眼窩前頭皮質
| 脳: 眼窩前頭皮質 | |
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左前頭葉の眼窩面。オレンジ色の所が眼窩回。
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| 名称 | |
| 日本語 | 眼窩前頭皮質 |
| 英語 | Orbitofrontal cortex |
| 略号 | OFC |
| 関連情報 | |
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眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ、英: Orbitofrontal cortex, OFC)は、ヒトの脳にある連合皮質の領域の一部で、意思決定などの認知処理に関わっているとされている。眼窩前頭皮質という名称は、この領域が前頭葉の中でも、眼窩の上にあることから付けられた。この領域は、視床の背内側部にある、内側の巨大細胞核から投射を受ける領域として定義されている[1]。眼窩前頭皮質は非常に個体差が大きいことが、ヒトおよび、非ヒト霊長類 (non-human primate) の研究において確かめられている。この領域が情動や報酬系において役割を持っていることから、眼窩前頭皮質を大脳辺縁系の一部とする研究者も存在する。
目次 |
ヒトにおける眼窩前頭皮質の役割 [編集]
眼窩前頭皮質はヒトの脳の中でも最も理解が進んでいない領域である。しかし、この領域は、感覚情報の統合、強化子 (reinforcer) の感情価 (affective value) の表現、意思決定や期待に関連しているという考えが提唱されている[2]。特に、ヒトの眼窩前頭皮質は報酬と罰に対する感受性に関連した行動計画を制御していると考えられている[3]。このことはヒトや非ヒト霊長類、げっ歯類の研究から支持されている。この領域に関するヒトを対象とした研究は、健常者に対する脳機能イメージング研究と、眼窩前頭皮質の一部に損傷を負った患者の神経心理学的研究に集中している。
健常者に対する脳機能イメージング研究 [編集]
ヒトの眼窩前頭皮質の活動を画像化するために機能的核磁気共鳴画像法 (fMRI) を用いることは、この領域が副鼻腔に近いことにより困難なものとなる。副鼻腔には空気が詰まっており、高磁場でのエコープラナー撮像法 (EPI) の使用は信号の欠損や、画像の歪み、磁化率アーティファクトなどが発生しやすくなるためである。そのため、眼窩前頭皮質から質のよい信号を得るには特別な注意が必要とされ、様々な手法が用いられている。(例えば、高静磁場における自動シミング[4]など)
発表された脳機能イメージング研究によると、報酬価値、予測された報酬価値、さらには食べ物や他の強化子に対する主観的な喜びの度合いまでもが、眼窩前頭皮質で表現されている。大規模な脳機能イメージング研究のメタアナリシスにより、眼窩前頭皮質の内側部は強化子の報酬価値のモニタリング、学習、記憶に関係し、外側部は罰の評価に関係することで、現在行っている行動に変化を引き起こすことが示されている[5]。 同様に、前後方向に強化子の複雑性、抽象性が表現されていて、味覚などの複雑性の低い強化子よりも、金銭の収支のようなより複雑で抽象的な強化子に対して、眼窩前頭皮質のより前方が活動する。ヒトの眼窩前頭皮質では主観的な快楽性の経験を仲介する役割を持っているという説も存在する [2].
患者に対する神経心理学的研究 [編集]
ロールズ (Rolls) らは、逆転学習 (reversal learning) と消去 (extinction) の2種類の視覚弁別課題 (visual discrimination test)[6]を行った。まず、逆転学習では実験参加者に A と B の2つの写真を見せ、写真 A が呈示された時にボタンを押すと報酬を得ることが出来、写真 B が呈示されている時にボタンを押すと罰が与えられることを学ばせる。この課題では、このルールの学習が終わった後にルールが入れ替えられる。つまり、写真 B が呈示されている時にボタンを押せば正解となるようにする。ほとんどの健常者は即座にルールの逆転に気づくことが出来るが、眼窩前頭皮質に障害を負った患者は、罰を与えられるにもかかわらず、一度強化された元々のパターンに反応し続けてしまう。ロールズ (Rolls) らは、この行動パターンは被験者らがルールの逆転を理解したと報告している点で、特に不可解であると述べている。
2つめの課題として消去に関する課題を行った。この課題では、もう一度実験参加者に写真 B ではなく写真 A に対してボタンを押すように学習させる。しかし、今回はルールを逆転させるかわりに、ルールをまったく変えてしまう。今回はどちらの写真に対してボタンを押しても罰が与えられるようにしてしまうのだ。この課題に対する正しい選択はボタンをまったく押さないことである。しかし、眼窩前頭皮質の機能障害をもった患者は、それを行えば罰せられるにもかかわらず、ボタンを押したいという誘惑に逆らえない。
アイオワ・ギャンブリング課題 (Iowa gambling task) と呼ばれる、現実世界の意思決定を模倣した認知や情動の研究に広く使われる課題がある[3]。実験参加者にはコンピュータ画面に4つの仮想的なカードのデッキが呈示される。彼らは毎回カードを選び、その裏に書かれた分のゲーム通貨を得る、または失う。この課題の目的は、出来るだけ多くのお金を得ることであり、参加者には意識的に考えながらではなく"直感"に従ってカードを選んでもらう。デッキの内の2つは"悪いデッキ"となっていて、長期的に見れば収支はマイナスになる。残りの2つのデッキは"良いデッキ"になっていて、長期的に見れば収支はプラスになる。多くの健常者は約40から50試行後には"良いデッキ"を選び続けるようになる。しかし、眼窩前頭皮質の機能障害を持った患者の場合、その選択が最終的に損であると分かっている場合も存在するにもかかわらず、"悪いデッキ"に保続 (Perseveration) し続ける。同時に行った電気皮膚反応 (galvanic skin response) の計測では、健常者が"悪いデッキ"を選択しようとする際のストレス反応は、たった10試行後という、意識的な"悪いデッキ"の判断が生じるはるか以前から計測される。しかしこの結果とは対照的に、眼窩前頭皮質の機能障害を持った患者では、この差し迫った罰に対する生理的な反応が観測されることはない。この実験を行ったベシャラ (Bechara) らは、このことをソマティック・マーカー仮説 (somatic markers hypothesis) の観点から説明している。アイオワ・ギャンブリング課題は現在、精神医学や神経学などの多くの研究に用いられていて、統合失調症や強迫性障害などの患者や健常者において、この課題を行っている際にどの脳領域が活動するかがfMRIを用いて調べられている。
社会的失言検出課題 (Faux pas test) は誰かが不適切な発言をした際の社会的状況を用いた課題である。参加者が行う課題は、どの発言が不適切なのか?、なぜその発言が不適切なのか?、その社会的失言に対して人々がどのような反応をするか?、そして対照群として、この状況の事実に関する質問に答えることである。元々は自閉症スペクトラムのある人々のために作られたものだった[7]が、この課題は眼窩前頭皮質の機能障害を持ち、物語は完全に理解できるものの社会的に不適切な出来事を判断できなくなった患者に対しても検出力を示す。
眼窩前頭皮質の損傷 [編集]
後天性脳損傷 (ABI : Acquired Brain Injury) による眼窩前頭皮質の損傷は、一般的にある種の脱抑制行動を引き起こす。例えば、過度に悪態をつく、性欲過多、社会的対話の欠如、賭博への衝動、アルコール、煙草、薬物の摂取過多、共感能力の欠如などが起きる。ある種類の前頭側頭型認知症 (frontotemporal dementia) 患者の脱抑制行動は眼窩前頭皮質の変性が原因であるとされている[8]。眼窩前頭皮質に損傷を受けた患者は、衝動的な決断や、経済感覚の欠如などの症状が起きる。
関連項目 [編集]
参考文献 [編集]
- ^ Fuster, J.M. The Prefrontal Cortex, (Raven Press, New York, 1997).
- ^ a b Kringelbach, M. L. (2005) "The orbitofrontal cortex: linking reward to hedonic experience." Nature Reviews Neuroscience 6: 691-702.
- ^ a b Bechara, A.; Damasio, A. R.; Damasio H. & Anderson, S.W. (1994) "Insensitivity to future consequences following damage to human prefrontal cortex". Cognition 50: 7-15.
- ^ J. Wilson, M. Jenkinson, I. E. T. de Araujo, Morten L. Kringelbach, E. T. Rolls, & Peter Jezzard (October 2002). “Fast, fully automated global and local magnetic field optimization for fMRI of the human brain”. NeuroImage 17 (2): 967–976. doi:10.1016/S1053-8119(02)91172-9. PMID 12377170.
- ^ Kringelbach, M. L. and Rolls, E. T. (2004). “The functional neuroanatomy of the human orbitofrontal cortex: evidence from neuroimaging and neuropsychology”. Progress in Neurobiology 72: 341–372. doi:10.1016/j.pneurobio.2004.03.006.
- ^ Rolls, E. T.; Hornak, J.; Wade, D. & McGrath, J. (1994) "Emotion-related learning in patients with social and emotional changes associated with frontal lobe damage." J Neurol Neurosurg Psychiatry 57: 1518-1524.
- ^ Stone, V.E.; Baron-Cohen, S. & Knight, R. T. (1998a) "Frontal Lobe Contributions to Theory of Mind." Journal of Medical Investigation 10: 640-656.
- ^ Snowden, J. S.; Bathgate, D.; Varma, A.; Blackshaw, A.; Gibbons, Z. C. & Neary. D. (2001) "Distinct behavioural profiles in frontotemporal dementia and semantic dementia". J Neurol Neurosurg Psychiatry 70: 323-332.
外部リンク [編集]
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