高齢運転者標識
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高齢運転者標識(こうれいうんてんしゃひょうしき)とは、道路交通法に基づく標識の一つ。水滴もしくは葉っぱのように見える形状をしており、左が橙色、右が黄色に塗り分けられ、初心者マーク(若葉マーク)に比して紅葉のように見えることから、一般的には紅葉マーク(もみじマーク)やシルバーマーク、高齢者マークの通称で呼ばれる。
75歳以上のものが高齢運転者標識を付けないで普通自動車を運転することは、道路交通法によって禁じられており[1]、違反すると高齢運転者標識表示義務違反に問われる。また、70歳以上75歳未満の者は、「加齢に伴つて生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがある」場合には、この標識をつけて運転するように努めなければならないと、道路交通法は定めている[2]。表示する際には、「地上〇・四メートル以上一・二メートル以下の位置に前方又は後方から見やすいように表示するものとする。」と道路交通法は定めている[3]。
なお、周囲の運転者はこの標識を掲示した車両を保護する義務を有し、幅寄せ・割り込みなどの行為を行ってはならないと定められており[4]、違反者は初心運転者等保護義務違反に問われる。
市販される高齢運転者標識には、裏面が磁石になっていて車体に貼り付けることができる「マグネットタイプ」と、車内から窓ガラス等に貼り付けることができる「吸盤タイプ」の2種類が主に出回っている。
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[編集] 関連法規の詳細
[編集] 義務規定
「七十五歳以上のものが高齢運転者標識を付けないで普通自動車を運転すること」は、道路交通法第七十一条の五第二項により禁じられており、違反すると高齢運転者標識表示義務違反[5]に問われる。この禁止規定に違反する罪を犯した者は、二万円以下の罰金又は科料に処せられる可能性があり[6]、過失によりこの禁止規定に違反する罪を犯した者も同様に、二万円以下の罰金又は科料に処せられる可能性がある[7]。ただし、酒酔い・酒気帯び運転等でない場合は、高齢運転者標識表示義務違反は、交通反則通告制度の対象であり、検挙された違反者には4,000円[8]の反則金の納付が通告される。反則金の納付は任意であるが、納付した場合は刑事訴追を受けて前述の罰金・科料に処せられることは無い[9]。また、違反者には違反点数として1点が付される[10]。
この義務規定は、普通自動車について一律に適用されることになっているので、たとえタクシーの営業運転の場合であっても、運転者が75歳以上であれば標識を付けずに運転することは許されない。一方、大型バスや中型自動車以上のダンプ・トラックについては、この標識を付けずに運転しても法的な問題はない。
[編集] 努力義務規定
道路交通法71条の5第3項は、「加齢に伴つて生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれ」のある70歳以上の者は、高齢運転者標識を付けて普通自動車を運転するように努めなければならないとする。これはいわゆる努力義務で、違反者に対する罰則はない。
[編集] 保護義務規定
高齢運転者標識を表示すべき者が高齢運転者標識を付けて車を運転している場合、周囲の車の運転者はそれを保護する義務を負っている。道路交通法第七十一条第五号の四は、表示車に対してやむを得ない場合を除き、幅寄せや割り込みをしてはならないと定めている。同条は、初心運転者標識、身体障害者標識、聴覚障害者標識の表示車に対する保護義務も同様に規定しており、この規定に対する違反者は一律に、初心運転者等保護義務違反[11]に問われることになる。 (詳細は割り込み (運転)を参照。)
[編集] 経過
この標識はまず、1997年(平成9年)の道路交通法改正によって、75歳以上を対象に努力義務規程として導入された。
2002年(平成14年)には、努力義務の対象年齢を75歳以上から70歳以上に引き下げる改正が行われた。
その後、表示義務化を検討していた警察庁交通局は、2006年(平成18年)12月、表示義務化を含む「道路交通法改正試案」を公表し、パブリックコメントを募集した。2007年(平成19年)3月2日、表示義務化を含む、道路交通法の一部を改正する法律案[2]が 閣議決定[3]され、第166回国会に提出された。
法案は参議院先議で審査された。付託を受けた参議院内閣委員会においては、自らが高齢者であるとの表示を強制することによって、事件に巻き込まれる等する危険性の増えるリスクが考えられる一方、現実的な有効性は疑わしいとの指摘がなされたが、より重大な問題と思われる飲酒運転や、ひき逃げ等に関する改正が同法案に含まれているためもあってか議論が深まることはなかった。同委員会は2007年(平成19年)4月17日に全会一致をもって、同法案を原案通り可決すべきものと決定した。ただし、「表示義務については、本法施行後の事故実態等を分析し、関係者の意見を十分聴取しつつその在り方に検討を加え、必要に応じ見直しを行うこと。」との文言を含む附帯決議をした。翌2007年(平成19年)4月18日には本会議で採決が行なわれ、賛成183反対4で同法案は可決[4]され、衆議院へ送付された。反対票を投じたのは、社会民主党・護憲連合の4名であった。
送付を受けた衆議院で、法案は衆議院内閣委員会に付託されたが、参議院に引き続き、飲酒運転問題や認知症対策などが質疑の中心となり、75歳以上の運転者全員に高齢運転者標識の表示を義務化することについての質疑が行われることは、ほぼ皆無であった。しかしながら、同委員会は2007年(平成19年)6月13日に全会一致をもって、同法案を原案のとおり可決すべきものと決定した。翌2007年(平成19年)6月14日には本会議で採決が行われ、起立多数で同法案は可決成立した。
法案の成立をうけて2007年(平成19年)6月20日、天皇は、道路交通法の一部を改正する法律(平成十九年六月二十日法律第九十号)を公布した。
2008年(平成20年)4月25日、天皇は道路交通法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(平成二十年四月二十五日政令第百四十八号)を公布し、2008年(平成20年)6月1日から表示が義務化されることが決定した。また、道路交通法施行令の一部を改正する政令(平成二十年四月二十五日政令第百四十九号)も同時に公布され、違反の名称や反則金の額、違反点数が決定した。
ところが、義務化の施行が目前となった2008年(平成20年)5月8日になって、突如、民主党の泉健太衆議院議員が衆議院内閣委員会において高齢運転者標識の義務化を取り上げ、法案の審議時とはうって変わって、初めて実質的な審議が行われた[12]。また、2008年(平成20年)5月20日には、市川一朗参議院議員[13]が自民党総務会で「後期高齢者医療問題で紛糾しているときに高齢者マークの義務化をすれば大変な問題になる。そもそも高齢者に『枯れ葉マーク』とは失礼ではないか」と、本法施行を批判したことが報じられた[14]。
このような動きのある中、2008年(平成20年)5月20日警察庁は6月1日施行分の道路交通法改正に対する交通警察としての運営方針について、警察庁交通局長名の通達を発した[15]。この通達の中に、留意事項として、「高齢運転者標識については、違反の取締りについては、1年の間、指導にとどめること。」との指示が明記されている。この通達を受けて現場の警察官がどのような行動をとるのか、例えばあくまでも指導に従わない者がいた場合にどうするか、は未知数である。衆参両院において国会議員の圧倒的多数の賛成を得て導入された義務規定に交通警察の現場がどう対応するのかについては、不透明なままだと言える。
[編集] 備考
俗称として「落ち葉マーク」や「枯れ葉マーク」と呼ばれることもあり、国会議員までもが「枯れ葉マーク」という語を使って高齢運転者標識の表示義務化を批判している[14]。
[編集] 脚注
- ^ 道路交通法第七十一条の五第二項。罰則は道路交通法第百二十一条第一項第九号の三および同条第二項。
- ^ 道路交通法第七十一条の五第三項。
- ^ 道路交通法施行規則第九条の六。
- ^ 道路交通法第七十一条第五号の四。罰則は道路交通法第百二十条第一項第九号。
- ^ 道路交通法施行令は別表第二の備考の二の112で、道路交通法第七十一条の五第二項の規定に違反する行為を、「高齢運転者標識表示義務違反」と定義している。
- ^ 道路交通法第百二十一条第一項第九号。
- ^ 道路交通法第百二十一条第二項。
- ^ 道路交通法施行令別表第五の十五の項。
- ^ ただし反則金を納付しなくても、必ずしも刑事訴追を受けるとは限らない。→起訴便宜主義を参照
- ^ 道路交通法施行令別表第二の一。
- ^ 道路交通法施行令は別表第二の備考の二の106で、道路交通法第七十一条第五号の四の規定に違反する行為を、「初心運転者等保護義務違反」と定義している。
- ^ 第169回国会衆議院内閣委員会議録第13号 2008年(平成20年)5月8日
- ^ 2007年(平成19年)4月18日参議院本会議において市川議員は義務化を含む法案に賛成票を投じていた。投票結果 案件名:日程第2 道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出)。
- ^ a b 「もみじマーク」義務化に与党からも異論 6月から改正道交法施行
- ^ 警察庁丙交企発第59号、丙交指発第23号、丙規発第15号、丙運発第14号 道路交通法の一部を改正する法律の一部の施行等に伴う交通警察の運営について[1]

