王立宇宙軍〜オネアミスの翼

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王立宇宙軍 〜オネアミスの翼』(おうりつうちゅうぐん オネアミスのつばさ)とは1987年3月14日に劇場公開されたアニメーション作品である。ハリウッドでのプレミア上映などプロモーションにかかった宣伝費などを含む総製作費は約8億円。制作費では約3億6000万円となる[要出典]フィルム制作作品。

朝日ソノラマ文庫より『オネアミスの翼-王立宇宙軍 I・II』(1986-1987)が発売されている。内容の大筋は同じながら映画では描ききれなかった多くのエピソードが加筆されている。著者は飯野文彦

目次

[編集] 概要

1950年代の地球に似ている「もうひとつの地球」にある「オネアミス王国」正式国名「オネ・アマノ・ジケイン・ミナダン王国連邦」が舞台。

当初は4000万円のオリジナルビデオとして企画されていたものだったが[1]、当時バンダイ山科誠社長が映像事業進出を模索していたことから映画化が実現し[2]本作を制作するため1984年GAINAXが設立された。当時、映画製作の進行状況などは月刊モデルグラフィックス誌上において毎月リアルタイムに連載され好評を博した。

監督は当時24歳の山賀博之。スタッフの平均年齢も24歳である。のちに『新世紀エヴァンゲリオン』などで有名となった貞本義行庵野秀明も参加し、音楽監督として坂本龍一を起用している。興行的には大ヒットではないもののロングラン上映をする館も出るなど好調であり[3]、ビデオ・レーザーディスクは長く好調な販売を記録した。1997年に「サウンドリニューアル版」(ドルビーデジタル版)が制作、同年11月2日に公開された。

異世界を舞台に人類初の宇宙飛行計画を描いたこの作品はアメリカ映画『ライトスタッフ』にも通じる青年達の成長物語であると同時に「人類の進歩」を真摯に見つめたテーマ性を有し、現在でも評価が高い。また、制作スタッフの多くが商業作品の制作経験をほとんど持たない20代の若者であったことでも知られる。その主要スタッフはNASAにロケハンに行っている。ハリウッドでプレミア上映もされた。

公開当時上映時間の都合からカットされた場面(約1分)があり、「メモリアルボックス」において登場キャラクターの声優(森本レオ・曽我部和恭)による追加アフレコを行った上で本編に組み込まれた。その後1997年リリースの「サウンドリニューアル版」ではこの場面は特典映像扱いとなり、本編は公開版に戻されている。

緻密でリアリティある作画を実現するため、シロツグの初めて体験する飛行訓練シーンでのプロペラ回転始動のカットなど一部にはコンピュータグラフィックス技術も導入されている。しかし、テクスチャマッピングされた動画にも莫大な時間と費用を要する時代であり、その節約のため、ワイヤーフレームで描かれた線をなぞって手書きの動画に起こす手法が採られた。

本作品に対し宮崎駿は、金のない無名の若者たちが集団作業で作る姿勢に好感を持って応援し[4][5]バンダイを説得するための話などをした。完成した作品にもある程度の評価をしているが打ち上げの際、将軍が簡単に打ち上げを諦めたことや[6]主人公以外の努力して来た年配者を描かないことを批判[7]。『キネマ旬報』1987年3月下旬号で山賀博之監督とほとんど口論に近い形の対談を行っている。

1992年頃にも続編『蒼きウル』が山賀監督自身によって構想されたが、企画は諸事情から凍結となり実現していない。

[編集] タイトル

本作の企画構想時にスタッフが喫茶店で打ち合わせをしていた時、隣の客がロイヤルミルクティーを注文した。山賀はとっさに「ロイヤル・スペースフォース」という語を思い浮かべ、これを和訳した「王立宇宙軍」を企画タイトルにすることを閃いた[8]。「王立〜軍」という言葉は、イギリスの軍組織が「王立空軍(Royal Air Force)」「王立海軍(Royal Navy)」などと呼称されることを踏まえたものである。

これではイメージが固すぎるとの考えから、1986年の映画製作発表時には副題を付け、「王立宇宙軍 リイクニの翼」という仮タイトルになった[9]。さらに配給元の東宝東和の意向で主題と副題を入替え、「ネアミスの翼 王立宇宙軍」を経て劇場公開時は「オネアミスの翼 王立宇宙軍」のタイトルとなった。

この入替えは制作サイドからは不評であったため、レーザーディスク化の際「王立宇宙軍 オネアミスの翼」に戻され、以後の映像ソフトでもこのタイトルとなっている。

[編集] 周到な世界観

本作品の特徴のひとつが、その微細にわたる世界観の設定である。既視感と異国情緒が絶妙に織り交ぜられた風変わりな世界は、文字から小道具、交通機関、兵器、建築にいたるまで、多数のスタッフのアイデア出しによって念入りにデザインされた。

王国の建造物や工業製品、服飾類は、現実の地球でのアール・ヌーヴォー美術を意識した設定となっており、曲線・色彩を多用する傾向が伺え、ヨーロッパロシアトルコのような長い歴史と伝統をもった文化を演出している。かたや対峙する共和国の都市景観はより直線的で現代的なアール・デコの印象があり、1920年代アメリカ合衆国のような新興資本主義国の雰囲気がある。

この星の世界観における科学技術レベルは、現実の地球での1950年代に相当し、同時期の地球同様、熟成されたプロペラ機と誕生したばかりのジェット機が同程度の戦力を持つことがよく描かれている。この世界でのプロペラは、地球でのプロップファンのように後退角をもっており、より亜音速での飛行が可能となっているようである。

王国のロケットはロシア(旧ソビエト連邦)が得意とするクラスター式と呼ばれる形状で、第一段ロケットを第二段ロケットの周囲に束のようにまとめたスタイルが特徴。まだ冷戦が続いていた公開当時、大多数の人々はロケットいえばアメリカのロケットを想像するため、「見知らぬ世界」を演出するのに好適なデザインであった。


注意以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。


[編集] 物語

所属が10人に満たず「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、世間に落第軍隊として見下されているオネアミス王立宇宙軍の士官・シロツグ=ラーダットは、欲望の場所でしかない歓楽街で献身的に布教活動を行う少女・リイクニ=ノンデライコとの出会いをきっかけにそれまでのその日暮らしの自堕落な生活を捨て、宇宙戦艦という名目の人類初の有人人工衛星打ち上げ計画に参加し宇宙を目指すことになる。

厳しい訓練や多額の税金を使う宇宙開発の意味、開発スタッフの事故死、敵国「共和国」からの刺客、リイクニとの気持ちのすれ違いを乗り越え精神的に成長していくシロツグの姿を描く。

[編集] 主要な登場人物・声優

シロツグ・ラーダット
森本レオ
宇宙軍中佐(劇中で昇進し大佐) 宇宙飛行士候補第2期生 21歳
中流家庭で平凡に生まれ育つ。水軍飛行士への夢絶たれ、仕方なく宇宙軍で漫然と過していた。
リイクニ・ノンデライコ
声:弥生みつき
不仲な両親にないがしろにされ、熱心な宗教家の祖母に育てられた。 17歳
マナ
声:村田彩
不仲な夫婦の娘で、人と付き合う術を知らない。リイクニが引き取り同居している 5歳
宇宙軍関係者
マティ
声:曽我部和恭
宇宙軍中佐 第2期生 21歳
シロツグの親友。非常に要領が良く女にももてる。バイク、カーマニア
カロック
声:平野正人
宇宙軍中佐 第3期生 23歳
ロケット推進機関の専門家。冷静だが怒ると手が付けられず「瞬間湯沸かし器」の仇名を持つ
ドムロット
声:鈴置洋孝
宇宙軍中佐 第1期生 21歳
実家が地方豪族の名家で、プライドが高い。唯一人残った第1期生
ダリガン
声:伊沢弘
宇宙軍中佐 第3期生 25歳
宇宙軍一の秀才。趣味でSF小説を執筆し投稿するが、掲載誌が必ず廃刊になるジンクスがある
チャリチャンミ
声:戸谷公次
宇宙軍中佐 第3期生 19歳
周囲との交友も少なく愛猫と戯れている。風呂に入らず不潔、口が悪い
ネッカラウト
声:安原義人
宇宙軍少佐 第3期生 20歳
変わり者で異常に新しい物好きなため、周囲からは特異視されている
ヤナラン
声:島田敏
宇宙軍少佐 第3期生 19歳
中小企業の会社社長子息として育ったため大柄な体格に似合わぬお坊ちゃまな性格
マジャホ
声:安西正弘
宇宙軍少佐 第3期生 19歳
見かけが老けているため子供がいるとの噂がある。実家はパン屋
カイデン・ル・マシーレ
声:内田稔
王立宇宙軍将軍(司令官) 53歳
宇宙軍の創設者にして最高責任者。王室にも通じる手腕を生かし有人衛星打上げに情熱を注ぐ
指導官
声:飯塚昭三
王立宇宙軍訓練指導官 41歳
学位や資格もない叩き上げ軍人の典型。仇名は「脳味噌筋肉」
「宇宙旅行協会」関係者
グノォム博士
声:大塚周夫
宇宙旅行協会リーダー 53歳
他の協会員とは違い話の分かる頼れる存在。希代のプレイボーイ、冒険家でもある。
デクロ
声:及川ヒロオ
宇宙旅行協会に所属する7人の博士の内の一人。目が大きい
ロンタ
声:槐柳二
宇宙旅行協会博士。車椅子を使用している
王国貴族
王立空軍関係者
共和国関係者
ネレッドン
声:ウィリー・ドーシー
共和国の政治局次官。ロケット発射場への侵攻の指揮を執る
その他

[編集] 出演者の概要

主人公のシロツグ・ラーダット役を俳優の森本レオが担当したほか、声優陣はベテラン・中堅の実力派を多数起用している。当時現役日本テレビ・アナウンサーであった徳光和夫がTVアナウンサー役で、アントン・ウィッキーオスマン・サンコンはコメディアン(漫才師)役として声をあてている。

また、敵対勢力である共和国側の人物の会話は全て架空の外国語によって進行(会話内容は字幕で表現)するが、その声優には全て外国人が充てられた。これは、日本人が発音するとどうしても嘘くさくなるため、より外国としての現実感を出すための演出方法として採り入れられたもの。

[編集] 登場メカニック

<王国>
宇宙軍・第4号ロケット
王国史上4個目のロケット。クラスター型4段式。それまで失敗続きだったため、軍本部としては実質的な成果よりも政治の道具として用いようとする動きが強かった。
  • 第1号ロケット 植木皿の打ち上げに成功。
  • 第2号ロケット 発射台で爆発。
  • 第3号ロケット 推力が不足し弾道軌道に終わる。
  • 第4号ロケット 有人宇宙飛行に挑む。全長35.3m、重量385t。
宇宙軍・宇宙戦艦(軌道宇宙船)
対外的な示威として付与された勇ましい呼称と裏腹に、人ひとりを宇宙に飛ばしてまた戻ってくる機能しか持たない生命維持装置。あえて武装を挙げるとすれば斧を1本備えており、これは着水後にハッチが空かなかった時などの緊急脱出用である。
宇宙軍・公用車
前2輪後1輪の3輪式。自動車は一般にまだ手の届かない乗り物で、王室と癒着があるといわれるミグレン社が提供してこそ宇宙軍メンバーはこれに乗ることができる。もとは地味な色だったが、女性に受けがいいようにとネッカラウトが勝手に黄色に塗った。
全長3285mm 排気量1548cc
空軍・プロペラ戦闘機「第3スチラドゥ」
前翼型・推進式の配置で、エンジンにはターボチャージャーを装備。単座型と複座型を基本に夜間戦闘機などのバリエーションもある。空軍にはこれよりも新しいジェット戦闘機も存在するが信頼性に乏しく、まだまだ最前線の迎撃戦闘機としての配備が継続している。
全長14.4m 最高速度800km/h
水軍・航空母艦
王国は大陸の内陸国で、国境線が走る巨大な湖「ピッポウ湖」に面している。このため、王国の戦闘艦は海軍ではなく水軍と呼ばれる。水軍は、湖の上に滑走路を作ることができる空母の運用に熱心で、砲撃による艦隊戦はあまり想定していない。実際の地球の歴史においても、ボストークが初の有人宇宙飛行に成功する1960年代には海軍の主力は空母とミサイル巡洋艦となっており、戦艦はすでに時代遅れであった。作中の空母は発艦と着艦を効率的に行うための二段式の飛行甲板を持ち、離陸用にはスチームカタパルトを備えている。
水軍・ジェット戦闘機
主人公シロツグの少年時代に配備が始まった前翼型のジェット戦闘機。外国からの輸入品。ジェット技術が生まれたばかりの時代の産物で、利点といえば急角度の離着艦でも推進用プロペラを甲板に摺る心配がないことと、スクランブル発進に必要な加速度があること程度しかなかった。第4号ロケット時代における配備の状況は不明。
全長12.8m 最高速度650km/h
陸軍・戦車
無限軌道式の戦車。機動的な共和国の装甲車とは好対照な鈍重なスタイルを持つ。作中では主に待ち伏せ用の砲台として用いられた。また、敵兵站をできるだけ消費させるため、この戦車に似せたデコイが多数配置された。
<共和国>
空軍・ジェット戦闘機
前翼型ジェット機。亜音速性能を持つ。翼下にロケット弾24発を搭載可能なパイロンを備え、増槽は翼の上に追いやられている。空中給油装備を持ち、もともと航続距離の長くない本機の作戦行動力を大きく高めている。
全長15.25mm 最高速度880km/h(アフターバーナー使用時980km/h)
空軍・空中給油機
この世界には珍しい翼の前にプロペラを持つトラクター方式の機体。これは給油時にプロペラが邪魔にならないよう配慮されているためである。
陸軍・装甲車
高い渡河能力と軽快な機動力で電撃戦の中心を担う。タイヤはソリッドゴムであるためパンクしない。
陸軍・ホバークラフト
不整地・沼地での作戦に用いられる兵員輸送装備。現実世界における同種の兵器の配備は1980年代になってからということもあり、この作中で表現されるところの「最新兵器」のひとつであると思われる。

[編集] 音楽

本作品の楽曲は「戦場のメリークリスマス」で映画音楽を手がけた坂本龍一が全体を統括し、自らもテーマ曲を含むいくつかを手がけているほか、上野耕路など複数に楽曲を割り振っている。劇中の葬式で宇宙軍が斉唱する「宇宙軍軍歌」も坂本の作曲(作詞はサエキけんぞう)である。目下のところ、本作品は坂本龍一がアニメーションの音楽を担当した唯一の例となっている。

それとは別個に、作品イメージソングとして統乃さゆみ『オネアミスの翼 〜Remember Me Again〜』(CBSソニー。作詞・森生紗都子、作曲・長戸大幸)がビーイングの手によって制作され宣伝映像に用いられたが、作品内容との乖離から安田成美の『風の谷のナウシカ』同様、アニメ本編で使用されることはなかった。

[編集] スタッフ

[編集] 脚注

  1. ^ 武田康廣『のーてんき通信 エヴァンゲリオンを創った男たち』ワニブックス、2002年、p91
  2. ^ 竹熊健太郎編『庵野秀明パラノ・エヴァンゲリオン』太田出版、1997年、p76
  3. ^ 『のーてんき通信』p96
  4. ^ 『パラノ・エヴァンゲリオン』p73
  5. ^ 「対談 宮崎駿・高畑勲 ぼくたちの30年東映動画からスタジオジブリへ」『キネマ旬報臨時増刊 宮崎駿・高畑勲とスタジオジブリのアニメーションたち』キネマ旬報社、1995年、p18
  6. ^ 『パラノ・エヴァンゲリオン』p74
  7. ^ 大塚英志、ササキバラ・ゴウ『教養としての<まんが・アニメ>』講談社現代新書、2001年、p234
  8. ^ 『B-CLUB SPECIAL オネアミスの翼 〜王立宇宙軍コンプリーテッドファイル』 バンダイ 1987年 46頁
  9. ^ TORNADO BASE エモーション魂〜渡辺繁を支えた縁人〜 第16回
  10. ^ 他にも、男性記者、を演じる
  11. ^ 他にも、女性記者、女性オペレーター、を演じる

[編集] 外部リンク

星雲賞メディア部門
第18回 1987年度
未来世紀ブラジル
テリー・ギリアム監督
第19回 1988年度
王立宇宙軍〜オネアミスの翼
山賀博之監督
第20回 1989年度
となりのトトロ
宮崎駿監督