筆算

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筆算(ひっさん)とは、紙に書いて行う計算のことである。他の計算方法には、暗算珠算そろばん)、電卓計算などがある。

通常、筆算では、一つの計算を人間が扱いやすいような簡単な計算に分解して行う。これによって、そのままでは難しい複雑な計算も行うことができる。もっとも、分解して計算すること自体は紙を必要とせず、暗算でも行うことができる。しかしながら、分解して行う計算では途中の計算結果を覚えておかなくてはならず、ところが、人間の記憶力は限られているため、筆算のように紙に書いて計算することが重要になる。筆算は、限られた記憶容量しかない人間が複雑な計算を行うための有用な技術である。

筆算の方法[編集]

筆算では、分解して計算を行うが、この場合、どのように分解するか、また、紙に計算過程を書く場合の書き方が重要になる。そのため筆算のやり方(便法)が古くから考案されている。一般的には、主に小学校の算数で習得するような、10進数位取りを根拠とする四則演算(加法、減法、乗法、除法)がよく知られている。

原理的には、位取りと繰り上がり・繰り下がりの仕方さえ覚えれば、アルゴリズムとしては基本的な一桁ないし二桁同士の加減乗除の各演算をするだけで、大きな桁の計算でも計算が可能であるようになっている。具体的な手順は、位取りに気をつけて各位の演算を行い、その結果を桁が縦にそろうように羅列・配置しておき、乗除算においては順次、加減算については順次あるいは最後に一気に、それらを縦に加減して答えを出すといった具合である。

このように方法が単純であるので、計算能力の高低にあまり関係なく実質何桁でも計算できるが、桁数あるいは口数が増えれば位取りや数の繰り上げ・繰り下がりを考慮する手間が増えるため、やはり少々面倒になるのは否めない。

筆算による乗算[編集]

 (a)   1 3 8  
  ×           8   
  1 13 06 4  
   
(3)

(2)

(1)
 

筆算による乗算は、乗数が1桁の場合、右の図(a)のようになる。138×8=1104を例に解説する。

  1. 被乗数を上の段、乗数を下の段に書き、被乗数の1の位と乗数をかける(8×8=64)。得た値の1の位を積の1の位の場所に書き、10の位は小書きする。[1]
  2. 被乗数の10の位と乗数をかけ、得た値に 1. の10の位の値を足す(3×8+6=30)。1. と同様、得た値の1の位を積の10の位の場所に書き、100の位は小書きする。
  3. 100の位についても、同様の操作を繰り返す(1×8+3=11)。被乗数の1000の位はないので、得た値をそのまま積の100の位以降に書く。
 (b)     5 9 2  
  ×           6   9   
    5 3 2 8  …(1) 
   3   5   5   2       …(2) 
  4 0 8 4 8  …(3) 

乗数が2桁以上の場合は、右の図(b)のようになる。592×69=40848を例に解説する。

  1. 被乗数と乗数の1の位をかけ(592×9=5328)、その結果を乗数の下の列に書く。
  2. 被乗数と乗数の10の位の積(592×6=3552)は、結果を1桁ずらして10の位の位置から書く。
  3. 1. 2. で求めた値を加え(5328+35520=40848)、結果が求める積となる。

図(b)のような筆算を長乗法と呼ぶ。 これらのように乗数の下の位から順にかけ算することで解を求める方法を尾乗法と呼ぶ。筆算では尾乗法が一般的である。 対して、乗数の上の位から求める方法を頭乗法と呼び、こちらは暗算の達人などが暗算時に用いる。

  1. ^ このように、得た値が二桁になったときに上の位へ数を加えることを繰り上げると言う。

筆算による除算[編集]

                 3   4   6   
 62 2 1 5 0 8  
     1   8   6         …(1)
      2 9 0    
       2   4   8       …(2)
        4 2 8  
         3   7   2  …(3)
          5 6  

乗算と減算の組み合わせで、除算を行うことができる。筆算による除算を、21508÷62=346余り56で解説する。

  1. 大きな位から解を求める。62×□<2、62×□<21となる自然数□はないので、10000および1000の位には何も立たない。62×□が215を超えないもっとも大きな整数(=3)が100の位に立つ。215から62×3を引く(215-62×3=29)。
  2. 被除数から1桁下ろしてくる。62×□が290を超えない最大の整数(=4)が10の位に立つ。290から62×4を引く(290-62×4=42)。
  3. 2. と同様に、被除数から1桁下ろし、62×□が428を超えない最大の整数(=6)が1の位に立つ。428から62×6を引く(428-62×6=56)。
  4. 被除数の上の段に書かれた値が商(346)、一番下の段に書かれた値が余り(56)となる。

このような筆算を長除法と呼ぶ。

筆算による開平[編集]

上記の加算、減算、乗算の組み合わせで、開平平方根の計算)ができる。 筆算による開平を\sqrt{300} を例に解説する。

1 7. 3 2
 3   00.  00   00 … (1)   1
 1         1    … (2)
2 00 … (3) 2 7 … (4)
 1   89            7    … (5)
11 00 … (6) 3 4 3 … (7)
 10   29              3    … (8)
71 00 … (9) 3 4 6 2 … (10)
2 … (11)
  1. 被開平数 (= 300) を小数点から前後に2桁ずつ区切って書く。
  2. □ × □ が最初の区切りの数 (= 3) を超えないような数 1 (1×1=1) を重ねて書く。(答の最初の桁の値)
  3. 2. で求めた積 1 を 3 から引き(3-1=2)、次の 2 桁(→00)を降ろす。
  4. 2. で書いた数を加算 (1+1=2) する。
  5. 4. で書いた値 2 について、2□ × □ が 3. の値 (= 200) を超えないような数 7 (27×7=189) を重ねて書く。(答の2番目の桁の値)
  6. 5. で求めた積 189 を 200 から引き(200-189=11)、次の 2 桁(→00)を降ろす。
  7. 5. で書いた数を加算 (27+7=34) する。
  8. 7. で書いた値 34 について、34□ × □ が 6. の値 (= 1100) を超えないような数 3 (343×3=1029) を重ねて書く。(答の3番目の桁の値)
  9. 8. で求めた積 1029 を 1100 から引き(1100-1029=71)、次の 2 桁(→00)を降ろす。
  10. 8. で書いた数を加算 (343+3=346) する。
  11. 10. で書いた値 346 について、346□ × □ が 9. の値 (= 7100) を超えないような数 2 (3462×2=6924) を重ねて書く。(答の4番目の桁の値)
  12. 以下同様。