百鬼夜行シリーズ

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百鬼夜行シリーズ』(ひゃっきやぎょうシリーズ)は、京極夏彦による日本の小説シリーズ講談社より刊行されている。

目次

[編集] 概要

第二次世界大戦後まもない東京を舞台とした推理小説。作中に実体として登場はしないが、個々の作品のタイトルには必ず妖怪の名が冠せられており、その妖怪に関連して起こる様々な奇怪な事件を「京極堂」こと中禅寺秋彦が「憑き物落とし」として解決する様を描く。

作品内では民俗学論理学など広範にわたる様々な視点から、妖怪の成り立ちが説かれ、「憑き物落とし」が「事件の種明かし」になることから、推理小説の枠内で語られることが多いが、中には伝奇小説などとする方が見合う作品も存在する(推理小説的な「トリック」自体に意味がない作品)。また後述のキャラクターが、非常に特徴的であることから、一種のライトノベルとして見る向きもある。[要出典]

謎解き役である中禅寺の通称(屋号)から京極堂シリーズ(きょうごくどうシリーズ)と呼ばれることも多いが、作者自身は「京極堂シリーズ」という名称を好ましく思っておらず、「あのシリーズ」などとぼかして呼称することが多い。

シリーズ第1弾の『姑獲鳥の夏』は、京極夏彦のデビュー作品であり、メフィスト賞創設のきっかけとなった。講談社ノベルスから刊行されたのち、講談社文庫から通常文庫版と分冊文庫版が刊行され、順にハードカバー化もなされている。通常文庫版は1000ページ以上に及ぶことがあり、分厚いことで有名。


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[編集] 主な登場人物

声はテレビアニメ版『魍魎の匣』での声優、演は映画『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』での役者。

[編集] 主要人物

中禅寺 秋彦(ちゅうぜんじ あきひこ)
声 - 平田広明 / 演 - 堤真一
中野で古本屋「京極堂」を営む男。家業は住居部の裏手にある「武蔵晴明神社」の宮司、副業は祈祷師の一種である「憑物落とし(つきものおとし)」の「拝み屋」。店の屋号に因んで「京極堂」と呼ばれる。「この世には不思議なことなど何もない」と言うのが口癖であり、座右の銘。
憑物落としの際には、両胸に五芒星を染め抜いた黒の着流し、黒の足袋に鼻緒だけが赤い黒の下駄と、黒ずくめの格好をする。
榎木津・関口とは旧制高校時代からの腐れ縁。宗教口碑伝承民俗学妖怪等に造詣が深く、知識と理を尊び、根拠のない事は語らない。重度の書痴でもあり、家屋敷から店舗に至るまで本で溢れている。常に和装で、終始不機嫌な仏頂面をしており顔つきは平素から「凶悪」と称される。しかし付き合いの長い者には感情の変化がわかるらしい。また、興味のある本が見つかったと聞くと、大層喜んで足を運ぶのだという。
また、スピンオフ作品『百器徒然袋』シリーズでは榎木津の来訪を察知して思わずどもったり、安易に唆される、人を馬鹿にして遊ぶなど、本編に比べて腰が軽い。『今昔続百鬼-雲』では大笑いしていたこともある。痩身だが甘いもの好きで、干菓子などを好んで食べている。『塗仏の宴』での潤の発言から察するに、下戸である。
個性の強いキャラクターたちのまとめ役的存在であるが、彼本人も相当の変わり者である。古書肆を開業する前は高校教師であった。「好きなだけ本が読める」という理由から、転職を決意。
事件解決に暗躍する役どころながら積極的に干渉する事を好まない。肉体労働を嫌い、本人曰く「十四の時に力仕事をしないと誓った」とのことで、非力であるようだ。
戦時中は内地に配属され、とある研究所の「厭なやつ」と評する男の元で他国の民族に対する宗教的洗脳の研究をしていた。自分の事を語りたがらない彼において、最も語りたくない、厭わしい過去のようである。
下北半島出身。幼少時は恐山の祖父母の下で育った。家族は、後述する妻の千鶴子と、実妹の敦子。飼っている猫の名前は石榴。
榎木津 礼二郎(えのきづ れいじろう)
声 - 森川智之 / 演 - 阿部寛
「薔薇十字探偵社」の私立探偵。中禅寺と関口の旧制高等学校の一期先輩であり、木場の幼馴染。関口と対照的に躁病の気がある。眉目秀麗、頭脳明晰、運動神経もよく喧嘩も強いうえ旧華族の生まれという一見非の打ち所のない人物。だが、本人はあらゆる社会的地位に無頓着で、自分は神であり探偵は神の就くべき天職であると豪語し、中禅寺兄妹以外の全ての人間を「自らの下僕」と標榜し、時として面白いものを子供のように追究する天衣無縫な変人。しかし人の道に外れた者には声を荒げて激怒するなど真っ当な面も持っている。また、『姑獲鳥の夏』・『絡新婦の理』の時には普通の受け答えをこなし、いつもの奇矯な姿を見知っている者からは非常に驚かれた。
一応「探偵」ではあるが、「捜査は下賤の存在が行うもので、神たる自分には必要ない」として全く捜査を行わない。その癖唐突に犯人や探し物の位置などを語って「解決」してしまうため、依頼者含め関係者は全く展開についていけず、混乱することになる。周囲の人間からは「榎木津に依頼をしても被害者が出るだけ」などと評されるが、世間一般での評判は「数々の大事件を解決した名探偵」とのこと。
一企業の長として身を立てた傑物・榎木津幹麿元子爵を父に持つ。このため榎木津自身もやんごとなき身として扱われる事が多いが、当人はそれを非常に迷惑がっている。実際、父も変わった人物で、本人は父の方が変人だと思っている。商売に成功している総一郎という兄がいる。
幹麿に生前分与された財産で神保町に貸ビル「榎木津ビルヂング」を建て、そこを事務所兼住居としていて、実質的な生計はビルのテナント料で立てている。実家から世話役として遣わされた安和寅吉という青年、探偵助手の益田と3人で探偵社を運営している。ただし榎木津本人は、依頼をまともに取り合わない上に支離滅裂な言動で依頼者を混乱させるため、探偵の依頼はほとんど来ない。暇な時は寝ているか、事務所の3人で話しているかのどちらかである。
他人の記憶が見えると言う特殊能力の持ち主。この能力が奇矯さに拍車をかけた原因でもある。得られる情報は視覚に限られており、音や匂いや時系列の関係性、思考や思い入れなどは一切把握出来ない。この能力は子供の頃からあったが、戦争中に照明弾を受け視力を大幅に失って以来、さらに強くなったという。
人の名前を覚えるのが不得手で、覚えようとする努力すらしない。そのため、付き合いの深くない相手を適当な(間違った)名前で呼ぶ癖がある。親交の深い相手でも縮めたり愛称で呼ぶことが多い。京極堂や関口は、彼のことを「榎さん(エノさん)」と呼ぶ。
戦中は海軍将校であり、剃刀と渾名されるほどの名将であったという。だが軍事の合間に新しいゲームを考案しては部下達に散々付き合わせるなど現在と変わらずの天衣無縫振りだったらしい。
好きなものは猫と赤ん坊。苦手なものは水気のない菓子(クッキーなど)と竃馬(カマドウマ)。見た目が西洋風なのでよくクッキーなどを出されるそうで、それをよく愚痴る。
関口 巽(せきぐち たつみ)
声 - 木内秀信 / 演 - 永瀬正敏(姑獲鳥の夏)・椎名桔平(魍魎の匣)
小説家。中禅寺の学生時代からの友人(但し中禅寺からは「ただの知人」であるといつも強調される)。学生時代は鬱病に悩まされ、現在も完治には至っていない(というよりも数々の事件に巻き込まれ、悪化の一途を辿っている)。臆病で気が小さく、時に場面緘黙症になるほどの対人恐怖症で常に精神不安定。コンプレックスの塊だが、やや自己愛の強い人格。噂などを鵜呑みにし易い面もある。
所属していた大学からの資金援助で粘菌の研究を行っていたが、生計が立たなくなったので文筆業に移行。中禅寺敦子の口利きで稀譚舎の文芸誌に稿を寄せる一方、別名義の「楚木 逸已(そきいつみ)」でカストリ雑誌にも投稿している。小説の単行本は1冊のみ刊行されたが、好事家にしか話題になっておらず、経済的には常に困窮している。ジャンルは私小説で、自らが経験した事柄をベースに書いている。
作中では概ねにおいて「猿」などと罵倒される散々な役回り。榎木津曰く「アイアイに似ている」らしい。
理系学生で、本来徴兵を免れるはずが、何かの手違いで赤紙が届き、前線送りとなった。学徒出陣であったため将校として一小隊の隊長となり、部下の1人に木場がいた。小隊は、彼ら2人を残して全滅した。
既婚者で妻は雪絵。両親と弟が健在だが、縁が薄く親交はないらしい。
喫煙者だが、どうやらふかしているだけらしい。大変な汗っかきで、文字通り滝のような汗をかく。
作中の地の文においては、常に「私」で表現されている。
木場 修太郎(きば しゅうたろう)
声 - 関貴昭 / 演 - 宮迫博之
刑事。榎木津の幼馴染で、関口とは戦時中同じ部隊だった。初登場時は東京警視庁捜査一課所属。その後何度か後述の暴走癖により処罰され転属している。
戦前からの職業軍人で、大戦を経てなお、時代劇のような勧善懲悪を求めて刑事となる。「鬼の木場修」と称され、信念のために職業的規範を逸脱してたびたび暴走する無頼漢。同じく捜査一課所属の青木の先輩であり、元相棒でもある。四角ばった顔で、榎木津から「箱」・「下駄」・「四角」などと呼ばれる。
現場百辺の信念で身体を張って捜査し、劇的な捕り物による一件落着や簡潔な善悪の二項対立を理想としている。榎木津と共に鯨飲の酒豪であり喧嘩好き。いかつい強面で経歴から想像されるとおりの豪傑であるが、刑事然とした外見や粗雑な言動・態度と裏腹に、本質的にはナイーヴな性格である。子供の時分は絵を描くことを好み、警察手帳にはファンである女優の美波絹子の写真が挟んである。
実家は小石川で石材店を営み、両親や妹夫妻がある。就職時は実家住まいだったが、警視庁への異動時から小金井の親戚宅で下宿生活。根っからの江戸っ子
戦中は南方に派兵され、経験薄く及び腰の上官関口を放っておけずに面倒を見て、結果的に2人だけ生還した。
青木 文蔵(あおき ぶんぞう)
声 - 諏訪部順一 / 演 - 堀部圭亮
東京警視庁捜査一課の刑事。木場の元相方であり、先輩にあたる木場と彼の刑事としての理念を敬愛している。単独行動を取りがちな木場と対照的に控え目で優等生然としているが、必要と判断すれば遺憾ない行動力を発揮する。
性格は実直で真面目。我を張ることが少なく上司に好かれる性質。木場には経験の浅いひよっこ扱いされているが、いざというときは体を張って戦う事も辞さない勇敢さも持ち合わせ、内心には高く評価されている。やや童顔で見ようによっては学生のようだが、恐らく実際は20代後半。こけしのようだとも言われる。
戦中は特攻隊に配属されていた。突撃前に終戦を迎えたため生還している。
鳥口 守彦(とりぐち もりひこ)
声 - 浪川大輔 / 演 - マギー
不定期発刊のカストリ雑誌「實録犯罪」の編集記者兼カメラマン。「實録犯罪」は関口が別名義で執筆する主な掲載誌でもある。中禅寺敦子とは同業で、関口を通じて知り合ったのち、カメラマンとして取材に同行するなどしている。福井県出身。元は写真家志望だった。
軽快で嫌味のない性格だがやや粗忽なところがある。惚けているようで話の呑み込みは早く、京極堂を感心させた。極度の方向音痴。間違った諺や慣用句の類を多用する癖がある。根は真摯な青年。また「人間三脚」を標榜するほどの屈強な体格。両目の間が詰まり気味だが、それなりに二枚目。
中禅寺を「師匠」、関口を「先生」、榎木津を「大将」とそれぞれ呼称。
口癖は「うへえ」という意味の良くわからない感動詞で、事あるごとに口にしている。
益田 龍一(ますだ りゅういち)
初登場(『鉄鼠の檻』)時は国家警察神奈川県本部捜査一課刑事。その後『絡新婦の理』で刑事の職を辞して薔薇十字探偵社に入社、榎木津に弟子入りした探偵見習い(助手)。薔薇十字探偵社は、失物探しや素行調査など一般的探偵業は益田しかしていない。
自他共に認める臆病な卑怯者だが、わざと大仰に吹聴している部分も大きい。軽薄に見えて本質は思い悩む性格。外見を軽く見せるためか、上京してから髪を長く伸ばしている。
榎木津に数々の有難くない二つ名を頂戴している。探偵助手の身でありながら『邪魅の雫』以前のシリーズの中でまともに本名を呼ばれた事がない。

[編集] 家族

中禅寺 千鶴子(ちゅうぜんじ ちづこ)
声 - 皆口裕子 / 演 - 清水美砂
中禅寺秋彦の妻。西洋風の美人で淑やかな性格だが舌鋒は鋭く、中禅寺を言い負かす事が出来る唯一といえる人物である。実家は京都和菓子屋「京極堂」を営んでいる(中禅寺の古本屋の屋号はここから勝手に頂いた)。結婚後も実家の手伝いのため度々京都に帰省している。
中禅寺 敦子(ちゅうぜんじ あつこ)
声 - 桑島法子 / 演 - 田中麗奈
中禅寺秋彦の妹。中堅出版社「稀譚舎(きたんしゃ)」の科学雑誌記者。
活動的な服装を好み行動力もある性質で、出不精な兄とは似ても似つかぬ性質。一見すると男子のようだが、その立ち振る舞いや雰囲気は女性特有のものである。知らぬ者は義理の姉千鶴子の方が秋彦の親族かと思うほど。しかし好奇心旺盛な面や論理的思考を偏愛する点など矢張り兄妹といえる部分もある。関口とは対照的に、相談ごとの受け答えも達者である。
兄とは一回りほど年が離れており、また幼い頃より千鶴子の実家に預けられて育つ。兄とは憎まれ口を叩き合う仲ではあるが、初めて会ったのが物心ついてからであるためか少し距離感を与えるところもあるらしい。
明るく利発な性格からか、鳥口、青木の2人から密かに慕われている。
石榴(ざくろ)
中禅寺秋彦の飼い猫。あくびをすると柘榴のように見えることから名をつけられた。中国の金華の猫らしい。中禅寺曰く「化けると云われたから買ったのに全然化けやしない」とのこと。愛想は悪い。また、邪険に扱われている割には主人(中禅寺)以外にはなつかない。
榎木津 幹麿(えのきづ みきまろ)
榎木津礼二郎の父。元子爵。貿易会社を経営している。政財界など、日本のあらゆる権力に対して力を持つ人物だが、礼二郎に負けず劣らずの奇人。大の虫好きで、虫を取りたいがために会社を海外進出させた程(しかし結果的にはそれが功を奏して、他の華族と違い戦後に凋落することが無かった)。社長室ではを放し飼いしている。子供達に帝王学を学ばせた割に、彼等が成人すると「大人を養う義務はない」と言ってある程度の予算を生前分与して半ば放逐状態にしてしまう(世襲制が当たり前だった当時では奇異な話)。
榎木津 総一郎(えのきづ そういちろう)
榎木津礼二郎の兄。こちらは父や弟と比べて真っ当な性格をしており、父から生前分与された予算を元手にして幾つかの会社を経営し成功を収めている。
関口 雪絵(せきぐち ゆきえ)
声 - 本田貴子 / 演 - 篠原涼子
関口巽の妻。鬱病の夫を温かく見守る包容力ある女性。中禅寺の妻千鶴子とは連れ合って映画を観に行ったりする程仲が良い。

[編集] 交友関係

伊佐間 一成(いさま かずなり)
声 - 浜田賢二
釣り堀「いさま屋」の主人。自身も釣りが好きで、日本各地へ釣り旅行に行くほど。
彼の家が「旅荘いさま屋」を営んでいたが、戦争で焼け落ちてしまい、その中の活簀を釣り堀に改造され、建て直された旅館と別になってしまった所を復員してきた彼が任されることになった。旅館の方は姉夫婦が継いだ。
外見はひょろ長く、口髭を生やしたその顔は平安貴族風の美形らしい。飄々とした性格で、あまり物事に動じたり、頓着したりはしない。また非常に口数は少ない。衣服の取り合わせは無国籍。笛が趣味であり、外国の民族風の笛を吹いたりしている。また、暇にあかせて抽象的なオブジェを作成する。
戦時中は海軍で榎木津の部下だった。五体満足で終戦を迎えたものの、復員船の中で、突如マラリアにかかり、臨死体験らしき奇妙な夢を見た。そのとき以来、飄々とした性格に拍車がかかったと当人は分析している。
今川 雅澄(いまがわ まさすみ)
骨董店「待古庵(まちこあん)」の店主で、中禅寺らの知り合い。
代々続く蒔絵師の一家の次男坊で、店は戦時中の大怪我で復員後に死んだ従兄弟が、生前経営していた「骨董今川」(今の店名に改名させた)を引き継いだ形。「待古庵」の名は、子供の時のあだ名「マチコサン」に由来し、特に意味は無いが、客はその字面を見て勝手に納得すると言う。外見は太い眉にしまりのない唇と禽獣のようとも言われる珍妙な顔。おっとりのんびりした性格も併せ一見愚鈍な印象だが、かなり頭は切れる。骨董品などについて中禅寺に見解を求めるなど、知的好奇心を優先させる事も。骨董商としての鑑定眼は優れているが、やや自信に欠けると評される。
戦時中は榎木津の部下で、性格的に近い物があるためか、同僚伊佐間とは復員後も懇意にしている。
榎木津からは「口の端から漏れて見苦しいから人前で乳製品を食べるな」と厳命されたらしい。
榎木津曰く、「ドラム缶風呂に入ったまま居眠りをしたことがある」との事。
安和 寅吉(やすかず とらきち)
声 - 坂本千夏 / 演 - 荒川良々
薔薇十字探偵社の探偵秘書(当人はそのつもり)。通称・和寅。榎木津家に仕えていた使用人の息子。野次馬根性が非常に強い。榎木津からいくらギターを教わっても上達しないらしく、そのせいで薔薇十字探偵社を解雇されそうになったことがある。益田のことは君付けで呼び、格下に見ている節がある。中禅寺、榎木津、関口のことを全員「先生」と呼ぶ。真面目に仕事をしない榎木津に代わって依頼人の話を聞いたり、榎木津の生活ぶりをたしなめるような保護者的な一面も見せる。
アニメ版では10歳程度の少年になっている。
里村 紘市(さとむら こういち)
声 - 青山穣 / 演 - 阿部能丸
九段下で「里村医院」を開業する傍ら、警察の監察医も務めている外科医。普段は温厚で人当たりのよい好人物だが、3度の飯より解剖が好きで死体と聞けば患者をほったらかして飛んで行くという性格の持ち主。いつも木場に病気・変態などと罵られているが本人は全く気にしていない様子。人懐っこい言動でショッキングな内容も平気で語る。また、「日本で一番腕の良い監察医」を自称しており、周囲の人間も解剖・縫合の腕前はかなり高く評価している他、監察医としての使命感や遺族感情に対する配慮も持ち合わせている。木場とさほど年は変わらないが、最近髪が薄くなってきている。
竹宮 潤子(たけみや じゅんこ)
演 - 鈴木砂羽
池袋にあるバー「猫目洞」の女主人。木場は警察官になった当初は池袋署に配属されており、その頃からの常連でかなり親しい。木場には少なからず好意を持っており、口には出さないがことある毎に木場の身を案じている。また女性の気持ちを察するのが苦手な木場に助言して、捜査の示唆を与えることもある。チンピラまがいの連中の襲撃を受けた際に自分の身よりも高級酒を守ろうとするなどなかなか肝の据わった人物。「酒場の女に姓はない」らしく基本的にはフルネームで名乗ることはない。頭の回転の素早さや情報通なところから過去に何かあったことを想像させるが、過去を語ろうとはしない。
小泉 珠代(こいずみ たまよ)
声 - 長沢美樹
稀譚舎の社員。関口の担当編集者でもある。敦子の上司で、彼女からは「先輩」と呼ばれている。『魍魎の匣』や『狂骨の夢』でその事件の重要人物を関口に引き合わせており、本人の意図したことではないが結果的に関口が事件に深くのめり込んでしまう原因を度々作ってしまっている。
山嵜 孝鷹(やまさき たかお)
演 - 小松和重
稀譚舎の社員。敦子や小泉の上司で、稀譚舎が発行している雑誌「近代文藝」の編集長もしている。関口に掲載作品の単行本化を持ちかけて「目眩」を発行する。関口の作品は全て近代文藝に掲載されているため稀譚舎での単行本化が容易であり、またある程度は売れると目測していたが一部の好事家にしか受けなかった。
増岡 則之(ますおか のりゆき)
声 - 三木眞一郎 / 演 - 大沢樹生
柴田財閥顧問弁護士の1人。いつも高級そうなスーツを着こなし、銀縁の眼鏡をかけている。そのまま馬のような男と評されるほどの馬面。凄まじい早口のマシンガントークで喋る(本人曰く、常に多忙のため少しでも時間を短縮するため。しかしいついかなる場合でも口調は変わらない)が発音・発声ともはっきりとしているので聞き漏らすことはない。その口調から傲慢かつ嫌味な性格と思われがちだが、感情表現が不器用なだけで、他人のことを真剣に考えてやれる信念の持ち主。柴田財閥絡みの事件が起こる度に登場しており、初登場の『魍魎の匣』では柴田財閥を通じて紹介された薔薇十字探偵を訪れたが、榎木津にまともな依頼は不可能と判断したのか以降の事件では京極堂へ相談を持ち掛けるようになる。また、作中の事件で逮捕された複数の人物の弁護も担当している。意外に野次馬根性が強く、京極堂のウンチクも真剣に聞いている。
映画版では眼鏡はかけておらず、いつも懐中時計で時間を気にしているという設定が追加された。
川島 新造(かわしま しんぞう)
声 - 相沢正輝
木場や榎木津の戦前からの友人で飲み仲間。飲み屋で酔っぱらって暴れていたところを二人に取り押さえられ、それ以降親しくなる。六尺を超える大男で、常に黒眼鏡をかけ、未だに復員服を着てさらに坊主頭のためかなりいかつく見える。戦時中、甘粕正彦の腹心として満州で働いていた。その時は特殊な任務に就いていたらしく、図体に似合わずかなり身軽。また見た目通り喧嘩もめっぽう強く、木場と互角を張れるほどである。復員後は「騎兵隊映画社」という会社を興して映画制作を行っている。
妹尾 友典(せのお とものり)
演 - 田村泰二郎
赤井書房の社員。鳥口の2人しかいない上司の1人。不定期発刊のカストリ雑誌「實録犯罪」の編集長だが編集者は彼と鳥口の2人しかいない。どんな話題にも食い付き、また非常によく喋る、子供のような性格。
赤井 禄郎(あかい ろくろう)
赤井書房オーナー。赤井書房は学習用教材の販売業が本業で、出版業は道楽でやっているらしい。そのため實録犯罪の仕事にはほとんど干渉してこないがその反面廃刊になったとしても何ら不利益を被るとこは無い。
久遠寺 嘉親(くおんじ よしちか)
演 - すまけい
「久遠寺医院」の院長。第一作『姑獲鳥の夏』の事件を通して、京極堂らと知り合う。
とある事件をきっかけに医院を閉鎖し、現在は箱根にある「仙石桜」という宿で居候をしている。
容姿は禿げた赤ら顔に目が窪んでしまっている締りの悪い顔。60を超えた老人だが威勢の良い性格で、世の道徳に反することに対してはしっかり反論し、また医院をたたんでからも医者としてのプライドを高く持ち合わせている。
専門分野は外科であるが、久遠寺医院で人手が足りない時はそれ以外の診療も行っていたらしい。また『鉄鼠の檻』では持ち前の監察眼で遠くからでも生者と死者の区別をつけたり、検死を行ったりもした。
一柳 朱美(いちやなぎ あけみ)
静岡県伊豆市で暮らす女性。元憲兵で現在は置き薬商人の夫、史郎(しろう)と二人暮らし。その容姿は大抵の者は美人と答えるが、さらに加えて若く見られがちで実際は20代後半だが夫がいるようには見えないとよく言われる。初登場『狂骨の夢』では、過去にまつわる事情で神奈川県逗子市に住んでいたが、事件後東京に引っ越した。しかし都会の喧噪と馴染めず、静岡に転居した。長野県の出身で、子供の頃代々家で祀ってきたものを狙われて家族全員を焼き殺され、徴兵忌避で失踪した先の夫が殺害され一時容疑がかかるなど数奇な過去を持つ。旧姓は南方(みなかた)。非常に淡泊な性格・口調をしているが、一方で困っている人を見ると放っておけないという江戸っ子気質の女性で、そのために中禅寺周辺や事件に関わることになった。一人称は「妾(あたし)」。
降旗 弘(ふるはた ひろむ)
精神科医。実家は小石川にある歯科医で木場とは幼馴染みというものの、実際は家が近所だったというだけで、それほど親しかったというわけではないが、榎木津とも面識があった。初登場『狂骨の夢』では神奈川県逗子市にある飯島基督教会というところに居候していたが、その後東京の徳田里美(とくださとみ)という水商売の女性のところに転がり込んで暮らしている、いわゆるヒモ。しかし本人は現在の生活に満足して楽しんでいるようだ。子供の頃見た夢の意味をどうしても知りたくなり、大学で精神神経医学を学ぶ傍らフロイトの孫弟子に師事して精神分析学を学んだが、学べば学ぶほど自己嫌悪に陥っていき次第に心を閉ざすようになってしまう。しかし京極堂の憑き物落としによって取り敢えず鬱病紛いの症状は治ったようだ。ちなみに『狂骨の夢』で木場に電話した際木場に忘れられていたが、自分が忘れていた榎木津には憶えられていた。関口曰く、自分と同じタイプの人間。
柴田 勇治(しばた ゆうじ)
柴田財閥会長の柴田耀弘(しばたようこう)の養子。『魍魎の匣』で柴田耀弘の唯一の直系であったはずの少女と、柴田耀弘自身が亡くなってしまったことで柴田財閥のトップに立つ。温厚かつ真面目な性格で、決して悪い人物ではないが場の空気を汲み取ることが出来ず場違いな発言をしたりもする。『絡新婦の理』で家族全員を亡くした織作茜を妻にすることで柴田家に迎え入れようとするが断られてしまう。人格的には申し分無いが商才はあまり無いらしい。

[編集] 警察

木下 圀治(きのした くにはる)
声 - 石川和之
東京警視庁刑事部捜査一課に所属する刑事。青木の同僚で木場の元部下。階級は恐らく巡査。青木とは少し違ったタイプで、彼同様上司にたて突くようなことはないが、積極的に機嫌を取ったりもする。やや小太りの体系。娼婦が嫌いらしい。青木とは非常に仲が良く、「圀」、「文さん」と呼び合う。
大島 剛昌(おおしま たけまさ)
東京警視庁刑事部所属の刑事。階級は警部で捜査一課課長。木場の元上司。木場に負けず劣らず口調が荒っぽい。暴走気味の木場をよく叱っているが、実力はかっているところがあり、本来なら懲戒免職ものの木場の失態も彼の働きによって減俸や降格程度で済んでいる。刑事を警察機構の歯車だと喩えており、矮小ではあるが一つでも欠けると上手く機能しなくなるため、一人ひとりが警察にとっては重要な存在であると考えている。『陰摩羅鬼の瑕』からは、その手腕をかわれて公安部捜査三課に異動となった。
長門 五十次(ながと いそじ)
東京警視庁刑事部捜査一課の刑事。木場の新しい相棒(実際は暴走気味の木場の監視役も兼ねている)で課一番の年長者。木場に引けを取らない観察眼を持っており、細かいところにもよく気が付く。殺人現場に到着するとまず一番に被害者に黙祷するという変わり者。木場には随分遺体ばかり調べる刑事だと思われていた。地道で地味な捜査を得意とする粘りタイプの刑事で、木場とは正反対である。如何なる時でも自分のペースを保っており、木場は彼を苦手としているが、操作能力に関しては一目置いている。いつも自作の弁当を職場に持ってくる。妻は既に他界しているらしい。
石井 寛爾(いしい かんじ)
声 - 宇垣秀成
国家警察神奈川県本部捜査二課の刑事。初登場の『魍魎の匣』では警部だったが、元々の捜査能力の低さに加え、木場の暴走も重なって失態を犯し降格させられた。木場曰く、出世しか考えていない青瓢箪。しかし『狂骨の夢』では再び警部に返り咲いて、木場とも和解し以降は協力関係となる。典型的なキャリア組みタイプで所轄警官と捜査方針を巡っての軋轢が絶えないが木場には賛同されており、捜査能力も初登場時と比べて上がってきているようだ。また、『邪魅の雫』では犯罪と法律、社会秩序に対する達観した見地を述べている。
臆病な性格で、力任せに事件を解決しようとする方法を嫌っており、作中でも「腰抜け」と評されることが多い。そのため自身の意見を否定されると言い訳じみた弁解をするが、逆に肯定されると饒舌になる。榎木津からは蒙古系の性の雲脂性などと罵倒され、非常に苦手としている。
山下 徳一郎(やました とくいちろう)
国家警察神奈川県本部所属の刑事。エリート出身で階級は警部補。かつて石井の腹心の部下で益田の直属の上司だった。初登場は『鉄鼠の檻』。その時は高圧的な態度で捜査に当たり関係者から厭まれ、捜査に全く役に立たなかったばかりか、目と鼻の先で次々と殺人が行われ、挙げ句犯人を取り逃がすという大失態を犯してしまう。初めは直感に任せて少しでも怪しいと感じたものは即刻拘束するという捜査手法をとっていたが、そうした経験を通して捜査手法や性格に大きな変化が見られた。事件後、責任を取らされて降格させられたが『邪魅の雫』で再登場したときには再び警部補になっていて、かつての部下の益田もかなり変わったという印象を持った。

以上で物語・作品・登場人物に関する核心部分の記述は終わりです。


[編集] 既刊一覧

[編集] 長編小説

[編集] 連作小説集

[編集] 関連作品

  • 『幻想ミッドナイト』 角川書店、1997年 ISBN 4047881112
  • 『エロチカ eRotica』 (e-NOVELS編) 講談社、2004年 ISBN 4062122898
    • 「大首 妖怪小説百鬼夜行第拾弐夜」 (当時は「第拾壱夜」未執筆)
  • 『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』 集英社、2007年
    • 「ぬらりひょんの褌」

[編集] 余談

  • 作者が『姑獲鳥の夏』の舞台となった雑司ヶ谷を訪れた際、本当に現地に病院が建っていた事実を知り「まずい」と思って以来[1]、それ以降の舞台に関してはあえて現実に存在し得ないことを前提に設定するようになった。
  • 主要登場人物については、作者の友人、知人がモデルであるという。中でも関口のモデルは物故後に小説家デビューを果たした関戸克己であることが有名である。他に古本屋仲間として小説家の北村薫山口雅也などがモデルの者も登場する。
  • 本シリーズでは、タイトルとなった妖怪が文化として人口に膾炙し成立する過程を紙上再現するため、その妖怪に関するあらゆるキーワードを作中に散りばめていると作者は語っている。たとえば『陰摩羅鬼の瑕』では水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』でのエピソードを踏まえ、「豪邸に住む身寄りのない富豪の男性、本当は死んでいる婚約者といった設定は、先行する水木さんの作品を想起してもらうためにも欠かせなかった」と語っている[2]

[編集] 脚注

  1. ^ 大極宮 Q&A~作家たちへの質問
  2. ^ 一柳廣孝吉田司雄 編著 『ナイトメア叢書3 妖怪は繁殖する』 青弓社、2006年。

[編集] 関連項目

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