異歯亜綱

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異歯亜綱
Purpurocardia purpurata (inside).JPG
マルスダレガイ科の1種 Venericardia purpurata の貝殻の内側。異歯亜綱に特徴的な蝶番部が確認できる。
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 二枚貝綱 Bivalvia
階級なし : 固有弁鰓類 Autolamellibranchiata
異殻類 Heteroconchia
亜綱 : 異歯亜綱 Heterodonta
学名
Heterodonta Neumayr, 1883
下位分類群
主歯 (Dentes Cardinais) と側歯 (Dentes e fossetas laterais)
ニオガイ科の巣
ニオガイ科の水管
ヘッケル著『自然の芸術的形態』より。
真異歯類ザルガイ科(大半)
新異歯類マルスダレガイ科(最左上・その下・上中央)

異歯亜綱(いしあこう、Heterodonta)、または異歯類は、二枚貝Autolamellibranchiata Heteroconchia の分類群である。二枚貝綱の中で最も数が多い亜綱である。

亜綱とすることが多いが、固有弁鰓亜綱 Autolamellibranchiata 異歯上目もしくは異歯目とすることもある。代表種ハマグリからハマグリ亜綱ハマグリ目とも呼ぶ。

なお、伝統的には異靱帯類 Anomalosdesmata は異歯亜綱とは別の異靱帯亜綱とされてきたが、近年は異歯亜綱の下位分類とするようになりつつある。

特徴[編集]

その名のとおり「異歯型」 (heterodont) である。異歯型とは、2枚の貝殻蝶番で噛み合わせるための鉸歯 (hinge teeth) に、形が異なる主歯 (cardinal teeth) と側歯 (lateral teeth) があるということである。なお、異靱帯類では鉸歯は退化的である。

閉殻筋肉(貝柱)は前後に2つある双筋型である。

水底や岩などに深く潜入する種では、左右の外套膜が癒合し、喚水のために水管が発達する。水管の発達度合いは殻の套線湾入の深さに表れていることが多い。

世界中に分布し、山地の小さい淡水域から深海底まで多様な種が生息する。水底の砂礫や泥に潜入して生活する種が多いが、殻で他物に固着するものや、足糸で着生するものもあり生態的にも多様である。

分類[編集]

旧分類[編集]

伝統的には、異靱帯亜綱と異歯亜綱に分かれ、異靱帯亜綱に1目、狭義の異歯亜綱に2目が置かれる。

しかし、形態・分子の系統分析により、異靱帯亜綱は単系統だが異歯亜綱はそれを内包した側系統であり、またその中でも、オオノガイ目は多系統で、マルスダレガイ目はオオノガイ目と異靱帯亜綱を内包した側系統だと分かってきた。

なお、「ハマグリ目」という訳語は、異歯目の意味のほか、マルスダレガイ目の意味で遣われることもあるので注意。

新分類[編集]

ブシェー他(2010)[1]によって、二枚貝の学名の整理と2009年時点までの情報に基づいた新たな分類体系の提示がなされているが、以下はこの分類体系公表前までの分類状況について述べたものである。

二枚貝の異歯亜綱は系統的には、原始的で種数が少ない原始異歯類 Archiheterodonta と、進化的で種数が多い真異歯類 Euheterodonta に分かれる (Giribet 2008[2])。Archiheterodonta は目レベルでは、従来はマルスダレガイ目の一部だが、近年はトマヤガイ目 Carditoida に分離される[3][4]

真異歯類にはマルスダレガイ目(トマヤガイ目を除く)・オオノガイ目・異靱帯類が含まれるが、マルスダレガイ目・オオノガイ目は単系統ではない。

真異歯類内の単系統としては、異靱帯類のほか、マルスダレガイ目の一部とオオノガイ目の大部分からなる単系統群の新異歯類 Neoheterodontei が見つかっている (Taylor et al. 2007[5])。新異歯類は非常に放散したグループで、多くの種が含まれる。

その他の高位分類は確立しておらず、現状では真異歯類に上科が直接含められている。

  • 原始異歯類 Archiheterodonta
  • 真異歯類 Euheterodonta

異靱帯類は目レベルでは、単一の異靱帯目 Anomalosdesmata またはウミタケガイモドキ目 Pholadomyoida を置くか、ウミタケガイモドキ目と隔鰓目 Septibranchia に二分される。

上科と科[編集]

BivAToL[6]を基本とし、最新の系統分析である Taylor et al. 2007[5]での変更を採用した。ただし、従来分類が非系統的と分かってもただちにも新分類が現れるとは限らないので、非系統的とわかっている部分も残っている。

また、出典として Giribet 2008[2]NCBI Taxonomy browser[7]ITIS[8]も随時併用した。

●または○を付けた4上科はオオノガイ目。ただし近年は、オオノガイ目を、互いに比較的近縁と判明している2上科 (●) に限定することもある[6][9]

Neoheterodontei の正確な成員はまだはっきりせず、Taylor et al. 2007 で確定的な結果が出ていない上科が加わる可能性もある。

絶滅群[編集]

系統樹[編集]

Giribet & Wheeler 2002[14]、Taylor et al. 2007[5]による。

異殻類

古異歯亜綱


異歯亜綱
原始異歯類

トマヤガイ目


真異歯類

ハナシガイ上科



異靱帯類

ウミタケガイモドキ目




さまざまな上科



  :



さまざまな上科



ウロコガイ上科 + ケヅメガイ科




ザルガイ上科



ニッコウガイ上科





キヌマトイガイ上科



マテガイ上科




新異歯類







画像[編集]

出典[編集]

  1. ^ Philippe Bouchet, Jean-Pierre Rocroi, Rüdiger Bieler, Joseph G. Carter & Eugene V. Coan (2010). “Nomenclator of Bivalve Families with a Classification of Bivalve Families”. Malacologia 52 (2): 1–184. doi:doi: 10.4002/040.052.0201. http://www.bioone.org/doi/abs/10.4002/040.052.0201?journalCode=mala#aff4lCode=l. 
  2. ^ a b c d e Giribet, G. (2008), “6. Bibalvia”, in Ponder, W. F.; Lindberg, D. R., Phylogeny and Evolution of the Mollusca, University of California Press, ISBN 0520250923 
  3. ^ Species list - Tree of Life: Bivalvia project (BivAToL)
  4. ^ 佐々木猛智 (2010), 貝類学, 東京大学出版会 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l Taylor, J. D.; Williams, S. T.; Glover, E. A.; Dyal, P., “A molecular phylogeny of heterodont bivalves (Mollusca: Bivalvia: Heterodonta): new analyses of 18S and 28S rRNA genes”, Zoologica Scripta 36 (6): 587–606, doi:10.1111/j.1463-6409.2007.00299.x, http://www3.interscience.wiley.com/journal/118504423/abstract?CRETRY=1&SRETRY=0 
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v Species list - Tree of Life: Bivalvia project (BivAToL)
  7. ^ a b c d NCBI Taxonomy browser (Heterodonta) - NCBI
  8. ^ a b ITIS Standard Report Page: Heterodonta - ITIS
  9. ^ 佐々木猛智 (2010), 貝類学, 東京大学出版会 
  10. ^ 従来、ノミハマグリ科 Turtoniidae を含むという説があり、その場合「ノミハマグリ上科」と訳されてきた。
  11. ^ この科について Taylor et al. 2007 は系統的地位を示すだけで新分類の提案をしていないが、Neoheterodontei に含まれるため、便宜上、Neoheterodontei に含まれないザルガイ上科から分離して記す。
  12. ^ Paleobiology Database: Gaimardioidea
  13. ^ a b Mikkelsen, P. M.; et al. (2006), “Phylogeny of Veneroidea (Mollusca: Bivalvia) based on morphology and molecules”, Zoological Journal of the Linnean Society (3): 439–521 
  14. ^ Giribet, G.; Wheeler, W. (2002), “On bivalve phylogeny: a high-level analysis of the Bivalvia (Mollusca) based on combined morphology and DNA sequence data”, Invertebrate Biology 121 (4): 271–324, http://research.amnh.org/scicomp/pdfs/wheeler/Giribet&Wheeler2002a.pdf