血液学

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血液学(けつえきがく、英語: hematology)とは、人体の血液細胞白血球赤血球血小板)を対象とする内科学の一分野である。

生理[編集]

血液細胞(白血球・赤血球・血小板)は胸骨、骨盤等に多く存在する造血幹細胞より成熟・分化する。

疾患一覧[編集]

赤血球系[編集]

白血球・リンパ球系[編集]

血小板[編集]

  • ベルナール・スーリエ症候群Bernard-Soulier症候群Bernard-Soulier syndromeBSS
    ベルナール・スーリエ症候群は、血小板粘着因子が先天的に欠損した症候群。
    • 原因
      血小板が損傷組織に粘着するのに必要なGPIb/IX複合体と言う接着因子が先天的に欠損している事。
    • 病態
      接着因子の先天欠損から血小板の粘着能が低下する。
    • 症状
      血小板による一次止血が遅れて、出血時間が延長する。出血様式は皮膚粘膜出血が中心。
    • 検査
      • 血液検査
        造血能の障害はないので血小板の数自体は減らない。
      • ガラスビーズ管試験
        ガラスビーズ管試験では、粘着能の低下から多くの血小板が検出される。
    • 歴史
      1948年にベルナールスーリエによって報告された。
  • 血小板無力症(グランツマンの血小板無力症、グランツマン病)
    血小板無力症は、血小板凝集因子が先天的に欠損した病気。
    • 原因
      血小板同士が凝集するのに必要なGPIIb/IIIa複合体と言う接着因子が先天的に欠損していること。
    • 病態
      凝集因子の先天欠損から血小板の凝集能が低下する。
    • 症状
      血小板による一次止血が遅れて、出血時間が延長する。出血様式は皮膚粘膜出血が中心。
    • 検査
      • 血液検査
        造血能の障害はないので血小板の数自体は減らない。
      • ガラスビーズ管試験
        ガラスビーズ管試験では、粘着能に異状はないので血小板の減少が見られる。
    • 歴史
      1918年にグランツマンによって報告された。

凝固・線溶系[編集]

  • 血友病
  • フォン・ヴィレブランド病
    フォン・ヴィレブランド病は、フォン・ヴィレブランド因子が先天的に欠損した病気。
    • 原因
      血小板が損傷組織に粘着するのに必要なフォン・ヴィレブランド因子と言う接着因子が先天的に欠損していること。
    • 病態
      接着因子の先天欠損から血小板の粘着能が低下する。
      フォン・ヴィレブランド因子は第VIII因子の安定化にも寄与しているので、フォン・ヴィレブランド因子が欠損している本症では第VIII因子が不安定化している。
    • 症状
      血小板による一次止血が遅れて、出血時間が延長する。出血様式は皮膚粘膜出血が中心。
      第VIII因子は内因系凝固因子なので、活性化部分トロンボプラスチン時間が延長する。
    • 検査
      • 血液検査
        造血能の障害はないので血小板の数自体は減らない。
      • ガラスビーズ管試験
        ガラスビーズ管試験では、粘着能の低下から多くの血小板が検出される。
  • 播種性血管内凝固症候群 (DIC)
  • 特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) (ICD-10: D69.3)
    • 治療
      大量免疫グロブリン静注を行う。大量免疫グロブリン静注とは、大量の免疫グロブリンを静脈内注射すること。
  • 血栓性血小板減少性紫斑病
  • 溶血性尿毒症症候群 (HUS)
    • 病態
      腸管出血性大腸菌感染症に続発する。
    • 統計
      乳幼児や老人に多い。
    • 検査
      末梢血塗沫標本では、ボロボロになった破砕赤血球が認められる。
  • Factor V Leiden
  • Protein C 欠損症
  • Protein S 欠損症

検査[編集]

血清生化学検査[編集]

  • 血清鉄
    血清鉄は血清中に存在する鉄の濃度。トランスフェリンと結合している。
    • 正常値 : 80〜160μg/dl
  • 貯蔵鉄
    貯蔵鉄は血清以外に貯蔵されている鉄。
    • 正常値 : 1g
  • フェリチン
    フェリチンは貯蔵鉄と結合しているタンパク質
    • 意義
      本来血清には存在しない貯蔵鉄だが、フェリチンが水溶性の為に貯蔵鉄の量に比例して血清フェリチンが測定できる。従って、血清フェリチン濃度が貯蔵鉄を測る指標となる。
      脂肪肝においては血清フェリチンの増加がしばしばみられ、脂肪肝のなかでも非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) を含んだ非アルコール性脂肪性肝疾患では、肝組織内の鉄の過剰が肝障害の増悪因子と考えられている[1]
    • 正常値 : 20〜120
  • 総鉄結合能(TIBC)
    総鉄結合能は、鉄が結合できる能力の全量。
    • 意義
      トランスフェリンが全部でどのくらいの鉄を運べるかを表している。
    • 正常値 : 250〜400μg/dl
  • 不飽和鉄結合能(UIBC)
    不飽和鉄結合能は、不飽和鉄を結合する能力。
    • 意義
      トランスフェリンがあとどれだけの(不飽和)鉄と結合する能力が残っているかを表す。

鉄動態検査[編集]

鉄動態検査は鉄動態(フィロカイネティックス)を調べる検査。放射線標識した59Feを用いて検査する。

  • 血漿鉄消失時間(PIDT、)
    血漿鉄消失時間(けっしょうてつしょうしつじかん)は、血漿から鉄が消失する時間。
    • 意義
      鉄がどれだけの速さで消費されるかを表す。
    • 方法
      59Feを静脈注射して、放射能がになるまでの時間を計る。
    • 正常値 : 60〜120分
    • 判定
血漿鉄消失時間[分] 意味 判定
120 〜 000 鉄過剰、又は鉄の利用障害 再生不良性貧血、等
060 〜 120 正常
000060 鉄不足、又は利用亢進 溶血性貧血鉄欠乏性貧血鉄芽球性貧血、等
  • 赤血球鉄利用率(%RCU)
    赤血球鉄利用率は、投与した鉄の内何%が赤血球産生に使われたかを表す率。
    • 正常値 : 80〜100%
    • 判定
赤血球鉄利用率[%] 判定
80 〜 00 正常、鉄欠乏性貧血、等
00 〜 80 鉄芽球性貧血溶血性貧血、等

凝固機能検査[編集]

  • ガラスビーズ管試験
    ガラスビーズ管試験は、ガラスのビーズを詰めた管に上から血小板の入った血漿を流しいれて、下から出てきた血小板の量を測る検査。
    • 意義
      血小板は正常ではガラスに粘着して出てくる量が減るので、血小板の粘着能を測ることが出来る。
  • プロトロンビン時間(PT)
    プロトロンビン時間は、外因系凝固因子を測る検査。
  • 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)[2]
    活性化部分トロンボプラスチン時間は、内因系凝固因子を測る検査。

関連分野[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 船津和夫、山下毅、本間優 ほか、脂肪肝における血中ヘモグロビン値の検討、人間ドック (Ningen Dock) Vol.20 (2005) No.1 p.32-37, doi:10.11320/ningendock2005.20.32
  2. ^ APTTとは? - 金沢大学 血液内科呼吸器内科

関連項目[編集]