白い竜 (サクソン伝承)
白い竜(しろいりゅう、英: White Dragon)は、アーサー王伝説等に登場する伝承のドラゴンである。
サクソン人やアングル人は、ローマ軍の軍旗のドラゴンを見てこれを真似し、時折、これを彼らの軍旗として用いた。当時のゲルマン人にとって白いドラゴンは民族的象徴であった。ローマ軍撤退によって生じた軍事力不在のブリテン島にサクソン人やアングル人が渡来した。そこでブリトン人とサクソン人の戦いが始まった。赤い竜と白い竜はその民族の争いの象徴でもあった。
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起源 [編集]
ブリトンの大君主ヴォーティガーン (Vortigern) はサクソン人とともに戦うため堅固な塔を建設しようとした。ところが土台を造る段階になって、地面の下にある何かが建設を邪魔しているのを知った。そこで、王はその原因を突き止めることの出来る者を募った。すると、夢魔を父に持つ少年魔術師マーリンが現れ、地底で戦う2匹の竜のためだと告げた。ヴォーティガーンは半信半疑のまま塔の下を掘らせてみると、大きな泉が出てきた。王は「泉の下には何があるのか」と聞いたところ、マーリンは、「知りたければ泉の水を吸い上げてみるが良い」といった。水を吸い上げてみると、現れたのは大きな2つの石の箱だった。王が「石の箱には何が入っているのか」と訊ねた。マーリンは「知りたければ開けてみるがよい」と進言した。箱を開けると、そこには確かに遠い神話時代に封印された伝説上の赤き竜と白き竜がいた。2匹は互いの姿を認めると再び戦いを始めた。驚いているヴォーティガンにマーリンは「赤い竜はブリトン人、白い竜はサクソン人。この争いはコーンウォールの猪が現れて白い竜を踏みつぶすまで終わらない。」と予言した。やがてこの予言は、コーンウォールの猪ことアーサー王がサクソン人を破るという形で成就されるが、民族大移動を達成しブリテン島を征服したアングル人、サクソン人側は「白い竜」こそが勝利者だとした。
定着しなかった「白い竜」 [編集]
民族大移動を達成しブリテン島を征服したアングロ人、サクソン人側の旗であり、象徴である「白い竜」はなぜ定着しなかったのだろうか。ノルマン人はスカンディナヴィアおよびバルト海沿岸に原住した同じゲルマン民族であるにもかかわらずである。しかもヴァイキングの船や旗、教会には多数の竜の絵や彫刻があったのにもかかわらずにである。これは歴史上の謎ともいえる。
七王国時代 [編集]
歴史上の謎を解く鍵は、おそらく七王国時代(ヘプターキー)にあると思われる。ブリトン人の王国たるドゥムノニアが史実としてのアーサー王物語ともいえるベイドン山の戦いで勝ったとされる。しかし、この勝利後、6世紀にはアングロサクソン側にブリテン島のほとんどを支配されてしまう。この後、七王国の各国はノルマン人侵攻までにキリスト教を受容していくことになる。ここに鍵があると思われる。
竜を殺す国、イングランド [編集]
イングランドの国旗は、聖ゲオルギウス十字 (St.George's Cross) と呼ばれ、白地に赤い十字が描かれている。聖ゲオルギウスの龍退治の伝説は12世紀頃であるが、13世紀頃より聖ゲオルギウスはイングランドの守護聖人になったと言われる。赤十字は十字軍の頃より見られ、イングランドを示す初期の紋章となった。『図説 アーサー王伝説物語』によれば竜を守護とするケルト民族への脅威の表れとしている。現在ケルト系民族はウエールズ、北アイルランド、独立したアイルランドが中心なって形成している。この本の説が正しいかどうか別にして、イングランドは竜殺しの民話が多数存在することとなった。
参考文献 [編集]
- 久保田悠羅とF.E.A.R. 著 『ドラゴン』 新紀元社 <Truth In Fantasy> 2002.
- 竹原威滋・丸山顯德編『世界の龍の話』三弥井書店,2002.
- 「知の発見」双書27 『ヴァイキング―海の王とその神話』イヴ・コア著 久保実訳 創元社 1993.
- 『図説 アーサー王伝説物語』 デイヴィッド・デイ著 山本史郎訳 原書房,2003.
関連項目 [編集]
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