になってしまう問題がある。未だに的確な診断、早期発見、治療できる医療機関は殆どないため、診断、治療に患者がたどり着くことが困難な病である。

患者をとりまく環境[編集]

社会的救済制度や経済的問題[編集]

特定疾患にはなっていない(2012年現在)。障害年金・身体障害手当などの公的支援が得られないことにより患者の生活には経済的困難が生じる。日本線維筋痛症学会では、整形外科系疾患・精神疾患・リウマチ・膠原病、これらの疾患のどれかに誤診されるケースも多くあり、学会の研究者は疫学などの研究を進めるとともに鑑別診断・誤診も問題としている。むろん、上記に限らず腱付着部炎などあらゆる病と合併しつつ線維筋痛症を発症していることもあり、医療者から痛みの原因を正しく理解されない間は患者は傷みを抱えながら孤立無援になっていることもあり、深刻な問題となりうる。

治療[編集]

線維筋痛症患者は睡眠の質が極端に悪いことが報告されている。自らの体重でも重さで痛みが増す他、ストレスや気圧の変化などでも悪化する(雨の日や冷えは病状をかなり左右する)。

現在、痛み止めには精神薬で痛み神経を緩和する薬の他、不眠を緩和するために睡眠薬も処方されることが多い。睡眠をとっていても、脳波は起きているときと変わらないほどα波が少ないという報告がされた。線維筋痛症患者にとっては、一日最低でも8時間以上睡眠を十分とることが治療に有効だという説が強い。患者には薬物で痛みを緩和するだけでなく鍼灸、漢方薬、サプリメント、点滴などの統合医療、補完医療も試行されている。患者の心身にストレスになる環境を避けることは必須である。

患者は、何らかのストレスを抱え込んでいる真面目かつ責任感が強い人などが発症しやすい傾向にあることがわかっている。痛みと苦痛を訴える患者について、医療者は患者の抱えている人生問題、家庭や職場環境など、背景の心の問題となる悩み事を蓄積している要因についてもカウンセラー、心療内科、精神科との連携医療により、患者の話を聞きストレスを改善できるようアドバイスすることは患者の予後を良くするために有効である。

投薬だけでは痛みをごまかしているに過ぎない。たっぷりのビタミン、栄養、規則正しい無理ない生活、認知行動療法、自然療法、温熱療法などリラックスして疲労を除去しながら病をケアしていく、病との向き合いが大切である。理解者がいないことは患者をもっとも孤独にさせ、孤独は痛みを増幅させるため、家族も含めて病の性質に理解をもつことが家族にとって大切なこととなる。

環境を変える-問題点の洗い出しとストレスの除去[編集]

家庭環境も含めた患者自身の幸福を感じられる生活環境への転換を図ることも推奨されている。

現状の線維筋痛症の抱える問題点・介護保険・投薬治療の現状[編集]

「死に至る病ではないが、死んだ方が楽なほど痛い」と表現される病であるだけに常にどこかが痛む患者の辛さはなかなか他人には理解されないが、患者にとっては楽に生活できるものではない。他人に目に見えて理解される障害部位が何もないため、一見健康そのものであるが、常にあらゆるところが痛んでいる。寝ていれば筋肉が落ち、血行も悪くなるため、適度なリハビリや社会参加は患者にとってよい。周囲に痛みを理解されず、家族から怠け者扱いされたり、周囲の友人や職場の人間にも怠け者と思われているという訴えが多く、患者は身体的傷みだけでも苦痛な上、精神的にも社会参加できない情けなさ、周囲の無理解にさらされ、孤独になる。これにより痛みが酷くなり病院に駆け込むケースも多いが、結果失望して医療不信になりさらに落ち込むという悪循環にもなりがちな深刻な病なため、家族や周囲、医療者の痛みへの理解が得られなければ当然、うつや自殺念慮、自殺未遂なども患者が考えてしまうことは容易に推測できる。

QOL、ADLが極端に低下するため、回復を目的として、患者の治療にはまず、疲労させない・ストレスをためず病を受け入れて暮らしていく生活に切り替えていくこととなる。そのため、働くことも制限していかねばならないこともあるが患者は無理して働き続けてしまうケースが多い。これらについては、早急に社会的理解と介護及び支援が必要であるが、炎症反応が認められないなどの医学の遅れにより、未だ日本の法律では要介護認定で該当判定される事は稀で、何らかの合併症により悪化している患者には認定されるが、目に見えたほかの部位の硬直・自立困難などが見られない場合は、身体障害者手当の受給にも至らない。

2012年現在、(c特定疾患)未認定である。(他疾患を合併している患者はその疾患で公費負担になっていることもある。)

保険内治療については2010年度からようやく一部の薬に保険適用が認められたが、患者の多くは痛みを緩和するための薬であるが保険適用にならない疾患であることから、意にそぐわずに精神科などで薬を処方してもらうしかない。[要出典]

  • 補足1//欧米では、痛み緩和の新薬についても早くから保険適用が認められている。
  • 補足2//日本線維筋痛症学会も米国で認められている効果が高い新薬の認可を進め、2008年からはリリカガパペンチンなど、痛み緩和に有効とされる薬が厚生労働省より認可された。

あらゆる薬があるが、対症療法の域を出ず、副作用による内臓への負担や体質に合わない薬の場合はめまい・浮腫・目のかすみ・喉の渇きなどの深刻な副作用もある。出来るだけ自然療法・認知行動療法・温熱療法・無理をしないライフスタイルに切り替えるなどの人生そのものの見直しがない限り、なかなか完治は難しい病である。

歴史[編集]

  • 欧米[どこ?]では100年以上前[いつ?]から認知されていた疾患である。
  • 欧米のリウマチ科ではよくある病気と考えられており、臨床教育ではプログラムのなかには線維筋痛症(fibromyalgia)がある。
  • 欧米では生活機能障害などの保険が適用される。
  • 2002年、線維筋痛症友の会(Japan Fibromyalgia Support Association)が患者により設立される。
  • 2003年、厚生労働省が『線維筋痛症研究班』を発足させる。2008年から独立研究班として継続中。2009年より年労働省研究班線維筋痛症医療情報センターから業務を引継ぎ日本線維筋痛症学会 JCFIが調査を行っている。
  • 2009年サイトカインの一種であるインターフェロンγの増加と、ミクログリアATP受容体のP2X2~7の過剰発現、インターフェロンgとP2Y12、その他ミクログリアに発現する様々な分子を標的にした治療が今後、慢性疼痛治療薬開発への非常に有望なターゲットと期待されている。
  • 2010年、引き続き各国医療機関及び製薬会社は、ニューロン単独抑制から、過剰にニューロンを過敏にするグリア細胞抑制へとターゲットを変え、神経内分泌系及び神経伝達物質に注目している

病理[編集]

腰痛症頸肩腕症候群変形性関節症などから慢性局所痛症(chronic regional pain: CRP)や慢性広範痛症(chronic widespread pain: CWP)が引き起こされる。これらCRPやCWPから線維筋痛症(fibromyalgia syndrome: FMS)へ進行すると考えられている。[2]
CIDP(chronic iflammatory demyelinating polyneuropathy:慢性炎症性脱髄性多発神経炎)類似病理所見が見られたとの報告がある。[3]
男女比では、女性が多く、患者の約8割を占める。発症年齢としては30歳代~60歳代が多い。

症状[編集]

  • 全身に慢性的に激しい痛みが生じる。
  • 痛みの種類は普通の人が日常経験する痛みと異なり、耐え難いもので「電気が走るような痛み」や「ガラスの破片が流れるような痛み」(「闘病記・手記>40歳女性の場合」線維筋痛症友の会)などという表現で患者に形容される。
  • 疼痛レベルや痛みの種類は天候や気温に湿度、環境、五感による刺激、肉体的精神的ストレスで変化する。しばしば疼痛箇所は移動するが、痛みが途切れる事は無い。
  • 症状には個人差があり、軽度なら仕事を続けられる場合もあるが、重度の場合はガンの末期患者と同レベルの疼痛といわれ、日常生活に支障をきたし自力で生活できない場合がある。症状が重くなると髪やつめに触っただけで痛みが走り、意識がもうろうとなり寝たきりになる。通常の日常生活(食事・買い物・入浴・着替え・歩行・寝返り等)、呼吸や嚥下すら困難になる。
  • 視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感が著しく過敏になる。そのため僅かな音や光、軽い接触にも痛みを感じるようになる。化学物質やアルコール不耐性になり、アレルギー症状は悪化する。
  • 灼熱感や冷感、悪寒、穿痛感、乱切痛、アロディニアなどの知覚異常が見られる。
  • 思考と理解力の低下、短期と長期記憶力の低下、集中力の欠如と混乱の注意障害、失語症や遂行機能障害などの不安、焦燥、錯乱が見られる。
  • 多くの患者に筋力と運動能力の著しい低下、筋肉の激しい疲労、筋肉の痙攣、行動力の低下、関節の痛みと腫れ、重度では立ち上がれない、起き上がれない、以前歩けた距離が歩けなくなるなどの症状が見られる。そのため多発性筋炎・皮膚筋炎と診断される事もある。
  • 付随する症状としてこわばりやうずき、痺れ、振戦と震え、全身倦怠感と疲労感、耳鳴り、視力の変化、頭痛微熱、体温調節の失調、睡眠障害、不眠と過眠、歯や歯茎、顎の痛み、口内炎、顎関節症候群、眼の奥の痛み、頻尿、寝汗、動悸息切れ、発疹、低血糖症、月経前症候群過敏性腸症候群三叉神経痛などがある。
  • ドライアイの報告もありこの場合は自己免疫性疾患シェーグレン症候群合併皮膚筋炎への移行を警戒する必要がある。しばしば膠原病(リウマチエリテマトーデスMCTDなど)、甲状腺機能低下症(橋本病)、潰瘍性大腸炎血清反応陰性脊椎関節炎、等の免疫疾患を併発する。特徴として朝と夕方の疲労とこわばりやリンパ節の痛みが見られる。
  • 特に強直性脊椎炎血清反応陰性脊椎関節炎の患者が合併症として線維筋痛症を罹患している頻度が高いことが知られ始めており、脊椎関節炎における多発性付着部炎の箇所と線維筋痛症の圧痛点の多くが一致するとも言われている。
  • この病が直接の原因となり死に至ることは無いと言われているが、その全身の痛みは凄まじいもので、痛みの苦痛等が間接的に患者を死に追いやることはありえる。2007年2月2日に43歳で亡くなった日本テレビの元アナウンサー大杉君枝はこの病を苦に自殺したと報道されている[4]。後述のとおり、この病は患者のストレスや精神状態が症状に与える影響が大きく、神経や精神状態の改善が症状を改善させるという臨床例が多く認められている。この病は原因が不明で、患者の痛みの理由が周囲にわかりにくいことから、しばしば怠け病や詐病と周囲に誤解されやすいところが、患者のストレスを更に増加させるものと考えられる。うつ病に対する場合と同様、周囲のこの病に対する理解が必要である。
  • 発症してから初期(1~3年)は少量の抗不安薬や抗鬱剤、十分な休息と睡眠、適切な治療を受ければ社会復帰も可能であり自然治癒する可能性がある。しかし検査で異常がないため、長年病院を転々とするケースも多く、医師との信頼関係が築けずにPTSD(心的外傷)を起こし、それが引き金となって病状が悪化してしまう場合が多い。発症から時間が経過する程治りにくいと言われている。
  • 仮面うつ病、更年期障害、自律神経失調症、身体表現性障害と誤診される場合も多い。
  • 特定疾患で難病認定されている多発性硬化症との併発事例も報告されており、更なる治療方法の開拓が望まれている。
  • 同様の病に慢性疲労症候群(CFS)がある(但しCFSは痛みではなく疲労を伴う病である)。線維筋痛症の発症前後に合併する例も多い。症状に共通する部分があるため線維筋痛症と同じ病気とみなす医師もいる。CFSの主な症状は身体的・精神的両方における激しい疲労である。運動・精神活動後によって疲労は強くなり、休息や睡眠によってなかなか回復しない。不眠・過眠・はっきりした夢を見やすい。疲労の程度は、何とか働ける程度から、寝返りもうてないほど重症の患者もいる。

診断[編集]

  • 2010年現在明確な診断基準はなく、現段階では1990年に米国リウマチ学会(ACR)が作成した分類基準を用いて診断している。しかし不十分な点も多く新たな基準が検討されている。
  • 広範囲に及ぶ痛みが3ヶ月以上続いていて、全身にある18箇所の圧痛点(ツボのようなもの)を4kgFの力で押したときに11箇所以上痛い事で線維筋痛症と診断される。痛みの発生箇所が11箇所以上でなくても専門医の判断で線維筋痛症と診断されることもある。ただし、症状が他の病気によるものでないことが条件になる。
  • 日本の患者の症状にアメリカと異なる点があるため、現在日本の分類基準が見直しが求められている。
  • 通常の採血検査、レントゲン写真、CRPという炎症反応、筋電図、筋肉の酵素、CTスキャン、MRIを検査しても異常がなく線維筋痛症と診断できる検査は今の所ない。
  • 時に血液検査で抗核抗体の弱陽性あるいは補体値の低下など免疫学的な軽度の異常がみられる。
  • 同様の症状を呈する疾患として軽症の膠原病や、膠原病の予備群、自己免疫疾患初期の場合があるので、除外診断のため確実な血液検査と筋生検を行う。また定期的な検査により除外と経過観察が求められる。
  • 筋生検による筋炎(皮膚筋炎等)・血管炎・神経炎の除外は必要である。
  • ただし米国リウマチ学会の分類基準では他の疾患があっても線維筋痛症は除外されないという表現がされており、線維筋痛症と診断することは誤りではないが、他の疾患が根底にないかを探すことは非常に重要な医療行為であると考えられる。

原因[編集]

  • 現在のところ原因は不明である。
  • ツベルクリン反応を見ると強陽性が出るケースがある。だが抗体検査やQFT検査においても陰性であり、肺所見、PCR検査、血液所見でも異常がなく、抗体検査やQFT検査にかからない結核菌非結核性抗酸菌が潜んでいる可能性も示唆される。
  • 事故、外科手術、膠原病などの自己免疫疾患、脊椎関節炎、歯科矯正治療、顎関節症、脳梗塞・クモ膜下出血などの脳血管障害、ガンによる疼痛、PTSD、妊娠・出産、ウイルス感染、感染症、化学物質過敏症子宮内膜症、風邪、薬物中毒、米国では長時間の運転や湾岸戦争後遺症、肉体的又は精神的ストレスなど非常に多様な「痛み」がきっかけで発症しているのではないかと言われる。発端となった疼痛レベルも様々で軽い捻挫程度の痛みでも全身へと激痛が広がり悪化する場合がある。
  • 中枢神経系及び末梢神経系の異常によって痛みの回路が変わり痛みを増幅させている。
  • 脊髄内の末梢からの痛みの伝達を抑制する仕組みがストレス等により機能低下するとの説。
  • 強い痛みが続くと、中枢神経細胞内に遺伝子が発現し、タンパクが生成されることが実験で証明されている。神経細胞の遺伝子が変異して書き換えられるという説もある。
  • 脳の神経細胞(ニューロン)が電気信号を使って情報伝達する時の異常。
  • アメリカの調査では家族内での線維筋痛症の発症率が高い事が分かっており、遺伝的な要因も考えられる。ポリジーン遺伝子群に関係するとも言われる。
  • 免疫異常が関わっているとも言われているが、自己免疫疾患から発する場合も単一抗体は確定していない。
  • 交感神経のバランスが崩れ過緊張を起こし、血管の収縮で虚血状態となった筋肉が酸欠状態となることで激しい痛みが発生する緊張性筋炎症候群が併発している場合もあると考えられる。
  • 器質的な原因としてグリア細胞が有力視されている。痛みを感知するニューロンを過敏にしているのは、グリア細胞と呼ばれる脊髄や脳にある別の細胞の働きによる事が分かっている。グリア細胞は脳へ疼痛シグナルを送るDRGと脊椎ニューロンを敏感にする様々な分子を放出しているグリア細胞はニューロンを監視し活動を促進させる重要な役割を担っており、同時にその活発化は神経の異常な過敏状態を長引かせ悪循環を起こす原因となっている。
  • 欧米の研究者の多くが、この疾患を器質性疾患と捉えており、神経内分泌と神経伝達物質の異常に関連付けている。又HPA軸の機能低下、セロトニントリプトファンの低下及びサイトカインの機能異常とインターロイキン、過剰なインターフェロンγなどに注目している。
  • 2009年九州大学大学院薬学研究院、津田誠・井上和秀教授の研究グループにより慢性疼痛の分子レベルでのメカニズムが発表され注目を集めた。サイトカインの一種であるインターフェロンγが、神経障害の後に増加する事、又それによって脊髄ミクログリアにP2X4受容体が過剰発現してBDNFを放出する事、インターフェロンγとg受容体活性阻害抗体作製の課題を提示した。
  • 2013年7月16日に、小児性線維筋痛症発生の原因がコエンザイムQ10の欠乏にあることが、東京工科大学応用生物学部山本順寛教授らと、横浜市立大学医学部小児科との研究チームにより発見されたと報じられた[5]

治療[編集]

  • ノイロトロピンという特殊な作用機序を持つ下行性疼痛抑制系賦活型疼痛治療剤が長期間慢性的につづく疼痛に対しては有効とされている。ノイロトロピンを定期的に静脈注射するなどの療法も行われているが、線維筋痛症の痛みは個々人によって症状が異なるため、線維筋痛症に詳しく、これらの薬剤に熟知した専門医による処方が望まれる。
  • これまで、患者が痛みを訴えてもそれを具体的に伝えることは困難だったが、2007年に株式会社ニプロが「ペインビジョン(PainVision)」という電流知覚閾値検査装置を発売した。これは、痛みに似た感覚を作り出すことができる電気刺激を患者に与えることによって、患者の痛みを数値化し、グラフとして提供する装置である。これによって、これまで医師に伝えることが難しかった痛みの度合いが数値化・視覚化されることにより、患者が感じる痛みの量を患者と医師が共有したり、それによって患者の心理的負担が軽くなることなどが期待される。
  • 膠原病患者の場合は治療の一環としてメトトレキサートを中心に、インフリキシマブエタネルセプトなどの抗TNF-α療法を行う事により疼痛を軽減できる可能性がある。
  • 局所麻酔薬による神経ブロック療法は一時的に局部の疼痛を軽減することができる。
  • 救急の場合医師の厳重な監督の下、モルヒネなどの医療用麻薬製剤、ペンタゾシン pentazocine(ソセゴン/ペンタジン/ペルタゾン)などの麻薬拮抗性鎮痛薬の投与を行う事も稀に有る。
  • 日本の上場バイオベンチャーであるそーせいにより線維筋痛症候群の経口治療薬開発品AD337が開発中である。2008年後期第Ⅱ相臨床試験へ移行。順調に進んでいる。337の後続開発品としてSD726は、非臨床試験を終了し臨床試験へ移行できる状況でSD726は古典的医薬品化学の方法で337と異なる薬理学的特性を有する化合物として探索され、非臨床試験において線維筋痛症候群ならびに神経因性疼痛への適応の可能性が示唆されている。2008年欧州において特許が成立している。
  • 2008年3月10日、神経・線維性疾患の治療薬を開発しているPipex Pharmaceuticals社は、リウマチ様の痛み疾患・線維筋痛症を対象にした経口flupirtineアミノピリジンのプラセボ対照二重盲検第2相試験のIND申請がアメリカFDAに受理されたと発表した。
  • 2009年12月15日、Jazz Pharmaceuticals社は、線維筋痛症治療薬としてナルコレプシー治療などに使われる麻酔薬の一種ナトリウムオキシベート経口液剤JZP-6 (sodium oxybate oral solution) をアメリカFDA(米国食品医薬品局)に承認申請。 2010年2月アメリカFDAに受理された。
  • 2010年これまでの慢性疼痛治療はニューロンの活動のみを抑制させる事に集中してきた。しかしグリア細胞が炎症性サイトカインや増感因子を放出して神経細胞を刺激し続ける限り、ニューロンの興奮を充分には抑えられない事が判明している。神経性疼痛障害はグリア細胞へのブレーキも不可欠である。現在慢性疼痛の分野では、グリアそのものを沈静化する方法、グリア細胞が出す炎症の引き金となる分子やシグナルをブロックする方法、炎症を抑える信号を送る方法などが模索されている。
  • グリア細胞にアプローチした生物学的製剤による分子標的治療AV411アストロサイト(神経損傷後にできるグリア細胞の塊)の活動を阻害。モルヒネの効果増強及び禁断症状緩和として臨床試験中。鎮痛剤としては安全試験終了、既に市販されているエタネルセプト(商品名エンブレル)は炎症伝達物質の阻害によりグリアを沈静化。手術後の神経障害性疼痛の緩和を目的に臨床試験中。別の目的にて既に市販・アナキンラ・ペントキシフィリン・インターロイキン(サイトカイン)=抗炎症信号の伝達によりグリアを沈静化。疼痛の緩和を目的に細胞試験、動物実験中。別の目的にて既に市販・JWH-015=痛みを和らげるCB2カンナビノイド受容体を活性化。疼痛の緩和を目的に細胞試験、動物実験中・メチオニンスルホキシミンアストロサイトの神経伝達物質分泌阻害。疼痛の緩和を目的に細胞試験、動物実験中・ミノサイクリン=ミクログリアの活性化阻害。疼痛の緩和を目的に細胞試験、動物実験中・プロペントフィリンアデノシンの再取り込みの阻害剤アストロサイトの活動阻害。鎮痛剤としての安全試験終了・サティベックス=カンナビノイド系がん疼痛治療剤。カンナビノイド受容体を活性化。ガンやエイズに伴う神経障害性疼痛、糖尿病性神経障害への有効性を調べる臨床試験中。大塚製薬GWファーマシューティカルズが米国にて特許取得。・SLC022=アストロサイトの活動阻害。帯状疱疹後神経痛への有効性を調べる臨床試験中。
  • ※生物学的製剤とは、最新のバイオテクノロジー技術を駆使して開発された薬で分子標的治療に用いる。生物が産生した蛋白質を利用して作られる。特に関節リウマチの炎症や痛み・腫れ、軟骨などの関節破壊を引き起こす原因となる物質を抑えることにより、その効果を発揮するとされ、日本でも膠原病に認可されている。
  • 2010年6月武田薬品工業は、慢性関節炎などに伴う痛みを改善する抗体医薬品AMG403の国内開発を発表。同様に疼痛を引き起こす伝達物質の受容体やイオンチャネルの発現を調節する、神経成長因子NFG阻害ヒト型モノクローナル抗体として、米ファイザーがタネズマブ(tanezumab)を開発。しかしタネズマブは2010年6月25日、関節炎患者への疼痛管理薬候補としての臨床試験中止。又7月19日には慢性腰痛と痛みを伴う糖尿病性末梢神経障害を適応とした試験中止。
  • 注意すべき点として、FMS患者の薬物耐性は脱感作タキフィラキシーの速度が健常人よりも速い。
  • 薬物による治療だけでなく、認知療法カイロプラクティック鍼灸腹式呼吸などの呼吸法や瞑想、ウォーキング・ヨガストレッチエアロビクス水泳などの軽い運動、健康的な睡眠の確保といった、ストレスを緩和させる手法も有効ではないかと考えられている。ただし本人の希望無しに無理やり運動させると悪化したり、中~重症患者には本人の希望する軽いストレッチなど以外は、激しい運動は逆効果ではないかとの声もある。
  • 肉体的精神的ストレス、環境の急激な変化、人間関係のストレス、激しい労度など神経細胞を刺激し、病状を悪化させる可能性のあるものは極力避けた方がよい。
  • 続発性線維筋痛症は先行する原疾患のコントロール及び、他種の自己免疫性疾患の治療と同様の治療方法が望まれる。ただし自己免疫性疾患が治癒又は寛解しても痛みが継続する場合もあり、必ずしも原疾患が原因とは限らない(例えば事故の外傷が完治したり、膠原病の数値が安定しても、痛みが継続する場合がしばしばある。ただしきっかけとなった病気を治すことで痛みが弱まる可能性は高い)。
  • 現在受け入れ可能なリウマチ科心療内科内科精神科、又はFMSの診断可能な専門医と連携して治療することが必要である。しかし手術や外傷、膠原病、激痛を伴う多発性硬化症、脳梗塞などの脳血管障害、精神的ストレスなどあらゆる痛みが引き金となる事を考慮した場合、全ての科がFMSや神経障害性疼痛、二次的慢性疼痛のケアついてある程度の知識を持つ事が望ましい。又整形外科、リウマチ科などの医療側の取るべき立場として、赤沈、CRPなどに異常所見がなく他覚所見に乏しいからという理由で心療内科、あるいは精神科に安易なコンサルテーションを行うことは慎むべきである。現在日本では専門の科を設けるか、それぞれの各科がケアしていくか方針は決まっていない。
  • 2011年のリュウマチ学会においてメルスモン製薬のメルスモン注射(プラセンタ注射薬)が45%の患者で効果が出たとの発表があり、プラセンタ注射の経穴注射が副作用がなく有効との発表があった。

統計[編集]

  • 日本では2007年時点で厚生労働省の調査から、有病率は人口の約1.7%、患者数は200万人程度と推定されている。全体の75%以上が女性で特に20-60歳中高年の発生率が高いと言われている。患者の内約5%が小児との調査結果もある。関節リウマチ患者との合併率は15.8%である。
  • 日本では一般医の25~30%しかこの病名を知らず、患者の9割以上が病名すら知らないとの調査もある。医師の間でもこの病気の知名度が低いことから、患者がこの病名を教えてくれる医者に会うまでに平均6~8軒の病院を回ってしまう。ドクターショッピングを行う代表的な疾患と言われる。
  • アメリカの総人口の内FMS患者は2%~4%最大400万人以上と推測され、女性で3.4%、男性は0.5%、リウマチ科に通う患者のうち20~30%がこの病気であるという統計がある。又適切な専門医に出会うまで平均5年を要する。
  • アメリカでは個人と社会がFMSにかけるコストは莫大で、患者が一ヶ月にかける費用は保険を100ドル~1000ドル上回る。又毎年国家の総生産力の1%~2%の損失を出している。
  • CFS(慢性疲労症候群)では日本国内においての経済的損失は、年間約1.2兆円と想定されているが、それを参考とした場合線維筋痛症患者における経済的損失は、年間約12兆円となる(単純計算による)
  • 2010年現在製薬会社及び医療関係では、線維筋痛症候群の世界的な市場性は400億円以上、関連する神経障害性疼痛患者は2200万人以上と見られており、治療法が確立すれば10年以内に2000億円以上の利益があると見込まれている。また治療薬のFDAへの申請承認によりその製薬会社の株価は上昇する傾向にある。

問題点[編集]

  1. 原因が不明であり治療法が確立されていない。日本では病名も知られていないのが実状である。既に欧米諸国では病院と製薬会社の連携の下に原因の解明と治療薬の開発が進められている。また米FMS協会はファイザーやイーライリーなどの大手製薬会社の資金援助を受け提携している。
  2. 日本の学会においては分類法が未だ論争中であるため病名の認知が遅れている。又どの科が受け入れるかも決まっていない。その為医療難民が続出している。
  3. 日本の医療従事者には器質的な問題と捉える者は少なく、感情や家庭環境、対人関係など心因性で患者本人の責任と切り捨てられる事が多い。また精神疾患と見なされる場合も多い。
  4. 医者の間で線維筋痛症の知名度が低いことから、患者が線維筋痛症という病名を教えてくれる医者に会い、適切な治療を受けるまでに長期間を経てしまう。その間に病状が悪化したり、検査料、投薬料、入院料などの医療費がかさんでしまう。
  5. 仮病や心気症的な振る舞い(注意をひいている)とされ精神科にまわされることが多く、診察を拒否する医師さえいるので、患者は診断を受けるために長期の時間苦しむことになり、病気を難治化・長期化してしまっている。
  6. 線維筋痛症は日本において社会保険診療報酬制度に入っていないため、保険適用外となっており、医者が随伴症状で保険を適用している。厚生労働省において「線維筋痛症特別研究班」が設置されており、現在全国の患者数の調査を進めている。欧米諸国やアジア先進諸国では生活機能障害等の援助が実施されているにもかかわらず、日本での行政対応は遅れている。
  7. 特定疾患の認定は通常2万人以下である事が多く、200万人のFMS患者への認定は難しいと思われる。又重症患者のステージの線引きも難しい為、保険病名適用が待たれる。
  8. 社会的認知度が低く、痛みを客観視する方法がなく、検査しても異常がないことから多くの患者は「詐病」「怠け病」とみなされ精神的苦痛が大きい。
  9. 重度の患者は寝たきりとなるため、働けず収入を得られず経済的に困窮する。多くの患者のQOL(生活の質)やADL(日常生活活動)が著しく下がる。一説では患者のQOLはRA(リウマチ)より低い。この病気が、就職、勉学、結婚、妊娠、出産、家庭、友人関係、などの大きな障害となっている。
  10. 身体障害者福祉法障害者自立支援法による介護や援助を得られない。
  11. 小児の患者も見つかっており、小児科医の認知が必要である。
  12. 「ペインビジョン(PainVision)」などの電流知覚閾値検査装置で、これまで医師に伝えることが難しかった痛みの度合いが、客観的に数値化・視覚化できるようになる可能性がある。それによって患者が感じる痛みの量を患者と医師が共有したり、患者の心理的負担が軽くなる事などが期待される。しかし、この装置を置いている病院はまだ少なく、その他の病院ではフェイススケール等に頼っている。
  13. 治療を唄っている一部の名医気取りの歯科もある。症状が緩和する患者も存在するが、歯列矯正や歯を削ったりして噛み合わせや顎の位置を大きく変える治療方法で、これらの治療が合わなかった患者にとっては元の状態に戻す事ができない侵害性が強い治療のため治療を受ける場合は十分な注意が必要である。

関連項目[編集]

神経障害性疼痛[編集]

神経因性疼痛ともいう。ケガや手術後に起き、いつまでも消えない痛み。不快感、しびれ、灼熱感、刺されるような痛み(穿痛感)、熱感、冷感、腫れ等の様々な異常感覚を伴う。世界で2200万人以上の患者がいると言われる。ケガの他神経のウイルス感染、糖尿病による末梢神経の損傷、ガンの手術による神経の損傷、ガンの化学療法、栄養不足による神経の損害などによっても神経障害性疼痛が起こる。FMSを含むか含まれるか、または関連するかは論争中。神経障害性疼痛はオピオイド系が効きづらく厄介といわれる。神経障害性疼痛とは末梢神経や中枢神経が障害を受けて発生する痛みで、例えば脊椎へ癌が転移して脊髄を障害したり膵臓癌などが内臓神経へ直接入り込んだりして起こる痛みである。現状では抗けいれん剤や抗うつ剤など神経の伝達を抑えるような薬で対応するが、あまり効果的ではない。カンナビノイド系は多発性硬化症の疼痛に効果があることが分かっており、神経障害性疼痛に効果があるのではないかと期待されている。

  • 外傷によるものの例 - 複合性局所疼痛症候群 (CRPS)・腰椎手術後疼痛・開胸手術後疼痛・幻肢痛断端痛・腕神経引き抜き損傷・脊髄損傷後疼痛。
  • 病気によるものの例 - 帯状疱疹後神経痛・中枢性卒中後痛・多発性硬化症疼痛・糖尿病性神経障害性疼痛。アロディニア(本来なら痛みを伴わない軽い接触や温度刺激で痛みを感じる事)。痛覚過敏(本来なら軽い痛みしか起きない程度の刺激で強い痛みを感じること)。知覚過敏(刺激に対して異常に敏感になること。アロディニアと痛覚過敏の総称)。知覚異常(本来なら感じないはずの異常な感覚。触っただけで燃える様に熱くなるなど)。

2009年4月20日九州大学大学院薬学研究院、井上和秀教授の研究グループより、慢性疼痛の分子レベルでのメカニズムが米国科学紀要電子版に発表され世界から注目された。サイトカインの一種であるインターフェロンγの増加によって脊髄ミクログリアATP受容体のP2X2・3・4、P2X7受容体が過剰発現しBDNFを放出する事、インターフェロンgにおいてはP2Y12受容体が、神経障害性疼痛に深い関わりがある事を発表し世界中の注目を集めた。また同グループはATP受容体以外にも、ミクログリアに出現する様々な分子、MCP-1受容体CCR2、fractalkine受容体CX3CR1、カンナビノイドCB2受容体、MHCclassII,自然免疫を司っているTLR,細胞内シグナリング分子のMAPKファミリーのERKやp38の関与と相互作用を指摘した。分子標的レベルでの神経障害性疼痛の全容解明と、慢性疼痛治療薬開発への非常に有望なターゲットと期待されている。

脚注[編集]

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  1. ^ Fibromyalgia Prevalence, Somatic Symptom Reporting, and the Dimensionality of Polysymptomatic Distress: Results From a Survey of the General Population. Wolfe F. et al. Arthritis Care and Research; Published Online: February 19, 2013 (DOI: 10.1002/acr.21931).
  2. ^ 戸田克広: 線維筋痛症がわかる本. 主婦の友社, 東京, 2010.
  3. ^ Caro X, et al. Evidence of abnormal epidermal nerve fiber density in fibromyalgia: clinical and immunologic implications. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/art.38662/abstract
  4. ^ [1]
  5. ^ 大学通信 大学プレスセンター. “大学プレスセンター - 「小児線維筋痛症」が、コエンザイムQ10の欠乏で起こることを発見――東京工科大学 -”. 2013年7月16日閲覧。
  6. ^ エビデンスに基づく薬物治療(海外の事例を含む). 日本線維筋痛症学会編, 線維筋痛症診療ガイドライン2011. 日本医事新報, 東京, 2011; 93-105.
  7. ^ JAMA. 2009 Jan 14;301(2):198-209
  8. ^ 日本医事新報 No.4457, 26
  9. ^ Arthritis Rheum. 52 (8): 2495–505.

外部リンク[編集]

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参考文献及び記事

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