ドラえもん最終話同人誌問題

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田嶋安恵 から転送)

ドラえもん最終話同人誌問題(どらえもんさいしゅうわどうじんしもんだい)とは、「田嶋・T・安恵」なる素人の男性が『ドラえもん』の最終話に関する同人誌を販売したことによる著作権問題のこと。

目次

[編集] 概要

2005年の『ドラえもん』声優陣交代と、新しい『ドラえもん』のスタートを記念し、以前、芸能人の発言やネット、そうしたところから派生したチェーンメール流布された「都市伝説」的なストーリーとして存在していた「最終回」の一つをベースに、学生時代に一方的に思いを寄せていた女性の名前から勝手に拝借したペンネームである「田嶋・T・安恵」を用いた中年男性が新たなアレンジを加えて同人誌を製作。同人誌即売会において300円で頒布し、メロンブックスにて420円[1](税込)で委託販売をした。

その後、2005年末に「時の迷宮+」(後に男性の許可を得てweb上で公開)を筆頭とする第三者によってWeb公開され、さらに個人のBlogなどに丸ごと内容が転載されるなどして、インターネットを通して広まっていった。

同人誌はA5オフセット版の全20ページで、表紙はオリジナルの小学館てんとう虫コミックスを意識して作られている(オリジナル版において、タイトル上部の「てんとう虫コミックス」と表記される箇所に「ガ・フェーク同人誌」、巻数の箇所に「最終話」という表記がなされている。また、裏表紙には収録タイトル(目次)が記載される箇所に、ドラえもんへの想いをつづったあとがきが書かれている)。

藤子・F・不二雄調の画風、作風をなぞったトーンは二次創作物(二次的著作物)としてはクオリティが高いと評されたが、画風についてはトレース(オリジナルの絵を上からなぞる手法で行う複写)による作画を指摘し、批判する意見もある。また、内容についてもドラえもんの動力や機能といった根本的な部分でオリジナルの設定を無視・改竄している点についての批判意見がある。

当初は著作権者である小学館藤子プロ側は黙認していたが、藤子・F・不二雄の真作であると勘違いして小学館に問い合わせる者が出るなど、あまりに広まりすぎたために「想像していた以上に深刻な事態」(『』2006年12月号、小学館総務局知的財産管理課)と受け止め、男性に著作権侵害を通告。この時点で、同人誌としては異例の13,380部あまりを売り上げ、出荷は15,550部あまりに達していたという。

小学館の通告を受け、男性は侵害を認めて謝罪し、在庫は全て廃棄処分とすることになった。併せて、Web公開されたものについても削除を依頼している。さらに、小学館は著作権侵害で得た利益の返還を要求しており、支払額は数千万円は下らないといわれている(以上『創』の同記事)。

小学館ドラえもんルーム室長の横田清は「これまでもそこそこのことであれば見過ごしていたが、ネットで野放図に拡大されていくことには強い危機感を覚える。もしドラえもんに最終回があるとすれば、それは亡くなられた藤子先生の胸の中だけであり、この『ドラえもん 最終話』によって、先生が作り上げた世界観が変質してしまうようなことがあってはならないと思っている」(前掲誌)と表明。小学館の対応は、男性個人の問題にとどまらず、二次創作物への対応の先例として、大きな影響を与える可能性がある。

なお、著作権法上、「『絵』の著作権は保護されている」が、「『キャラクターの性格』は著作権が存在しない」という「ポパイ・ネクタイ事件」のような過去の判例もあり、実質、勝手に続編や最終回を制作することなどは本質的には問題がないため、こういった事例が今後同人誌などでどのように扱われるかが注目されている。

前述の「ポパイ・ネクタイ事件」は1997年に最高裁まで争い、結果的に「漫画のキャラクターは、漫画の著作物から独立して保護される著作性はない」としている。つまり、ポパイやドラえもんのような同じキャラクターが一定の役割、絵柄で書かれている『一話完結』の漫画作品はそれらのキャラクターの登場したそれぞれの漫画が著作物となり、具体的な漫画を離れてキャラクターのみに著作性を問うことはできないということである。しかし、キャラクターを具体的に漫画として表現した場合には著作権が発生し、具体的な図柄は漫画の複製に当たるとしている。仮に、同人誌でこのような差し止めが行われてしまうことが一般的となれば、未完の大作に対して出版社に無断で完結篇を描くと言った二次的な創作やキャラクター世界観などを破壊しつくした同人漫画は事実上不可能になると思われる。

2007年5月30日アニメ版ドラえもんを放送しているテレビ朝日(系列)の『報道ステーション』がこの件を取り上げ、小学館・藤子プロを擁護する側に立って報道を行った。男性が利益の一部を藤子プロに返還すると共に、二度と同様の行為はしないとする誓約書を提出したと報じた。同報道によると、男性は漫画家を諦め、故郷に帰るということだった。

同人誌#漫画・アニメ同人誌を取り巻く状況、及びドラえもんの最終回#ドラえもんの最終回についての都市伝説も参照のこと。

なお、今回の事例から『小学館(プロダクション)が同人誌などの二次創作に厳しい姿勢を示している』という見解も一部にあるが、今回の事例はかなり特殊といえ、小学館自体から具体的な見解が出ていない以上、それらは憶測の域を出ないと考えられる(子供向けアニメ#女児向けアニメ出版社の考え方も参照のこと)。また、今回の一連の流れにおいてはあまりに急速でドラえもん最終回が存在するという話だけが広がってしまったため、ドラえもん人気が収束しかねない事態を憂慮した小学館が、いわば火消しの為に強硬な手段に訴えたともとらえられる。

この事件については、単なる著作権侵害事件とみなさずに、同人作品や模倣、オマージュのあり方について問題提起になったとする報道も存在した[2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9]

[編集] 同人誌のあらすじ

同人誌のあらすじは「ドラえもんの開発者はのび太だった」とするドラえもん最終回の都市伝説が元になっている。

ある日突然ドラえもんが動かなくなってしまった。未来の世界からドラミを呼んで原因を調べたところ、バッテリー切れが原因だと分かった。しかし、旧式のネコ型ロボット(この場合はドラえもん)のバックアップ用記憶メモリーは耳に内蔵されており、ドラえもんは耳を失っていたため、バッテリーを交換してしまえば、のび太と過ごした日々を完全に忘却(リセット、すなわち消去)されてしまうことが分かった。バックアップを取ろうにも方法が分からず、開発者を呼ぼうとするも設計開発者の情報は訳あって絶対に開示されない超重要機密事項となっていた。
のび太は迷いの末、とりあえずドラえもんを押入れにしまい込み、皆には「ドラえもんは未来へ帰った」と説明したが、ドラえもんのいない生活に耐えられず、猛勉強をしてトップクラスのロボット工学者に成長する。工学者になってからしずかと結婚したのび太は、ある日妻となったしずかの目の前で、努力の末に記憶メモリーを維持したままで修理完了したドラえもんのスイッチを入れる。
ドラえもんがいつものように「のび太君、宿題終わったのかい?」と言い復活する。ドラえもんの製作者が明かされていなかったのは、開発者がのび太自身のためであった。

[編集] ドラえもんの最終回の値打ち

この作品は同人誌としては比較的発行部数が多く、何度も増刷が計られた。最終的には約1万5千部が制作され、その内およそ1万3000部が販売された。この売れ行きには同人誌を作った男性本人でさえ驚いたらしい。制作した1万5千部のうち約2千部は発行が間に合わず、やむなくコピー誌として世に出したという説があるが、実際にはコピー誌は制作されていない。オークションで無断コピーを販売するにあたり捏造された説と推測される。この「ドラえもんの最終回」の同人誌はYahoo! オークションにて5万円で落札されたとされる。また、男性はこの作品で金儲けをしようといった意思はなかったと表明している。

[編集] 脚注

  1. ^ 差額は販売店であるメロンブックスのマージンとなる。
  2. ^ 青井輪廻「出版界に一石を投じることになるか『ドラえもん最終話』同人誌が大ブレイク」創、2006年6月号
  3. ^ 青井輪廻「傑作ゆえに思わぬ騒動に出る杭が打たれた!?『ドラえもん最終話』」創、2006年12月号
  4. ^ 「『「ドラえもん』最終話、勝手に出版した男性が謝罪『asahi.com』2007年05月29日16時51分]
  5. ^ 三柳英樹「ドラえもん『最終話』同人誌制作の男性、小学館と藤子プロに謝罪」『Internet Watch』2007/05/30 15:23
  6. ^ 唐沢俊一岡田斗司夫「新世紀オタク清談 第31回コミケで儲ける人たち」『創』2007年5月号
  7. ^ 「『ドラえもん』無断最終話 同人誌販売の男性謝罪」『読売新聞』2007年6月5日
  8. ^ 「模倣、どこまで許される ドラえもん『最終話』」『asahi.com』2007年06月09日11時55分
  9. ^ 「藤子プロの圧力?『ドラえもん最終話騒動』の真相」『サイゾー』2007年8月号

[編集] 関連項目