町田康

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町田 康
(まちだ こう)
誕生 町田 康(まちだ やすし)
1962年1月15日(52歳)
日本の旗 日本 大阪府堺市
職業 小説家詩人ミュージシャン俳優
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
最終学歴 大阪府立今宮高等学校
活動期間 1981年(歌手として) -
1996年(小説家として) -
ジャンル 小説パンク・ロック
代表作 『くっすん大黒』(1996年)
『きれぎれ』(2000年)
『告白』(2005年)
主な受賞歴 ドゥマゴ文学賞(1997年)
野間文芸新人賞(1997年)
芥川龍之介賞(2000年)
萩原朔太郎賞(2001年)
川端康成文学賞(2002年)
谷崎潤一郎賞(2005年)
野間文芸賞(2008年)
処女作 『くっすん大黒』(1996年)
公式サイト Official Machida Kou WebSite
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町田 康(まちだ こう、1962年1月15日- )は、日本小説家詩人ミュージシャン。旧芸名は、町田 町蔵(まちだ まちぞう)。本名は同じ漢字で「まちだ やすし」である。

大阪府堺市出身。1981年バンドINU」のボーカリストとしてアルバム『メシ喰うな!』で歌手デビュー。同バンド解散後もさまざまな名義で音楽活動を続けるかたわら、俳優としても多数の作品に出演。1996年には処女小説「くっすん大黒」で文壇デビュー、2000年に小説「きれぎれ」で第123回芥川賞受賞。以後は主に作家として活動している。

略歴[編集]

音楽活動[編集]

中学時代より友人の影響でロックミュージックに興味を持ち始める。大阪府立今宮高等学校在学中の1977年セックス・ピストルズに触発され、「腐れおめこ」を結成、町田町蔵 (まちだ まちぞう)と名乗り歌手活動を開始する。1979年に林直人の加入によってバンドはINUへ発展、幾度かのメンバー交代を経て1981年に『メシ喰うな!』でメジャーデビュー。当時町田は19歳であった(バンドの結成年とデビュー年を混同して17歳とする資料は誤り)。INUはパンクというよりもパブリック・イメージ・リミテッドなどのポストパンクを思わせるノイジーで破壊的なサウンドをもって、土俗的かつ脱力的なユーモアのあふれる独特の日本語詞によるパンクロックを展開したが、デビューから三カ月ほどで解散。

その後本人の中でロック、或いはパンクロックに対する懐疑的な意識のようなものが芽生えたらしく、既存のロックに依存する聴衆に対する挑発と取れるようなライブ活動に終始し、90年代に至るまで音楽性は二転三転した[1]。この時期の町田は、新たにバンドやユニットを作っては解散を繰り返した。知られている主なものに「FUNA」、「人民オリンピックショウ」、「絶望一直線」、「町田町蔵 FROM 至福団」(元INUの北田のユニットとの共同制作)、「愛慾バンド」、「天井天国」、「淫如上人&ミラクルヤング」、「町田町蔵(康)+北澤組」、「町田町蔵バンド」「グローリー(The Glory)」などがある。これらのほとんどは音源製作に至ることなく中絶されている。下記のディスコグラフィを参照。

1997年の『脳内シャッフル革命』以降、長らく活動の重点を執筆に移しており、散発的にライヴを行いながら自身のソロバンドやミラクルヤング名義でインディ流通の作品を発表する程度であったが、2010年に13年ぶりのフルレングス・アルバム『犬とチャーハンのすきま[2]』を発表した。

俳優活動[編集]

1982年、映画『爆裂都市 BURST CITY』(石井聰亙監督)に出演、以降も『エンドレス・ワルツ』(若松孝二監督、1995年。ジャズミュージシャンの阿部薫役で主演)、『H STORY』(諏訪敦彦監督、2004年)、『鏡心』(石井聰亙監督、2005年)などいくつかの映画作品に出演しているほか、テレビドラマやCMへの出演経験がある。下記の出演を参照。

執筆活動[編集]

1992年、町田町蔵名義の『供花(くうげ)』で、詩人としてデビューする。1993年には詩とエッセイが渾然一体となった作品集『壊色(えじき)』を発表している。

1996年、処女作「くっすん大黒」で町田康(まちだ こう)[3]として小説家デビュー。奇妙なこだわりが強いあまり自堕落にならざるを得ない不器用な男が、自省・自制しないまま意味を放棄して脱力気味に疾走する様を独特の文体で描いた。同作品で翌年に第7回bunkamuraドゥマゴ文学賞筒井康隆選考[4])、第19回野間文芸新人賞を同時受賞。芥川賞三島賞の候補にも選出される。

処女作以来、数作が候補に挙がった後、2000年に「きれぎれ」で第123回芥川賞受賞。同年に『夫婦茶碗』収録の「人間の屑」、『屈辱ポンチ』収録の「けものがれ、俺らの猿と」を原作とした映画がそれぞれ製作された。2001年に詩集『土間の四十八滝』で第9回萩原朔太郎賞受賞、2002年に短編「権現の踊り子」で第28回川端康成文学賞受賞。2004年の『パンク侍、斬られて候』からは自身の愛好する時代劇をモチーフにした長編を発表し始め、2005年には河内音頭のスタンダードナンバー「河内十人斬り」を題材に、殺意の根源と行方を探ろうとした大作『告白』により、第41回谷崎潤一郎賞を受賞、2008年には一人の小心者の遍歴を非現実的意匠を交えてビルドゥングス・ロマン的に描いた長編『宿屋めぐり』で第61回野間文芸賞を受賞した。

活動当初から独自の文体、語法、話法を確立しており、スラップスティックな笑いと奇怪なイメージや語彙、語りのリズムがストーリーより前面にフィーチュアされる独特の作風で知られる。描写におけるナンセンスと馬鹿馬鹿しさの徹底ぶりは、上方落語を筆頭に時代劇、河内音頭、ロックなどの影響があるとされる。また基本的なプロットの大枠は嘉村礒多近松秋江等の第二次大戦以前の破滅的な私小説や、織田作之助太宰治などの新戯作派の系譜を受け継ぐと評される。

人物・エピソード[編集]

  • パンク歌手時代の著名なファンによしもとばなな富岡多恵子(文芸誌での町田との対談において、本人も所有していない『メシ喰うな!』のLP盤について序盤で話している)がいる。
  • 2007年、作詞を手がけ、ライブでの共演経験もあるギタリスト布袋寅泰に暴行を受けて負傷した。後日、町田本人が千葉県君津署に提出した被害届が受理され、布袋は書類送検された。2人が参加するロックバンドの活動方針についての意見の食い違いから衝突したとされ、事件後、町田は女性誌上で布袋への反論を試みた。
  • 上述の上方落語や河内音頭といった関西ゆかりの笑芸に通じている縁か、大阪のABCテレビで毎年1月に放送される「ABCお笑い新人グランプリ」の審査員を過去数回務めている。コメントを求められると難解な単語や比喩を多用して返答するため、出演者がそれに対するツッコミやいわゆる「イジリ」をやり返すのが恒例となった。放送後には自身のウェブサイト上にて、自身が推した出演者の名前を公表することもあった。
  • ブライスを収集しており、『真実真正日記』の装丁にもインド神話風に装飾されたブライスが登場している。現在は約30体を所有するという。[5]

著書[編集]

小説[編集]

詩集[編集]

  • 供花(くうげ)(1992年)のち新潮文庫 ISBN 4783706972
  • 壊色(えじき)(1993年)のちハルキ文庫 ISBN 4947648082
  • 町田康全歌詩集 1977~1997 マガジンハウス(2001年)のち(1998年以降の歌詩を追加して)角川文庫 ISBN 4840101396
  • 土間の四十八滝 メディアファクトリー(2001年)のちハルキ文庫 ISBN 4840103135
  • 町田康詩集 ハルキ文庫(2003年)・オリジナル選集 ISBN 475843042X
  • 残響―中原中也の詩によせる言葉 NHK出版 (2011年) ISBN 4140056029

随筆その他[編集]

  • へらへらぼっちゃん 講談社(1998年)のち文庫 ISBN 4062089874
  • つるつるの壺 講談社(1999年)のち文庫 ISBN 4062095335
  • 耳そぎ饅頭 マガジンハウス(2000年)のち講談社文庫 ISBN 4838712022
  • 人生を救え! 毎日新聞社(2001年)のち角川文庫 ISBN 4620315265 ※共著者:いしいしんじ 
  • テースト・オブ・苦虫1 中央公論新社(2002年)のち文庫 ISBN 4120033341
  • 猫にかまけて 講談社(2004年)のち文庫 ISBN 4062126745
  • 東京飄然 中央公論新社(2005年)のち文庫 ISBN 4120036766
  • 正直じゃいけん 角川春樹事務所(2006年)のち文庫 ISBN 4758410615
  • 人生を歩け! 毎日新聞社(2006年) ISBN 4620317594 ※共著者:いしいしんじ
  • テースト・オブ・苦虫2 中央公論新社(2006年)のち文庫 ISBN 4120037290
  • テースト・オブ・苦虫3 中央公論新社(2006年)のち文庫 ISBN 4120037908
  • テースト・オブ・苦虫4 中央公論新社(2007年)のち文庫 ISBN 4122053773
  • 猫のあしあと 講談社(2007年)ISBN 4062143224
  • テースト・オブ・苦虫5―おそれずにたちむかえ 中央公論新社(2007年)のち文庫 ISBN 412205480X
  • 破滅の石だたみ(2008年)ISBN 4758411123
  • テースト・オブ・苦虫6―おっさんは世界の奴隷か 中央公論新社(2008年)のち文庫 ISBN 4122056039
  • テースト・オブ・苦虫7―自分を憐れむ歌 中央公論新社(2009年)ISBN 4120040739
  • 膝のうえのともだち 講談社(2010年)ISBN 4062160943
  • 猫とねずみのともぐらし(おはなしのたからばこ) フェリシモ出版(2010年)ISBN 4894325160 ※装画:寺門孝之
  • テースト・オブ・苦虫8―あなたにあえてよかった 中央公論新社(2010年)ISBN 4120041239
  • スピンク日記 講談社(2011年) ISBN 4062168030
  • 猫とあほんだら 講談社(2011年) ISBN 4062169363
  • 餓鬼道巡行 幻冬舎(2012年) ISBN 4344022009

ディスコグラフィ[編集]

アルバム[編集]

  • メシ喰うな! (INU/1981年・1993年、'98年再発)
  • 牛若丸なめとったらどついたるぞ! (THE ORIGINAL INU/1984年)※1979年の音源。未CD化
  • どてらいら(町田町蔵from至福団/1986年・カセットブック、1991年CD再発)※「」の字は【女又】ではなく【男又】と表記されている
  • ほな、どないせぇゆぅね(町田町蔵/1987年、1991年再発)
  • 腹ふり(町田町蔵+北澤組/1992年)
  • 駐車場のヨハネ(町田町蔵+北澤組/1994年)
  • どうにかなる(町田康+THE GLORY/1995年)
  • 脳内シャッフル革命(町田康/1997年)
  • ミラクルヤング(ミラクルヤング/2003年)
  • machida kou group live 2004 oct 6th(町田康グループ/2005年)
  • 犬とチャーハンのすきま(町田康/2010年)

シングル[編集]

  • 心のユニット(マチタイ(佐藤タイジとのユニット)/2002年)

オムニバス、客演等[編集]

  • 『REBEL STREET』(「ボリス・ヴィアンの憤り」・元連続射殺魔和田哲郎との連名、1983年)
  • 『DANCE 2 NOISE 005』(町田町蔵+北澤組「タンゴ」、1993年)
  • 『DANCE 2 NOISE 006』(町田町蔵+北澤組「ぶらり信兵衛道場破り」 、1993年)
  • 『MONSTER DRIVE PARTY!!!』布袋寅泰(「弾丸ロック」作詞・ヴォーカル。2005年)

※これらの他に、80年代にはタコばちかぶりといった同時代のインディ・バンドの作品に少なからず客演している。

作品提供[編集]

  • 布袋寅泰
    • DOBERMAN』(「弾丸ロック」作詞、2003年)
    • MONSTER DRIVE』(「PARTY♠KING」「火の玉BOOGIE」作詞、2005年)
    • ALL TIME SUPER BEST』(「SONG FOR US」作詞、2005年)
    • SOUL SESSIONS』(「タンタルスの誤読 vs 町田康」作詞、2006年)
  • VALE TUDO CONNECTION Organized by 藤沼伸一『Are You Jap?!』(「花はどこに咲くの?」作詞、2002年)
  • ORIGINAL LOVE『踊る太陽』(「こいよ」作詞、2003年)
  • SMAPSMAP 016/MIJ』(「たてながの自由」作詞、2003年)
  • 井上陽水『LOVE COMPLEX』(「新しい恋」作詞、2006年)
  • 与西泰博『SATORUTANAKA 微と美』(「花を背に だが空は蒼く featuring 町田康」、2007年)

出演[編集]

テレビ[編集]

テレビドラマ[編集]

  • 金田一少年の事件簿「悪魔組曲殺人事件」(1996年、日本テレビ) - 指揮者 夏岡猛彦 役
  • 小鳥のくる日(1999年、TBS
  • 風立ちぬ(2001年、TBS)
  • いま何待ち?(2002年 - 2003年、フジテレビ

映画[編集]

ビデオ作品[編集]

  • Pierce ピアス LOVE & HATE(1997年)

CM[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ こうした町田の奇妙な音楽性に参画したミュージシャンには、和田哲郎(元連続射殺魔、現名義・琴桃川凛)、箕輪扇太郎、弓削聡(共に元イル・ボーン)、小西健司(元4-D、P-MODEL他)、横川理彦(元99.99P-MODEL他)、山崎春美(元タコ、ガセネタ)、恒松正敏(元フリクション他)、石橋英子AxSxEなどがいる。
  2. ^ 『真実真正日記』に同名のバンドが登場している。
  3. ^ 前年に音楽活動における名義を改めた。
  4. ^ 筒井は『過去の文学作品の成果に束縛されていないその発想と表現の自由さ』と『小説をよく読んだ上で考え抜かれた、過去の小説作品におけるような文学的完成度を放棄してまでの「発想と表現」』に言及し、『「いい加減さ」による「下降への意志」』の描写を徹底することで『「信頼できない語り手」が「信頼できない作者」にまで飛翔するという現代性文学性を獲得』している、と激賞した
  5. ^ 装苑 2010年8月号 P103インタビューより

外部リンク[編集]